「見取り」と「評価」はどう違う? 毎時間の「見る」をすべて記録しなくていい理由

「見取り」と「評価」はどう違う? 毎時間の「見る」をすべて記録しなくていい理由 授業づくり

研究授業の協議会で、「子どもの見取りが的確でしたね」「見取りをもとに、次の手立てを考えていましたね」という言葉をよく聞きます。

「見取り」。学校の中ではよく使われる言葉ですが、辞書を引いても、学校で使う意味はなかなか出てきません。そして、「評価」とどう違うのかを聞かれると、少し困る言葉でもあります。

この記事では、「見取り」と「評価」の定義を整理し、あわせて「指導に生かす評価」と「記録に残す評価」という、評価の二つの種類についても書きます。この違いが分かると、毎時間の評価の負担がずいぶん軽くなります。

それぞれの言葉の定義

「見取り」とは

見取りは、子どもの学びの様子を見て、その子が何を考え、どこでつまずき、どんなよさをもっているのかをとらえることです。

ポイントは、「見る」だけではなく、「とらえる」ところまでが見取りだ、という点です。子どもが黙ってノートを見つめている。それを見て、「考えこんでいる」のか、「何をすればいいか分からなくて止まっている」のか、「もう終わってぼんやりしている」のかを判断する。目に見える姿から、目に見えない子どもの内面を読み取る。それが見取りです。

見取りは、授業中ずっと行われています。机の間を歩きながらノートをのぞく、発言を聞く、表情を見る、手の動きを見る。先生は、意識していなくても、たくさんのことを見取っています。

学校では「看取り」と書くこともあります。ただ、「看取り」は、医療や介護の場面で、人の最期を見守るという意味で使われることが多い言葉です。そのため、学校の文書では「見取り」と書くことが増えています。

「評価」とは

評価は、子どもの学習の状況を、目標に照らして判断し、指導や学習の改善に生かすことです。

見取りとの違いは、目標に照らして判断するという点にあります。見取りは、子どもの様子をとらえることそのものです。評価は、とらえた様子を、「この単元の目標に、どこまで届いているか」という物差しで判断することです。

たとえば、算数の時間に、ある子がブロックを使って一生懸命に考えている姿を見たとします。「この子は、ブロックを使って考えようとしている」ととらえるのが見取り。「この子は、十のまとまりをつくって計算する、という目標に、おおむね届いている」と判断するのが評価です。

「指導に生かす評価」と「記録に残す評価」

評価には、大きく二つの種類があります。

指導に生かす評価は、授業の中で子どもの学習の状況を判断して、その場で、あるいは次の時間に、指導を変えるための評価です。「この子はまだ十のまとまりがつくれていないから、ブロックで一緒に確かめよう」「多くの子がつまずいているから、もう一度全体で説明しよう」。こうした判断が、指導に生かす評価です。

記録に残す評価は、単元や学期の終わりに、観点別学習状況の評価や評定を決めるための材料として、記録に残しておく評価です。

国立教育政策研究所の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」では、毎時間、すべての観点について記録をとる必要はないこと、記録に残す場面を単元の中で精選することが示されています。日々の授業では、指導に生かす評価を中心に行い、記録に残す評価は、単元の中の大事な場面にしぼる、ということです。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 物差し 記録 いつ
見取り 子どもの様子から、考えやつまずき、よさをとらえる ― 必ずしも残さない 授業中ずっと
指導に生かす評価 目標に照らして判断し、指導を変える 目標 必ずしも残さない 授業中・授業後
記録に残す評価 目標に照らして判断し、記録する 目標(評価規準) 残す 単元の中の決めた場面

こうして並べると、三つは別々のものではなく、つながっていることが分かります。見取りで子どもの様子をとらえ、それを目標に照らして判断する(評価)。判断した結果を、その場の指導に生かすこともあれば、記録に残すこともある。

見取りは評価の入口であり、評価は見取りを目標につなげたもの、と考えると分かりやすいと思います。

なぜ、すべてを記録しなくていいのか

記録に追われると、見取りがおろそかになる

まじめな先生ほど、毎時間、全員の様子を記録しようとします。座席表にチェックを入れ、名簿に記号をつけ、ノートを集めてコメントを書く。

でも、記録することに気をとられると、目の前の子どもを見る時間が減ってしまいます。記号をつけている間に、手が止まっている子に気づけない。記録はしっかり残っているのに、その日の指導に生かせていない。これでは、本末転倒です。

評価の一番の目的は、指導や学習の改善に生かすことです。記録を残すことが目的ではありません。

記録に残す場面を決めておく

そこで、単元の始めに、記録に残す場面を決めておきます。

たとえば、8時間の国語の単元なら、「思考・判断・表現は6時間目のワークシートと8時間目の文章で、知識・技能は3時間目と5時間目のノートで、主体的に学習に取り組む態度は単元の振り返りと8時間目の様子で」というように、観点ごとに、記録に残す時間と材料を決めます。

決めた時間だけ、しっかり記録をとる。それ以外の時間は、見取りと指導に生かす評価に集中する。こうしておくと、記録の負担は大きく減り、授業中に子どもを見る時間が増えます。

記録しない時間も、評価はしている

記録に残さない時間も、評価をしていないわけではありません。見取りをもとに、「この子はここでつまずいている」と判断し、声をかけたり、手立てを変えたりしている。これは立派な評価です。

むしろ、記録しない時間の見取りと指導の積み重ねがあるからこそ、記録に残す場面で、子どもが力を発揮できるのです。

見取りの質を上げる

では、見取りの質を上げるには、どうすればいいでしょうか。いくつかの工夫を紹介します。

見る子と見るところを決める

授業中、全員を同じように見ることはできません。そこで、その時間に特によく見る子を、数人決めておきます。前の時間につまずいていた子、最近様子が気になる子、いつも早く終わってしまう子。その子たちの様子を中心に見ると、見取りが具体的になります。

また、見るところも決めておきます。「今日は、ノートの図のかき方を見る」「今日は、グループでの話し方を見る」。何でも見ようとすると、何も見えなくなります。

子どもの「書いたもの」を手がかりにする

見取りは、目で見ることだけではありません。子どもが書いたもの、ノートやワークシート、振り返りの記述は、子どもの内面を知る大事な手がかりです。

授業の最後の振り返りに、「今日分かったこと」「まだよく分からないこと」を一言ずつ書かせると、子どもの頭の中がよく見えます。毎回全員分を読むのは大変ですが、気になる子の分だけでも読むと、次の時間の手立てが考えやすくなります。

「なぜ」と問う

子どもの様子を見て、ぱっと判断できないときは、子どもに聞くのが一番です。「どうしてこう考えたの?」「どこで止まっている?」。子どもの言葉を聞くと、見た目だけでは分からなかった内面が分かります。

見取りは、先生が一方的に見ることではなく、子どもとのやりとりの中で深まっていくものだと思います。

授業のあとに、少しだけ振り返る

授業が終わったら、その日の見取りを、少しだけ振り返ります。「今日、気になった子は誰だったか」「その子に、何を感じたか」。

全部を書き出す必要はありません。座席表に一言メモする、名簿の横に気づいたことを書く。それだけでも、次の授業の手立てを考える材料になります。記録に残す評価とは別に、自分のための見取りのメモとして続けてみてください。

教科ごとの見取りのポイント

何を見取るかは、教科によって少しずつ違います。それぞれの教科で、見取りの手がかりになりやすいところを挙げておきます。

国語

国語で見取りの手がかりになるのは、本文のどこに線を引いているかと、どんな言葉で書いているかです。

物語の授業で、「気持ちが分かる言葉に線を引きましょう」と指示したとき、机の間を歩いて線の位置を見るだけで、子どもがどこに注目しているかが分かります。全員が同じ場所に引いているのか、ばらばらなのか。ばらばらなら、それは話し合いの材料になります。

また、ノートに書かれた言葉も大事な手がかりです。「うれしい」としか書いていない子と、「ほっとした」「むねがいっぱいになった」と書いている子では、読みの深さが違います。

算数

算数で見取りの手がかりになるのは、答えよりも、途中の式や図です。

正しい答えが出ていても、たまたま合っただけということもあります。反対に、答えはまちがっていても、考え方はほぼ合っていて、計算でまちがえただけということもあります。途中の式や図を見ると、子どもがどこまで分かっていて、どこでつまずいているのかが見えてきます。

ノートを見るときは、消しゴムで消したあとにも注目してみてください。最初に何を書いて、それをどう直したのか。消したあとには、子どもの試行錯誤が残っています。

体育

体育で見取りの手がかりになるのは、体の動きと、練習の場の選び方です。

マット運動なら、手のつき方、頭の入れ方、回転のスピード。一つの技でも、見るポイントを決めておくと、つまずきがどこにあるかが分かります。

また、いくつかの練習の場を用意しておくと、子どもがどの場を選ぶかが見取りの手がかりになります。自分の課題に合った場を選べている子は、自分の動きを客観的に見ることができています。いつも同じ場にいる子には、「どうしてこの場を選んだの?」と聞いてみると、子どもの考えが分かります。

見取ったことを、子どもに返す

見取りは、先生が知って終わりではありません。見取ったことを子どもに返すと、子ども自身が自分の学習を振り返るきっかけになります。

「さっき、図を使って説明していたね。分かりやすかったよ」「この線を引いたところ、いいところに目をつけたね」。見取ったよさを具体的に伝えると、子どもは自分の学び方のどこがよかったのかを知ることができます。

つまずきを返すときも同じです。「ここまではできているね。ここから先で止まっているみたいだけど、どうかな」。できているところを先に伝えてから、つまずきを一緒に確かめると、子どもは前向きに受け止めることができます。

協議会での「見取り」

研究授業の協議会でも、見取りという言葉がよく出てきます。

協議会で見取りについて話すときは、「〇〇さんは、ここでこう考えていたように見えました」と、具体的な子どもの姿を挙げることが大事です。「全体的に、よく考えていました」では、見取りになりません。どの子が、どの場面で、どんな姿を見せていたのか。それを言葉にすることで、授業者も参観者も、子どもの学びを具体的に振り返ることができます。

また、見取りは、授業者が気づかなかったことを、参観者が気づくこともあります。協議会は、何人もの先生の見取りを持ち寄って、子どもの姿を多面的にとらえる場でもあります。

よくある質問

見取ったことを、評価の記録にしてもいいですか?

かまいません。見取りで気づいたことが、記録に残す評価の材料になることはよくあります。ただ、記録に残すときは、評価規準に照らして判断し、根拠になる事実(発言、ノートの記述など)とセットで残しておくことが大事です。「なんとなくよさそう」という印象だけで記録すると、評価の根拠があいまいになります。

記録に残す場面以外で、子どもがすばらしい姿を見せたら?

その場合は、記録に残してかまいません。記録に残す場面を決めておくのは、記録の負担を減らすためで、それ以外の場面で見えた姿を記録してはいけない、ということではありません。予想していなかった子どものよさに気づいたら、メモしておくと、所見を書くときにも役立ちます。

見取りが苦手です。どうすれば上達しますか?

一つの方法は、他の先生の授業を見ることです。自分が授業をしていないときは、子どもの様子をじっくり見ることができます。「あの子は、今、何を考えているのだろう」と想像しながら見て、協議会で授業者に確かめてみる。それをくり返すうちに、見取りの目が育っていきます。もう一つは、自分の授業を録画して見ることです。授業中には気づかなかった子どもの表情や動きが見えてきます。

まとめ

見取りは、子どもの様子を見て、その子の考えやつまずき、よさをとらえること。
評価は、とらえた様子を目標に照らして判断し、指導や学習の改善に生かすこと。
評価には、指導に生かす評価と、記録に残す評価がある。

毎時間、すべてを記録しなくてかまいません。記録に残す場面を単元の中で決めておき、それ以外の時間は、見取りと指導に生かす評価に集中する。そのほうが、子どもを見る時間が増え、結果として評価も確かなものになります。

記録に追われていると感じたら、一度、単元の評価計画を見直してみてください。「この時間は記録しなくていい」と決めるだけで、目の前の子どもが、ずっとよく見えるようになるはずです。評価と評定の違いについては「『評価』と『評定』はどう違う?」、評価規準と評価基準の違いについては「『評価規準』と『評価基準』はどう違う?」にまとめています。

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