#7 「指導と評価の計画」を全単元つくらなくていい 評価のスリム化と形成的評価、そして学年末の評定

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第7回です。評価規準を書き写し、語尾を変えて、評価計画の表を埋める。その作業をしながら、「これは誰のための書類なんだろう」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

審議まとめは、学習評価の手順を「文書を作成するプロセス」から、「育てたい力を目指して、指導と評価を一体的に構想するプロセス」へ切り替える方向を示しています。具体的には、次のようなことが書かれています。

  • 「内容のまとまりごとの評価規準」を各学校で作成することは不要にする
  • 単元の目標を、そのまま評価規準として使うことを前提にする
  • 「指導と評価の計画」という文書づくりではなく、授業の「構想」のプロセスとして示す
  • 学習途中の「形成的評価」を充実させ、そのために「総括的評価」の場面を精選する
  • 評定への総括は学年末のみに行うことが可能だと明確にする

評価の仕事が「書類づくり」になってしまっている。そう感じていた私にとっては、かなり踏み込んだ内容に見えました。


審議まとめが指摘する、今の評価の課題

図1:学習評価の課題と論点(全体像)
図1:学習評価の課題と論点(全体像)。1学期から学年末までの評価の流れの中で、どこに負担や課題があるのかが一枚にまとまっています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.464[資料1-6-1])

評価が「事務負担」になっている

審議まとめは、今の学習評価について、国の評価参考資料が評価の手順を「文書作成プロセス」として示していることも影響して、学習評価が単なる事務負担として捉えられてしまう傾向がある、と書いています。

さらに、評価参考資料の手順について、次のような課題を挙げています。

  • 考慮する要素が多く複雑で、「○○を確認」「○○を作成」といった総括的評価に向けた文言づくりを軸に手順が組み立てられているため、学習指導との関係がイメージしにくい
  • 評価計画の文言の多くが、「学習指導要領から転記」「学習指導要領の語尾を変えて設定」するもので、作業の意義が見いだしにくい
  • 「記録に残す評価」(総括的評価)の手順は具体的に示されているが、「学習や指導の改善に生かす評価」(形成的評価)の重要性や手順は十分に示されていない
  • 一人一台端末やAIの発展を踏まえた評価の進化を、十分に取り込めていない

「学習指導要領の語尾を変えて設定」という一文には、思わずうなずいてしまいました。「〜を理解する」を「〜を理解している」に書き換える作業。みなさんも、何度もしてきたのではないでしょうか。

評価のほとんどが評定に向けて行われている

もう一つの課題は、形成的評価と総括的評価が、まだ十分に区別されていないことです。評価のほとんどが評定に向けて行われ、毎回の授業で複数の観点について記録に残す評価をしている、という実態も指摘されています。

さらに、指導要録は学年末に評定を記載する前提で参考様式が示されているのに、学期ごとに評定を細かく確定して、その後の学習状況にかかわらず変えない扱いが多い、と書かれています。その結果、学期末の通知表づくりは負担が大きい一方で、通知表を受け取った子どもが、うまく学べなかった教科をその後学び直す動機づけは弱い、というのです。


スリム化される作業

では、具体的にどんな作業が軽くなりそうなのでしょうか。

「内容のまとまりごとの評価規準」は学校で作らない

今は、学習指導要領の内容を踏まえて、各学校が「内容のまとまりごとの評価規準」をつくり、そのうえで「単元の評価規準」をつくることになっています。

審議まとめは、「内容のまとまりごとの評価規準」は実質的に学習指導要領の文末を変えてつくるもので、学校がつくる意義に乏しいとしています。国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示し、各学校は単元の評価規準を学習指導要領の内容を踏まえてつくればよい。そのため、各学校による「内容のまとまりごとの評価規準」の作成は不要とすることが適当だ、という方向です。

単元の目標=評価規準

今は、単元の目標と評価規準を別々につくることになっています。でも、評価参考資料の例では、評価規準は単元の目標の語尾を変えてつくるのが基本です(目標「〜を身に付ける」、評価規準「〜を身に付けている」)。

これまで目標と評価規準を分けていたのは、「学びに向かう力」の一部を「主体的に学習に取り組む態度」として抜き出して評価していたことにも理由がありました。でも、前回書いたように「学びに向かう力」は目標に準拠した評価を行わない方向になるので、評価規準をつくるのは「知識・技能」と「思考・判断・表現」だけになります。

そこで、「どんな力を育てるか」と「どんな姿で育ったと判断するか」を一体にしたほうが、指導と評価の一体化につながる。単元の目標はそのまま評価規準として使うことを前提とする、という整理です。

「指導と評価の計画」から「構想」へ

評価参考資料では、どの場面でどんな指導をし、どのように評価材料を集めるかを「指導と評価の計画」として作成することが求められています。

図2:資質・能力の育成に繋がる学習評価のプロセスの再整理(案)
図2:資質・能力の育成に繋がる学習評価のプロセスの再整理(案)。国が示す基準と、各学校で行う手順を分けて、評価のプロセスを整理し直した図です(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.468[資料1-6-5])

これについて審議まとめは、特に小学校では大多数の教師が複数教科を担当していて、同じ授業を繰り返す機会も少なく、全単元について「指導と評価の計画」を作成するのは現実的ではない、という声を紹介しています。そして、それがハードルとなって、かえって意図的・計画的な評価から遠ざかってしまう課題もある、と続けます。

そこで、「指導と評価の計画」という文書の作成自体をプロセスとして示すのではなく、指導と評価にあたって教師が何を意識すべきかという、授業の「構想」のプロセスとして示す。必ずしも計画という文書の形をとらなくても、指導と評価のプロセスを意識できるようにする、という方向です。


充実させたいのは「形成的評価」

形成的評価は「教師の専門性の中核」

作業が減るのはありがたいけれど、それで評価がおろそかになっては困りますよね。スリム化で生まれた余白を、何に使うのか。審議まとめが充実させたいとしているのが、「形成的評価」です。

学習の途中で適切に見取ってフィードバックし、指導の調整と学習の調整を促す。審議まとめは、形成的評価の充実は、これまでと質的に違う新しい取組を求めるものではなく、子ども一人一人の「目標と現在地の差分」を見取り、必要な調整を促したり助言を与えたりする「教師の専門性の『中核』」とも言えるものだ、と書いています。

この言葉には、少し励まされる思いがしました。机間指導で子どものノートをのぞき込み、「ここまでできてるね。じゃあ、次はこうしてみようか」と声をかける。私たちが毎日やっているあの営みこそが、評価の中心なのだと言ってもらえたように感じたからです。

そのために、総括的評価の場面を精選する

ただし、総括的評価がほとんどを占め、学期ごとに評定を出す学校が多い中で、形成的評価だけを増やそうとすれば負担が大きくなります。だからこそ、単元を見通して総括的評価の場面を一層精選する必要がある、とされています。

毎時間、全員について記録を残すのではなく、記録に残す場面は単元の中で絞る。その代わり、学習の途中では、子どもを見て声をかけることに力を注ぐ。評価の重心を移す、ということです。


評定は「学年末のみ」でもいい

学期中は形成的評価を中心に

「通知表の評定は、毎学期つけなければいけないもの」。そう思い込んでいた方も多いのではないでしょうか。私もそうでした。審議まとめは、評定への総括は学年末のみに行うことが可能であることを明確に示し、その場合は学期中は形成的評価を中心に行うことを促すなど、評価の役割分担を明確にすべきだ、としています。

また、今の学習指導要領解説には、総括的な評価と形成的な評価の役割分担について明示的な記載がないため、教師が学習途中の見取りとフィードバックの必要性を認識しづらい、という指摘もあります。改訂にあたっては、解説で総括的な評価の頻度の見直しと、形成的評価の計画的な位置付けを明確にすべきだ、とされています。

通知表をどうするかは、学校の判断

ここで気をつけたいのは、通知表は法定の文書ではなく、各学校の判断でつくっているものだという点です。学期ごとに評定を載せるかどうかも、学校や地域の判断になります。審議まとめの方向性は、「学年末のみでもよい」と明確にすることで、学校が通知表の在り方を見直しやすくするもの、と受け取るのがよさそうです。


新しい評価のプロセス

審議まとめは、学習評価のプロセスを、次のような流れで描き直すことを示しています。

  1. 何を身に付けさせたいかを明確にする(目標と評価規準の設定)
  2. 身に付けさせたい力の発揮を見取り、その水準を判断できる課題を考える(評価課題のデザイン)
  3. 評価課題に向けて、力を身に付け発揮しやすい学習活動を組み立てる(学習過程のデザイン)
  4. 目指したい姿と現状の差分を学習途中で見取り、適切なフィードバックの方法を考える(形成的評価の計画的な実施)
  5. 学習活動を展開する(授業の実施)
  6. 学習成果を観点別評価・評定へ総括する(総括的評価)

第4回で書いた「単元の最後の課題から考える」授業づくりと、ぴったり重なる流れです。

ただし、このプロセスをすべて学習指導要領本体に書くと、指導や評価のやり方が画一化・硬直化するおそれがあるので、本体には基本的な考え方だけを示し、具体的なことは解説や評価参考資料に書く、とされています。


小学校の担任にとって、何がいちばん変わりそうか

ここまでの内容を、小学校の担任の一年の流れに当てはめてみます。あくまで、審議まとめの方向性どおりに進んだ場合の想像です。

年度初め:評価規準づくりの作業が軽くなる

年度初めや単元前に、学習指導要領の語尾を書き換えて評価規準をつくる作業は、かなり軽くなりそうです。「内容のまとまりごとの評価規準」は国が例を示し、単元の目標はそのまま評価規準として使う。その分、「この単元の最後に、子どもにどんな課題に取り組んでほしいか」を考えることに時間を使えます。

学期中:記録よりも「見て、声をかける」

学期中は、毎時間の記録に追われるのではなく、記録に残す評価の場面を単元の中で絞り、途中の時間は形成的評価に力を注ぐ。学年末にのみ評定を出す運用にした学校であれば、学期中はなおさら、子どもの「次の一歩」のための評価に集中しやすくなります。

学期末:通知表の在り方を学校で考え直すきっかけに

通知表は学校の判断でつくっているものです。学期ごとに評定を載せるのか、学期中は学習の様子や次の目標を中心に伝えるのか。審議まとめの方向性は、学校がこの問いを考え直すきっかけになると思います。

ICTやAIの活用も視野に

審議まとめは、今の評価の手順が、一人一台端末の普及やAIの発展を踏まえた評価の進化を十分に織り込めていない、とも指摘しています。たとえば、子どもの学習の記録がクラウド上に蓄積されていれば、形成的評価のための見取りは今よりずっと楽になるはずです。具体的な方法はこれから示されることになりますが、評価の道具も変わっていく可能性があります。


今からできること

1. 記録に残す評価の場面を、単元で2〜3か所に絞ってみる

いきなり全部の教科でやるのは難しいので、私はまず一つの教科、一つの単元で、記録に残す評価の場面を絞ってみようと思っています。その分、途中の時間は「見て、声をかける」ことに集中する。

2. 「差分」を伝える声かけを意識する

形成的評価のフィードバックは、「よくできたね」で終わってしまいがちですよね。私もそうです。「目標まであと何が足りないか」まで伝えられるとよさそうです。「ここまではできているね。あとは、理由を一つ書けたらばっちりだよ」のように、現在地と目標の間を具体的に示す声かけを意識してみたいと思います。

3. 学年や学校で「評価のための作業」を棚卸しする

学年会や校内研修で、「この評価の作業は、子どもの学びにつながっているか」を話し合ってみる。審議まとめの方向性は、その話し合いの根拠になります。


気になるところもあります

一方で、評価の手順がシンプルになると、かえって「何をどこまでやればいいのか」が分かりにくくなる面もあると思います。細かい手順があったからこそ、迷わずにすんでいた部分もあるからです。

審議まとめも、意義の乏しい取組をスリム化したうえで、子どもの力を育てるプロセスをより丁寧に描いていく必要がある、としています。手順の代わりに求められるのは、教師一人一人の「構想する力」です。その力を、学年や学校でどう育てていくかが、これからの課題になりそうです。


おわりに 評価を、子どもの「次の一歩」のために

評価という言葉を聞くと、どうしても通知表や評定を思い浮かべてしまいます。でも、審議まとめが目指しているのは、評価を「子どもの次の一歩」のために使うことだと思います。

通知表を受け取った子どもが、「ここが苦手だったから、もう一度やってみよう」と思えるような評価。学習の途中で、「あとこれができればいいんだ」と分かるような評価。そのために、書類の作業を減らし、子どもを見る時間を増やす。今回の方向性は、評価を本来の姿に戻そうとするものなのだと感じました。

次回からは「時間と余白」がテーマです。第8回は小さな呟きとして、「余白」という言葉について書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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