4月。新しい学級が始まると、まず決めることがたくさんあります。朝の会の進め方、給食の配り方、休み時間の過ごし方、提出物の出し方。
そのとき、先生は何と言って子どもに伝えているでしょうか。「このクラスのきまりです」「ルールを決めましょう」「先生との約束です」。どれも、よく使う言い方です。
実は、この三つの言葉は、似ているようで、子どもに伝わる意味が少しずつ違います。どの言葉を選ぶかで、子どもがそれを「守らされるもの」と受け取るか、「自分たちで決めたもの」と受け取るかが変わってきます。
この記事では、「きまり」「ルール」「約束」に、「規則」「校則」も加えて、学級経営で使う言葉の定義を整理します。
それぞれの言葉の定義
「きまり」とは
きまりは、集団の中で、みんなが守ることとして決められている事柄です。
学校のきまり、学年のきまり、図書室のきまり、廊下を歩くきまり。きまりは、その集団に入った人が、従うことを前提にしているものです。誰が決めたかは、あまり意識されません。「そういうことになっている」というものが、きまりです。
道徳の学習指導要領にも、「きまり」という言葉が出てきます。内容項目の「規則の尊重」では、低学年で「約束やきまりを守り、みんなが使う物を大切にすること」、中学年で「約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守ること」、高学年で「法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを守り、自他の権利を大切にし、義務を果たすこと」が示されています。
学年が上がるにつれて、「守る」から「意義を理解して守る」へ、さらに「理解した上で進んで守り、権利と義務を考える」へと進んでいくのが分かります。きまりは、ただ守らせるものではなく、なぜあるのかを理解していくものとして扱われているわけです。
「ルール」とは
ルールは、活動や集団をうまく進めるために、参加する人が守ることとして決めた取り決めです。
英語の rule から来た言葉で、日本語では、ゲームやスポーツの決まりごとを指すときによく使われます。サッカーのルール、ドッジボールのルール、カードゲームのルール。
ルールという言葉には、参加する人が合意して決めるもの、そして必要があれば変えられるもの、という感じが含まれています。ドッジボールで、外野が強すぎて試合にならないなら、「外野からは顔をねらわない」とルールを足したり、「元外野は2回当てたら内野に戻れる」と変えたりします。ルールは、みんなが楽しく、うまく活動するための道具だと言えます。
「約束」とは
約束は、人と人との間で、お互いに「こうする」と取り決めることです。
「明日、いっしょに遊ぼうね」という友達との約束。「宿題を出したら、ゲームをしていい」という家の人との約束。約束には、必ず相手がいます。そして、約束した人同士の信頼でなりたっています。
学校で「先生との約束」と言うとき、そこには「先生とあなたの間の取り決め」という意味が入ります。守ったかどうかは、ルール違反というより、「約束を守らなかった」という、相手との信頼の問題として受け取られやすくなります。
「規則」と「校則」
ついでに、「規則」と「校則」も整理しておきます。
規則は、集団の秩序を守るために、文章などではっきりと定められた決まりです。きまりよりも、かたく、正式な感じのする言葉です。法律や条例、会社の就業規則なども規則の仲間です。
校則は、学校が定めている、児童生徒が守るべき規則です。服装、登下校、持ち物などについて決められていることが多いです。校則については、近年、その内容や決め方を見直す動きが各地で進んでいます。文部科学省の「生徒指導提要」(令和4年改訂)でも、校則の意義や必要性について、児童生徒や保護者と共通理解を図ることや、必要に応じて見直すことの大切さが書かれています。
並べてみると
| 言葉 | ひと言でいうと | 決めるのは | 変えられるか | 守らないと |
|---|---|---|---|---|
| きまり | 集団でみんなが守ること | 集団(学校・社会) | 変えにくい | 注意される |
| ルール | 活動をうまく進めるための取り決め | 参加する人 | 話し合って変えられる | 活動がうまくいかなくなる |
| 約束 | 人と人との間の取り決め | 約束する当人同士 | 当人同士で変えられる | 相手の信頼を失う |
| 規則 | はっきり定められた正式な決まり | 組織 | 手続きが必要 | 罰則がある場合も |
| 校則 | 学校が定めた規則 | 学校 | 手続きが必要 | 指導される |
表にすると、三つの言葉の違いは、誰が決めるかと、変えられるかどうかにあることが分かります。
学級で使うと、どう伝わるか
「きまり」と言うと
「このクラスのきまりです」と言うと、子どもは「もう決まっていること」として受け取ります。先生が決めたことを、子どもが守る、という形です。
安全に関わること、たとえば「廊下は走らない」「はさみは人に向けない」のようなことは、きまりとして伝えてかまいません。話し合って変えるものではないからです。ただし、きまりを伝えるときにも、「なぜそうするのか」を一緒に伝えることが大事です。理由が分からないきまりは、先生が見ていないところでは守られにくくなります。
「ルール」と言うと
「クラスのルールをみんなで決めよう」と言うと、子どもは「自分たちで決めるもの」として受け取ります。
給食のおかわりの仕方、休み時間のボールの使い方、席替えの方法。こうした、学級の生活をうまく進めるための取り決めは、ルールとして子どもと一緒に決めると、守られやすくなります。自分たちで決めたものは、自分たちで守ろうとするからです。
そして、ルールは変えられる、ということも伝えておきたいところです。「やってみて困ることがあったら、学級会で話し合って変えよう」と言っておくと、子どもは不満を陰で言うのではなく、話し合いの場にもってくるようになります。
「約束」と言うと
「先生との約束です」と言うと、先生と子どもの一対一の関係が前に出ます。
約束という言葉は、関係をあたたかく感じさせるよさがあります。「先生は、みんなの話を最後まで聞く。みんなも、友達の話を最後まで聞く。これがこのクラスの約束です」と言えば、先生も子どもも同じことを守る、という対等な感じが伝わります。
一方で、先生が一方的に決めたことを「約束」と呼ぶのは、少し気をつけたいところです。子どもは合意していないのに、守らなかったときには「約束を破った」と言われてしまう。そうなると、約束という言葉の意味が、子どもの中で「先生の命令」に変わってしまいます。
約束は、お互いに「こうする」と決めること。その意味を大事にするなら、先生も何かを約束し、子どもも何かを約束する、という形にするのがよいと思います。
学級のルールを、子どもと決める
ここからは、学級のルールを子どもと決めるときの手順を書いておきます。
1. 先生が決めること(きまり)と、子どもと決めること(ルール)を分ける
まず、先生の中で、決めることを二つに分けます。
安全に関わること、学校全体で決まっていること、人を傷つけないことなどは、先生が「きまり」として伝えます。ここは話し合いで変えるものではないので、最初にはっきり伝えておきます。
それ以外の、学級の生活を進めるための取り決めは、子どもと一緒に決める「ルール」にします。全部を子どもと決めるのは大変なので、はじめは一つか二つから始めるとよいと思います。
2. 困りごとから始める
ルールは、困りごとがあってはじめて必要になります。「ルールを決めよう」と言っても、子どもはピンときません。
「昨日、ボールの取り合いになっていたね。どうしたらみんなが気持ちよく遊べるかな」と、具体的な困りごとから話し合いを始めると、子どもは自分のこととして考えられます。
3. 決めたら、試して、見直す
決めたルールは、まず1週間ほど試してみます。そして、うまくいったか、困ったことはなかったかを振り返ります。
「やってみてどうだった?」と聞くと、子どもは意外とよく見ています。「曜日で分けたけど、雨の日のことを決めていなかった」「低学年の子が来たときはどうする?」。こうした声をもとに、ルールを少しずつ直していきます。
この「試して、見直す」をくり返すと、子どもはルールが自分たちのものだという感覚をもつようになります。
ルールが守られないとき
子どもと決めたルールでも、守られないことはあります。そのときに、先生がどう受け止めるかで、ルールの意味が変わります。
一つ目に考えたいのは、ルールそのものに無理がないかです。守られないルールの中には、そもそも守るのが難しいものがあります。「休み時間は全員外で遊ぶ」というルールは、体調が悪い子や、本を読みたい子にとっては守れません。こうしたときは、守らない子を注意するより、ルールを見直すほうが先です。
二つ目は、ルールの意味が伝わっているかです。決めたときには分かっていても、時間がたつと「何のためのルールだったか」を忘れてしまいます。守られなくなってきたら、「このルールは、何のために決めたんだっけ」と、学級全体でもう一度確かめます。
三つ目は、守れなかった子を責めすぎないことです。ルールは、守れなかったときに罰を与えるための道具ではありません。みんなが気持ちよく過ごすための道具です。守れなかった子には、「どうしたら守れそうかな」と一緒に考える。それでも難しければ、ルールの見直しを学級で話し合う。こうした流れがあると、ルールは子どもを縛るものではなく、子どもを助けるものになります。
三つの違いを、子どもにも伝える
きまり・ルール・約束の違いは、高学年なら子どもにも伝えることができます。
たとえば学級活動や道徳の時間に、「学校のきまり」「クラスのルール」「友達との約束」の例を出し合って、三つの違いを考える時間をとります。「誰が決めた?」「変えられる?」「守らないとどうなる?」と問うと、子どもは表と同じような違いに自分で気づいていきます。
違いが分かると、子どもは「このきまりは学校全体のものだから、変えたいなら児童会で話そう」「このルールはクラスのものだから、学級会で変えられる」と、自分たちで考えられるようになります。決まりごとに対して、ただ従うのでも、ただ反発するのでもなく、「どこで、どうやって変えられるか」を考える。これは、社会の一員として生きていくための大事な力だと思っています。
学級目標とのつながり
学級のルールは、学級目標とつながっていると、意味がはっきりします。
たとえば、学級目標が「みんなが安心して過ごせるクラス」なら、「友達の話を最後まで聞く」というルールは、その目標に向かうための具体的な行動になります。ルールを決めるときに、「これは、学級目標のどこにつながるかな」と問うと、子どもはルールの意味を考えるようになります。
学級目標の決め方については、「学級目標はどう決める? 子どもと話し合って「使われる目標」にするコツ」に書いています。目標とルールがつながっていると、どちらも「使われる」ものになります。
よくある質問
低学年でも、子どもとルールを決められますか?
できます。低学年では、選択肢を先生が用意して、その中から選ぶ形にすると話し合いやすくなります。「ボールは、朝に遊ぶ人と昼に遊ぶ人で分けるのと、曜日で分けるのと、どっちがいい?」と聞けば、低学年の子どもも自分の考えを言えます。
子どもが決めたルールが、先生から見て不十分だったら?
まずは試してみることをおすすめします。やってみて困ることが出てくれば、子どもは自分で気づきます。先生が先回りして直してしまうと、子どもは「どうせ先生が決める」と思うようになります。ただし、安全や人権に関わることは、先生がはっきりと伝える必要があります。
「約束」という言葉は、使わないほうがいいですか?
使ってかまいません。先生と子どもがお互いに守ることを決めるときには、約束という言葉がぴったりです。気をつけたいのは、先生が一方的に決めたことを約束と呼ぶ場合だけです。
校則や学校のきまりに、子どもが疑問をもったら?
「なんでこのきまりがあるの?」という疑問は、きまりの意味を考えるよい機会です。頭ごなしに「きまりだから」と言うのではなく、「なぜあると思う?」と一緒に考えてみてください。理由に納得できれば、子どもは守ろうとします。それでも疑問が残るなら、児童会などの場で話し合うこともできる、と伝えておくとよいと思います。学校のきまりは学級だけでは変えられませんが、意見を伝える道があることを知るのは、子どもにとって大事な学びです。
年度の途中から、ルールを子どもと決め直すことはできますか?
できます。むしろ、4月に先生が決めたルールを、子どもの様子が見えてきた5月や6月に、子どもと一緒に見直すのはよい方法です。「4月に決めたルールで、困っていることはないかな」と聞くところから始めると、子どもは自分たちの生活をふり返るきっかけにもなります。2学期の始めや、学級が落ち着かなくなってきたときも、見直しのよいタイミングです。
まとめ
きまりは、集団でみんなが守ることとして決められている事柄。
ルールは、活動をうまく進めるために、参加する人が決め、必要なら変えられる取り決め。
約束は、人と人との間で、お互いに「こうする」と決めること。
学級の取り決めを子どもに伝えるときは、それが「きまり」なのか、「ルール」なのか、「約束」なのかを、先生が意識して言葉を選ぶと、子どもへの伝わり方が変わります。
全部を子どもと決める必要はありません。安全に関わることはきまりとしてはっきり伝え、学級の生活のことは一つでもいいので子どもとルールとして決めてみる。その一つが、子どもにとって「自分たちのクラス」の始まりになります。


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