「推敲」「校正」「清書」はどう違う? 書き直しの時間に、子どもは何をすればいいのか

「推敲」「校正」「清書」はどう違う? 書き直しの時間に、子どもは何をすればいいのか 授業づくり

夏休みが終わると、作文の季節がやってきます。夏休みの思い出の作文、読書感想文、運動会の作文。書く機会がぐっと増える2学期です。

作文の授業で、下書きを書いたあとに「では、見直しをしましょう」と言うと、子どもは何をするでしょうか。多くの子は、字のまちがいを探して、消しゴムで直します。そして、「直しました」と持ってきます。そのあとの「清書」の時間には、下書きをていねいに写して、完成です。

でも、それで文章はよくなったでしょうか。字はきれいになりましたが、内容は下書きのままです。

この記事では、書き直しの時間に使う言葉、「推敲」「校正」「清書」の定義を整理します。三つを分けて考えると、書き直しの時間に子どもが何をすればいいのかが、はっきりしてきます。

それぞれの言葉の定義

「推敲」とは

推敲は、文章をよりよくするために、内容や構成、言葉を練り直すことです。

推敲という言葉には、有名な由来があります。昔の中国、唐の時代の詩人・賈島が、「僧は推す月下の門」という句をつくったとき、「推す(おす)」がよいか、「敲く(たたく)」がよいかを、ロバに乗りながら夢中で考えていた。そのとき、えらい役人の韓愈の行列にぶつかってしまい、わけを話すと、韓愈は「敲くがよい」と答えた。この話から、詩や文章の言葉を何度も考えて練り直すことを「推敲」と言うようになりました。

この由来からも分かるように、推敲の中心は、言葉や内容を考え直すことです。字のまちがいを直すことだけではありません。

推敲で考えることは、たとえば次のようなことです。

  • 伝えたいことが、はっきり書かれているか
  • 順番は分かりやすいか、段落の分け方はよいか
  • いらないことが書かれていないか、足りないことはないか
  • もっと伝わる言葉はないか
  • 読む人に分かりやすい文になっているか

「校正」とは

校正は、文章の中の、文字や表記のまちがいを見つけて、正しく直すことです。

もともとは、印刷の仕事で使われる言葉です。印刷する前に、試しに刷った紙(校正刷り)と、もとの原稿を照らし合わせて、文字のまちがいを直す作業を校正と言います。

学校の作文で言えば、次のようなことを確かめるのが校正です。

  • 字のまちがい、書きまちがいはないか
  • 字のぬけ(脱字)や、同じ字を二回書いていること(衍字)はないか
  • 送りがなは正しいか
  • 句読点(、。)は正しく打てているか
  • かぎかっこの使い方は正しいか
  • 文末(です・ます/だ・である)がそろっているか

推敲が「中身」を直すのに対して、校正は「表記」を直します。

「清書」とは

清書は、推敲や校正をした下書きを、読む人のために、きれいに書き直すことです。

清書は、文章を直す作業ではありません。直し終わった文章を、ていねいに、読みやすく書き写す作業です。原稿用紙のマスに正しく書く、字をていねいに書く、行をそろえる。読む人が読みやすいように、文章を整えて仕上げるのが清書です。

「校閲」とは

ついでに、もう一つ。新聞社や出版社では、「校閲」という言葉も使います。

校閲は、文章の内容に、まちがいや不正確なところがないかを確かめることです。人名や地名、年号、数字が正しいか、事実と違うことが書かれていないか。校正が文字の誤りを見るのに対して、校閲は内容の誤りを見ます。小学校では、調べたことを書く学習で、「本で調べたことと、書いた数字が合っているか確かめよう」と指導するのが、校閲に近い作業です。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 何を見るか 例
推敲 内容・構成・言葉を練り直す 中身 順番を入れかえる、言葉を選び直す、文を足す・けずる
校正 文字や表記のまちがいを直す 表記 誤字、送りがな、句読点、文末
校閲 内容のまちがいを確かめる 事実 数字、人名、年号
清書 直し終わった文章をきれいに書き写す 見た目 原稿用紙にていねいに書く

順番で言えば、推敲 → 校正(校閲) → 清書です。まず中身を直し、次に表記を直し、最後にきれいに書く。

学習指導要領ではどう扱われているか

小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語「書くこと」では、書いた文章を見直すことについて、学年ごとに次のように示されています。

  • 第1学年及び第2学年:「文章を読み返す習慣を付けるとともに、間違いを正したり、語と語や文と文との続き方を確かめたりすること」
  • 第3学年及び第4学年:「間違いを正したり、相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりして、文や文章を整えること」
  • 第5学年及び第6学年:「文章全体の構成や書き表し方などに着目して、文や文章を整えること」

学習指導要領の解説では、この事項が「推敲」に関する事項として整理されています。

並べると、学年が上がるにつれて、見直す範囲が広がっていくことが分かります。低学年は、まちがいを正し、言葉と言葉のつながりを確かめる。中学年は、相手や目的に合った表現になっているかを確かめる。高学年は、文章全体の構成まで見直す。

低学年では校正に近い見直しが中心で、学年が上がるにつれて、推敲の比重が大きくなっていく、と考えると分かりやすいと思います。

なぜ、三つを分けるのか

「見直し」が校正だけになってしまう

冒頭に書いたように、「見直しをしましょう」と言うと、多くの子は字のまちがいを探します。それは、見直しのやり方を、校正しか知らないからです。

字のまちがいは、見つけやすく、直しやすい。だから、子どもはそこに目が向きます。でも、文章をよくするために一番大事なのは、内容や構成を見直す推敲です。

推敲と校正を分けて指導すると、子どもは「見直しには二つある」ことを知ります。そして、まず中身を見直し、そのあとで字を見直す、という順番を身につけていきます。

一度に全部を見ようとすると、何も見えない

推敲と校正を一度にやろうとすると、どちらも中途半端になります。内容を考えているときに字のまちがいが気になり、字を直しているときに内容のことを忘れてしまう。

プロの書き手も、推敲と校正は別々に行うことが多いと言われます。まず中身を何度も練り直し、中身が決まってから、表記を確かめる。子どもにも、この順番で見直すことを教えると、見直しの質が上がります。

授業での手順

1. 推敲:中身を見直す

下書きを書き終えたら、まず推敲の時間をとります。

推敲のときは、観点をしぼることが大事です。「全部よくしましょう」では、何をすればいいか分かりません。「今日は、伝えたいことが一番最後の段落に書かれているかを見ます」「今日は、『楽しかった』を、もっとくわしい言葉にできないか考えます」。一回の推敲で見る観点は、一つか二つにしぼります。

推敲は、一人でやるよりも、友達と読み合うほうが効果的です。自分の文章は、自分では分かっているので、分かりにくいところに気づきにくいからです。友達に読んでもらい、「ここはどういうこと?」「ここ、もっと知りたい」と言ってもらうと、足りないところが見えてきます。

推敲で直すときは、赤えんぴつで書きこむようにします。消しゴムで消さずに、線で消して、横に書き足す。こうすると、どこをどう直したかが残り、推敲のあとが見えるようになります。先生にとっても、子どもがどんな推敲をしたかが分かる、大事な評価の材料になります。

2. 校正:表記を見直す

推敲が終わったら、校正の時間です。

校正は、チェックリストを使うと、子どもが一人でもできるようになります。「字のまちがいはないか」「送りがなは正しいか」「句読点は正しく打てているか」「文末はそろっているか」。こうした項目を一つずつ確かめていきます。

校正のコツは、声に出して読むことです。黙って読むと、自分の頭の中の文章を読んでしまい、まちがいに気づきません。声に出すと、字のぬけや、読みにくいところに気づきやすくなります。

3. 清書:きれいに書き写す

最後に清書をします。

清書のときに大事なのは、清書の時間に新しく直さないことです。清書の途中で「やっぱりここを変えたい」と思っても、そこで直すと、また字のまちがいが生まれます。直したいところがあるなら、清書の前に推敲に戻ります。

また、清書は、必ずしも全部の文章でやる必要はありません。誰かに読んでもらう文章、掲示する文章、作品として残す文章は清書をしますが、練習の作文は、推敲と校正をした下書きで終わりにしてもかまいません。清書には時間がかかるので、清書をするかどうかを、文章の目的で決めるとよいと思います。

推敲の前と後を比べてみる

推敲で文章がどう変わるのかを、例で見てみます。3年生くらいの子が書きそうな、夏休みの思い出の作文の一部です。

推敲の前

夏休みに、家族で海に行きました。海はとても楽しかったです。そして、すなはまで貝がらをひろいました。そして、お昼ごはんを食べました。そして、また海に入りました。とても楽しかったです。

字のまちがいはありません。校正だけなら、このまま清書してもよさそうです。でも、読んだ人には、何が楽しかったのかが伝わりません。

ここで、推敲の観点を二つにしぼります。「『そして』が続いていないか」「『楽しかった』を、くわしく書けないか」。

推敲の後

夏休みに、家族で海に行きました。すなはまを歩いていると、うすいピンク色の貝がらを見つけました。光にすかすと、少しすきとおって見えました。お昼ごはんのあと、もう一度海に入ると、さっきより波が高くなっていて、波が来るたびに、弟と大声でさけびながらとびはねました。

「そして」が消え、出来事と出来事が自然につながっています。「楽しかった」という言葉は消えましたが、楽しかった様子は、前よりずっと伝わってきます。

推敲は、こうして、文章の中身を変える作業です。この例を子どもに見せて、「どこが変わったかな」と比べさせると、推敲で何をすればいいのかが、子どもにも見えてきます。

読書感想文の推敲

夏休みの宿題で読書感想文を書いてきた子にも、2学期の始めに推敲の時間をとると、文章がぐっとよくなります。

読書感想文でよくあるのが、あらすじが長く、感想が最後の一文だけ、という文章です。推敲の観点を「あらすじは三文以内にする」「自分の体験と結びつけたところを一つ入れる」とすると、感想文らしい文章になっていきます。読書感想文の書かせ方については、「読書感想文、子どもにどう書かせるか あらすじだけで終わらせない指導」にも書いています。

推敲の観点の例

推敲で見る観点を、いくつか例として挙げておきます。学年や文章の種類によって、使い分けてみてください。

内容

  • 一番伝えたいことは何か、それが書かれているか
  • 読む人が知りたいことが書かれているか
  • いらないことが書かれていないか

構成

  • 「はじめ・中・おわり」がはっきりしているか
  • 段落の順番は分かりやすいか
  • 段落の始めの言葉(まず、次に、最後に など)は適切か

言葉

  • 同じ言葉を何度も使っていないか
  • 「楽しかった」「すごかった」を、もっとくわしい言葉にできないか
  • 一文が長すぎないか

読み手

  • 読む人に分かる言葉で書かれているか
  • 読む人が「なるほど」と思える例や理由があるか

よくある質問

低学年でも推敲はできますか?

できます。低学年では、推敲の観点を一つにしぼり、具体的に示すことがポイントです。「『そして』を三回以上使っていたら、一つだけ別の言葉に変えてみよう」「『楽しかった』のあとに、どうして楽しかったのかを一文足してみよう」。このくらい具体的に示すと、低学年の子どもも推敲ができます。

清書をしないと、作文の評価はできませんか?

評価は、清書でなくてもできます。むしろ、推敲のあとが残っている下書きのほうが、子どもがどう考えて文章をよくしたかが分かり、評価の材料として役に立つことがあります。清書は読む人のためのもの、推敲のあとは評価のためのもの、と考えてもよいと思います。

タブレットで書く場合、推敲はどうすればいいですか?

タブレットで書くと、直しても直したあとが残りません。推敲のあとを残したい場合は、直す前の文章をコピーして残しておく、または、直したところに色をつける、といった方法があります。一方で、タブレットは、文の順番を入れかえたり、段落を移動したりするのがかんたんなので、構成の推敲には向いています。

友達どうしで推敲するとき、どんな言葉をかければいいですか?

友達の文章に意見を言うのは、子どもにとってむずかしいことです。「ここがだめ」と言うと、言われた子はいやな気持ちになります。そこで、「いいなと思ったところ」と「もっと知りたいところ」の二つを伝える形にするとよいと思います。「貝がらの色がくわしくて、いいなと思った」「弟とどんなふうに遊んだのか、もっと知りたい」。こう伝えると、書いた子は前向きに受け止めて、文章を直すことができます。

まとめ

推敲は、文章をよりよくするために、内容や構成、言葉を練り直すこと。
校正は、文字や表記のまちがいを見つけて、正しく直すこと。
校閲は、内容のまちがいを確かめること。
清書は、直し終わった文章を、読む人のためにきれいに書き写すこと。

見直しの時間が「字のまちがい探し」だけになっているなら、推敲と校正を分けてみてください。まず中身を、次に表記を、最後にきれいに。この順番を子どもと共有するだけで、書き直しの時間は、文章が本当によくなる時間に変わります。

そして、推敲のあとが残った下書きは、子どもががんばって考えたしるしです。清書と一緒に、ぜひ大事にしてあげてください。

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