2年生の生活科、「町たんけん」。学校の周りのお店や公園、公共施設に、グループで出かけて、見て、聞いて、発見したことを伝え合う。子どもたちが一番楽しみにしている単元の一つじゃないでしょうか。
そして、先生にとっては、一番準備が大変な単元の一つでもあります。お店への依頼、引率の保護者ボランティアの募集、ルートの下見、安全確認…。正直、「教科書の写真で済ませられたら」と思ったこともあります。
審議まとめは、この「大変さ」も含めて、町たんけんのような活動について書いています。
審議まとめが書いている課題
審議まとめは、生活科の課題として、こんなことを挙げています。
- 安全面への配慮や時間的制約から地域に出かける活動が減り、地域の人々、社会及び自然を一体的に扱う学習が難しくなっている
- その結果、子どもの思いや願いに基づく必然性のある学習活動を展開しにくい
- デジタル技術の進展で、仮想空間での活動ばかりが増えがちな中、身近な人々、社会及び自然との関わりをリアルに認識することが、これまで以上に求められている。しかし、学校内外で直接体験の機会が減少している
そして、生活科の本質的意義として、「身体性」「対象と自分との関わり」「他者と自分との関わり」「自己認識」の4つを挙げています。「他者と自分との関わり」の説明には、関わる対象を身近な人から地域・社会へと広げる、とあります。
町たんけんは、この4つが全部入っている単元です。
「行く」ことの意味
なぜ、教科書の写真ではなく、実際に行くのか。
パン屋さんの写真を見ても、焼きたてのにおいはしません。消防署の写真を見ても、消防車の大きさは分からない。お店の人に「何時に起きるんですか?」と聞いて、「朝4時だよ」と言われたときの、子どもの「えーっ!」。あれは、本物の人と話したからこそ出る声です。
審議まとめの「身体性」の説明、「見る、聞く、触れる、嗅ぐなどの諸感覚を通して対象を捉えるとともに、直接的な関わりによって実感的な認識が得られるようにする」。町たんけんは、まさにこれです。
「一回行って終わり」にしない
町たんけんで一番もったいないのは、一回行って終わることだと思っています。
一回目のたんけんは、だいたい「見て回る」で終わります。「パン屋さんがあった」「公園があった」。それはそれで大事です。でも、気づきは浅い。
二回目に行くとき、子どもは「問い」を持って行けます。「パン屋さんは、何時に起きるの?」「どうしてこのお店は、この場所にあるの?」。二回目は、問いに答えてもらう時間になる。
三回目に、自分たちが発見したことを、お店の人に伝えに行けたら、それはもう、地域との「関わり」です。
審議まとめの「自分が動くと対象となる身近な物事が変わる」という言葉。町たんけんでいえば、自分たちが何度も行くことで、お店の人が自分たちのことを覚えてくれる、名前を呼んでくれる。そういう変化も、子どもにとっての大きな学びです。
安全と準備の負担をどうするか
とはいえ、何度も行くのは大変です。少しでも負担を減らす工夫を考えてみます。
行き先を絞る
学区全体を回るのではなく、学校から歩いて10分以内の数か所に絞る。同じ場所に何度も行く方が、気づきは深まります。
協力先の情報を引き継ぐ
前の社会科の記事(本連載#21)でも書きましたが、協力してくれたお店や施設の情報を、学年で引き継ぐ。去年の2年生がお世話になったお店に、今年も頼めれば、依頼の手間はずいぶん減ります。
保護者や地域の方の力を借りる
引率の人数は、安全のために必要です。保護者ボランティアや、地域の見守りの方に協力をお願いする。学校運営協議会(コミュニティ・スクール)がある学校なら、そこで相談するのも一つの方法です。
3年生の社会科とつなげる
審議まとめは、生活科と中学年以降の社会科・理科・総合とのつながりについて、接続を意識した指導計画が「不十分な学校もある」と課題を挙げています。そして、生活科の活動ごとに、活用・発揮される各教科等の資質・能力を整理した単元設計を促す、としています。
町たんけんは、3年生の社会科「わたしたちのまち」「市の様子」の、直接の前段です。2年生で「好き」「面白い」で関わった町を、3年生では「地図」「土地の使われ方」「働く人」の目で見る。
私なら、2年生の町たんけんでつくった「たんけんマップ」を、3年生の担任に渡します。3年生の最初の社会科で、「2年生のときのたんけんマップを見てみよう。どこに何があった?」から始められる。子どもにとっても、自分の体験から始まる社会科になります。
単元計画のイメージ
「一回行って終わり」にせず、三回の町たんけんをつなげた単元計画です。学校や地域によって時数や行き先がちがうので、ここでは20時間ほどの目安で書いています。
| 段階 | 時 | 主な学習 | 中心の問い |
|---|---|---|---|
| 思いをもつ | 1〜2 | 学校の周りで知っている場所を出し合い、地図にする | 学校の周りには、どんな場所がある? |
| 計画する | 3〜4 | 一回目のたんけんの行き先とルール、持ち物を決める | どこに行って、何を見てくる? |
| 一回目 | 5〜6 | 町たんけん(見て回る) | どんなものを見つけた? |
| 伝え合う | 7〜8 | 見つけたことを伝え合い、たんけんマップにかき込む | 友達は、何を見つけた? |
| 問いをもつ | 9 | もっと知りたいことを決め、質問を考える | 次に行ったら、何を聞きたい? |
| 二回目 | 10〜11 | 町たんけん(質問をして、話を聞く) | お店の人は、どんな工夫をしている? |
| まとめる | 12〜14 | 分かったことを、絵や文、動作でまとめる | 一番伝えたいことは何? |
| 三回目 | 15〜16 | 発見したことを、お店や施設の人に伝えに行く | お世話になった人に、何を伝えたい? |
| 発表する | 17〜18 | おうちの人や1年生に、町のすてきを発表する | 町のすてきは、うまく伝わった? |
| ふり返る | 19〜20 | 単元をふり返り、自分の成長を考える | たんけんをして、自分はどう変わった? |
二回目と三回目のたんけんは、全員で同じ場所に行かなくてもかまいません。グループごとに、自分たちが詳しく知りたい場所を一つ決めて、そこだけに行く。行き先を絞ると、引率の負担も少し軽くなります。
一回目のたんけんの前に
一回目のたんけんの前に、子どもと一緒に決めておきたいことがあります。
たんけんのルール
- グループで行動し、一人にならない
- 道路を渡るときは、引率の大人と一緒に
- お店の中では、走らない、さわらない
- あいさつをする(「こんにちは」「ありがとうございました」)
ルールは、先生が一方的に伝えるより、「どうして、このルールが大事だと思う?」と子どもに考えさせると、守ろうとする気持ちが強くなります。
持ち物
- たんけんカード(バインダーにはさむ)
- 鉛筆
- 学校の端末(写真を撮る場合。撮影のルールを事前に確かめる)
見る観点
一回目は、「見つけたもの」を自由に記録させます。ただ、観点が何もないと、「お店があった」で終わってしまうので、一つだけ観点を示します。「見て、聞いて、においをかいで、気づいたことを一つ書こう」。生活科の「身体性」を、たんけんの最初から意識させます。
二回目のたんけんの質問づくり
二回目のたんけんで聞く質問は、第9時に、グループで考えます。2年生が考える質問は、最初はこんなものが多いです。
- 「何を売っていますか?」
- 「何時に開きますか?」
- 「楽しいですか?」
こうした質問は、どれも素直で大切な質問です。ただ、一回目のたんけんで見たことをもとにすると、もっと深い質問が生まれます。先生の声かけの例を挙げておきます。
- 「一回目に行ったとき、『どうしてだろう?』と思ったことはある?」
- 「お店の人は、どんなことに気をつけて仕事をしていると思う?」
- 「お店の人に、ありがとうって言いたいことはある?」
こうした声かけで、子どもからはこんな質問が出てきます。
- 「どうして、朝早くからパンを焼くんですか?」
- 「お店の前のお花は、誰が育てているんですか?」
- 「一番うれしいのは、どんなときですか?」
質問は、事前にお店や施設に伝えておくと、お店の人が答えを準備してくださることがあります。忙しい時間帯を避けて、訪問する時間も相談しておきます。
三回目の「伝えに行く」
三回目のたんけんは、自分たちが発見したことを、お世話になった人に伝えに行く時間です。伝え方は、子どもたちが選びます。
- 絵とことばのカードを渡す
- お店の人に、分かったことを発表する
- お店の様子を絵にしたポスターをプレゼントする
- お礼の手紙を読む
この三回目があると、たんけんが「見に行く」だけでなく、「関わる」活動になります。お店の人から「ありがとう。お店に飾っておくね」と言われると、子どもは本当にうれしそうな顔をします。自分たちの行動で、町の人の気持ちが動く。審議まとめのいう「自分が動くと、身近な物事が変わる」という経験は、こういう瞬間にあると思っています。
たんけんマップの作り方
第7〜8時のたんけんマップは、模造紙に、学校を真ん中にした簡単な地図をかいておき、子どもが見つけたことを付箋やカードで貼っていく形にします。
- 場所の名前は、先生があらかじめ書いておく
- 見つけたことは、子どもがカードに書いて貼る
- カードの色を、感覚で分ける(見た:青、聞いた:黄色、におった:ピンク、さわった:緑など)
カードの色を感覚で分けると、「パン屋さんの周りは、ピンクのカードが多い(いいにおい)」「公園の周りは、黄色のカードが多い(鳥の声や子どもの声)」と、場所ごとの特徴が見えてきます。
このマップは、単元が終わったら写真に撮って、3年生の担任に引き継ぎます。本文で書いたように、3年生の社会科の最初に、2年生のときのたんけんマップから始められると、子どもは自分たちの体験をもとに、地図の学習に入っていけます。
保護者ボランティアへのお願いの仕方
町たんけんの引率をお願いする保護者ボランティアには、事前に簡単な説明の紙を渡しておくと、安心して協力していただけます。
- 当日の流れ:集合時間、ルート、訪問先、解散時間
- お願いしたいこと:安全の見守り、グループからはなれないように声をかける
- お願いしないこと:子どもの代わりに質問したり、答えを教えたりしないこと
- 困ったときの連絡先:担任や学校の連絡方法
三つ目の「お願いしないこと」は、ぜひ伝えておきたいところです。保護者の方は、子どもが困っていると、つい助けたくなります。でも、子どもが自分で聞く、自分で考える時間を大事にしたい。「見守ってください」と一言伝えるだけで、子どもの活動がずいぶん変わります。
【配慮:保護者ボランティアの協力が得られにくい家庭や地域もある。学校全体の支援体制や、地域の見守りボランティアの協力も検討する】
つまずきやすいところと手立て
- お店の人に話しかけられない子:グループで、質問する人の順番を決めておきます。最初に話す子は、話すことが得意な子に任せ、二番目、三番目と続けると、緊張している子も話しやすくなります。
- 見つけたことを書けない子:その場で書かなくても、学校に帰ってから思い出して書けばいいことにします。端末で撮った写真を見ながら書くと、思い出しやすくなります。
- たんけんの途中で、ほかのことに夢中になる子:「今日は、何を見つけに来たんだっけ?」と、目的を思い出させます。ただし、目的以外のことに夢中になって見つけた発見も、大事な気づきです。帰ってから、その発見も聞いてあげてください。
- 安全面で心配な子:引率の大人と一緒に行動するよう、事前にグループ分けを工夫します。
評価の目安
生活科の町たんけんの評価は、「気づき」の質と、町の人との関わりを中心に見ます。
- 気づきが深まっている:町の人の仕事の工夫や、町の人と自分との関わりに気づき、それを自分の言葉で表している。三回目のたんけんで、お世話になった人に感謝の気持ちを伝えようとしている
- 気づいている:町の様子や、見つけたものについて、絵や言葉で表している
- まだ気づきが少ない:たんけんには参加しているが、気づいたことを表すことが難しい
「まだ気づきが少ない」子は、たんけんの最中には、目を輝かせていることが多いです。表すのが苦手なだけかもしれません。帰り道に「何が一番楽しかった?」と、話を聞いてみてください。話してくれたことを、先生が代わりにカードに書いてあげるのも、一つの方法です。
よくある質問
Q. お店に何度も行くと、迷惑になりませんか?
事前に、三回訪問したいことを伝えて、了解をいただいておきます。訪問の時間は、お店が忙しくない時間を相談して決めます。三回目に、子どもたちがお礼を伝えに行くと、お店の方も喜んでくださることが多いです。
Q. 雨の日は、どうすればいいですか?
雨の日の予備日を、最初から計画に入れておきます。予備日も雨だった場合は、お店の方に学校に来ていただいて、お話を聞く形に切りかえることもあります。
Q. 1年生との交流と、町たんけんをどうつなげますか?
町たんけんで見つけたことを、1年生に発表する活動にすると、2年生は「1年生にも分かるように伝えるには?」を考えるようになります。来年、1年生が2年生になって町たんけんをするとき、先輩の発表を思い出して、たんけんの見通しをもちやすくなります。
Q. 気づきを、どうやって深めればいいですか?
たんけんから帰ってきたら、見つけたことを伝え合う時間を必ずとります。友達の発見を聞くと、「ぼくも同じものを見たけど、気づかなかった」「次は、そこを見てみたい」と、自分の気づきが広がります。伝え合う時間が、次のたんけんの問いを生み出します。
まとめ
- 審議まとめは、安全や時間の制約で地域に出かける活動が減り、直接体験の機会が減っていることを生活科の課題として挙げている
- 町たんけんは、身体性・対象との関わり・他者との関わり・自己認識の4つが全部入った単元。一回で終わらせず、問いを持って二回目、伝えに三回目
- 行き先を絞る、協力先を引き継ぐ、地域の力を借りる。たんけんマップは3年生の社会科へ渡す
正直、町たんけんの準備は大変です。でも、子どもが「また行きたい!」と言う単元は、そう多くありません。その声は、大事にしたいと思っています。
次回は、外国語活動。4年生の Let’s Try! 2 から、「伝えたいことを伝える」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「生活」p.199〜201、p.205 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」生活 第1学年及び第2学年 内容(3)
- 関連記事:3年社会「昔の道具」は、郷土資料館に行ってこそ(本連載#21)


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