1人1台端末が入ってから、子どもが文字を書く量は、確実に減ったと思います。調べ学習のまとめはスライドで。感想は端末に入力して提出。漢字練習もアプリで、という学校もあるかもしれません。
そんな中、「書写って、これからどうなるの?」と思っていた先生も多いんじゃないでしょうか。正直、私も少し思っていました。
結論から言うと、審議まとめは、書写を、むしろ大事にする方向です。
審議まとめの書写
審議まとめの書写の部分を、少し長めに引用します。
書写については、デジタル学習基盤の下でタイピング等による文字入力の機会が増える中にあっても、文字を正しく認識し、正確に書く力を身に付けるとともに、我が国の文字文化について実感を伴って理解を深める観点は重要であることから、小中学校段階における書写の指導を引き続き重視する。その際、書字能力は全ての学びを支える基礎であり、その確実な定着が不可欠であることから、とりわけ小学校では、手書きによる書写の丁寧な指導を推進する。
「とりわけ小学校では」「手書きによる」「丁寧な指導」。けっこう強い書き方です。
一方で、タイピングは「総合」へ
もう一つ、関係する記述があります。ローマ字の学習は、これまで通り国語で3年生に行うとしつつ、ローマ字入力によるタイピングについては、「総合的な学習の時間・情報の領域」を中心に学習を行う、という整理です。そして、そうした学習を通じても、ローマ字の習熟が図られることが見込まれる、と。
ここ、大事な役割分担だと思います。
- 国語(書写):手で、文字を正しく、整えて書く
- 国語(ローマ字):ローマ字のきまりを知り、読み書きする
- 総合(情報の領域):タイピングで入力する
今は、3年生のローマ字の単元で、「ついでにタイピングも」となっている学校も多いのではないでしょうか。次の学習指導要領では、タイピングを主に担う場所がはっきりする。その分、国語では「書く」「読む」ことに集中できます。
なぜ、手で書くのか
審議まとめは、手で書いて学ぶことについて、「字形や点画、筆順、文字の組立て方などに注意しながら、文字を正しく認識し、整えて書く力を育てる」ものだと書いています。
私なりに言いかえると、手で書くことは、文字を「見る」ことでもある、ということです。
タイピングでは、文字は変換候補から「選ぶ」ものです。形を自分で作らない。だから、「待」と「持」の違い、「とめ」と「はね」の違いを、意識しなくても入力できてしまう。手で書くときは、自分で形を作るから、文字を細かく見るようになる。
前回の漢字の記事で、「組み立てを意識しながら丁寧に書く」と書いたのは、このことです。
書写の授業でやってみたいこと
毛筆の前に「見る」時間をとる
3年生から毛筆が始まります。毛筆の授業は、準備と片付けで時間がとられがちで、「とにかく書かせる」になりやすい。
でも、書く前に、お手本を「見る」時間を、ほんの数分とってみてください。「この字の一番長い線はどれ?」「点はどこから書き始めている?」。見る観点を一つだけ与えて、見てから書く。
これだけで、子どもの字は変わります。毛筆は、文字をゆっくり、大きく見る経験だからです。
硬筆で、ふだんの字につなげる
毛筆で学んだことを、ふだんの鉛筆の字に生かす。これが、書写の一番の目的だと思っています。
毛筆で「はらい」を学んだ週は、ノートの字でも「はらい」を見る。連絡帳の字でも見る。書写の時間だけで完結させない。
審議まとめは、書写の評価について、「評価対象としての『文字を整えて書く力』と、表現の手段としての筆記は適切に区別し」と書いています。つまり、作文の評価に字の上手い下手を混ぜてはいけない。その一方で、書写で学んだことを、ふだんの字に生かすよう声をかけることは大事。評価と指導を分けて考える、ということです。
書くことが苦手な子へ
書写の話をすると、必ず気になるのが、書くこと自体が苦手な子のことです。
審議まとめは、ここもはっきり書いています。書字に困難さがある子については、デジタル学習基盤の活用や代替措置の積極的な提供を含め、一人一人の特性を踏まえて指導を行う必要があることを明確にする、と。
「手書きを大事にする」と「手書きを全員に同じように強いる」は違います。書くことに困難がある子には、端末での入力を認める。書写の時間には、その子が無理なくできる形で、文字を見る、形を確かめる学習をする。審議まとめが求めているのは、そういうバランスだと私は読んでいます。
まとめ
- 審議まとめは、タイピングが増える中でも書写を引き続き重視し、とりわけ小学校では手書きによる丁寧な指導を推進する方向
- ローマ字は国語の3年生のまま、タイピングは主に総合的な学習の時間の「情報の領域」で、という役割分担が示されている
- 書写の時間は「見てから書く」。そして、ふだんの字に生かす。苦手な子には代替手段も
端末が増えたからこそ、手で書く時間の意味がはっきりする。まぁ、そういうことなんだと思います。
次回は、4・5年生の話し合いの単元で、「合意形成」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.139〜140 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」国語 〔知識及び技能〕の書写に関する事項、第3学年〔知識及び技能〕(1)ウ(ローマ字)
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