「では、グループで話し合いましょう」。授業の中で、何度も口にする言葉です。でも、この一言のあと、教室が静かになってしまったり、一人の子だけが話して終わったり、関係のないおしゃべりになったりした経験は、多くの先生にあると思います。
なぜ、うまくいかないのでしょうか。理由の一つは、「話し合い」という言葉が、とても広い意味をもっていることにあります。何かを決めるために話すのか、意見を戦わせるために話すのか、互いの考えを聞き合うために話すのか。目的が違えば、話し方も、聞き方も、終わり方も違ってきます。
この記事では、「話し合い」「討論」「対話」の三つの言葉を中心に、「会話」「議論」「ディベート」「協議」も含めて、話す活動の言葉の定義を整理します。
それぞれの言葉の定義
「会話」とは
まず、すべての土台になる「会話」から。
会話は、二人以上の人が、互いに話したり聞いたりする、日常のやりとりのことです。「おはよう」「昨日のテレビ見た?」「うん、見た見た」。目的がはっきりしていなくても、成り立つのが会話です。
「話し合い」とは
話し合いは、複数の人が、ある目的のために、意見や考えを出し合うことです。
会話との違いは、目的があることです。何かを決める、考えを広げる、問題を解決する。目的に向かって、それぞれが意見を出し合うのが話し合いです。
話し合いは、とても広い言葉です。学級会でお楽しみ会の内容を決めるのも話し合い、国語の時間に物語の読みを出し合うのも話し合い、グループで実験の結果について考えるのも話し合いです。この広さが、「話し合いましょう」と言われたときに、子どもが何をすればいいか分からなくなる理由でもあります。
「討論」とは
討論は、ある問題について、異なる立場や意見をもつ人どうしが、根拠をもとに意見を述べ合い、考えを深めたり、よりよい結論を探したりすることです。
討論の特徴は、立場の違いがはっきりしていることです。「賛成か反対か」「AかBか」というように、考えが分かれている問題について、それぞれの立場から意見を述べ、相手の意見に反論したり、質問したりします。
討論では、相手の意見のよいところを認めつつも、自分の立場からの意見をはっきり述べます。意見のぶつかり合いを通して、問題をいろいろな面から考えることができるのが、討論のよさです。
「ディベート」とは
ディベートは、討論の一つの形で、あるテーマについて、肯定側と否定側に分かれ、決められたルールにしたがって意見を述べ合い、第三者(審判)がどちらの議論が説得力があったかを判定するものです。
ディベートの特徴は、自分の本当の考えとは関係なく、立場が決められることです。本当は賛成の人が、否定側になることもあります。そのため、自分の考えにとらわれず、ある立場から筋道を立てて考える練習になります。
「対話」とは
対話は、互いの考えを伝え合い、聞き合うことを通して、相手を理解し、自分の考えを広げたり深めたりすることです。
対話の特徴は、勝ち負けや、正解を決めることが目的ではないことです。相手がどう考えているのか、なぜそう考えるのかを知り、自分の考えと比べる。その中で、自分一人では気づかなかったことに気づき、考えが変わったり、深まったりする。それが対話です。
討論が「どちらがよいか」を考えるものだとしたら、対話は「互いの考えから何が見えてくるか」を考えるもの、と言えるかもしれません。
「議論」と「協議」
ほかにも、似た言葉があります。
議論は、互いに意見を述べ合って、論じ合うことです。討論とほぼ同じ意味で使われますが、立場が二つに分かれていない場合にも使われます。
協議は、関係する人が集まって、相談して物事を決めることです。学校では、研究授業のあとの「協議会」のように、大人どうしの話し合いの場で使われることが多い言葉です。
並べてみると
| 言葉 | ひと言でいうと | 目的 | 終わり方 |
|---|---|---|---|
| 会話 | 日常のやりとり | ―(目的がなくてもよい) | 自然に終わる |
| 話し合い | 目的のために意見を出し合う | 決める・広げる・解決する | 目的によって違う |
| 討論 | 立場を分けて、根拠をもとに意見を述べ合う | 考えを深める、よりよい結論を探す | 結論が出ることも、出ないことも |
| ディベート | 立場を決めて、ルールにしたがって議論し、判定する | 論理的に考える練習 | 審判が判定する |
| 対話 | 考えを伝え合い、聞き合って、理解し、広げ深める | 理解する、考えを広げ深める | 一人一人の考えが変わる |
| 協議 | 相談して物事を決める | 決める | 結論を出す |
話し合いは、ほかの言葉をまとめる大きな言葉で、その中に、決める話し合い(協議)、立場を分けて考える話し合い(討論)、考えを広げる話し合い(対話)がある、と考えると整理しやすいと思います。
学習指導要領ではどう扱われているか
小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語「話すこと・聞くこと」では、話し合うことについて、学年ごとに次のように示されています。
- 第1学年及び第2学年:「互いの話に関心をもち、相手の発言を受けて話をつなぐこと」
- 第3学年及び第4学年:「目的や進め方を確認し、司会などの役割を果たしながら話し合い、互いの意見の共通点や相違点に着目して、考えをまとめること」
- 第5学年及び第6学年:「互いの立場や意図を明確にしながら計画的に話し合い、考えを広げたりまとめたりすること」
低学年では、相手の話を受けて話をつなぐこと。中学年では、目的や進め方を確認し、共通点や相違点に着目して考えをまとめること。高学年では、立場や意図を明確にしながら、考えを広げたりまとめたりすること。
学年が上がるにつれて、話し合いの目的を意識し、立場の違いを明確にしながら話し合うことが求められていきます。
また、「主体的・対話的で深い学び」の「対話的な学び」について、平成28年の中央教育審議会の答申では、子ども同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手がかりに考えることなどを通じて、自己の考えを広げ深める学びとして説明されています。ここでの「対話」は、友達との話し合いだけでなく、本や資料を通して先人の考えにふれることも含む、広い意味で使われています。
「話し合いましょう」で止まる理由
ここで、最初の問いに戻ります。「話し合いましょう」と言っても、子どもが話し始めないのは、なぜでしょうか。
目的が分からない
いちばん大きな理由は、何のために話し合うのかが分からないことです。
決めるために話すのか、考えを出し合うだけでいいのか、どちらがよいかを考えるのか。目的が分からないと、子どもは何を話せばいいのか、いつ終わればいいのかが分かりません。
話す材料がない
二つ目の理由は、話す材料をもっていないことです。
自分の考えをもたないまま話し合いに入っても、話すことがありません。「何かある人?」と聞かれても、何も出てこない。グループの中で、考えをもっている子だけが話して、ほかの子は聞いているだけになってしまいます。
終わり方が分からない
三つ目の理由は、どうなったら終わりなのかが分からないことです。
一つに決めるのか、考えを全部出せばいいのか、時間が来たら終わりなのか。終わり方が分からないと、話し合いはだらだら続くか、すぐに「終わりました」と言って止まってしまいます。
目的に合わせて言葉を変える
そこで、「話し合いましょう」と言う代わりに、目的に合わせて言葉を変えてみることをおすすめします。
決めるとき
「グループで、一つに決めましょう。決めたら、理由も言えるようにしてください。時間は5分です」
決める話し合いでは、最後に一つに決まることを、はっきり伝えます。決め方(多数決なのか、話し合って納得するまでなのか)も、先に伝えておくと、話し合いがスムーズに進みます。
学級会のように、学級のことを決める話し合いでは、少数の意見も大事にしながら、みんなが納得できる結論を探すことが大事です。学級のルールを子どもと決める話し合いについては、「『きまり』『ルール』『約束』はどう違う?」にも書きました。
考えを広げるとき(対話)
「自分の考えを、一人ずつ伝えましょう。聞いた人は、『なるほど』と思ったところを一つ見つけてください。一つに決めなくていいです」
対話では、一つに決めなくていいことを伝えます。目的は、互いの考えを知ることと、自分の考えを広げることです。最後に、「友達の考えを聞いて、自分の考えが変わったり、増えたりしたことはあるかな」と振り返ると、対話の意味が子どもに見えてきます。
立場を分けて考えるとき(討論)
「AとBのどちらがよいと思うか、自分の立場を決めましょう。違う立場の人に、理由を伝えて、相手の理由も聞きましょう。最後に、もう一度自分の立場を決め直してもいいです」
討論では、立場をはっきりさせること、そして理由(根拠)をもとに話すことを伝えます。最後に立場を決め直してもいい、と伝えておくと、子どもは相手の意見をよく聞くようになります。相手の意見を聞いて考えが変わるのは、負けではなく、考えが深まったしるしです。
聞き方も、目的で変わる
話し合いというと、話すことばかりに目が向きがちですが、実は、聞き方も目的によって変わります。
決める話し合いでは、聞くときに、「それぞれの案のよいところと心配なところ」を聞き取ります。どの案に決めるかを考えるための材料を集める聞き方です。メモをとるなら、案ごとに「よいところ」「心配なところ」を分けて書くと、あとで比べやすくなります。
対話では、聞くときに、「自分と同じところ、違うところ」を聞き取ります。相手の考えを理解し、自分の考えと比べるための聞き方です。「なるほど」と思ったところ、「どうしてそう考えたのかな」と思ったところを、心の中で、またはメモで残しておきます。そして、聞いたあとに、「どうしてそう考えたの?」と質問すると、対話が深まります。
討論では、聞くときに、「相手の理由(根拠)は何か、それは確かか」を聞き取ります。相手の意見に反論したり、質問したりするための聞き方です。相手の理由が事実なのか、感想なのかを聞き分けることも大事です。このことについては、「『事実』『意見』『感想』はどう違う?」にも書いています。
話し合いの前に、「今日は、こんなふうに聞きましょう」と、聞き方も伝えておくと、子どもは話し合いの中で何に注意すればいいかが分かります。話す人と聞く人の両方が目的を分かっていると、話し合いはかみ合うようになります。
話し合いの前にすること
どの話し合いでも、始める前にしておきたいことがあります。
一人で考える時間をとることです。ノートに自分の考えを書く、付箋に意見を書く、立場を決めて理由をメモする。話し合いの前に、一人一人が話す材料をもっておくことで、全員が話し合いに参加できるようになります。
一人で考える時間は、長くなくてかまいません。2〜3分でも、考えを書いておくだけで、話し合いの質は大きく変わります。
よくある質問
低学年でも、討論はできますか?
低学年では、立場を分けて意見をぶつけ合う討論は難しいことが多いです。まずは、相手の話を受けて話をつなぐ練習から始めます。「〇〇さんと同じで」「〇〇さんに付け足しで」のような話型を使うと、低学年の子どもも、友達の話を受けて話すことができるようになります。
ディベートは、小学校でもやったほうがいいですか?
高学年で、ルールを分かりやすくしたディベートに取り組む学校もあります。自分の考えとは関係なく、ある立場から筋道を立てて考える練習になるので、論理的に考える力を育てるのに役立ちます。ただ、勝ち負けにこだわりすぎると、相手を言い負かすことが目的になってしまうので、振り返りで「相手の意見から学んだこと」を書かせるなど、工夫が必要です。
話し合いで、いつも同じ子ばかり話します。どうすればいいですか?
話す順番を決める、一人が話す時間を決める、付箋に書いて出す、といった方法があります。また、話し合いの前に一人で考える時間をとると、話すのが苦手な子も、書いたものを読むことで参加しやすくなります。
話し合いのあと、何を振り返らせればいいですか?
目的によって振り返ることを変えます。決める話し合いなら「みんなが納得できる決め方だったか」、対話なら「友達の考えを聞いて、自分の考えはどう変わったか」、討論なら「相手の意見で、なるほどと思った理由は何か」。話し合いの中身だけでなく、話し合い方も振り返らせると、次の話し合いがよくなっていきます。一言でもいいので、毎回書かせてみてください。
まとめ
会話は、日常のやりとり。
話し合いは、目的のために意見を出し合うこと。広い言葉で、その中にいろいろな種類がある。
討論は、立場を分けて、根拠をもとに意見を述べ合い、考えを深めること。ディベートはその一つの形。
対話は、互いの考えを伝え合い、聞き合って、理解し、考えを広げ深めること。
「話し合いましょう」で教室が止まるときは、目的、材料、終わり方のどれかが足りていません。決めるのか、広げるのか、立場を分けて考えるのか。目的を先に言葉にするだけで、子どもの話し合いは、ぐっと動き出します。


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