4年生でわり算の筆算を教えていると、必ず出会う子がいます。「たてる」の段階で手が止まる子。72÷8の商が立たない。よく見ると、八の段の九九があやしい。
前に「わり算の筆算でつまずく子にどう教えるか」という記事を書きましたが、根っこはだいたいここです。2年生の九九、3年生のわり算、4年生の筆算。つまずきは、学年をこえてつながっている。
審議まとめは、算数のこの構造について、かなりはっきりと書いています。
審議まとめの「雪だるま式」
審議まとめは、算数・数学について、こう書いています。
算数科・数学科は学習内容の系統性・連続性が極めて強いことから、個々の単元におけるつまずき(学習内容の習得・定着の不徹底)が、その後の学習に大きな支障をもたらし、進学・進級に伴って、学習困難な事項が雪だるま式に増加していく傾向がある。その結果、算数・数学への苦手意識が確固たるものになっていくという構造がある(このことは、学校に通うこと自体の辛さにもつながりうる)。
最後のかっこ書き、「学校に通うこと自体の辛さにもつながりうる」。文部科学省の会議の文書で、ここまで書くのか、と思いました。でも、現場の感覚としては、まったくその通りです。
そして審議まとめは、ある単元を理解するための既習事項の習得状況(レディネス)に関するアセスメントが、教育課程全体の中で十分行われていない、と指摘しています。
九九→わり算→筆算のつながり
具体的に、どうつながっているかを見てみます。
- 2年生:かけ算の意味(1つ分の数×いくつ分)、九九を覚える
- 3年生:わり算の意味(等分除・包含除)、わり算の答えは九九で見つける。あまりのあるわり算
- 4年生:わり算の筆算。「たてる・かける・ひく・おろす」。商の見当をつける
4年生の筆算で手が止まる子は、だいたい次のどこかでつまずいています。
- 九九そのものが、すぐに出てこない(2年生)
- 「72÷8」を「8×□=72」と考えられない(3年生)
- あまりがわる数より小さくなることが分かっていない(3年生)
- 商の見当のつけ方が分からない(4年生)
4年生の先生が「筆算の手順」を何度教えても、1〜3が原因なら、なかなか解決しません。
今の教室でできること
①単元の前に「確かめ」を入れる
わり算の筆算の単元に入る前に、5分の確かめをします。九九を全部の段ではなく、わり算でよく使う段(六〜九の段)を中心に、ランダムに。そして「□×8=72」の形の問題を数問。
これで、「どこに戻ればいいか」が分かります。審議まとめのいう「レディネスのアセスメント」は、こういう小さな確かめのことだと思っています。
②「戻る」は、その子だけに
確かめで九九があやしい子が分かったら、その子だけ、九九に戻ります。全員でやる必要はない。
私は、九九の表を手元に置いて筆算をしてもいい、としています。筆算の手順を学ぶことと、九九を覚えることを、一度切り離す。九九の表を見ながらでも筆算ができれば、筆算の手順は身に付きます。そのうえで、九九は別の時間に少しずつ練習する。
③短く、何度も
審議まとめは、算数の確実な習得のために、「分散学習・検索練習」など認知心理学や学習科学の知見を踏まえた指導が有効だとしています。
九九でいえば、2年生で集中して覚えて終わりではなく、3年生、4年生でも、時々、短く思い出す。朝の会の1分、授業の最初の1分。「今日は七の段、逆から」。これを続けるだけで、九九があやしい子は減っていきます。
学年をこえた「学び直し」
ここからが、次の学習指導要領で変わりそうなところです。
審議まとめは、算数でも、学年区分は引き続き一定示しつつ、学年をこえた指導時期の前倒し・後ろ倒しを認めることで、まとまった時間をつくりやすくし、その時間で「定着に課題のある単元の学び直し」などを実施できる、としています。注として、「同じ問題の繰り返しに留まらないよう留意が必要」とも。
さらに、調整授業時数制度の「学習枠」の例として、「下学年の未習得事項を効果的に学び直すプログラム」が挙がっています。
つまり、4年生の時間の中で、3年生のわり算の学び直しをする。それを、制度として正面からやっていいことになりそうです。今でも、先生方はこっそり(?)やっていると思います。それが「ちゃんと時間をとってやっていいこと」になる。これは大きいです。
気をつけたいこと
学び直しで一番気をつけたいのは、子どもの気持ちです。
4年生が「2年生の九九」をやり直すのは、プライドが傷つきます。「2年生の問題」と言わない。カードやゲームの形にする。全員で「九九タイムアタック」をして、その中で必要な子が練習できるようにする。
審議まとめの「学校に通うこと自体の辛さにもつながりうる」という一文は、逆に言えば、つまずきを早めに拾えれば、その辛さを減らせる、ということでもあります。
まとめ
- 審議まとめは、算数のつまずきが「雪だるま式」に増え、苦手意識や学校の辛さにもつながりうる構造をはっきり書いている
- 九九→わり算→筆算のつまずきは、単元の前の小さな確かめで見つけ、その子だけ戻る。九九の表を使ってもいい
- 次の学習指導要領では、学年をこえた前倒し・後ろ倒しや、学習枠での「学び直し」が制度として示される方向
「筆算ができない」の奥に、「九九があやしい」がある。そこに気づけるかどうかで、その子の4年生は変わります。
算数はここまで。次回からは理科、5年生の「ふりこのきまり」です。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「算数、数学」p.164〜165、p.172〜174 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」算数 第2学年 A数と計算(3)、第3学年 A数と計算(4)、第4学年 A数と計算(3)
- 関連記事:わり算の筆算でつまずく子にどう教えるか 「たてる・かける・ひく・おろす」の前に/調整授業時数制度ってなに?(連載「次期学習指導要領を読む」)


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