【授業を見る・振り返る #5】授業の振り返りのしかた 「うまくいった」「いかなかった」で終わらせない

【授業を見る・振り返る #5】授業の振り返りのしかた 「うまくいった」「いかなかった」で終わらせない 授業づくり

授業が終わって、職員室に戻る。椅子に座って、ふーっと息をつく。

「今日の授業、うまくいかなかったなぁ」

こう思う日、ありますよね。教員なら、だれにでもあると思います。でも、「うまくいかなかった」と思って、それで終わってしまうことが多い。次の授業の準備もあるし、宿題の丸つけもある。気づいたら、次の日の同じ時間がやってきて、また同じようなところでつまずく。

逆に、「今日はうまくいった」と思う日もあります。でも、何がうまくいったのかは、案外はっきりしない。だから、次に同じことをやろうとしても、うまくいかなかったりする。

今回は、授業の振り返りのしかたです。「うまくいった」「いかなかった」で終わらせず、次の授業につながる振り返りを考えてみます。

前回書いた「記録」が、ここで生きてきます。

振り返りの出発点は「ねらい」と「子どもの姿」のずれ

授業を振り返るとき、まず何と何を比べるか。

私は、ねらいと、子どもの姿のずれから考えるようにしています。

この1時間で、子どもにこうなってほしかった(ねらい)。実際の子どもは、こうだった(子どもの姿)。その間に、どれくらいずれがあったか。

「うまくいった」「うまくいかなかった」という感覚は、たいてい、先生の気持ちから出てきます。予定どおりに進んだからうまくいった。時間が足りなかったからうまくいかなかった。手がたくさん挙がったからうまくいった。でも、それは「先生の計画どおりだったか」の話で、「子どもがねらいに近づいたか」とは、必ずしも一致しません。

時間は足りなかったけど、子どもたちは最後の5分で「あ、そういうことか」という顔をしていた。それなら、ねらいに向かっては進んでいます。逆に、予定どおり進んで手もたくさん挙がったけど、振り返りを読んだら半分の子がよく分かっていなかった。それは、ねらいからずれています。

振り返りのものさしは、先生の計画ではなく、ねらいと子どもの姿。ここを決めておくだけで、振り返りの中身がずいぶん変わります。

3つの問いで振り返る

では、具体的にどう振り返るか。私は、3つの問いを使っています。

  1. 何が起きたか
  2. なぜ起きたか
  3. 次はどうするか

シンプルですが、これを順番に考えると、振り返りが「反省」で終わらず、「次の手」まで届きます。

問い1 何が起きたか

まず、事実を確かめます。

ここで役に立つのが、前回書いた記録です。板書の写真、1行メモ、子どものノートと振り返り。それを見ながら、何が起きたかを確かめます。

ポイントは、第2回のメモと同じで、事実と解釈を分けること。「子どもが乗ってこなかった」は解釈です。事実は、「中心発問のあと、手を挙げたのは3人だった」「ペアの話し合いで、黙ったままのペアが5組あった」。

事実で書くと、自分の感覚が正しかったかどうかも確かめられます。「乗ってこなかった」と思っていたけど、ノートを見たら、ほとんどの子が何かしら書いていた。手は挙がらなかったけど、考えてはいた。そういうことが、よくあります。

問い2 なぜ起きたか

次に、なぜそうなったかを考えます。

ここで大事なのは、原因を一つに決めつけないことです。手が挙がらなかったのは、発問がむずかしかったからかもしれない。一人で考える時間が短かったからかもしれない。前の時間の学習が定着していなかったからかもしれない。そもそも、このクラスで「分からないことを言っていい」空気が、まだ育っていないからかもしれない。

考えられる原因を、いくつか並べてみます。そして、その中で一番ありそうなものを、記録や子どものノートから探します。

ここで、この連載の軸を思い出してください。授業は、子どもと先生がそれまでに積み重ねてきた関係でできている。「なぜ」を考えるとき、その日の授業の中だけに原因を探すのではなく、それまでの積み重ねにも目を向けてみる。そうすると、「この発問が悪かった」だけでなく、「この子たちは、まだここが育っていない。だから、この発問はまだ早かった」という見方ができるようになります。

問い3 次はどうするか

最後に、次はどうするかを決めます。

ここで一番大事なのは、1つだけにすることです。

振り返ると、直したいところはたくさん出てきます。発問の言い方、時間配分、板書、ペアの組み方、指名の順番。でも、全部を次の授業で直そうとすると、結局どれも中途半端になります。それに、何を変えたから何が変わったのかが分からなくなります。

次の授業で変えるのは、1つだけ。「明日は、一人で考える時間を3分から5分にする」。「明日は、中心発問を言う前に、黒板に図を1つかく」。そのくらい具体的に、1つだけ決めます。

そして次の日、その1つを変えて授業をして、また振り返る。変えたことで、子どもの姿がどう変わったか。この小さなくり返しが、授業を少しずつ自分のクラスに合った形にしていくのだと思っています。

子どものノートと振り返りから振り返る

3つの問いを考えるとき、一番頼りになるのは、子どものノートと振り返りの記述です。

先生の記憶や感覚は、思っているよりあてになりません。授業中の先生は、手を挙げた子や、発言した子のことはよく覚えています。でも、黙っていた子が何を考えていたかは、ほとんど分かっていません。

子どものノートを見ると、それが分かります。黙っていた子のノートに、実はすごくいい考えが書いてあった。手を挙げて正解を言った子のノートが、実は途中で止まっていた。

前回、「気になる子3〜4人分だけ読む」と書きました。振り返りのときは、もう少しだけ範囲を広げて、クラス全体のノートをざっとめくる時間をとれるといいです。1人10秒で、30人なら5分。細かく読む必要はありません。見るのは、次のようなことです。

  • 本時のねらいに関わることが、書けているか(書けている子は何人くらいか)
  • 書けていない子は、どこで止まっているか
  • 予想していなかった考えを書いている子はいるか

これだけで、「なぜ起きたか」の手がかりがずいぶん見えてきます。そして、予想していなかった考えを書いている子は、次の時間の導入で使えるかもしれません。

ノートをめくるときは、名簿を横に置いて、「書けている」「途中で止まっている」「書いていない」に、〇・△・空白くらいの印をつけておくと便利です。これは、はじめての評価で書いた「指導に生かす評価」の記録にもなります。授業の振り返りと、子どもの学習の評価は、実はかなり重なっているんです。

振り返りを、次の時間の「導入」につなげる

振り返りで分かったことは、先生の授業を直すためだけに使うものではありません。子どもと一緒に使うこともできます。

たとえば、振り返りで「半分くらいの子が、2つの考えのちがいを言葉にできていなかった」と分かったとします。次の時間の導入で、それをそのまま子どもに返してみる。

「昨日のノートを見たら、〇〇のやり方と△△のやり方、どっちも分かったっていう人が多かったんだけど、何がちがうのかを書けた人は少なかったんだ。今日は、そこからいこうか」

こう言われると、子どもは「先生、ノートを読んでくれたんだ」と感じます。そして、昨日の授業と今日の授業が、自分の学びとしてつながります。導入の型でいえば、「前の時間の子どもの疑問から入る」形です(「導入」7つの型の型6)。

振り返りを子どもに返すことは、それ自体が、子どもとの関係を積み重ねることでもあります。先生が自分たちのノートを読み、それをもとに授業を変えてくれる。それが続くと、子どもはノートや振り返りを、先生への「手紙」のように書くようになっていきます。振り返りの中身が濃くなれば、先生の振り返りの材料も増えていく。いい循環です。

「うまくいった」ときこそ振り返る

振り返りというと、うまくいかなかったときにするもの、というイメージがあるかもしれません。でも、私は、うまくいったときこそ振り返ったほうがいいと思っています。

うまくいかなかったときは、放っておいても、なんとなく気になります。でも、うまくいったときは、「よかった」で終わってしまう。そして、何がよかったのかが分からないまま、次に同じことをやって、うまくいかない。

うまくいった日にも、3つの問いを考えてみます。何が起きたか(子どもがどんな姿だったか)。なぜ起きたか(何がそれを引き出したのか)。次はどうするか(それを、どの場面でまた使えるか)。

うまくいった理由が分かると、それは自分の「型」になります。そして、その理由に、このクラスの子どもたちとの関係が含まれていることに気づくこともあります。「この発問が良かった」だけでなく、「この子たちは、比べる活動のときに一番生き生きする」というように。それは、このクラスに合った授業の形を探すための、大事な手がかりです。

振り返りの時間がないときの「5分・3行」

ここまで書いておいて何ですが、毎日の授業を毎回じっくり振り返る時間は、ありません。

だから、ふだんは5分・3行で十分だと思っています。

授業のあと、または放課後に、5分だけ時間をとる。そして、3行だけ書く。

  • 1行目:何が起きたか(事実を1つ)
  • 2行目:なぜそうなったか(自分の考え)
  • 3行目:次はどうするか(1つだけ)

たとえば、こんな感じです。

  • 中心発問のあと、手を挙げたのは3人。ノートは半分以上の子が書けていた。
  • 考えはあったけど、言葉にする自信がなかったのかもしれない。
  • 次は、全体で話す前に、ペアで1分話す時間を入れる。

これを、前回書いた板書の写真の1行メモに足すだけでもかまいません。1日1つの授業だけでもかまいません。続けることが、何より大事です。

単元の終わりに、単元全体を振り返る

毎時間の振り返りとは別に、単元の終わりに、単元全体を振り返る時間をとります。こちらは、30分くらいとれると理想です。

単元ファイル(前回書いた、単元ごとの記録をまとめたもの)を開いて、最初の時間から最後の時間まで、板書の写真と1行メモを順番に見ていきます。そして、こんなことを考えます。

単元の目標に、子どもたちはどれくらい届いたか。単元の終わりのテストや、まとめの活動の作品を見ながら確かめます。

単元のどこで、子どもが一番伸びたか。どこで一番止まったか。1行メモを並べると、単元の中の「山」と「谷」が見えてきます。

単元計画のどこを変えるか。時間が足りなかった次はどこか。逆に、時間をかけすぎた次はどこか。来年同じ単元を教えるなら、どこを変えるか。はじめての単元計画づくりでつくった単元計画の表に、直接書き込んでおきます。

そして、ここが一番大事なのですが、来年の自分に向けて、一言だけ書き残す。「この単元、去年は話し合いの前に一人の時間を長めにとったほうがよかった。ただし、それはこのクラスがそうだっただけかも」。

最後の「このクラスがそうだっただけかも」が、大事なところです。今年の振り返りは、今年のクラスの振り返りです。来年のクラスは、また違う子どもたちです。去年の振り返りをそのまま当てはめるのではなく、参考にしつつ、来年のクラスに合わせて変えていく。そのことを、未来の自分に念押ししておくのです。

一人で振り返らなくていい

振り返りは、一人でやるものだと思われがちです。でも、だれかと一緒に振り返ると、一人では気づけないことに気づけます。

同じ学年の先生と、「今日の算数、どうだった?」と話すだけでもいい。同じ単元を同じ時期に教えていれば、「うちのクラスでも、そこで止まった」「うちは、こう言ったら伝わった」という話ができます。

それから、ほかの先生に自分の授業を見てもらうのも、振り返りの大きな助けになります。自分では見えない子どもの姿を、見てもらった先生は見ています。この連載の1〜3回目で書いた「見る側」の視点を、今度は自分の授業に向けてもらうわけです。

見てもらうのは、研究授業でなくてかまいません。「明日の3時間目、ちょっと見に来てもらえませんか。話し合いの場面だけでいいので」。そのくらいの気軽さで頼んでみると、案外、引き受けてもらえると思います。

振り返りでやりがちなこと

反省ばかり並べる。「ここがだめだった」「あそこもだめだった」。振り返りは反省文ではありません。だめだったところを並べるだけでは、次の手につながりません。

原因を自分の力量だけにする。「自分が下手だから」で終わらせない。発問、時間、教材、子どもの状態、それまでの積み重ね。原因はいろいろなところにあります。

原因を子どもだけにする。逆に、「この子たちは集中力がないから」で終わらせるのも違います。子どもの状態は、授業を考えるための前提です。その前提のうえで、先生が何を変えられるかを考えます。

次の手を全部変える。次の授業で変えるのは1つ。それを守るだけで、振り返りが次の授業にちゃんとつながるようになります。

おわりに

授業の振り返りのしかたを、まとめておきます。

振り返りのものさしは、先生の計画ではなく、ねらいと子どもの姿のずれ。何が起きたか、なぜ起きたか、次はどうするか、の3つの問いで考える。事実は、記録と子どものノートから確かめる。次に変えるのは1つだけ。うまくいったときこそ振り返る。ふだんは5分・3行で十分。単元の終わりには、単元全体を振り返り、来年の自分に一言残す。

振り返りは、自分の授業を責めるためのものではありません。目の前のクラスに合った授業の形を、少しずつ探していくためのものです。

次回は、授業を評価する話です。よい授業かどうかを、何で判断するのか。振り返りを一歩進めて、授業そのものを評価する観点を考えてみます。

連載「授業を見る・振り返る」

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