夏休み。少し時間ができるこの時期に、2学期の単元計画を考える先生も多いと思います。そのときに、ぜひ一緒に考えておきたいのが、評価をいつ、何のために行うのか、ということです。
教員養成の授業や研修で、「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」という三つの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。名前は知っていても、実際の授業でどう使い分けているかと聞かれると、意外と答えにくい言葉です。
この記事では、三つの評価の定義を整理し、単元の始め・途中・終わりのどこで、何を見るのかを具体的に考えます。
三つの評価は、どこから来た言葉か
「形成的評価」と「総括的評価」という言葉は、1960年代にアメリカの研究者スクリヴァンが、教育プログラムの評価について述べる中で使い始めたとされています。その後、ブルームらが、授業の中で子どもの学習を見る評価として整理し、広めました。ブルームは、すべての子どもが学習内容を身につけることをめざす「完全習得学習(マスタリー・ラーニング)」を提唱し、その中で、指導の前・途中・後の三つの時点での評価を大事にしました。
日本でも、この考え方は学校の授業づくりに大きな影響を与えました。今も、単元の計画を立てるときの基本的な考え方として使われています。
それぞれの言葉の定義
「診断的評価」とは
診断的評価は、単元や学習を始める前に、子どもがすでに何を知っていて、何ができるのか、どんな興味や経験をもっているのかを確かめる評価です。
病院の「診断」と同じように、治療(指導)を始める前に、今の状態を知るための評価です。
たとえば、4年生でわり算の筆算を学ぶ前に、3年生のわり算や九九がどのくらい身についているかを確かめる。物語の単元に入る前に、その物語の作者の別の作品を読んだことがあるかを聞く。これが診断的評価です。
診断的評価の目的は、指導の計画を立てたり、修正したりすることです。前の学年の内容でつまずいている子が多ければ、単元の始めに復習の時間をとる。すでによく知っている子が多ければ、発展的な内容を入れる。子どもの実態に合わせて、単元の組み立てを決めるための評価です。
「形成的評価」とは
形成的評価は、単元や学習の途中で、子どもの理解の状況を確かめ、その結果を指導や学習の修正に生かす評価です。
「形成」とは、形づくること。子どもの学力が形づくられていく途中で、うまく形になっているかを確かめるのが、形成的評価です。
たとえば、授業の途中で、ノートを見て回り、多くの子がつまずいていることに気づいたら、もう一度全体で説明する。授業の最後に小テストをして、できていない子には次の時間に個別に関わる。単元の中ほどで、それまでの学習を振り返らせて、分からないことを書かせる。これらはすべて形成的評価です。
形成的評価の一番の特徴は、結果を成績に使うことが目的ではないことです。目的は、指導を修正すること、そして子ども自身が自分の学習を修正することです。
「総括的評価」とは
総括的評価は、単元や学期、学年の終わりに、子どもが目標にどこまで達したかを総括的に判断する評価です。
単元の終わりのテスト、学期末のまとめのテスト、単元の最後に書く作文や作品。これらをもとに、子どもが学習の目標をどこまで達成したかを判断します。
総括的評価の結果は、観点別学習状況の評価や評定の材料になります。通知表や指導要録に記録される評価は、主にこの総括的評価をもとにしています。
並べてみると
| 言葉 | いつ | 何を見るか | 何に使うか | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 診断的評価 | 始める前 | 今、何を知っていて、何ができるか | 指導の計画を立てる | 前の学年の内容の確認テスト、事前アンケート |
| 形成的評価 | 途中 | 理解がうまく進んでいるか | 指導や学習を修正する | ノートの確認、小テスト、振り返り |
| 総括的評価 | 終わり | 目標にどこまで達したか | 成績をつける | 単元テスト、作品、作文 |
三つの違いは、時期と、使い道にあります。始める前は計画のため、途中は修正のため、終わりは総括のため。
単元の中に、三つを置いてみる
ここからは、一つの単元の中に、三つの評価をどう置くかを、例で考えてみます。
算数(4年「わり算の筆算」)
単元の始め(診断的評価)
1時間目の最初に、3年生で学んだわり算(あまりのあるわり算を含む)と、九九の問題を数問解かせます。時間は5分ほど。結果を見て、九九があやしい子、あまりの意味が分かっていない子を確かめておきます。
もし多くの子がつまずいていれば、筆算に入る前に、1時間、復習の時間をとります。数人だけなら、その子たちには、九九の表を手元に置いてもよいことにして、筆算の手順に集中できるようにします。
単元の途中(形成的評価)
筆算の手順を学んだ時間の最後に、2〜3問の確認問題を解かせます。丸つけをしながら、どこでつまずいているかを見ます。商をたてるところか、かけ算か、ひき算か、おろすところか。つまずいている場所によって、次の時間の手立てが変わります。
また、毎時間の最後に、「今日の学習で、分かったこと」「まだ自信がないこと」を一言書かせると、子ども自身が自分の理解の状況に気づくことができます。
単元の終わり(総括的評価)
単元の最後に、単元テストを行います。計算の技能(知識・技能)と、文章題で筆算を使う力(思考・判断・表現)を見ます。結果は、観点別学習状況の評価の材料にします。
国語(物語の単元)
単元の始め(診断的評価)
物語を初めて読んだあとに、初めの感想を書かせます。この感想から、子どもが物語のどこに興味をもったか、どこが分からなかったかを見ます。また、前の学年までに、場面の移り変わりや気持ちの変化を読む学習をどのくらいしてきたかも、感想の書き方から分かります。
初めの感想は、単元の学習計画を立てるときの大事な材料になります。子どもが「分からない」と書いたところを、単元の中の問いにすることもできます。
単元の途中(形成的評価)
場面ごとに読む時間の中で、ワークシートやノートに書かれた気持ちの読み取りを見ます。本文の言葉を根拠にしているか、場面と場面を結び付けて考えられているか。うまく読めていない子には、次の時間に、根拠になる言葉を一緒に探す手立てをとります。
単元の終わり(総括的評価)
単元の最後に、物語の紹介文や感想文を書かせます。単元を通して身につけた、気持ちの変化を読む力が表れているかを見て、評価の材料にします。最後の感想を初めの感想と比べると、子どもの読みがどう深まったかも分かります。
混ざりやすいところ
形成的評価を、成績に使ってしまう
いちばんよくあるのが、形成的評価の結果を、そのまま成績に使ってしまうことです。
単元の途中の小テストの点数を、学期末の成績にそのまま入れてしまう。そうすると、途中でつまずいた子は、最後にできるようになっても、途中の点数に引っぱられてしまいます。
形成的評価は、つまずきを見つけて、直すための評価です。途中でつまずくのは、当然のことです。むしろ、つまずきが見つかったことは、指導を修正するよい機会です。形成的評価の結果は、成績ではなく、指導と学習の修正に使うことを大事にしたいところです。
診断的評価を、やらずに始めてしまう
もう一つよくあるのが、診断的評価をせずに、いきなり単元を始めてしまうことです。
教科書どおりに進めると、前の学年の内容が身についていることを前提にして、新しい内容に入ります。でも、実際には、前の学年の内容でつまずいている子も少なくありません。そのまま進めると、その子たちは、新しい内容でもつまずいてしまいます。
診断的評価といっても、大がかりなテストをする必要はありません。単元の最初の5分で、前の学年の問題を数問解かせる。それだけでも、子どもの実態は見えてきます。
総括的評価だけで、評価を終わらせてしまう
単元の終わりのテストだけで評価を終わらせてしまうと、「できた」「できなかった」という結果しか分かりません。なぜできなかったのか、どこでつまずいたのかは、途中の形成的評価があってはじめて分かります。
総括的評価は、それまでの診断的評価と形成的評価の積み重ねの上にあります。三つをセットで考えることで、評価は子どもの学びを支えるものになります。
形成的評価の方法いろいろ
形成的評価は、授業の中で手軽にできるものが多いです。いくつか紹介します。
指のサイン:説明のあとに、「よく分かった人は3本、だいたい分かった人は2本、まだ分からない人は1本、指を出してください」と聞きます。全員の理解の様子が、数秒で分かります。手を挙げるより気軽なので、分からない子も正直に出しやすくなります。
ミニホワイトボード:一人一枚の小さなホワイトボードに答えを書かせて、一斉に見せます。先生は教室を見渡すだけで、誰がどこでつまずいているかが分かります。ノートを集めるより、ずっと早く確かめられます。
出口カード:授業の最後に、小さな紙に「今日の問題を一問」「今日分かったことを一文」書かせて、帰りに提出させます。全員分を読んでも数分で終わる量にしておくのがコツです。次の時間の始めに、よく出たつまずきを取り上げると、授業がつながります。
机間指導のチェック:自分で解く時間に、机の間を回りながら、座席表に「○(できている)」「△(途中)」「×(つまずき)」をつけていきます。全員を回りきれなくても、×の子が多い場所が分かれば、全体への指導を変える判断ができます。
どの方法も、大事なのは、結果を見て、その場で、あるいは次の時間に、指導を変えることです。確かめただけで終わらせないことが、形成的評価の一番のポイントです。
今の学習評価とのつながり
今の学習評価の考え方でも、三つの評価の考え方は生きています。
国立教育政策研究所の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」では、評価を「指導に生かす評価」と「記録に残す評価」に分けて考えることが示されています。指導に生かす評価は、主に形成的評価にあたるもの、記録に残す評価は、主に総括的評価にあたるもの、と考えると分かりやすいと思います。
また、記録に残す評価は、毎時間すべての観点について行う必要はなく、単元の中で場面を精選することも示されています。日々の授業では、形成的評価を中心にして、子どもの学びを支える。そして、単元のまとまりの中で、記録に残す総括的評価の場面を決めておく。この考え方は、三つの評価を整理した考え方と、ほとんど同じです。
指導に生かす評価と記録に残す評価については、「『見取り』と『評価』はどう違う?」にも書いています。
子どもにとっての三つの評価
三つの評価は、先生のためだけのものではありません。子どもにとっても、自分の学習を振り返る機会になります。
診断的評価では、子どもは「これから何を学ぶのか」「自分は今、どこまで分かっているのか」を知ることができます。単元の始めに、「この単元が終わったら、こんな問題が解けるようになります」と示し、今の自分と比べさせると、子どもは見通しをもって学び始められます。
形成的評価では、子どもは「今、自分はどこでつまずいているのか」を知ることができます。つまずきが分かれば、自分で練習したり、友達や先生に聞いたりすることができます。
総括的評価では、子どもは「単元を通して、自分はどこまでできるようになったのか」を知ることができます。初めのころの自分と比べて、成長を実感する機会にもなります。
よくある質問
診断的評価は、毎回の単元でやらないといけませんか?
すべての単元で大がかりに行う必要はありません。前の学年や前の単元とのつながりが強い単元、たとえば算数の計算の単元などでは、特に効果があります。それ以外の単元では、単元の始めの発問や、初めの感想から子どもの実態をつかむだけでも十分です。
形成的評価の結果は、記録しなくていいのですか?
記録しなくてもかまいません。ただ、つまずいている子の名前と、つまずいている場所を、座席表などに簡単にメモしておくと、次の時間の手立てを考えるときに役に立ちます。記録は、成績のためではなく、指導のためのメモだと考えてください。
総括的評価は、テストでしかできませんか?
テスト以外にも、作文、作品、発表、実技など、さまざまな方法で行えます。とくに、思考・判断・表現や、主体的に学習に取り組む態度は、テストだけでは見えにくいので、テスト以外の方法を組み合わせることが大事です。評価規準と評価基準の考え方については、「『評価規準』と『評価基準』はどう違う?」にまとめています。
まとめ
診断的評価は、学習を始める前に、子どもの今の状態を確かめ、指導の計画に生かす評価。
形成的評価は、学習の途中で、理解の状況を確かめ、指導や学習の修正に生かす評価。
総括的評価は、学習の終わりに、目標にどこまで達したかを総括的に判断する評価。
三つの違いは、時期と使い道にあります。始める前は計画のため、途中は修正のため、終わりは総括のため。
2学期の単元計画を立てるとき、単元の始めの5分、途中の確認、終わりのまとめを、どこに置くかを一緒に書きこんでみてください。評価の場面が決まっていると、授業の中で子どもを見る目が、ずっとはっきりしてきます。


コメント