国語の教科書には、毎学年、読書の単元があります。本を紹介するカードを書く。ポスターや帯を作る。おすすめの本を友達に紹介する。図書室で本を選ぶ練習をする。
この単元、授業としては楽しく終わります。でも、単元が終わった次の週、子どもたちは自分で本を選んで読んでいるでしょうか。…正直、私の教室では、読む子は読むし、読まない子は読まない、のままでした。
審議まとめは、この「読書習慣」を、国語の大きな課題としてはっきり書いています。今回は、読書の単元を「その後」につなげる方法を考えます。
審議まとめの読書
審議まとめは、国語の課題として、「多様な文章に触れ自らの考えを深める読書習慣の定着」に課題がある、と書いています。そして、読書の改善の観点として、二つを挙げています。
- 読書へのきっかけの創出や動機づけを高める機会の充実
- 自立的な読書への移行を支える学習の充実
その際、司書教諭、学校司書などと連携しながら、学校図書館の機能の充実や計画的な利活用など、学校全体の読書環境の整備もあわせて進める、とあります。学校図書館については、紙の本だけでなく、デジタル情報や動画も含めた多様なメディアの拠点である、という注意書きもついています。
「きっかけ」と「自立」。この二つのキーワードで、教科書の読書の単元を見直してみます。
「きっかけ」は、単元の中でつくれる
読書の単元の多くは、「本を紹介する」活動を中心にしています。これは、紹介する側にとっては読書のふり返りであり、聞く側にとっては「きっかけ」です。
ただ、紹介の場面が、発表して終わりになっていることが多い。聞いた子が、その本を実際に手に取るところまでつながっていない。
そこで、紹介の後に、一つだけ足してみます。
「読んでみたい本」を一冊選ぶ
友達の紹介を聞いたら、その中から「読んでみたい本」を一冊選んで、カードに書く。そして、実際に図書室で借りる時間を、単元の中にとる。
これだけです。でも、「紹介を聞く」と「借りる」の間に、時間が空くと、子どもは忘れます。単元の中で借りるところまでやる。きっかけを、行動につなげるところまでが単元です。
ビブリオバトル
審議まとめは、調整授業時数制度の「学習枠」の例として、学校全体で取り組む読書活動の一環としての「書評合戦(ビブリオバトル)や読書会」を挙げています。
ビブリオバトルは、本を紹介して、「一番読みたくなった本」を投票で決めるゲームです。紹介の目的が「読みたくさせる」にはっきりするので、紹介する側の工夫が変わります。あらすじを全部話すと、読みたくならない。どこまで話して、どこで止めるか。
学年や学校全体でやると、異学年の子のおすすめに出会えるのもいいところです。
「自立」は、単元の外で育つ
もう一つの観点、「自立的な読書への移行」。これは、単元の中だけでは育ちません。審議まとめも、「授業内外における読書活動をつなぎながら」と書いています。
私が大事にしたいのは、次の3つです。
①読んだ本を記録する
読書記録は、多くの教科書にも出てきます。題名、作者、ひとこと感想。端末で記録してもいい。
記録が増えてくると、子どもは自分の読書の「くせ」に気づきます。「ぼく、動物の本ばっかりだ」「物語しか読んでない」。そこで、「じゃあ、次は違うジャンルも一冊」と声をかける。審議まとめの「多様な文章に触れ」とつながります。
②教室に本を置く
学級文庫を、季節や単元に合わせて入れかえる。学校司書さんに相談すると、テーマに合わせた本をまとめて貸してくれる学校も多いです。
前に「ごんぎつね」の記事で、新美南吉の本を教室に置く話を書きましたが、国語の単元と学級文庫を連動させるだけで、手に取る子は増えます。
③先生が読んでいる姿を見せる
これは、正直、私自身の課題でもあります。朝読書の時間に、先生が丸つけをしている。子どもは見ています。先生が本を読んでいると、「先生、何読んでるの?」と聞いてくる。そこから始まる会話もあります。
気をつけたいこと
読書の単元で気をつけたいのは、読むのが苦手な子にとって、「たくさん読もう」がプレッシャーになることです。
読書記録の冊数を競わせる、というのは、私はやらないようにしています。冊数より、「一冊を最後まで読めた」「途中でやめたけど、また読みたい」も大事な記録です。絵本や図鑑、マンガ形式の学習本も、立派な読書です。
学校図書館が「多様なメディアの拠点」という審議まとめの書き方は、紙の本だけが読書ではない、というメッセージでもあると思っています。
単元計画のイメージ
教科書の読書の単元を、「きっかけ」と「借りる」までつなげた計画です。本を紹介する単元を想定して、全体で7時間ほどを目安にしています。
| 時 | 主な学習 | 中心の問い |
|---|---|---|
| 1 | 先生のおすすめの本の紹介を聞き、単元の見通しをもつ | 本を「読みたくなる」紹介って、どんな紹介? |
| 2 | 図書室で、紹介する本を選ぶ(学校司書さんと一緒に) | 友達にすすめたい本は、どれ? |
| 3〜4 | 本を読み返し、紹介の準備をする | どこまで話して、どこで止める? |
| 5 | グループで紹介し合う | 友達の紹介で、読みたくなった本は? |
| 6 | 「読んでみたい本」を一冊選び、図書室で借りる | 次に読む一冊は、どれにする? |
| 7 | 単元をふり返り、読書記録の続け方を決める | これから、どんなふうに本と付き合う? |
第6時の「図書室で借りる」を、単元の時間の中にきちんと入れているのがポイントです。紹介を聞いた次の日に借りに行けば、子どもの「読みたい」はまだ温かいままです。1週間後では、たいてい忘れています。
第1時は、先生の紹介から
単元の最初に、先生が一冊、本を紹介します。これが、子どもにとっての「紹介のお手本」になります。
先生の紹介で気をつけたいのは、次の三つです。
- 全部を話さない:あらすじを最後まで話すと、読む楽しみがなくなります。「この後、主人公がどうなるかは…読んでのお楽しみ」で止める
- 自分がどこで心が動いたかを話す:「わたしは、この場面で、思わず泣きそうになりました」。先生が一人の読み手として話すと、子どもは引き込まれます
- 一番好きな一文を読む:本の中から、一文だけ読み上げる。声に出して読むと、本の雰囲気が伝わります
紹介が終わったら、「今の紹介で、読みたくなった人?」と聞きます。手が挙がったら、「どうして読みたくなった?」と理由を聞きます。子どもの答えを黒板に書いていくと、「読みたくなる紹介のコツ」が自然にまとまっていきます。
紹介の準備を支えるカード
第3〜4時の準備では、紹介の組み立てを考えるカードを用意します。学年によって、項目を変えます。
低学年向け
- 本の名前と、書いた人
- どんなお話か(一文で)
- すきなところ
- 「読んでみてね」の一言
中・高学年向け
- 本の名前、作者、ジャンル
- どんな人におすすめか(「〇〇が好きな人に」)
- 話の始まりだけ(最後までは話さない)
- 自分の心が動いた場面と、その理由
- 一番好きな一文
「どんな人におすすめか」を考えさせると、紹介する側が、聞く人のことを考えるようになります。「動物が好きな人に」「ちょっとこわい話が好きな人に」。聞く側も、「自分はそのタイプかな」と考えながら聞けます。
紹介し合う時間の工夫
第5時の紹介は、学級全体の前で一人ずつ発表するより、4人くらいのグループで紹介し合う方が、たくさんの本に出会えます。グループを何回か入れかえると、一人の子が10冊以上の本の紹介を聞くことができます。
紹介を聞いたら、「読みたい度」を、手元のカードに印でつけていきます。三段階くらいの簡単なものでかまいません。最後に、「読みたい度」が一番高かった本を一冊選んで、第6時に借りに行きます。
ビブリオバトルの形にするなら、5分の紹介と、2〜3分の質問の時間をとり、最後に「一番読みたくなった本」に投票します。ただ、投票で順位がつくのが苦手な子もいます。学級の様子を見て、投票をしない形にしてもよいと思います。
学校司書さんとの連携
審議まとめは、司書教諭や学校司書などとの連携を、はっきり書いています。読書の単元は、学校司書さんと一緒に計画すると、ぐっと深まります。具体的には、こんな連携が考えられます。
- 単元の前に、テーマに合った本を集めてもらう:「4年生が紹介しやすい本を、40冊ほど」と相談する
- 第2時の本選びに、一緒に入ってもらう:本を選べない子に、司書さんが「どんなお話が好き?」と声をかけてくれると、子どもは選びやすくなります
- 第6時の貸し出しを、スムーズにしてもらう:学級全員が一度に借りに行くので、事前に時間を相談しておく
- 紹介された本の一覧を、図書室に掲示してもらう:ほかの学年の子も、その本を手に取るきっかけになります
学校司書さんが配置されていない学校や、勤務日が限られている学校もあります。その場合は、地域の公立図書館の団体貸出の制度を使えないか、確かめてみるのもいいと思います。
読書記録の続け方
第7時のふり返りでは、単元が終わったあとの読書記録の続け方を、学級で決めます。続けやすくするコツは、記録を軽くすることです。
- 書く項目は少なく:題名、作者、読み終わった日、ひとこと(「おもしろかった」だけでもいい)
- 途中でやめた本も記録する:「途中まで」の欄をつくっておく。途中でやめることは、悪いことではありません
- 月に一回、記録を見返す:自分の読書のくせに気づく時間。「今月は、物語が多かった」「図鑑も読んだ」
端末で記録する場合は、学級の共有フォルダに、一人一枚の記録シートを置いておくと、先生も様子が見やすくなります。ただし、ほかの子の記録を見られる設定にするかどうかは、慎重に決めてください。冊数を比べられるのが嫌な子もいます。
つまずきやすいところと手立て
- 紹介する本が選べない子:これまでに読んだ本の中から、「ちょっとでも覚えている本」でいいことにします。教科書に載っていた物語の、続きの話やシリーズの本を紹介してもかまいません。
- 本を最後まで読めていない子:途中まで読んだ本を、「ここまで読んで、続きが気になっている本」として紹介してもいいことにします。「続きが気になる」は、立派な紹介の理由です。
- 人前で話すのが苦手な子:紹介カードを読み上げる形でかまいません。カードを本にはさんで、図書室に置いておく「おすすめカード」の形にすると、話さなくても紹介できます。
- 借りたい本が見つからない子:学校司書さんに相談したり、先生が二、三冊を選んで、「この中ならどれ?」と聞いたりします。選択肢がしぼられると、選びやすくなります。
評価の目安
読書の単元は、紹介の上手さだけでなく、「本を選ぶ」「紹介を聞いて、読みたい本を見つける」ところまで含めて見たいところです。
- 十分にできている:聞く人を意識して、話す内容を選んで紹介できている。友達の紹介を聞いて、理由をもって次に読む本を選べている
- おおむねできている:本の内容は紹介できているが、聞く人を意識した工夫はまだ少ない
- もう一歩:紹介する本を選ぶことが、まだ難しい
読書は、評価のために読むものではありません。単元の評価は、「読みたい」という気持ちを育てるための材料として使い、冊数や読書の量は評価に入れないようにしています。
よくある質問
Q. 読書の時間を、単元の中にどうやって確保すればいいですか?
教科書の読書の単元は、時数が少ないことが多いです。紹介する本を読む時間は、単元の前から、朝読書や図書の時間を使って確保しておきます。単元が始まる2週間ほど前に、「次の国語で、本を紹介するよ」と予告しておくと、子どもは紹介する本を意識しながら読み始めます。
Q. ビブリオバトルは、低学年でもできますか?
低学年なら、紹介の時間を2〜3分に短くし、質問の時間は先生が少し助けるようにすると、できます。投票で順位をつけるのではなく、「読みたくなった本にシールを貼る」形にすると、低学年でも楽しく取り組めます。
Q. 学級文庫の本を入れかえる時間がありません。
学校司書の先生に相談すると、テーマに合わせた本を、まとめて貸し出してもらえることが多いです。入れかえるのは、学期に一回でも十分です。子どもに「学級文庫係」をお願いして、図書室から本を選んできてもらう方法もあります。子どもが選んだ本は、ほかの子もよく手に取ります。
Q. 漫画や図鑑ばかり読む子がいます。
漫画や図鑑も、立派な読書です。審議まとめが学校図書館を「多様なメディアの拠点」と書いているように、読書の形はいろいろあっていいと思っています。そのうえで、その子が好きなテーマの物語や、写真の多い読み物を、さりげなく勧めてみます。図鑑が好きな子には、生き物が出てくる物語を。好きなものから広げていくのが、一番の近道です。
Q. 読書記録を、家庭でも続けてもらうには?
学級通信で、子どもが紹介した本の一覧を載せると、家庭でも話題にしてもらえます。「お子さんが紹介した本は、〇〇です。家でも話を聞いてみてください」。家の人が本のことを聞いてくれると、子どもは読書をもっと楽しむようになります。
Q. 先生自身が、本を読む時間がとれません。
正直、私もそうです。でも、子ども向けの本なら、短い時間で読めるものもたくさんあります。朝読書の10分間だけでも、先生が本を読んでいる姿を見せることには意味があると思っています。読んだ本を、帰りの会で一言だけ紹介する。それだけで、「先生が読んでいた本」を図書室で探す子が出てきます。
本との出会いは、いつ、どこで起きるか分かりません。単元の中に、出会いのきっかけをたくさん用意しておくこと。それが、先生にできる一番のことだと思っています。
まとめ
- 審議まとめは、読書習慣の定着を国語の課題とし、「きっかけの創出や動機づけ」と「自立的な読書への移行」の二つで改善する方向を示している
- 教科書の読書の単元は、紹介を聞いたら「借りる」ところまでを単元の中でやる。ビブリオバトルも効果的
- 自立した読書は単元の外で育つ。記録、学級文庫、先生の姿。冊数は競わせない
国語の教科書を閉じた後、子どもが自分で本を開く。読書の単元のゴールは、たぶんそこなんだと思います。
国語はここまでで一区切り。次回からは算数です。5年生の「割合」から始めます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.127〜128、p.135、p.139〜140 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」国語 〔知識及び技能〕(3)の読書に関する事項、C読むこと(2)の言語活動例
- 関連記事:「ごんぎつね」を基幹教材に、新美南吉をもう一冊(本連載#5)


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