教材で読む次期学習指導要領#30 6年音楽「ふるさと」を、どう歌いたいか 思いと技能を一続きにする歌唱の授業

授業づくり

6年生の歌唱共通教材、「ふるさと」。「うさぎ追いし かの山」。卒業式で歌う学校もあるかもしれません。6年生の子どもたちにとっては、まだ「ふるさとを離れる」実感はない。でも、卒業という小さな別れを前にして、どこか響くものがある歌です。

今回は、この「ふるさと」を、審議まとめの音楽の言葉から見直してみます。

審議まとめの音楽の課題

審議まとめは、芸術系教科の課題として、音楽について、こう書いています。

表現を工夫する場面で、思いや意図(表現意図)を言語化することに留まり、それを音楽で表現するための技能の習得が一体的に行われていない。このため、技能を活用して思いや意図を歌唱や演奏などで表すことや、表現を深めていくことが十分にできていない。

これ、思い当たる先生も多いんじゃないでしょうか。

「この曲を、どんなふうに歌いたい?」と聞く。子どもは「やさしく歌いたい」「ふるさとをなつかしむ感じで」とワークシートに書く。発表する。でも、実際に歌ってみると、さっきとあまり変わらない。言葉では言えても、声では表せていない。

「思い」と「技能」を一続きに

審議まとめは、改善の方向として、

表現したいことをどのように形にできるか、他者に伝えることができるか、という自分の思いや考えをもつことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを、一連の過程として重視する。

としています。そして音楽については、習得した技能を生かして工夫して表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として一体的に示すこと、知識と技能の関係性を明確にし統合して一文で示すこと、歌唱や器楽で身体の使い方を重視すること、などを挙げています。

つまり、「どう歌いたいか」を考えることと、「そう歌うための声の出し方」を身に付けることを、別々にしない。

「ふるさと」でやってみる

①「やさしく」を、声で試す

「ふるさと」を「やさしく歌いたい」と言った子がいたら、その場で聞きます。「やさしく、って、どうやったらやさしく聞こえる?」

子どもは、いろいろ試します。「小さい声で」「ゆっくり」「口を丸くして」。試した声を、みんなで聞く。「小さいだけだと、さみしい感じになる」「でも、声を前に出すと、やさしいけどはっきり聞こえる」。

言葉の「やさしく」を、声の出し方の工夫に変える。これが、思いと技能を一続きにするということだと思っています。

②フレーズの終わりを、体で感じる

「ふるさと」は、4小節ずつのまとまりがはっきりした曲です。「うさぎ追いし かの山」「小ぶな釣りし かの川」。

フレーズの終わりで、声をどう処理するか。急に切るのか、すっと消えていくように終えるのか。手を前に出して、フレーズの終わりで手をゆっくり下ろしながら歌ってみる。体の動きで、音の終わり方を感じる。審議まとめのいう「身体性を伴った技能」です。

③3番までの歌詞の違いを、歌い方に

「ふるさと」は、3番まであります。1番は子どものころの思い出、2番はふるさとの人への思い、3番はいつかふるさとに帰りたいという思い。(歌詞の解釈は、指導書なども参考にしてください)

「1番と3番、同じ歌い方でいい?」と聞くと、子どもは考えます。「3番は、もっと強い気持ち」「1番は、楽しかった思い出だから明るく」。歌詞の意味(知識)と、歌い方(技能)と、どう歌いたいか(思い)が、ここで一つになります。

「唯一の答え」に導かない

審議まとめは、芸術系教科の改善の方向として、表現及び鑑賞の学習において、心が動く体験を大切にし、唯一の答えに導くのではなく、子ども一人一人のありようが尊重されるようにする、と書いています。

「ふるさと」の歌い方に、正解はありません。3番を強く歌うグループもあれば、静かに歌うグループもある。大事なのは、「なぜそう歌ったのか」を、子どもが声と言葉の両方で説明できることです。

「文化」としての「ふるさと」

審議まとめは、音楽の見方・考え方について、文化を継承し発展することを一層重視していくため、文化に関する視点を共通に含める、としています。

「ふるさと」は、100年以上前に作られ、今も歌われ続けている歌です。「どうしてこの歌は、こんなに長く歌われているんだろう?」。この問いは、6年生の社会科や国語とも少しつながります。家の人に「この歌、知ってる?」と聞いてくるだけでも、歌が世代をこえて共有されていることに気づけます。

正直なところ

正直に言うと、私は音楽の専門ではありません。歌唱の技能を、どう教えたらいいか迷うことも多いです。

でも、「やさしく、ってどうやったらやさしく聞こえる?」と子どもと一緒に試すことはできる。専門の先生のように教えられなくても、思いを声にする試行錯誤の時間をつくることはできる。審議まとめの方向は、専門外の担任にとっても、取り組みやすい方向だと思っています。

題材の計画のイメージ

「ふるさと」を、思いと技能を一続きにして学ぶ題材の計画です。音楽の時数は限られているので、ここでは4時間ほどの目安で書いています。卒業式で歌う学校なら、その練習の時間とつなげて考えることもできます。

時 主な学習 中心の問い
1 曲を聴き、歌詞を読んで、曲の感じをつかむ この曲を聴いて、どんな感じがした?
2 「やさしく」「なつかしく」など、歌い方の思いを声で試す その思いは、どんな声で表せる?
3 フレーズのまとまりと終わり方を、体を使って感じながら歌う フレーズの終わりは、どう歌うといい?
4 1番から3番の歌詞のちがいを、歌い方で表す 3番まで、同じ歌い方でいい?

この題材で大事にしたいのは、毎時間、「思い」と「声」を往復させることです。ワークシートに思いを書いて終わりではなく、書いたらすぐに声で試す。試したら、また言葉で確かめる。この往復の回数が多いほど、思いと技能が一続きになっていきます。

第1時の流れ 曲の感じをつかむ

導入(5分):「ふるさと」の範唱を聴きます。CDや音源でもいいし、先生が歌ってもいいです。

感じたことを出し合う(10分):「この曲を聴いて、どんな感じがした?」と聞きます。予想される子どもの声はこんな感じです。

  • 「ゆっくりで、落ち着く感じ」
  • 「ちょっとさみしい感じ」
  • 「昔の歌っぽい」
  • 「おじいちゃんが歌っていた気がする」

歌詞を読む(10分):歌詞を読みます。「うさぎ追いし」「小ぶな釣りし」「忘れがたき」。6年生にとって、昔の言葉は少し難しいです。言葉の意味を、一つずつ確かめます。「追いし」は「追いかけた」、「忘れがたき」は「忘れられない」。

歌ってみる(15分):まずは、全員で一度歌ってみます。旋律をつかむことが目的なので、細かい歌い方はまだ気にしません。

まとめ(5分):「この曲を、どんなふうに歌いたい?」を、ワークシートに一言書いて終わります。この一言が、次の時間に声で試す「思い」になります。

第2時の「声で試す」の進め方

本文で書いた「やさしく、ってどうやったらやさしく聞こえる?」を、もう少し具体的にしておきます。

  1. 思いを一つ選ぶ:第1時に子どもが書いた思いから、学級で一つ選ぶ(例:「やさしく」)
  2. いろいろな声で試す:グループで、思いを表すための声の出し方を、いろいろ試す
  3. 聞き合う:グループごとに、試した歌い方を聞かせ合う
  4. 言葉にする:「どんな工夫をしたら、やさしく聞こえた?」を言葉にする

子どもが試す工夫は、だいたいこんなものです。

  • 声の大きさ:小さく、でもはっきり
  • 声の出し方:口を縦に大きく開ける、息をたっぷり使う
  • 速さ:少しゆっくり
  • 言葉の出し方:言葉の最初をやわらかく歌い始める

4の「言葉にする」で出てきた工夫は、黒板に書いて残しておきます。「やさしく=小さくてもはっきり、息をたっぷり、言葉の始めをやわらかく」。思いを表す技能が、学級の共通の言葉になります。

声の出し方の基本

思いを声で表すには、声の出し方の基本も大切です。専門の先生でなくても、こんなことは教室でできます。

  • 姿勢:両足を肩幅に開いて立つ。背中をまっすぐにして、肩の力を抜く
  • 呼吸:お腹に手を当てて、息を吸ったときにお腹がふくらむのを確かめる
  • 口の形:「あ」「お」は、口を縦に開ける。指が縦に二本入るくらい
  • 響き:鼻の奥や頭のてっぺんに、声を響かせるイメージをもつ

毎時間の最初に、2〜3分の発声練習を入れておくと、声の出し方が少しずつ身についていきます。「ハミングで、ふるさとの最初のフレーズを歌ってみよう」。ハミングは、声の響きを感じやすく、のどに負担がかかりにくいので、おすすめです。

第3時の「体で感じる」活動

本文の「フレーズの終わりを、体で感じる」を、いくつかの活動にしておきます。

  • 手を前に出して歌う:フレーズの始めで手を前に出し、フレーズの終わりに向けてゆっくり下ろす。手の動きで、音の流れを感じる
  • 歩きながら歌う:教室の中を、拍に合わせてゆっくり歩きながら歌う。フレーズの終わりで、立ち止まる
  • フレーズの山を見つける:一つのフレーズの中で、一番盛り上がるところを探し、そこで手を一番高く上げる

体を動かしながら歌ったあとに、動かさずにもう一度歌ってみます。「さっきと、何か変わった?」と聞くと、「フレーズの終わりを、ていねいに歌うようになった」「息が続くようになった」と、子どもは自分の声の変化に気づきます。

第4時の歌詞と歌い方

第4時は、1番から3番の歌詞を比べて、歌い方を考える時間です。グループで、こんなワークシートを使います。

  • 1番の歌詞で、心に残った言葉
  • 2番の歌詞で、心に残った言葉
  • 3番の歌詞で、心に残った言葉
  • それぞれ、どんな気持ちで歌いたい?
  • そのために、どんな歌い方をする?(第2時の工夫を使う)

最後の「どんな歌い方をする?」に、第2時で学級の共通の言葉にした工夫を使うことが大事です。「1番は、思い出を楽しそうに、少し明るい声で」「3番は、強い気持ちを込めて、息をたっぷり使って」。思いと、それを表す技能が、一つの文の中でつながります。

板書のイメージ

この題材の板書は、黒板の左に「思い」、右に「声の工夫」を書く欄をつくり、毎時間、両方を書き足していきます。

  • 思い:「やさしく」→ 声の工夫:「小さくてもはっきり、息をたっぷり」
  • 思い:「なつかしく」→ 声の工夫:「ゆっくり、言葉の始めをやわらかく」
  • 思い:「強い気持ち」→ 声の工夫:「口を大きく開けて、響かせる」

この板書は、写真に撮って、毎時間の最初に映します。思いと声の工夫が、少しずつ増えていく様子が見えると、子どもは自分たちが表現の引き出しを増やしていることを実感できます。

つまずきやすいところと手立て

  • 人前で歌うのが恥ずかしい子:最初はグループや全員で歌い、一人で歌う場面はつくらないようにします。歌うことに抵抗がある子には、まず聞いて感じたことを言葉にする役割をお願いするのも一つの方法です。
  • 変声期で声が出しにくい子:6年生には、変声期を迎えている子もいます。無理に高い音を出させず、出しやすい高さで歌っていいこと、一オクターブ下で歌ってもいいことを伝えます。
  • 思いを言葉にするのが苦手な子:言葉の候補をいくつか示して選ばせます。「やさしく」「元気に」「さみしく」「なつかしく」など。選んだあとに、声で試せば十分です。
  • 歌詞の意味が分からない子:昔の言葉を、今の言葉に言いかえた一覧を配っておきます。意味が分かると、思いをもちやすくなります。

評価の目安

音楽の「思考・判断・表現」は、思いをもつことと、それを表す技能が一続きになっているかで見るようにしています。

  • 十分にできている:歌詞や曲の特徴から思いをもち、その思いを表すための声の出し方を工夫して歌っている。工夫した理由を、言葉でも説明できる
  • おおむねできている:思いはもっているが、それを声で表す工夫はまだ十分ではない
  • もう一歩:曲の感じをつかんで、思いをもつことがまだ難しい

歌の上手さそのものは、「技能」として別に見ます。「思考・判断・表現」では、思いと工夫がつながっているかを中心に見ると、歌うことが得意でない子のよさも見えてきます。

よくある質問

Q. 卒業式の練習と、この題材をどうつなげればいいですか?

卒業式で「ふるさと」を歌う学校なら、この題材で考えた「思い」と「声の工夫」を、そのまま練習に生かせます。練習のはじめに、題材で作った板書の写真を映して、「卒業式では、どんな思いで歌いたい?」と、もう一度聞いてみてください。練習が、ただのくり返しではなく、思いを深める時間になります。

Q. 音楽専科の先生がいる学校では、担任は何をすればいいですか?

専科の先生と、学級の子どもの様子を共有するだけでも、授業はずっと深まります。「この子は、最近こんなことに悩んでいる」「学級で、こんな話し合いをした」。子どもの生活と歌の思いがつながるのは、担任だからこそ分かることも多いです。

Q. 歌唱共通教材は、ほかの学年でも同じように扱えますか?

扱えます。どの学年の共通教材でも、「どう歌いたい?」と聞き、その思いを声で試す、という流れは同じです。低学年なら、声の工夫を「大きく・小さく」「速く・ゆっくり」くらいの分かりやすいものにしぼると、思いと声がつながりやすくなります。

Q. 子どもの「思い」が、「元気に」ばかりになります。

曲の感じをつかむ時間を、少し長くとってみてください。「この曲は、元気な曲かな?」と聞き、曲の速さや旋律の動きに目を向けさせます。思いの言葉の候補を、いくつか示すのもいい方法です。

まとめ

  • 審議まとめは、音楽の課題として「思いや意図の言語化に留まり、技能の習得が一体的に行われていない」ことを挙げ、思いをもつことと身体性を伴った技能で表すことを一連の過程として重視する方向
  • 「ふるさと」では、「やさしく」を声で試す、フレーズの終わりを体で感じる、3番までの歌詞の違いを歌い方に
  • 唯一の答えに導かない。「なぜそう歌ったか」を声と言葉の両方で

卒業式で「ふるさと」を歌う6年生の声が、練習の最初と少しでも違って聞こえたら。それが、この授業のゴールなんだと思います。

次回は、最終回。5年生の家庭科「ご飯とみそ汁」です。

参考

  • 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「芸術」p.211〜213、p.215 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」音楽 第5学年及び第6学年 A表現(1)、〔共通事項〕、内容の取扱い(歌唱共通教材「ふるさと」)
  • 関連記事:音楽・図工、芸術の学びはどう変わるか 「心が動く体験」と「身体を通した表現」を真ん中に(連載「次期学習指導要領を読む」)

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