「教材」「題材」「教具」「学習材」はどう違う? 授業で使う「材」の呼び方を整理する

「教材」「題材」「教具」「学習材」はどう違う? 授業で使う「材」の呼び方を整理する 授業づくり

学校の先生は、毎日のように「教材」という言葉を使います。教材研究、教材準備、教材費。ところが、「教材って何ですか」と聞かれると、案外すっと答えられません。

しかも、似た言葉がたくさんあります。題材、教具、学習材、素材。学習指導案を書いていて「ここは教材?題材?」と手が止まったことがある先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、授業で使う「材」に関わる言葉の定義を一つずつ整理します。言葉の違いが分かると、教材研究で何をすればいいのかも、はっきりしてきます。

まず、それぞれの言葉の定義

「素材」とは

最初に、すべての出発点になる「素材」から始めます。

素材は、まだ授業に使うと決まっていない、生の材料のことです。新聞の記事、町の看板、季節の植物、テレビのニュース、昔の道具、子どもが家から持ってきた写真。世の中にあるものは、ほとんど何でも素材になりえます。

素材の段階では、まだ「これで何を教えるか」は決まっていません。おもしろいけれど、授業で使えるかどうかは分からない。そんな状態のものです。

「教材」とは

教材は、授業のねらいを達成するために、子どもが学ぶ材料として選ばれ、整えられたものです。

ポイントは「ねらい」とつながっていることです。同じ新聞記事でも、ただ置いてあるだけなら素材です。「事実と意見を見分ける力をつけるために、この記事を読ませよう」と決めて、読む範囲を選び、問いを用意した時点で、それは教材になります。

教科書の物語や説明文も教材です。教科書会社の編集者が、学習指導要領のねらいに合わせて選び、配列したものだからです。つまり、教科書に載っている文章は、すでに誰かの手で「教材化」されたものだと言えます。

「題材」とは

題材は、学習の中で取り上げる事柄やテーマのことです。

たとえば、作文の授業で「運動会の思い出を書こう」と言えば、運動会が題材です。理科で「身近な川の生き物」を調べるなら、川の生き物が題材です。何について学ぶのか、何について書くのか、何について話すのか。その「何」が題材です。

もう一つ、学校では「題材」に別の使い方があります。音楽・図画工作・家庭では、学習のまとまりのことを「単元」ではなく「題材」と呼ぶのが一般的です。学習指導要領やその解説でも、これらの教科では「題材」という言葉が使われています。ですから、図工の指導案で「題材名」と書くのは、国語や算数の指導案で「単元名」と書くのと同じ意味です。

「教具」とは

教具は、教材を示したり、子どもが操作したりするために使う道具のことです。

黒板、掛図、算数ブロック、数え棒、地球儀、実物投影機、電子黒板、タブレット端末。こうしたものが教具です。

教具は、それ自体が学ぶ内容ではありません。算数ブロックを使うのは、ブロックについて学ぶためではなく、数の合成や分解を目で見て、手で動かして分かるためです。教材が「何で学ぶか」なら、教具は「何を使って学ぶか」と言えます。

「学習材」とは

学習材は、子どもの側から見た「学ぶための材料」という意味の言葉です。

中身としては教材とほとんど同じものを指します。違うのは、見る向きです。「教材」は、先生が教えるための材料という見方。「学習材」は、子どもが学ぶための材料という見方です。

子どもが自分で本や資料を選んで調べる学習や、課題に合わせて使う資料を選ぶ学習では、「学習材」という言葉が使われることがあります。先生が用意したもの以外にも、子どもが自分で見つけてきたものが学びの材料になる。その考え方を大事にしたいときに使う言葉です。

並べてみると

5つの言葉を並べると、こうなります。

言葉 ひと言でいうと 例
素材 まだ授業に使うと決まっていない生の材料 新聞記事、町の看板、昔の道具
教材 ねらいのために選び、整えた材料 教科書の物語、選んだ記事と問い
題材 取り上げる事柄やテーマ/音楽・図工・家庭の学習のまとまり 運動会、川の生き物、図工の「光を通す家づくり」
教具 教材を示したり操作したりする道具 黒板、算数ブロック、実物投影機
学習材 子どもから見た学ぶための材料 子どもが選んだ本や資料

素材から教材への流れで考えると、分かりやすくなります。世の中にある素材の中から、ねらいに合うものを選び、子どもが学べる形に整えると教材になる。その教材を示すために使う道具が教具。そして、教材の中で扱う中身のテーマが題材です。

どこで混ざりやすいか

「教材研究」は何を研究するのか

「教材研究」という言葉は、実はいろいろな意味で使われています。教科書の文章を深く読むこと、子どもがどこでつまずくかを考えること、発問や板書を考えること。全部まとめて教材研究と呼ぶことが多いです。

ただ、言葉の定義から考えると、教材研究の芯は「この材料で、何を、どう学ばせるか」を考えることです。物語をただ深く読むだけでは、まだ素材の研究です。読んだうえで、「この物語で子どもにどんな力をつけるか」「どこを読ませればその力がつくか」まで考えたときに、教材の研究になります。

教材研究の進め方については、「教材研究を楽にするコツ まずは「学習指導要領解説」を読む」にも書いています。ねらいから考える、という点では同じ話です。

教材と教具の区別

実物投影機で教科書を映しているとき、教材は教科書の文章で、実物投影機は教具です。ここは分かりやすいと思います。

迷うのは、教具がそのまま学習の対象になる場合です。たとえば、理科で使う温度計は、ふだんは教具です。でも、「温度計の使い方」を学ぶ時間なら、温度計そのものが学習の対象になります。この場合は、温度計が教材の役割をしていると考えてかまいません。言葉の区別は、ものの種類で決まるのではなく、その時間の中での役割で決まります。

題材と教材の区別

作文の授業で、「遠足の作文を書こう」というとき、遠足は題材です。では教材は何でしょう。

この場合の教材は、作文の書き方を学ぶための材料、たとえば教科書のお手本の作文や、先生が用意した書き出しの例などです。題材は「何について書くか」、教材は「書き方を学ぶために何を使うか」。同じ時間の中に、両方があるわけです。

この区別がついていないと、「遠足のことを書かせたのに、書き方が身についていない」ということが起きます。題材を決めただけで、教材を用意していなかったからです。

「日常の材」を教材にするまで

このブログでは、日常の中にある材を授業で使う話をよく書いています。そのときに大事にしているのが、素材と教材の違いです。

町で見かけたおもしろい看板は、そのままでは素材です。教材にするには、少なくとも3つのことを考えます。

一つ目は、この素材で、どんな力をつけたいかです。看板の言葉で「短く伝える工夫」を学ばせたいのか、「漢字とひらがなの使い分け」に気づかせたいのか。ねらいが決まらないと、どこを見せるかも決まりません。

二つ目は、子どもが学べる形に整えることです。写真に撮る、一部を隠す、二つの看板を並べる、問いをつける。素材を加工して、子どもが考えたくなる形にします。

三つ目は、教科書の単元のどこに入れるかです。教科書の教材と組み合わせて使うのか、単元の導入に使うのか、まとめの発展に使うのか。位置が決まると、日常の材は「おまけ」ではなく、単元の一部になります。

この3つを考えた時点で、素材は教材になります。逆に言えば、どんなにおもしろい素材でも、この3つが決まらないうちは、授業でうまく使えません。私が「おもしろい」と思って持ちこんだ素材が空回りするときは、たいてい一つ目のねらいがぼんやりしています。

教科ごとに見る「材」の言葉

同じ1時間の中に、5つの言葉がどう出てくるか。教科ごとに例を並べてみます。

国語(説明文の単元)

説明文の単元では、教科書の説明文が教材です。たとえば動物のひみつを説明する文章なら、題材は「動物のからだのしくみ」で、教材はその説明文そのもの。学ぶ内容は「問いと答えの関係」や「段落のつながり」です。

ここで大事なのは、題材と学ぶ内容が違うことです。子どもは動物のことに夢中になりますが、国語の時間に学ぶのは動物の知識ではなく、説明の仕方です。題材のおもしろさを入口にしながら、学ぶ内容から外れないようにする。ここが国語の教材研究の難しいところであり、おもしろいところでもあります。

教具は、黒板や拡大した本文、段落ごとに切り分けた短冊などです。段落を並べかえる活動をするなら、短冊は教具でありながら、子どもが考えるための大事な道具になります。

算数(かけ算の導入)

かけ算の導入では、「同じ数ずつのまとまりがいくつあるか」を表した絵や問題が教材です。お皿にのったみかん、ボートに乗った子ども、といった場面が題材にあたります。

教具は、ブロックやアレイ図、九九のカードなどです。算数は、教具が理解を大きく助ける教科です。数の大きさや操作を、目で見て手で動かせるからです。ただ、教具を使うこと自体が目的になると、「ブロックは並べられたけれど、式の意味は分かっていない」ということも起こります。教具は、教材の中身を分からせるための道具だということを、先生が忘れないようにしたいところです。

社会(地域の学習)

3年生の地域の学習では、地図や写真、地域の人の話、見学先などが教材になります。社会科は、教科書の外にある素材を教材にすることが特に多い教科です。

地域のお店や工場は、そのままでは素材です。見学の目的を決め、何を見てくるか、誰に何を聞くかを用意したときに、教材になります。見学カードやインタビューのメモ用紙は、教材を学びやすくするための手立てです。

図画工作(工作の題材)

図工では、学習のまとまりそのものを「題材」と呼びます。「たまごから何が生まれるか考えて描く」「光を通す材料で家をつくる」のように、子どもが表したくなる中身と、使う材料や技法がセットになったものが題材です。

図工で使う紙や木、絵の具は「材料」、のこぎりやはさみは「用具」と呼ぶのが一般的です。国語や算数の「教具」とは少し違う言い方になるので、教科ごとの習慣として覚えておくと、指導案を書くときに迷いません。

教材を選ぶときの3つの基準

素材の中から教材を選ぶとき、私は次の3つを考えるようにしています。

一つ目は、ねらいに合っているかです。どんなにおもしろくても、その時間に学ぶ内容から離れていれば、子どもは「楽しかった」で終わります。

二つ目は、子どもの手が届くかです。言葉が難しすぎる、背景を知らないと分からない、量が多すぎる。そうした素材は、整えないと教材になりません。逆に、簡単すぎて考える余地がない素材も、教材としては力が弱くなります。少し背伸びすれば届く、くらいがちょうどいいと思っています。

三つ目は、問いが立つかです。子どもが「なんで?」「どっちだろう?」と思える部分があるかどうか。問いが立つ素材は、発問を考えるのも楽になります。問いが立たない素材は、どんなに立派でも、読んで終わり、見て終わりになりがちです。

この3つを全部満たす素材は、そう多くありません。だからこそ、見つけたときはうれしいものです。

学習指導案での書き分け

学習指導案には、「単元名(題材名)」「教材名」「単元について(教材観)」などの欄があります。ここでの言葉の使い方を整理しておきます。

単元名・題材名は、学習のまとまりの名前です。国語や算数では単元名、音楽・図工・家庭では題材名と書くのが一般的です。

教材名は、その単元で使う中心の材料の名前です。国語なら、物語や説明文の題名を書きます。単元名と教材名が両方書かれることが多いのは、国語では一つの単元に複数の教材が入ることがあるからです。

教材観は、その教材がどんな特徴をもっていて、子どもにどんな力をつけるのに向いているかを書く欄です。ここに「あらすじ」だけを書いてしまう指導案をよく見かけますが、それは素材の紹介です。教材観には、「この教材のこの特徴が、このねらいに合っている」というつながりを書きます。

子どもと一緒に「材」を選ぶ

最後に、学習材という考え方について、もう少しだけ。

調べ学習や読書の単元では、子どもが自分で本や資料を選ぶ場面があります。このとき、先生が全部の資料を用意するのではなく、子どもに選ばせると、子ども自身が「何を使って学ぶか」を考えることになります。

もちろん、何でも好きに選ばせればいいわけではありません。学校図書館の本の中から選ぶ、先生が用意した5冊の中から選ぶ、など範囲を決めておくと、選ぶこと自体が学習になります。「なぜその本を選んだの?」と聞くと、子どもなりの理由が返ってきます。この理由を言えることが、自分で学ぶ力の一歩になるのだと思っています。

よくある質問

教科書は「教材」ですか、「教具」ですか?

教科書に載っている文章や問題、図表は教材です。教科書という本そのものは、主たる教材として使う図書なので、法律の上でも「教科用図書」と呼ばれています。教具と呼ぶことはふつうありません。

プリントやワークシートは何に入りますか?

ワークシートに書かれた問いや資料は教材の一部です。先生が教材をもとに、子どもが取り組みやすい形に整えたものなので、自作の教材と考えてかまいません。

「教材」と「学習材」は、どちらを使えばいいですか?

学校現場では「教材」が一般的なので、ふだんは「教材」で十分です。子どもが自分で資料を選ぶ学習を大事にしていることを伝えたいときに、「学習材」という言葉を使うとよいと思います。どちらも中身は近いので、使い分けにこだわりすぎる必要はありません。

まとめ

素材は、まだ授業に使うと決まっていない生の材料。
教材は、ねらいのために選び、整えた材料。
題材は、取り上げる事柄やテーマ。音楽・図工・家庭では学習のまとまりの名前にもなる。
教具は、教材を示したり操作したりするための道具。
学習材は、子どもの側から見た学ぶための材料。

この中でいちばん大事なのは、素材と教材の違いだと思っています。素材が教材になるのは、「何のために使うか」が決まったときです。教材研究で迷ったら、「この材料で、何を学ばせたいのか」に戻ってみてください。それが決まれば、使う道具も、取り上げるテーマも、自然に決まってきます。

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