教員採用試験の面接で、ほぼ必ず聞かれることがあります。
「あなたの長所を教えてください」「自己PRをしてください」「どんな教員になりたいですか」。
聞き方は違っても、面接官が知りたいのは一つです。この人は、どんな人なのか。つまり、その人の「人となり」です。
ということで今回は、面接で自分らしさをどう伝えるか、という話を書きます。先に、私がいちばん伝えたいことを書いておきます。
自分が「魅力だ」と思っていることが、相手にとって魅力とは限りません。そして、自分では気づいていない魅力が、たいてい誰にでもあります。
面接の準備は、自分の魅力を「盛る」作業ではなく、自分の魅力を「見つけ直す」作業なのだと思っています。
面接官が見ているのは「人となり」
筆記では分からないことを、面接で見ている
採用試験には、筆記試験もあれば、論作文もあります。知識や考え方は、そこである程度分かります。
では、面接で何を見ているのか。正直、面接だけで教員としての力がすべて分かるわけではありません。たった十数分です。
それでも面接をするのは、「この人と一緒に働けるか」「この人の前に子どもが座ったらどうなるか」を、少しでも感じ取りたいからだと思います。
教員は、子どもの前に毎日立つ仕事です。そして、職員室で毎日ほかの先生と一緒に働く仕事でもあります。だからこそ、その人の人柄や、ものの考え方、人との関わり方が大事にされます。
「立派な人」を探しているわけではない
ここでよくある勘違いが、「立派な人に見せなければいけない」という思い込みです。
面接の練習をしていると、どうしても「責任感があります」「コミュニケーション能力が高いです」「子どもに寄り添えます」といった言葉が並びがちです。どれも悪くありません。でも、ほとんどの受験者が同じことを言います。
面接官からすると、立派な言葉が並ぶほど、かえってその人の顔が見えなくなる。そう、「立派さ」と「その人らしさ」は別ものなのです。
一緒に働く側として私が知りたいのは、完璧な人かどうかではありません。どんなときにうれしくなる人なのか、困ったときにどう動く人なのか、子どものどんなところに目が向く人なのか。そういう「その人の手ざわり」です。
自分が思う魅力が、魅力とは限らない
「リーダーシップ」は、場面によっては心配のたねになる
たとえば、「私の長所はリーダーシップです。サークルでは部長としてみんなを引っ張ってきました」という自己PR。
よくある、立派な自己PRです。でも、現場の教員として聞くと、少し気になることもあります。
学校の仕事は、学年や分掌のチームで動きます。新しく入った人がいきなりみんなを引っ張ることは、まずありません。むしろ最初は、周りの先生のやり方を聞いて、学んで、合わせていく力のほうが求められます。
もちろん、リーダーシップが悪いわけではありません。ただ、「引っ張りました」だけだと、「この人は人の話を聞けるかな」「自分のやり方を通そうとしないかな」と、聞く側が心配になることもある。
本人は魅力のつもりで話していることが、聞く側には別の形で届いている。こういうことは案外よくあります。
長所は、短所の裏返し
「明るい」は、場面によっては「落ち着きがない」に見えるかもしれません。「粘り強い」は「切りかえが苦手」に、「まじめ」は「融通がきかない」に見えることもあります。
逆もそうです。「心配性」は「準備をていねいにする」に、「人見知り」は「相手をよく観察している」につながっているかもしれません。
長所と短所は、同じものの表と裏です。だからこそ、「私には〇〇という長所があります」と言い切るより、「〇〇なところがあって、だからこんなふうに動いてきました」と、場面ごと伝えるほうが、聞く側には伝わりやすいと思っています。
魅力は「言葉」ではなく「場面」で伝わる
結局のところ、魅力は「〇〇力があります」という言葉では伝わりません。伝わるのは、その人が実際に何をしたか、という場面です。
「子どもに寄り添えます」と言われても、正直よく分かりません。でも、「実習中、休み時間にいつも一人で図鑑を見ている子がいて、その図鑑の話を毎日少しずつ聞いていたら、最終日に『先生、これ見て』と自分から声をかけてくれた」と言われたら、その人がどんなふうに子どもを見ているのかが、すっと見えてきます。
言葉を並べるのではなく、場面を一つ、ていねいに話す。それだけで、自分らしさはかなり伝わります。
自分の知らない魅力がある
自分のことは、自分がいちばん見えていない
ここからが、今回いちばん書きたかったことです。
自分の魅力は、自分ではなかなか分かりません。むしろ、自分が「当たり前」だと思ってやっていることの中に、ほかの人から見ると魅力に映ることが隠れていたりします。
心理学では「ジョハリの窓」という考え方がよく紹介されます。自分のことを「自分が知っているか・知らないか」「他人が知っているか・知らないか」で4つの窓に分けるものです。その中に、「自分は気づいていないけれど、他人は知っている自分」という窓があります。
面接で伝えるとよい魅力は、案外この窓の中にあるのではないかと思っています。自分では当たり前すぎて、自己PRの材料だと思ってもいなかったこと。それを周りの人は、ちゃんと見てくれていたりします。
「当たり前」にしていることを疑ってみる
たとえば、こんなことはないでしょうか。
集まりのとき、なんとなく最後に片付けをして帰っている。誰かが困っていると、つい声をかけてしまう。人の話を聞くとき、相手の顔をよく見ている。資料をつくるとき、つい見やすさにこだわってしまう。
本人にとっては「普通」のことです。でも、それはその人の人となりそのものです。
教員の仕事に置きかえてみると、片付けを最後までする人は、教室の環境を整えるのが上手かもしれません。困っている人に声をかける人は、教室で一人になっている子に気づける人かもしれません。
自分の「当たり前」の中に、教員としての魅力が眠っている。そう考えると、自己PRの材料はぐっと増えます。
人に聞いてみる
自分の知らない魅力を見つけるいちばん早い方法は、人に聞くことです。
家族、友達、サークルの仲間、アルバイト先の人、実習でお世話になった先生。「私ってどんな人に見える?」「私のいいところってどこだと思う?」と、思い切って聞いてみてください。
ちょっと恥ずかしいですよね。でも、聞いてみると「え、そこ?」と思うような答えが返ってくることがあります。自分では短所だと思っていたところを、「そこがいいところだよ」と言われることもあります。
ここで大事なのは、言われたことを「そんなことないよ」で終わらせないことです。「どうしてそう思ったの?」ともう一歩聞いてみると、その人が見ていた具体的な場面が出てきます。その場面こそが、面接で話せる材料になります。
子どもの言葉を思い出してみる
教育実習や学習支援のボランティア、講師の経験がある人は、子どもに言われた言葉を思い出してみてください。
「先生の説明、分かりやすい」「先生、いつも笑ってるね」「先生と話すと楽しい」。何気ない一言ですが、子どもはけっこう正直です。子どもが口にしたことは、その人が子どもの前でどう見えていたかを、そのまま教えてくれます。
実習日誌や記録が残っているなら、読み返してみるのもおすすめです。指導の先生が書いてくれたコメントの中に、自分では気づいていなかった「いいところ」が書かれているかもしれません。
見つけた魅力を、面接で話せる形にする
手順は3つだけ
見つけた魅力を、面接で話せる形にする手順は、そんなに難しくありません。私なら、次の3つで考えます。
- 場面を一つ選ぶ(いつ、どこで、誰と、何があったか)
- そこで自分が何をしたか、何を考えたかを話す
- それが教員になったら、どう生きるかにつなぐ
たとえば、こんな感じです。
「アルバイト先の塾で、なかなか宿題をやってこない中学生がいました。叱るより先に、宿題のどこで止まっているのかを一緒に見てみたら、最初の一問目でつまずいていることが分かりました。それから、宿題の最初の一問だけは授業の最後に一緒に解いてから帰すようにしたら、少しずつ宿題をやってくるようになりました。友人からは『人のつまずきに気づくのが早いね』と言われます。教員になっても、子どもが止まっているところを一緒に探せる先生でいたいと思っています。」
「つまずきに気づく力があります」とだけ言うより、ずっとその人の顔が見えます。そして、「友人から言われる」という形で、自分の知らない魅力をさりげなく入れています。
大きな成功体験でなくていい
自己PRというと、「大会で優勝した」「部長として部員を増やした」のような、大きな成功体験を話さなければいけないと思いがちです。
でも、面接官が知りたいのは、すごい結果ではなく、その人の動き方や考え方です。だから、小さな出来事で十分です。むしろ小さな出来事のほうが、その人らしさがよく出ます。
教員の仕事も、毎日は小さなことの積み重ねです。朝の「おはよう」の声のかけ方、ノートに書く一言、休み時間のちょっとした会話。そういう小さなことを大事にできる人は、教室でもきっとそうなのだと、聞く側は感じます。
失敗の話も、人となりを伝える
「失敗した経験を教えてください」と聞かれることもあります。これも、人となりがよく出る質問です。
失敗そのものより見られているのは、失敗したあと、どう考えて、どう動いたかです。人のせいにしていないか。同じことをくり返さないために何か工夫したか。そこから何を学んだか。
失敗をきれいにまとめすぎる必要はありません。「正直、今でもうまくできているとは言えませんが」と、まだ途中であることを素直に話してもいいと思います。それも、その人らしさです。
人となりは、話す内容以外のところにも出る
聞き方にも、その人が出る
面接で人となりが伝わるのは、自己PRの中身だけではありません。
質問をどう聞いているか。うなずき方、表情、相手の目の見方。質問の意図が分からなかったときに、「すみません、〇〇ということでしょうか」と確かめられるかどうか。
教員は、子どもの話を聞く仕事でもあります。面接官の質問をていねいに聞いている姿は、そのまま「この人は子どもの話もこうやって聞くんだろうな」と想像させます。
詰まったときこそ、素が出る
想定していなかった質問をされて、言葉に詰まることもあると思います。
そんなときに無理に取りつくろうより、「少し考えさせてください」と一呼吸おいて、自分の言葉で答えるほうが、ずっと好印象です。詰まったときにどう立て直すかは、教室で予想外のことが起きたときにどう動くかと、どこか似ています。
完璧に答えられなくても大丈夫です。むしろ、そういう瞬間に見える誠実さこそが、その人の人となりなのだと思います。
場面指導や模擬授業にも、自分らしさは出る
場面指導や模擬授業も、実は人となりを見る場です。
子ども役の面接官にどんな言葉をかけるか、どんな表情で接するか。そこには、その人が子どもをどう見ているかが、そのまま出ます。「正しい対応」を暗記していても、言葉がかたいと、どこか借りてきたような印象になります。
場面指導の答え方については「場面指導は「3つの順番」で組み立てる」でくわしく書いていますが、どの場面でも土台になるのは、自分の言葉で、目の前の子どもに話しかけることです。
準備のときに気をつけたいこと
面接カードと話をそろえる
多くの自治体では、面接の前に面接カードや自己PR書のようなものを出します。形式や名前は自治体によって違うので、志望先の要項は必ず確認してください。
面接官は、たいていそのカードを手元に置いて質問します。だから、カードに書いたことと、面接で話すことがずれていると、「どっちが本当なんだろう」と思われてしまいます。
逆に言えば、カードに書いた場面を、面接ではもう一歩くわしく話せるようにしておけばいい。カードには結論と場面の入口だけを書いておいて、面接で「そのとき、どんなことを考えていましたか」と聞かれたら、そこで自分の気持ちや迷いを話す。そうすると、カードと面接がつながって、人となりが立体的に伝わります。
練習は、人に聞いてもらう
自己PRの練習は、一人で何度も読み上げるより、人に聞いてもらうほうがずっと効果があります。
ここでも、さっきの「自分の知らない魅力」の話が生きてきます。聞いてもらった人に、「どこがいちばんその人らしかった?」と聞いてみてください。自分が力を入れて話したところより、何気なく付け足した一言のほうが印象に残っていた、ということがよくあります。
そう、相手に届いているところが、その人の本当の魅力なのです。届いたところを太くして、届いていないところは思い切って削る。何度か繰り返すと、自己PRがどんどん自分の言葉になっていきます。
丸暗記はしない
最後に一つ。自己PRは、丸暗記しないほうがいいと思っています。
丸暗記した文章は、少し質問の角度が変わっただけで崩れます。そして何より、暗記した言葉を思い出しながら話している顔は、面接官から見るとすぐに分かります。
覚えておくのは、話す場面と、伝えたいことの芯だけ。あとはその場で、目の前の面接官に向かって話す。あとはノリです、と言うと乱暴ですが、それくらいの気持ちのほうが、自分らしさは出てきます。
現場の教員として、一緒に働きたいと思う人
最後に、職員室で一緒に働く側として、私がこんな人と働きたいなと思う人を書いておきます。あくまで私の感じ方です。
自分のことを分かったつもりにならず、人の話を聞ける人。うまくいかなかったことを、素直に「うまくいきませんでした」と言える人。子どものちょっとした変化に気づいて、それをうれしそうに話せる人。
どれも、特別な能力ではありません。でも、こういう人がいる学年は、なんだか空気がやわらかいのです。
そして、こういう魅力は、たいてい本人が気づいていません。周りが「あの人がいると助かる」と思っているだけです。だからこそ、面接の準備の中で、一度立ち止まって探してみてほしいのです。
おわりに
面接で自分らしさを伝える、というのは、自分を大きく見せることではありません。
自分が思っている魅力が、本当に相手にとっての魅力なのか、一度疑ってみる。そして、自分では気づいていない魅力を、周りの人や子どもの言葉から見つけ直す。そのうえで、それを一つの場面として、自分の言葉で話す。
それができれば、面接官にはきっと「この人と一緒に働いてみたい」と伝わるはずです。
まぁ、面接は緊張します。誰だって緊張します。それでも、準備の中で見つけた「自分の知らなかった自分」は、試験のあとも、教員になってからも、ずっと自分を支えてくれるはずです。
面接や場面指導の全体については、「教員採用試験の面接・場面指導、現場の先生ならこう答えたい」にまとめています。あわせて読んでみてください。


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