学習指導案に「単元の評価規準」という欄があります。研修で「評価基準をそろえましょう」と言われることもあります。
どちらも読みは「ひょうかきじゅん」。耳で聞くと区別がつきません。そのため、職員室では「のりじゅん」「もとじゅん」と呼び分けることもあります。規準の「規」は「のり」、基準の「基」は「もとい」と読むからです。
でも、呼び分けているだけで、中身の違いまで説明できる先生は、案外少ないのではないでしょうか。この記事では、「評価規準」と「評価基準」の定義を整理し、あわせて「ルーブリック」「判断の目安」という言葉も見ていきます。
それぞれの言葉の定義
「評価規準」とは
評価規準は、子どもが何をできるようになればよいのかを、具体的な姿として文章で表したものです。
「規」という漢字には、「のり(きまり、手本)」という意味があります。評価規準は、学習の目標を、子どもの姿に置きかえた「よりどころ」です。何を評価するのか、どんな姿が見られれば目標を達成したと言えるのか。それを言葉で示します。
たとえば、4年生の国語の物語の単元なら、思考・判断・表現の観点の評価規準は、次のようになります。
「『読むこと』において、登場人物の気持ちの変化について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像している。」
このように、評価規準は、学習指導要領の指導事項をもとに、「〜している」「〜しようとしている」という子どもの姿として書くのが一般的です。
国立教育政策研究所の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」では、評価規準は、観点ごとに次のような文末で書くことが示されています。
- 知識・技能:「〜している」「〜を理解している」など
- 思考・判断・表現:「〜している」
- 主体的に学習に取り組む態度:「〜しようとしている」
そして、評価規準に示された姿は、多くの場合、「おおむね満足できる」状況(B)を表しています。つまり、評価規準は「Bの姿」を言葉にしたもの、と考えると分かりやすいと思います。
「評価基準」とは
評価基準は、評価規準に示された姿が、どの程度実現しているかを判断するための目安や尺度のことです。
「基」という漢字には、「もとい(土台、ものさし)」という意味があります。評価基準は、到達の度合いをはかるものさしです。
評価規準が「何を見るか」を示すのに対して、評価基準は「どこまでできていれば、A・B・Cのどれと判断するか」を示します。
先ほどの4年生の物語の例で言えば、評価基準は次のようになります。
- A:登場人物の気持ちの変化を、複数の場面の叙述を結び付けて、理由とともに具体的に想像している
- B:登場人物の気持ちの変化を、場面の移り変わりと結び付けて想像している
- C:登場人物の気持ちを、一つの場面だけで想像している、または叙述にもとづいていない
このように、評価規準(Bの姿)を真ん中に置いて、それよりも深いのがA、届いていないのがC、という段階を示すのが評価基準です。
「判断の目安」とは
学校によっては、評価基準のことを「判断の目安」「判断基準」と呼ぶこともあります。
呼び方は違いますが、中身は同じで、A・B・Cを判断するときの具体的なよりどころです。指導案に「評価規準」と「判断の目安」を並べて書く形も、よく見られます。
「ルーブリック」とは
ルーブリックは、評価の観点と、達成の程度を表した表のことです。
縦に観点(何を見るか)、横に段階(どこまでできているか)を並べ、それぞれのマスに、その段階の具体的な姿を書きます。
ルーブリックは、評価規準と評価基準を、一枚の表にまとめたものと考えることができます。作文やスピーチ、作品づくりなど、答えが一つに決まらない学習の評価でよく使われます。
並べてみると
| 言葉 | 読み分け | ひと言でいうと | 答える問い |
|---|---|---|---|
| 評価規準 | のりじゅん | 目標を、子どもの姿として言葉にしたもの | 何を見るのか |
| 評価基準 | もとじゅん | 到達の度合いをはかるものさし | どこまでできたらA・B・Cか |
| 判断の目安 | ― | 評価基準の言いかえ | どこまでできたらA・B・Cか |
| ルーブリック | ― | 観点と段階を表にしたもの | 何を、どこまで |
一言でまとめると、評価規準は「何を」、評価基準は「どこまで」です。
なぜ二つの言葉があるのか
評価規準が使われるようになった背景
評価規準という言葉が広く使われるようになったのは、評価が「目標に準拠した評価」になってからです。
集団の中での順位で評価する相対評価なら、「何を見るか」をくわしく決めなくても、点数を並べれば評価ができました。でも、目標に照らして評価するためには、「目標を達成した姿とはどんな姿か」を、はっきり言葉にしておく必要があります。そうしないと、先生によって評価がばらばらになってしまいます。
そこで、学習指導要領の目標を、子どもの姿として具体的に表した「評価規準」が必要になりました。国立教育政策研究所が評価規準の参考資料を出しているのも、全国の学校で評価のよりどころをそろえるためです。
評価基準が必要な理由
評価規準があれば、何を見るかは分かります。でも、それだけでは、AとBの境目、BとCの境目が分かりません。
たとえば、「登場人物の気持ちの変化を想像している」という評価規準があっても、どの程度想像していればAなのか、どこからがCなのかは、先生によって判断が分かれます。そこで、学年や学校で、到達の度合いをそろえるためのものさし、つまり評価基準が必要になります。
評価規準だけでは「何を見るか」しか決まらない。評価基準があってはじめて、「どう判断するか」までそろえることができる。二つの言葉があるのは、評価の「中身」と「程度」を分けて考えるためなのです。
指導案での書き方
単元の評価規準
学習指導案では、「単元の評価規準」として、三つの観点ごとに評価規準を書きます。
書き方のポイントは、学習指導要領の指導事項をもとにすることです。指導事項の文言を、子どもの姿の文末(「〜している」「〜しようとしている」)に置きかえると、評価規準になります。
主体的に学習に取り組む態度の評価規準は、少し書き方が違います。参考資料では、粘り強く取り組もうとしている側面と、自らの学習を調整しようとしている側面の両方が入るように書くことが示されています。たとえば、「登場人物の気持ちの変化について、粘り強く叙述を読み、学習の見通しをもって、感想を伝え合おうとしている」のような書き方です。
本時の評価と判断の目安
本時の展開には、「評価」の欄を設けて、その時間に見る評価規準と、評価の方法(ノート、発言、ワークシートなど)を書きます。
研究授業の指導案では、さらに「判断の目安」として、Aの姿とCの子への手立てを書くことがよくあります。「Bの姿は評価規準のとおり。Aは〇〇まで書けている姿。Cの子には、〇〇の手立てをとる」。このように書いておくと、授業の中で子どもの姿を見取るときに迷いません。
ルーブリックをつくってみる
作文やスピーチのように、答えが一つに決まらない学習では、ルーブリックをつくっておくと評価がしやすくなります。
たとえば、意見文を書く単元なら、次のようなルーブリックが考えられます。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 考えと理由 | 考えがはっきりしていて、理由が二つ以上あり、それぞれに具体的な例がある | 考えがはっきりしていて、理由が書かれている | 考えか理由のどちらかが書かれていない |
| 構成 | 初め・中・終わりがはっきりしていて、段落のつながりが分かりやすい | 初め・中・終わりに分けて書かれている | 段落に分かれていない |
| 言葉 | 読み手を意識した言葉を選んでいる | 文末がそろっている | 話し言葉と書き言葉が混ざっている |
ルーブリックのよいところは、子どもにも見せられることです。書く前に子どもに示しておくと、子どもは「Aになるには、理由を二つ書いて、例も入れればいいんだ」と、自分でめあてをもつことができます。書き終わったあとに、自分の文章をルーブリックで振り返ることもできます。
ルーブリックは、先生が評価するための道具であると同時に、子どもが自分の学習を調整するための道具にもなります。
教科ごとの例
国語以外の教科でも、評価規準と評価基準の関係は同じです。いくつか例を挙げます。
算数(4年「面積」・思考・判断・表現)
- 評価規準(Bの姿):L字形などの図形の面積の求め方を、長方形や正方形に分けたり、大きな長方形から引いたりして考え、式や図を用いて説明している
- A:複数の求め方を考え、それぞれを式と図で説明したうえで、求め方の共通点(どれも長方形をもとにしていること)に気づいている
- C:図形を分けることができず、求め方が考えられていない
- Cの子への手立て:方眼紙に図形をかき、線を一本引いて二つの長方形に分けるところから一緒に確かめる
体育(マット運動・知識・技能)
- 評価規準(Bの姿):回転系の基本的な技を、自己の能力に適した場で、安定して行っている
- A:基本的な技を安定して行い、さらに発展技や、技の組み合わせにも取り組んでいる
- C:基本的な技の途中で止まってしまう、またはまっすぐに回れない
- Cの子への手立て:坂道マットなど、回転の勢いをつけやすい場を用意する
理科(5年「ふりこ」・思考・判断・表現)
- 評価規準(Bの姿):ふりこが1往復する時間に関係する条件について、予想をもとに、調べる条件と変えない条件を区別して実験を計画している
- A:条件を区別して計画するだけでなく、実験の回数や測定の方法など、結果の確かさを高める工夫も考えている
- C:複数の条件を同時に変えて実験しようとしている
- Cの子への手立て:「今回変えるのは一つだけ」と確かめ、変える条件と変えない条件を表に分けて書かせる
こうして並べると、どの教科でも、評価規準がBの姿の「何を」を表し、評価基準がA・B・Cの「どこまで」を表していることが分かります。そして、Cの姿を書いたら、必ずその子への手立てがセットになります。
気をつけたいこと
評価規準を、たくさん書きすぎない
評価規準をくわしく書こうとすると、一つの単元に十も二十も並んでしまうことがあります。でも、それを全部評価するのは無理です。
単元の評価規準は、観点ごとに一つか二つにしぼるのが現実的です。全部を書くより、この単元で本当に見たい姿を、しぼって書くほうが、評価は確かなものになります。
評価基準を、学年でそろえる
評価基準は、担任一人で決めるより、学年でそろえるほうがよいと思います。同じ学年なのに、クラスによってAの基準が違うと、子どもにとっても保護者にとっても不公平になります。
学年会で、子どもの作文やノートを何枚か持ち寄って、「これはAかな、Bかな」と話し合うだけでも、基準がそろってきます。実物を見ながら話すと、言葉だけで基準を決めるよりも、ずっと具体的にそろえることができます。
Cの子への手立てを、先に考えておく
評価基準でCの姿を書いたら、必ずセットで「Cの子への手立て」を考えておきます。
評価は、子どもに点をつけることが目的ではなく、指導に生かすことが目的です。Cの姿が見えたときに、その場でどう関わるか、次の時間にどう指導するかを考えておくことで、評価が指導につながります。
よくある質問
「評価規準」と「評価基準」、どちらを使えばいいか分からないときは?
迷ったときは、「何を見るのか」を書いているなら評価規準、「どこまでできたらA・B・Cか」を書いているなら評価基準と考えてください。指導案の様式で「評価規準」と書かれている欄には、子どもの姿(Bの姿)を書くのが一般的です。
評価規準は、自分でつくらないといけませんか?
国立教育政策研究所の参考資料や、教科書会社の指導書に、評価規準の例が載っています。まずはそれを参考にして、自分の学級の子どもの姿に合わせて言葉を直すところから始めると、無理なくつくれます。
ルーブリックは、どの単元でもつくったほうがいいですか?
すべての単元でつくる必要はありません。テストで評価できる単元より、作文や発表、作品づくりのように、答えが一つに決まらない単元で特に役に立ちます。年に何回か、大きな単元でつくってみると、評価の考え方が身についていきます。
Aの姿は、どうやって考えればいいですか?
Aの姿は、Bの姿(評価規準)を「質的に高めた姿」として考えるとよいと思います。量が多い(理由がたくさん書いてある)だけでなく、複数の場面を結び付けている、根拠がはっきりしている、自分の言葉で説明している、など、考えの深さや確かさが一段上がっている姿です。実際の授業で子どもが書いたものを見ながら、「これはBをこえているな」と感じたものを集めておくと、次にAの姿を書くときの手がかりになります。
まとめ
評価規準(のりじゅん)は、目標を、子どもの姿として言葉にしたもの。多くの場合、「おおむね満足できる」Bの姿を表す。
評価基準(もとじゅん)は、その姿がどこまで実現しているかを判断する、A・B・Cのものさし。判断の目安とも言う。
ルーブリックは、観点と段階を表にして、それぞれの姿を具体的に書いたもの。
評価規準は「何を」、評価基準は「どこまで」。この二つを分けて考えると、指導案の評価の欄も、学期末の評価も、ずっと書きやすくなります。
そして、ルーブリックを子どもに見せることで、評価は先生だけのものから、子どもが自分の学びを振り返る道具へと変わっていきます。評価と評定の違いについては、「『評価』と『評定』はどう違う?」にまとめています。


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