どうも。「せいたか先生」です。
今回から新しい連載を始めます。題して「教材で読む次期学習指導要領」。
これまでの連載「次期学習指導要領を読む」では、10月5日に出た審議まとめを、テーマごとに読んできました。ただ、正直に言うと、審議まとめって抽象的なんですよね。「深い学び」「構造化」「統合的な理解」…。読んでいて分かった気にはなるけれど、「で、来年の4月、自分の教室で何が変わるの?」と聞かれると、案外答えにくい。
ということで、この連載では、いま教室で使っている教材に当てはめて考えてみます。1回目は、4年生の説明文の定番、「アップとルーズで伝える」です。
審議まとめが国語で言っていること
まず、国語の部分で一番大きな変化を押さえておきます。
審議まとめは、これからの国語の「思考力、判断力、表現力等」を、「話や文章の機能」という軸で整理し直すと言っています。機能というのは、その文章が社会の中で何の役割を果たしているか、ということです。示されているのは、次の4つ(いずれも仮称)です。
- 事実や知識の整理と理解
- 考えや主張の理由付けと吟味
- 思いや経験の表出と想像
- 協働による考えの深化や合意
なぜこんな整理をするのか。審議まとめは、今の国語の課題として「各領域の学習が個別のものと意識され、関連付けて学びを深めることが難しい」と書いています。説明文を読む単元は読む単元、新聞を書く単元は書く単元。それぞれ教科書の別のページにあって、子どもにとってはつながっていない。
そう、耳が痛い話なのです。
「アップとルーズ」は、まさに「機能」の教材
「アップとルーズで伝える」は、サッカーの試合のテレビ中継を例に、アップ(ある部分を大きく写す)とルーズ(広い範囲を写す)、それぞれで伝えられることと伝えられないことを説明する文章です。そして後半では、新聞の写真にも話を広げて、送り手は伝えたいことに合わせて、アップとルーズを選んだり組み合わせたりしている、とまとめます。
ここ、大事なところです。この文章が子どもに渡しているのは、「アップとルーズという言葉の知識」だけではありません。「伝える側は、目的に合わせて情報を選んでいる」という見方です。
審議まとめの言葉を借りれば、この教材は「事実や知識の整理と理解」の機能をもつ文章で、しかも中身そのものが「どう伝えるか」の話になっている。読むことと書くことの橋渡しにぴったりなんですね。
これまでの授業で、ありがちだったこと
正直、私はこの教材を「段落の役割」と「対比」を教える教材として扱いがちでした。
- 1・2段落は問いかけ(話題の提示)
- 3〜5段落はアップとルーズの説明と対比
- 6〜8段落はまとめと筆者の考え
これを表に整理して、「アップでは〜が分かるけど、〜は分からない」とワークシートを埋めて、単元が終わる。読む力としては大事なことをやっているのですが、子どもの中で「で、これを何に使うの?」は残ったままでした。
その後、別の時期に新聞づくりの単元があっても、子どもは「アップとルーズ」のことなんて覚えていません。まぁ、そうなりますよね。教師の側でもつなげて計画していなかったので。
次の学習指導要領の考え方で組み直すと
審議まとめは、教科書の作り方についても踏み込んでいます。同じ「話や文章の機能」に関わる教材を関連付けて配置し、既に学んだ知識や技能を思い出しやすくする、と。つまり、読む単元と書く単元を「機能」でひとまとまりにする方向です。
これを「アップとルーズ」でやってみると、こんな流れが考えられます。
第1次 写真で「選ぶ」体験から入る
いきなり本文を読むのではなく、運動会や学校行事の写真を2枚見せます。全体が写った写真と、一人の表情が大きく写った写真。「学級通信に1枚だけ載せるなら、どっち?」と聞きます。
子どもは案外、真剣に悩みます。「みんなが頑張ってるのが分かるから全体」「でも、がんばった顔が伝わるのはこっち」。ここで出てきた言葉が、本文を読むときの「自分の問い」になります。
第2次 本文を「伝える側の工夫」として読む
本文を読むときの中心の問いは、「筆者は、アップとルーズの何を伝えたかったのか」です。段落の役割や対比は、この問いに答えるための道具として扱います。
ここで押さえたい知識は、審議まとめのいう「運用しながら深める」知識です。段落と段落の関係、対比の書き方、具体例とまとめの関係。こういうものを、後の「書く」で使うつもりで学ばせます。
第3次 自分で「選んで」書く
最後に、学校のことを伝える新聞やリーフレットの一部分を書きます。写真を2枚選び、「なぜこの写真をアップ(ルーズ)で使ったのか」を一文で添える。そして記事の文章も、伝えたいことに合わせて、全体の様子から書くか、一人のエピソードから書くかを選ばせます。
こうすると、子どもにとって「アップとルーズ」は、説明文の中の言葉ではなく、自分が伝えるときに使う考え方になります。
評価はどう変わるか
審議まとめは、評価についても「比較的短い単元で特定の学習過程に即して総括的評価まで行おうとする」ことの難しさを指摘しています。「思考・判断・表現」は、単元の途中では形成的評価(学習改善に生かす評価)を中心にして、総括的評価は、単元のまとまりの成果を見て行う、という考え方です。
この単元でいえば、第2次の段落整理のワークシートで「Bをつける」より、第3次で「写真を選んだ理由」と「記事の書き方」に、読んだことが生きているかを見る方が、ねらいに合っています。第2次は「そこ、もう一回読んでみたら?」と返すための材料、くらいに考えておくと、先生の側もずいぶん楽になります。
時数は増やさない、が前提
ちなみに、審議まとめは国語の内容の充実について「総授業時数を増加させないことが前提」とわざわざ書いています。
なので、読む単元と書く単元をつなげるといっても、時数を足すのではありません。教科書で別々に置かれている「説明文の単元」と「新聞・リーフレットの単元」を、年間計画の上で近づけたり、ひとまとまりにしたりする。それで浮いた時間を、書いて直す時間に回す。そんなイメージです。
「余白」の話は、以前の連載(「余白」はひまな時間のことではない)でも書きましたが、こういう組み替えこそが、現場で作れる余白なんじゃないでしょうか。
気をつけたいこと
一つだけ。「機能でつなぐ」が独り歩きすると、説明文が全部「書くための材料」になってしまう心配があります。
「アップとルーズ」の文章そのものの面白さ、たとえば、筆者が「どちらがよい」とは言っていないところ。ここを子どもと味わう時間は残しておきたいです。「筆者は、結局どっちがいいって言ってる?」と聞くと、「どっちとも言ってない」「目的によるって言ってる」と気づく。これが分かると、書くときも「どっちが正解」ではなく「何のために」で選べるようになります。
まとめ
- 次の学習指導要領では、国語の「読む・書く・話す」を「話や文章の機能」でつなぐ方向が示されている
- 「アップとルーズで伝える」は、「伝える側は目的に合わせて情報を選ぶ」という見方を教える教材で、書く単元との橋渡しにぴったり
- 時数は増やさず、年間計画の上で読む単元と書く単元を近づける。評価は書いたもので見る
正直、これは来年の4月を待たなくても、今の教科書でできることです。審議まとめは「新しいことをやれ」と言っているというより、「今あるものを、つなげて使って」と言っているように読めます。
次回は、6年生の「時計の時間と心の時間」で、「考えや主張の理由付けと吟味」を考えてみます。
参考
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.129〜133、p.138 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第2章第1節 国語 第3学年及び第4学年 C読むこと(1)ア・ウ、B書くこと(1)
- 中谷日出「アップとルーズで伝える」(光村図書『国語 四下』)
- 関連記事:「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチ」を一本の線でつなぐ 国語は「話や文章の機能」で再構造化される(連載「次期学習指導要領を読む」)


コメント