「個別最適な学び」と「協働的な学び」はどう違う? 「一人で学ぶ」「みんなで学ぶ」ではない

「個別最適な学び」と「協働的な学び」はどう違う? 「一人で学ぶ」「みんなで学ぶ」ではない 授業づくり

「個別最適な学び」と「協働的な学び」。ここ数年、研修でも研究紀要でも、この二つの言葉を見ない日はないくらいになりました。

でも、言葉だけがひとり歩きしているようにも感じます。「個別最適な学び」と聞くと、タブレットで一人一人がドリルを進める姿を思いうかべる。「協働的な学び」と聞くと、グループで話し合う姿を思いうかべる。つまり、「一人で学ぶ」と「みんなで学ぶ」の違いだと思ってしまう。

実は、この二つの言葉には、もとになった文書の中で、はっきりした定義があります。そして、その定義を読むと、「一人で学ぶ」「みんなで学ぶ」という分け方とは、少し違うことが分かります。

この記事では、二つの言葉の定義を、もとの文書にさかのぼって整理します。あわせて、「指導の個別化」「学習の個性化」「個に応じた指導」という言葉も見ていきます。

二つの言葉は、どこから来たのか

「個別最適な学び」と「協働的な学び」という言葉が、学校で広く使われるようになったきっかけは、令和3年(2021年)1月に出された中央教育審議会の答申、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜」です。

この答申では、2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿として、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」が掲げられました。そして、二つの言葉の中身が、くわしく説明されています。

それぞれの言葉の定義

「個別最適な学び」とは

答申では、個別最適な学びは、「指導の個別化」と「学習の個性化」を、学習者の視点から整理した概念だと説明されています。

つまり、個別最適な学びは、一つのことではなく、二つの考え方を合わせたものです。それぞれを見ていきます。

「指導の個別化」とは

指導の個別化は、答申の説明を短くまとめると、次のような考え方です。

全ての子どもに、基礎的・基本的な知識・技能などを確実に身につけさせるために、先生が、支援の必要な子により重点的な指導を行ったり、子ども一人一人の特性や学習進度、学習到達度などに応じて、指導の方法や教材、学習時間などを柔軟に提供・設定したりすること。

ポイントは、目標は全員同じだということです。全員が同じ目標に届くように、一人一人に合わせて、やり方や時間を変える。それが指導の個別化です。

たとえば、計算の練習で、すぐにできる子は発展問題に進み、時間がかかる子は先生と一緒に基本の問題を確かめる。どちらも、計算の仕方を身につけるという目標は同じです。違うのは、そこにたどり着くための道筋です。

「学習の個性化」とは

学習の個性化は、答申の説明を短くまとめると、次のような考え方です。

子ども一人一人の興味・関心やキャリア形成の方向性などに応じて、先生が、一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子ども自身が、学習が最適となるよう調整すること。

指導の個別化との違いは、学ぶ内容や課題そのものが、一人一人違ってもよいという点です。興味・関心に応じて、何を調べるか、どんな課題に取り組むかを、子どもが選ぶ。そして、子ども自身が、自分の学習がうまくいくように調整していく。

たとえば、総合的な学習の時間で、「地域の環境」という大きなテーマの中で、ある子は川の生き物を、ある子はごみの問題を、ある子は昔の町の様子を調べる。それぞれが自分の問いを追いかける。これが学習の個性化です。

「協働的な学び」とは

答申では、協働的な学びについて、次のような趣旨のことが書かれています。

探究的な学習や体験活動などを通じて、子ども同士で、あるいは地域の人々をはじめとする多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、さまざまな社会的な変化を乗りこえ、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する。

協働的な学びのポイントは、多様な他者と協働すること、そして一人一人のよい点や可能性を生かすことです。答申では、集団の中で個が埋もれてしまうことがないよう、一人一人のよい点や可能性を生かすことで、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出す、という趣旨のことも書かれています。

協働の相手は、同じ学級の友達だけではありません。ほかの学年の子ども、地域の人、専門家、遠くの学校の子ども。多様な他者と関わりながら学ぶことが、協働的な学びです。

二つは「一体的に」充実させる

答申のもう一つの大事なポイントは、個別最適な学びと協働的な学びを、一体的に充実させることです。

答申では、個別最適な学びが「孤立した学び」に陥らないよう、これまでも日本の学校教育が大事にしてきた協働的な学びを充実させることも重要だ、という趣旨が書かれています。

つまり、二つは、どちらかを選ぶものではなく、組み合わせるものです。一人一人が自分に合ったやり方で学び、その学びを持ち寄って、友達と考えを広げたり深めたりする。そして、協働の中で得たことを、また一人一人の学びに生かす。この行き来が、二つの学びを「一体的に」充実させるということです。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 目標・内容 例
指導の個別化 同じ目標に向けて、やり方や時間を一人一人に合わせる 目標は同じ 進度に応じた練習、つまずきに応じた指導
学習の個性化 興味・関心に応じて、学ぶ課題や活動を選び、自分で調整する 内容が違ってもよい 自分で問いを立てて調べる学習
個別最適な学び 上の二つを、学習者の視点から整理した概念 ― ―
協働的な学び 多様な他者と協働し、互いのよさを生かして学ぶ ― 考えを出し合う話し合い、地域の人との学習

「一人で学ぶ」「みんなで学ぶ」ではない理由

ここで、最初の話に戻ります。個別最適な学びは「一人で学ぶ」こと、協働的な学びは「みんなで学ぶ」こと。この分け方は、なぜ正確ではないのでしょうか。

個別最適な学びは、一人きりとは限らない

個別最適な学びは、一人一人に合った学び方をすることです。でも、それは一人きりで学ぶことを意味しません。

たとえば、自分に合ったやり方として、友達と一緒に考えることを選ぶ子もいます。分からないところを友達に聞く、二人で問題を出し合う。これも、その子にとっての最適な学び方かもしれません。

反対に、全員が一人でタブレットに向かってドリルを進めていても、全員が同じ問題を同じ順番で解いているなら、それは個別最適な学びとは言いにくいでしょう。大事なのは、一人でいるかどうかではなく、一人一人に合っているかどうかです。

協働的な学びは、グループ活動とは限らない

協働的な学びも、グループで話し合うことだけを意味するわけではありません。

グループで話し合っていても、一人の子だけが話して、ほかの子は聞いているだけなら、協働しているとは言えません。反対に、一人一人が調べたことを全体で共有し、それぞれの考えを生かして新しい考えをつくり出すなら、たとえ形は一斉授業でも、協働的な学びと言えます。

大事なのは、形ではなく、多様な考えが組み合わさって、よりよい学びが生まれているかどうかです。

「個に応じた指導」との関係

学習指導要領(平成29年告示)の総則には、以前から「個に応じた指導」という言葉があります。子どもの実態に応じて、個別学習やグループ別学習、繰り返し学習、学習内容の習熟の程度に応じた学習などを取り入れ、指導方法や指導体制の工夫改善により、個に応じた指導の充実を図る、という趣旨です。

答申では、この「個に応じた指導」を、学習者の視点から整理し直したものが「個別最適な学び」だと説明されています。つまり、言葉は新しくなりましたが、考え方そのものは、以前から学校が大事にしてきたものの延長にあるわけです。

違いがあるとすれば、主語です。「個に応じた指導」は先生が主語の言葉、「個別最適な学び」は子どもが主語の言葉です。先生が一人一人に合わせて指導するだけでなく、子ども自身が自分に合った学び方を選び、調整していく。そこまで含めて考えるのが、個別最適な学びです。

「個別最適化」との違い

似た言葉に、「個別最適化」があります。こちらは、主に、デジタル技術を使って、一人一人の学習データにもとづいて、最適な問題や教材を自動的に提示する、という文脈で使われることが多い言葉です。

答申の「個別最適な学び」は、デジタル技術の活用も含みますが、それだけではありません。先生が子どもを見て、一人一人に合った指導をすることも、子ども自身が学び方を選ぶことも含んでいます。機械が最適化してくれる学びではなく、子どもと先生が一緒につくっていく学び、と考えるとよいと思います。

授業の中で、どう組み合わせるか

では、実際の授業の中で、二つの学びをどう組み合わせればいいでしょうか。例を一つ挙げます。

算数(5年「割合」)

  1. 全体で問題を確かめる(一斉):問題の場面と、何を求めるのかを全員で確かめる
  2. 自分で考える(個別最適):図をかく、表にする、数直線を使う、など、自分に合った方法で考える。分からない子は、ヒントカードを見てもよいし、先生のところに来てもよい
  3. 考えを出し合う(協働):違う方法で考えた友達と、考え方を説明し合う。どの方法にも共通していることを見つける
  4. 自分の考えを見直す(個別最適):友達の考えを聞いて、自分の方法を見直したり、別の方法で確かめたりする
  5. 練習問題に取り組む(個別最適):自分の理解に合わせて、基本の問題から始めるか、発展の問題から始めるかを選ぶ

このように、一つの授業の中で、一人で考える時間と、友達と考える時間を行き来させます。一人で考えたことがあるから、友達と話すときに自分の考えを出せる。友達の考えを聞いたから、自分の考えを見直せる。この行き来が、二つの学びを一体的に充実させるということです。

気をつけたいこと

「選ばせる」だけで終わらない

個別最適な学びを意識すると、子どもにやり方を選ばせる場面が増えます。それ自体はよいことですが、選ばせるだけで終わると、子どもは楽なほうを選んだり、選んだことに満足して学びが深まらなかったりします。

選んだあとに、「その方法を選んでよかったか」「次はどうするか」を振り返る時間をとることで、子どもは自分の学習を調整する力を身につけていきます。

協働を形だけにしない

協働的な学びを意識すると、グループ活動を増やしたくなります。でも、グループ活動の時間を増やすだけでは、協働的な学びにはなりません。

協働が生まれるためには、まず一人一人が自分の考えをもっていることが必要です。考えをもたないままグループになっても、話すことがありません。グループ活動の前に、一人で考える時間を必ずとる。これが、協働を形だけにしないための基本です。

よくある質問

タブレットを使わないと、個別最適な学びはできませんか?

できます。タブレットは、一人一人の進度に合わせた問題を出したり、学習の記録を残したりするのに便利な道具ですが、なくても個別最適な学びはできます。ヒントカードを用意する、練習問題を難易度別に分ける、調べる方法を選べるようにする。こうした工夫は、紙と鉛筆でもできます。

個別最適な学びと協働的な学びは、どちらが大事ですか?

答申の言葉どおり、二つは一体的に充実させるものです。どちらか一方だけでは、学びは深まりません。一人で考えることと、友達と考えることの両方があってはじめて、子どもの学びは豊かになります。

学級の人数が多いと、個別最適な学びは難しくないですか?

全員に一対一で関わるのは、たしかに難しいです。だからこそ、子ども自身が学び方を選び、調整できるように育てることが大事になります。すべてを先生が個別に用意するのではなく、子どもが自分で選べる仕組みをつくる。そして、先生は、特に支援が必要な子に重点的に関わる。この役割分担が、大人数の学級での現実的な方法だと思います。

「個別最適な学び」は、学習指導要領に書かれている言葉ですか?

平成29年告示の学習指導要領の本文には、「個別最適な学び」という言葉そのものは出てきません。学習指導要領にあるのは「個に応じた指導」という言葉で、それを学習者の視点から整理し直したのが、令和3年の答申の「個別最適な学び」です。研修資料などで目にするのは、主にこの答申の言葉だと考えてください。

まとめ

個別最適な学びは、「指導の個別化」と「学習の個性化」を、学習者の視点から整理した概念。
指導の個別化は、同じ目標に向けて、やり方や時間を一人一人に合わせること。
学習の個性化は、興味・関心に応じて、学ぶ課題や活動を選び、子ども自身が調整すること。
協働的な学びは、多様な他者と協働し、互いのよさを生かしてよりよい学びを生み出すこと。

二つは「一人で学ぶ」「みんなで学ぶ」の違いではなく、組み合わせて一体的に充実させるものです。一人で考え、友達と考え、また一人で考える。その行き来の中で、子どもの学びは深まっていきます。

言葉が新しくなっても、子ども一人一人を見て、それぞれに合った学びを考えるという先生の仕事は、変わりません。言葉の定義を知ることは、その仕事を、改めて見直すきっかけになると思います。主体的な学びという言葉の意味については、「『主体的』『自主的』『自発的』はどう違う?」にまとめています。

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