7月。1学期の終わりが近づくと、職員室では通知表の話が増えてきます。「評価、もうつけ終わった?」「評定の会議はいつ?」。
ふだん何気なく使っている「評価」と「評定」。この二つは、同じ意味ではありません。そして、保護者から「この◎と○は、何を見てつけているんですか」「3段階の『2』は、普通という意味ですか」と聞かれたときに、きちんと説明できるかどうかは、この二つの違いが分かっているかどうかにかかっています。
この記事では、「評価」と「評定」の定義を中心に、「観点別学習状況の評価」「所見」「指導要録」と「通知表」の違いまで、学期末に使う言葉を整理します。
それぞれの言葉の定義
「評価」とは
評価は、子どもの学習の状況を見て、それを指導や学習の改善に生かすことです。
ここで大事なのは、評価の目的が「点数や記号をつけること」だけではない、という点です。学習評価は、子どもがどこまで分かっていて、どこでつまずいているのかを先生がつかみ、次の指導に生かすためのものです。同時に、子ども自身が自分の学習を振り返り、次にどうすればいいかを考えるためのものでもあります。
国立教育政策研究所が出している「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」でも、学習評価は、教師が指導の改善を図るとともに、児童が自らの学習を振り返って次の学習に向かうことができるようにするためのものだ、と説明されています。
つまり、評価は、毎日の授業の中で行われるものです。発言を聞く、ノートを見る、テストの答案を見る。そのすべてが評価です。
「観点別学習状況の評価」とは
評価の中でも、学期末や学年末にまとめて記録するのが「観点別学習状況の評価」です。
観点別学習状況の評価は、各教科の学習の状況を、いくつかの観点に分けて、目標にどこまで達しているかを段階で表したものです。
今の学習指導要領のもとでは、観点は次の三つです。
- 知識・技能
- 思考・判断・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
そして、それぞれの観点について、次の三段階で表します。
- A:「十分満足できる」状況と判断されるもの
- B:「おおむね満足できる」状況と判断されるもの
- C:「努力を要する」状況と判断されるもの
通知表の「◎○△」や「よくできる・できる・もう少し」は、多くの場合、このA・B・Cを学校ごとの表し方に置きかえたものです。
「評定」とは
評定は、観点別学習状況の評価をもとに、その教科の学習の状況を総合的にまとめて、段階で表したものです。
小学校では、第3学年以上の各教科について、3段階で評定をつけます。
- 3:「十分満足できる」状況と判断されるもの
- 2:「おおむね満足できる」状況と判断されるもの
- 1:「努力を要する」状況と判断されるもの
観点別の評価が「観点ごとの成績」だとすると、評定は「教科全体の成績」です。三つの観点の評価を合わせて、教科としてどの段階にあるかを一つの数字で表します。
評価と評定の関係
整理すると、次のような関係になります。
- 毎日の授業の中で、子どもの学習の状況を見る(評価)
- 単元や学期の終わりに、観点ごとに目標にどこまで達しているかを判断する(観点別学習状況の評価)
- 三つの観点の評価をまとめて、教科全体の段階を決める(評定)
評価は広い言葉で、評定は、その評価をまとめた結果の一つです。評価のほうが大きな言葉で、評定はその中に含まれる、と考えると分かりやすいと思います。
並べてみると
| 言葉 | ひと言でいうと | 表し方 | いつ行うか |
|---|---|---|---|
| 評価 | 学習の状況を見て、指導や学習の改善に生かす | 言葉、記録、記号など | 毎日の授業 |
| 観点別学習状況の評価 | 観点ごとに、目標への到達の度合いを表す | A・B・C(三つの観点) | 単元・学期・学年の終わり |
| 評定 | 観点別の評価をまとめ、教科全体の状況を表す | 3・2・1(小3以上) | 学期・学年の終わり |
| 所見 | 子どもの学習や生活の様子を文章で表す | 文章 | 学期・学年の終わり |
「目標に準拠した評価」という考え方
評価と評定を説明するときに、もう一つ知っておきたいのが、「目標に準拠した評価」という考え方です。
今の評価は、学習指導要領に示された目標に照らして、子どもがどこまで達成しているかを見る評価です。これを「目標に準拠した評価」と言います。いわゆる絶対評価です。
これに対して、かつての指導要録では、集団の中での位置で成績を決める「相対評価」が使われていた時期がありました。クラスの中で上位何パーセントが「5」、というような決め方です。小学校・中学校の指導要録では、平成13年(2001年)の改訂から、評定も目標に準拠した評価で行うことになりました。
目標に準拠した評価では、学級の全員が目標を十分に達成していれば、全員が「3」になることもありえます。反対に、全員が「1」になることもありえます。他の子との比べっこではなく、目標との比べっこなのです。
このことを保護者に説明できると、「うちの子はクラスで何番くらいですか」という質問にも、「順位ではなく、目標にどこまで届いているかを見ています」と答えることができます。
「個人内評価」という見方
目標に準拠した評価と並んで、もう一つ知っておきたいのが「個人内評価」です。
個人内評価は、その子自身の以前の姿と比べて、どれだけ伸びたか、どんなよさがあるかを見る評価です。目標との比べっこでも、ほかの子との比べっこでもなく、その子自身との比べっこです。
たとえば、4月には一文しか書けなかった子が、7月には三文続けて書けるようになった。目標に照らせばまだ「B」かもしれませんが、その子の中では大きな伸びです。こうした伸びは、観点別の評価や評定には表れにくいものです。
個人内評価は、主に所見の中で文章として伝えます。評定や観点別の評価が「目標にどこまで届いたか」を表すのに対して、所見は「その子がどう伸びたか、どんなよさがあるか」を表す場所です。記号と文章、二つの方法で子どもの姿を伝えることで、評価はより子どもに寄りそったものになります。
評価の材料を集める工夫
評定を目標に照らして決めるためには、評価の材料が必要です。テストだけでなく、さまざまな材料を、無理なく集める工夫を紹介します。
一つ目は、単元の評価計画をつくっておくことです。単元の始めに、「どの時間に、どの観点を、何で見るか」を決めておくと、その時間だけ意識して記録をとればよくなります。全部の時間で記録しようとすると、授業に集中できなくなります。
二つ目は、ノートや振り返りを材料にすることです。毎時間、授業の最後に短い振り返りを書かせておくと、それが思考・判断・表現や、主体的に学習に取り組む態度の材料になります。ノートを集めて見るのは大変ですが、記録に残す時間を決めておけば、その日だけ集めればすみます。
三つ目は、座席表を使うことです。座席表を一枚印刷して、授業中に気づいたことを書きこんでいきます。「〇〇さん、図を使って説明できた」「〇〇さん、友達の考えを聞いて自分の考えを変えた」。短いメモでも、学期末に見返すと、その子の姿が浮かんできます。
「2」は「普通」なのか
保護者からよく聞かれるのが、「3段階の『2』は、普通という意味ですか」という質問です。
評定の「2」は、「おおむね満足できる」状況です。言いかえると、学習指導要領の目標を、おおむね達成しているということです。決して、「平均」や「まあまあ」という意味ではありません。その学年で身につけるべきことを、おおむね身につけている、という評価です。
ここは、ていねいに説明したいところです。「2」をもらった子どもや保護者が、「普通か」とがっかりすることがあります。でも、目標をおおむね達成していることは、十分に認められるべきことです。「3」は、それをさらにこえて、十分に満足できる状況にあるということです。
「指導要録」と「通知表」の違い
評価と評定の話をするときに、混ざりやすいのが「指導要録」と「通知表」です。
指導要録とは
指導要録は、子どもの学籍と、指導の過程や結果を記録した公的な書類です。学校教育法施行規則で、校長が作成しなければならないと定められている表簿です。転校するときには、写しなどが転校先の学校に送られます。
指導要録には、観点別学習状況の評価や評定、総合所見などが記録されます。保護者が目にすることは、ふつうはありません。
通知表とは
通知表は、学校が、子どもの学習や生活の様子を、子どもや保護者に伝えるためにつくる書類です。
通知表は、法律で作成が義務づけられているものではありません。ですから、名前も、様式も、記載する内容も、学校ごとに違います。「あゆみ」「通信票」「かがやき」など、学校によってさまざまな名前がついているのはそのためです。
多くの学校では、指導要録と同じように、観点別の評価や評定を通知表にも載せていますが、記号の表し方(◎○△、A・B・C、よくできる・できる・もう少し など)や、評定を載せるかどうかは、学校によって違います。
学期末に慌てないために
評価と評定の違いが分かると、学期末の作業の考え方も変わります。
評定は、毎日の評価の積み重ね
評定は、学期末に急に決めるものではありません。毎日の授業の中での評価、単元ごとの観点別の評価が積み重なって、最後に評定になります。
学期末になって、「この子の思考・判断・表現は、AかBか」と迷うのは、単元ごとの記録が十分でないからです。単元の終わりに、観点ごとの評価を記録しておく。それだけで、学期末の作業はぐっと楽になります。
全部の時間で記録しなくていい
とはいえ、毎時間、全員の三観点を記録するのは無理です。
参考資料でも、毎時間すべての観点を記録に残す必要はなく、単元の中で、記録に残す場面を精選することが示されています。日々の授業では、子どもの様子を見て指導に生かす評価を中心にし、記録に残す評価は、単元のまとまりの中で、ここぞという場面にしぼる。この使い分けが大事です。
テストだけで決めない
評定を決めるときに、テストの点数だけを見てしまうことがあります。でも、テストで見えるのは、主に「知識・技能」と、一部の「思考・判断・表現」です。
ノートや作品、発言、振り返りの記述なども、大事な評価の材料です。とくに「主体的に学習に取り組む態度」は、テストではほとんど見えません。テストの丸つけや記録の工夫については、「テストの丸つけを速くする 採点・返却・記録の時短のコツ」にも書いています。
子どもに評価を返す
最後に、評価を子どもに返すことについて。
評価は、先生が記録するためだけのものではありません。子どもが自分の学習を振り返り、次に向かうためのものでもあります。
通知表を渡すときに、「ここがよくできたね」「次はここをがんばろう」と、一人一人に一言を添えるだけでも、評価は子どもにとって意味のあるものになります。記号や数字だけを渡すのではなく、その意味を伝える。それが、評価を子どもの学びにつなげる一番の方法だと思います。
所見の書き方については、「初めての通知表所見、何から始める?」にまとめています。
よくある質問
1・2年生には、評定はつかないのですか?
小学校の指導要録では、評定は第3学年以上の各教科について記入することになっています。1・2年生では、観点別学習状況の評価は記録しますが、評定はつけません。また、生活科は1・2年生だけの教科なので、評定はありません。通知表でどう表すかは、学校ごとに決められています。
観点がA・A・Bなら、評定は「3」ですか?
観点別の評価から評定をどう決めるかは、学校の中で決めておくことが一般的です。たとえば、AとBの組み合わせのときにどう判断するか、ある観点を重く見るかどうかなど、学校や学年で基準をそろえておく必要があります。担任一人で判断せず、学年や学校で共通理解を図ることが大事です。
「評価」と「評定」を、保護者にどう説明すればいいですか?
「評価は、ふだんの授業で子どもの学習の様子を見て、次の指導に生かすことです。評定は、その評価をまとめて、教科ごとの学習の状況を3段階で表したものです。どちらも、ほかの子との比べっこではなく、学習指導要領の目標にどこまで届いているかを見ています」。このくらいの説明で、多くの保護者は納得してくれると思います。
「C」や「1」をつけるとき、気をつけることはありますか?
「努力を要する」と判断するときは、その根拠になる記録をしっかり残しておくことが大事です。そして、通知表を渡す前に、学期の途中でその子にどんな手立てをとったかを振り返っておきます。評価は指導に生かすためのものなので、「C」がついた観点は、次の学期にどう指導するかを考える出発点になります。保護者に伝えるときも、「ここが課題です」だけでなく、「次の学期はこう取り組んでいきます」とセットで伝えると、前向きに受け止めてもらいやすくなります。
まとめ
評価は、子どもの学習の状況を見て、指導や学習の改善に生かすこと。
観点別学習状況の評価は、三つの観点ごとに、目標への到達の度合いをA・B・Cで表したもの。
評定は、観点別の評価をまとめ、教科全体の学習の状況を3段階で表したもの。小学校では3年生以上につける。
評価は大きな言葉で、評定はその結果の一つです。そして、どちらも、ほかの子との比べっこではなく、目標との比べっこです。
学期末の評定は、毎日の評価の積み重ね。そう考えると、7月や12月に慌てないために、今日の授業で何を見るかが、少しだけ大事に思えてきます。


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