「習得」「活用」「探究」はどう違う? 学びの3つの段階を、一つの単元に置いてみる

「習得」「活用」「探究」はどう違う? 学びの3つの段階を、一つの単元に置いてみる 授業づくり

「習得・活用・探究」。学習指導要領や研究紀要で、よく三つ並んで出てくる言葉です。何となく「覚える、使う、調べる」くらいの意味で受け取っている先生が多いのではないでしょうか。私も長いあいだ、その程度の理解でした。

でも、三つの言葉をきちんと定義してみると、それぞれが授業の中で果たす役割がはっきりしてきます。そして、三つは順番に並ぶだけではなく、行ったり来たりする関係だということも見えてきます。

この記事では、「習得」「活用」「探究」の定義と、三つの関係、そして一つの単元の中に三つを置くとどうなるかを書いていきます。

この三つの言葉は、どこから来たのか

三つの言葉が学校で広く使われるようになったのは、平成20年(2008年)の学習指導要領の改訂のころです。その前に出された中央教育審議会の答申で、基礎的・基本的な知識・技能を「習得」し、それを「活用」して課題を解決するための思考力・判断力・表現力等を育み、さらに自ら課題を見つけて「探究」する、という学びの流れが示されました。

平成29年(2017年)の学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」という言葉が前に出てきましたが、習得・活用・探究という学びの過程は、その「深い学び」を説明する中でも引き続き大事にされています。つまり、古い言葉になったわけではなく、今の授業づくりの土台としても使える言葉です。

それぞれの言葉の定義

「習得」とは

習得は、基礎的・基本的な知識や技能を、確実に身につけることです。

漢字の読み書き、九九、計算の仕方、地図記号、実験器具の使い方、音読の仕方、跳び箱の踏み切り方。こうした、そのあとの学習の土台になる知識や技能を身につける学びが、習得です。

習得というと、ドリルやくり返しの練習を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれも習得の大事な方法です。ただ、習得は「覚えて終わり」ではありません。なぜそうなるのか、どういう意味なのかを分かったうえで身につけることも、習得に含まれます。九九を唱えられるだけでなく、「3×4は、3が4つ分」という意味が分かっていること。それが、あとで使える習得です。

「活用」とは

活用は、習得した知識や技能を使って、問題を解いたり、考えを表したりすることです。

習った計算の仕方を使って文章題を解く。学んだ説明文の構成を使って、自分で説明する文章を書く。地図記号の知識を使って、知らない町の地図から様子を読み取る。こうした学びが活用です。

ポイントは、習ったときとは少し違う場面で使うことです。教科書の例題とまったく同じ問題を解くのは、まだ習得の練習です。数字が変わる、場面が変わる、問われ方が変わる。そういう少し違う場面で使えたときに、知識や技能は「使える力」になったと言えます。

「探究」とは

探究は、自分で問いや課題を見つけ、それを解決するために、知識や技能を使いながら調べたり考えたりし続けることです。

活用との違いは、問いを誰が立てるかです。活用では、多くの場合、先生や教科書が問題を出します。探究では、子どもが自分で「なぜだろう」「どうしたらいいだろう」という問いをもち、その問いに向かって学びを進めます。

総合的な学習の時間の学習指導要領解説では、探究的な学習の過程として、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の四つが示されています。そして、この過程はくり返し行われ、らせんのように高まっていくものとされています。探究は、一回調べて終わりではなく、まとめた中から次の問いが生まれる学びです。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 問いを出すのは 例
習得 基礎的な知識・技能を身につける 先生・教科書 九九を意味とともに覚える、漢字を練習する
活用 身につけたことを、違う場面で使う 主に先生・教科書 九九を使って文章題を解く、学んだ構成で説明文を書く
探究 自分で問いを立て、解決に向けて学び続ける 子ども 地域の課題を調べて提案する、自分の疑問を実験で確かめる

表にすると、三つの違いは「何をするか」だけでなく、「問いを出すのは誰か」にもあることが分かります。習得から探究に向かうにつれて、学びの主導権が少しずつ子どもに移っていく、と考えると分かりやすいと思います。

三つは「順番」ではなく「行き来」する

三つの言葉を聞くと、習得→活用→探究の順に進むもの、と思いがちです。たしかに、何も知らない状態で探究はできないので、大まかにはその順番があります。

でも、実際の学びでは、三つは行ったり来たりします。

たとえば、総合的な学習の時間で地域のごみの問題を探究している子どもが、調べたデータをグラフにしようとして、割合の計算につまずいたとします。このとき子どもは、算数で習った割合をもう一度確かめる必要が出てきます。探究の途中で、習得に戻るわけです。そして、確かめた割合の計算をグラフづくりに使う。これは活用です。

このように、探究の中で「もう一回ちゃんと分かりたい」という必要が生まれると、習得の学びに意味が出てきます。逆に、習得したことを使う場面がないと、子どもは「何のためにこれを覚えるのか」が分からないまま練習を続けることになります。

三つを行き来させることは、子どもにとって、学ぶ理由が見える学びにつながります。

一つの単元に、三つを置いてみる

ここからは、一つの単元の中に習得・活用・探究を置くとどうなるかを、例で考えてみます。

国語(説明文の単元)

  • 習得:教科書の説明文を読み、「はじめ・中・おわり」の構成や、問いと答えの関係を学ぶ。段落ごとの役割を表にまとめる
  • 活用:学んだ構成を使って、同じテーマの別の短い説明文を読み、構成を自分で見つける。または、身近なことについて「はじめ・中・おわり」で短い説明文を書く
  • 探究:自分が調べたいことを決め、本や資料で調べ、学んだ構成を使って、ほかの人に伝わる説明文やリーフレットにまとめる

国語では、教科書の教材で習得し、別の文章で活用し、自分のテーマで探究する、という流れが組みやすいです。

算数(面積の単元)

  • 習得:長方形と正方形の面積の公式を、1平方センチメートルの正方形がいくつ分か、という意味とともに身につける
  • 活用:L字形のような複合図形の面積を、長方形に分けたり、大きな長方形から引いたりして求める
  • 探究:教室や運動場、自分の家の部屋など、身近な場所の面積を自分で測って求める。「どうやって測ればいいか」を自分たちで考える

算数は習得と活用の区別がはっきりしている教科ですが、単元の最後に、子どもが自分で問いを立てる時間を少し入れるだけで、探究の入口をつくることができます。

理科(ふりこの単元)

  • 習得:ふりこの1往復の時間を正確に測る方法、条件をそろえて実験する方法を身につける
  • 活用:ふりこの長さ、おもりの重さ、ふれはばのうち、どれが1往復の時間に関係するかを、条件をそろえて調べる
  • 探究:「ふりこ時計を1秒で動かすにはどうしたらいいか」など、自分で立てた問いを、学んだ方法で確かめる

理科は、もともと探究の過程(問題・予想・実験・結果・考察)を大事にする教科です。その中で、実験の技能を確実に習得しておくことが、探究の質を支えます。

混ざりやすいところ

「活用」と「探究」の区別がつかない

いちばん混ざりやすいのが、活用と探究です。どちらも、習ったことを使って考える学びだからです。

区別のポイントは、先ほど書いたとおり、問いを誰が立てるかです。先生が「この図形の面積を求めましょう」と出すのは活用、子どもが「この部屋の面積はどうやって測ればいいんだろう」と自分で問いをもつのは探究です。

もちろん、実際の授業では、先生が問いのきっかけをつくることも多いです。それでも、最終的に子どもが「自分の問い」として取り組んでいるかどうかを見ると、活用か探究かの見分けがつきます。

「習得」が「ドリル」だけになってしまう

習得を「覚えさせること」と考えると、授業がドリルとテストのくり返しになりがちです。でも、意味が分からないまま覚えたことは、活用の場面でなかなか使えません。

習得の時間にも、「なぜそうなるのか」を考える場面を入れることが大事です。たとえば漢字なら、部首の意味や成り立ちを知ると、新しい漢字も覚えやすくなります。計算なら、計算の仕組みを図で確かめておくと、桁が増えたときにも応用がききます。

「探究」を総合だけのものにしてしまう

探究というと、総合的な学習の時間のことだと思われがちです。たしかに、総合は探究的な学びが中心の時間です。

でも、国語でも算数でも理科でも、単元の最後に「自分で問いを立てて調べる」時間をつくれば、それは探究の学びです。どの教科でも、習得・活用・探究の三つを意識すると、単元の組み立て方に幅が出てきます。

子どもにも三つを意識させる

習得・活用・探究は、先生が単元を組み立てるための言葉ですが、子どもにも、かみくだいて伝えることができます。

たとえば中学年なら、「今日は『身につける日』です」「今日は『使ってみる日』です」「今日は『自分で調べる日』です」と、その時間の学びの種類を最初に伝えます。言葉は何でもかまいません。大事なのは、子どもが「今日は何をする時間なのか」を分かっていることです。

「身につける日」と分かっていれば、子どもは練習に集中できます。「使ってみる日」なら、前に習ったことを思い出そうとします。「自分で調べる日」なら、自分の問いをもって授業に向かいます。同じ45分でも、子どもの構えがまったく違ってきます。

高学年なら、単元の計画表に、それぞれの時間が習得・活用・探究のどれにあたるかを書いておくのもよいと思います。子どもが自分で「ここまでで身につけたことを、次の時間に使うんだな」と見通せるようになります。

評価との関係

三つの段階は、評価の観点とも関係があります。

習得の段階で主に見るのは、「知識・技能」です。漢字が正しく書けるか、計算の仕方が分かっているか、実験器具を正しく使えるか。

活用や探究の段階で主に見るのは、「思考・判断・表現」です。習ったことを違う場面で使えるか、自分の考えを理由とともに表せるか。

そして、探究の段階では、「主体的に学習に取り組む態度」も見えやすくなります。自分で問いを立て、うまくいかなくても調べ方を変えて粘り強く取り組んでいるか。

もちろん、三つの段階と三つの観点がぴったり一対一で対応するわけではありません。習得の時間にも考える場面はあるし、探究の時間にも知識は使われます。それでも、「この時間は主に何を見るか」を決めるときの手がかりとして、三つの段階を使うと、評価の場面を選びやすくなります。

時間が足りない、という問題

正直に言うと、どの単元にも三つをきちんと置くのは、時間的に無理があります。教科書の内容をこなすだけで精いっぱい、という単元もたくさんあります。

だから、私は、すべての単元に三つを置こうとはしていません。1年間を見渡して、「この単元は習得中心でいく」「この単元は活用まで」「この単元は探究の時間を少しとる」と、単元ごとに重みを変えています。

たとえば、国語なら、説明文の単元のうち一つだけを探究まで広げる。算数なら、図形の単元の最後に1時間だけ、身近なものを測る時間をとる。それだけでも、子どもにとっては「習ったことが使える」体験になります。全部をやろうとするより、どこで何をやるかを選ぶほうが、無理なく続けられると思います。

よくある質問

習得・活用・探究は、今の学習指導要領にも出てくる言葉ですか?

平成29年の学習指導要領のもとになった平成28年(2016年)の中央教育審議会の答申では、「深い学び」を、習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の見方・考え方を働かせながら学ぶこととして説明しています。言葉としての扱いは平成20年のころより目立たなくなりましたが、考え方は今も生きています。

「探究」と「探求」は、どう違いますか?

学校の学習で使うのは「探究」です。「探究」は物事の本質を見きわめようと深く調べること、「探求」は何かを探し求めることを表します。学習指導要領では「探究」が使われているので、指導案などでも「探究」と書くのが一般的です。

低学年でも探究はできますか?

できます。生活科は、子どもが身近な人や自然と関わりながら気づきを深めていく教科で、探究の芽になる学びがたくさんあります。「どうして朝顔のつるは同じ向きに巻くのかな」という疑問をもち、毎日観察して確かめる。これも立派な探究です。低学年では、問いをもつこと、確かめようとすることを大事にすればよいと思います。

活用や探究の時間をつくると、習得の時間が足りなくなりませんか?

その心配はもっともです。ただ、活用の場面で「もう一回確かめたい」という必要が生まれると、子どもは習得に戻って自分から練習するようになります。目的をもって練習した知識は、目的なく練習した知識より残りやすいものです。習得の時間を少し短くして、活用の時間で使いながら定着させる、という考え方もできます。たとえば漢字なら、新しい漢字を練習する時間を毎日少しずつにして、作文や日記で使う場面を増やすと、使いながら覚えることができます。

まとめ

習得は、基礎的な知識や技能を、意味とともに身につけること。
活用は、身につけたことを、少し違う場面で使うこと。
探究は、自分で問いを立て、解決に向けて学び続けること。

三つの違いは、学ぶ内容の難しさではなく、問いを出すのが誰か、そして学びの主導権がどこにあるかにあります。三つは順番に並ぶだけでなく、探究の中で習得に戻り、習得したことを活用する、というように行き来します。

全部の単元に三つを置かなくてかまいません。1年の中で、「この単元は探究まで」と決めた単元を一つでもつくってみてください。そこで子どもが自分の問いを追いかける姿を見ると、ふだんの習得の時間の意味も、きっと違って見えてくるはずです。

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