教員採用試験の場面指導。苦手だと感じている人が多い試験だと思います。
面接官が子ども役や保護者役になって、目の前でいきなり場面が始まる。「先生、〇〇くんがたたいてきた!」。頭が真っ白になって、何を言えばいいのか分からなくなる。そんな経験をした人もいるかもしれません。
先に結論を書きます。場面指導は、「受け止める」「確かめる」「次につなぐ」という3つの順番で組み立てると、ぐっと落ち着いて答えられるようになります。
どんな場面が出ても、この順番は変わりません。今回は、この3つの順番と、それぞれで何を言えばいいのかを、現場の教員の目線で書いてみます。
そもそも、場面指導では何を見ているのか
「正解の対応」を探しているわけではない
場面指導というと、「正しい答え」があって、それを言えた人が合格する、と思われがちです。
でも、学校で起きることに、たった一つの正解はありません。同じけんかでも、子どもの性格、それまでの関係、学級の状況によって、対応は変わります。現場の教員も、毎回迷いながら対応しています。
だから、場面指導で見られているのは、正解を言えるかどうかよりも、子どもや保護者にどう向き合うか、どんな順番で考えて動くかだと思っています。
形式は自治体によってかなり違う
場面指導の形式は、自治体によってかなり違います。
面接官が子ども役や保護者役になって、その場でやりとりをする形。「こういう場面で、あなたならどうしますか」と口頭で聞かれ、自分の考えを説明する形。最初に場面を示されて、少し考える時間があってから始まる形。時間も、数分のものから、もう少し長いものまであります。
なので、まずは志望先の自治体の実施要項や、公開されている過去の実施状況を必ず確認してください。ただ、どの形式でも、今回の「3つの順番」は使えます。
順番① 受け止める
最初の一言で、ほぼ印象が決まる
場面が始まったら、最初にすることは、相手の気持ちを受け止めることです。
「先生、〇〇くんがたたいてきた!」と言われたら、いきなり「どうしてたたかれたの?」と聞くのではなく、まず「そうか、たたかれたんだね。痛かったね。」と返す。保護者から「うちの子が仲間外れにされているんです」と言われたら、「そうでしたか。心配されていたんですね。お話ししてくださってありがとうございます。」と返す。
最初の一言で、相手は「この先生は話を聞いてくれる人だ」と感じます。これは、面接官も同じです。
正直、場面指導で失敗する人の多くは、ここを飛ばしてしまいます。早く解決しようとして、いきなり事情を聞いたり、指導を始めたりする。気持ちは分かります。でも、受け止められていないと感じた子どもや保護者は、そのあとの話を聞いてくれません。
受け止めるときの言葉の例
受け止めるときに使える言葉は、そんなに多くなくていいです。
子どもには、「そうか」「〜だったんだね」「言いに来てくれてありがとう」「つらかったね」。保護者には、「ご心配をおかけしています」「お話しいただいてありがとうございます」「〇〇さんのことを大切に思っていらっしゃるのが伝わります」。
ポイントは、相手の言葉をそのまま繰り返すことです。「たたかれた」と言われたら「たたかれたんだね」。「学校に行きたくない」と言われたら「学校に行きたくないんだね」。繰り返すだけで、「ちゃんと聞いてもらえた」という感覚が相手に伝わります。
体と表情でも受け止める
受け止めるのは、言葉だけではありません。
子ども役の面接官が立っているなら、少しかがんで目線を合わせる。保護者役なら、少し身を乗り出して、うなずきながら聞く。声のトーンを少し落として、ゆっくり話す。
場面指導は、面接官の前で「演じる」場です。少し大げさなくらいでちょうどいい、と思っておいてください。
順番② 確かめる
事実と気持ちを分けて聞く
受け止めたら、次は事情を確かめます。
ここで意識したいのは、事実と気持ちを分けて聞くことです。「何があったのか」という事実と、「そのときどう思ったのか」という気持ち。この2つを混ぜずに聞きます。
たとえば、けんかの場面なら、「いつ、どこで、何があったのか、先生に教えてくれる?」と事実を聞く。そのうえで、「そのとき、どんな気持ちだった?」と気持ちを聞く。
事実だけ聞くと、取り調べのようになります。気持ちだけ聞くと、何が起きたのか分からないまま話が進んでしまう。両方をていねいに聞くことで、子どもは「先生は自分の話を全部聞いてくれた」と感じます。
一方の話だけで判断しない
子ども同士のトラブルでは、片方の話だけで判断しないことが大事です。
場面指導では、目の前に一人の子ども役しかいないことが多いと思います。それでも、「〇〇くんにも、話を聞いてみるね」と、もう一方の話も聞くことを口に出して伝えてください。それだけで、「この人は公平に対応しようとしている」と伝わります。
保護者対応でも同じです。保護者のお話をよく聞いたうえで、「学校でも、〇〇さんの様子や周りの子の話を確かめてみます」と伝える。その場で「それは〇〇くんが悪いですね」と決めつけないことが大切です。
確かめながら、子どもに考えさせる
確かめる段階は、子ども自身に考えてもらう時間でもあります。
「たたいてしまったのは、どうしてだったのかな」「そのとき、ほかにどうすればよかったと思う?」と問いかけて、子ども自身の言葉を引き出す。先生がすぐに答えを言ってしまうより、子どもが自分で気づいたほうが、そのあとの行動は変わります。
面接官は、この「子どもに考えさせる」場面を見ています。説教で終わらせず、問いかけで子どもの考えを引き出せるかどうか。ここに、その人の教員としての姿勢が出ます。
順番③ 次につなぐ
その場で全部解決しようとしない
確かめたら、最後は「次につなぐ」です。
ここで言う「次につなぐ」には、2つの意味があります。一つは、子どもや保護者に、これからどうするかを伝えること。もう一つは、学年の先生や管理職など、周りにつなぐことです。
場面指導では、つい「その場で全部解決しなきゃ」と思ってしまいます。でも、学校の現場では、一人の先生がその場で全部を解決することは、まずありません。むしろ、一人で抱えこまずに、周りと一緒に対応することが求められます。
子どもには「これから」を約束する
子どもには、最後にこれからのことを伝えます。
「先生も、〇〇くんの話を聞いてみるね。それから、もう一回二人で話そう」「明日の朝、また先生と話そうね」「また嫌なことがあったら、すぐに先生に言いに来てね」。
これからのことを約束すると、子どもは安心します。そして、面接官にも「この人は、その場だけで終わらせない人だ」と伝わります。
周りにつなぐことを、口に出す
場面指導で意外と言い忘れるのが、周りにつなぐことです。
いじめの疑いがある場面、けががある場面、保護者からの強い訴えがある場面。こういう場面では、必ず「学年主任や管理職に報告し、相談します」と口に出して伝えてください。いじめについては、学校全体で組織として対応することが基本です。一人で判断して抱えこむ対応は、現場ではいちばん心配されます。
保護者対応なら、「学年の先生や管理職とも相談して、改めてご連絡します」と伝える。いつまでに連絡するのかを具体的に言えると、なおいいです。
けがのある場面なら、まず手当てと養護教諭への連絡。そして、保護者への連絡。安全にかかわることは、指導よりも先に動く。この順番は、場面指導でもはっきり示しておきたいところです。
3つの順番を、時間の中にどう収めるか
時間配分の目安
場面指導の時間は、自治体によって違います。ただ、数分程度で終わるものが多いので、時間配分をなんとなく決めておくと落ち着きます。
私なら、全体を10とすると、受け止める2、確かめる5、次につなぐ3くらいの感覚で考えます。いちばん時間をかけるのは、確かめる段階です。受け止めるのは短くていい。でも、絶対に飛ばさない。次につなぐのは、最後に必ず残しておく。
時間が足りなくなって「次につなぐ」まで行けなかった、というのが、よくある失敗です。残り時間が少なくなってきたら、確かめる途中でも、「先生ももう少しくわしく聞いてみるね。それから、学年の先生にも相談するね」と、つなぐ言葉を入れてしまっていいと思います。
口頭で説明する形式なら、順番をそのまま言う
「あなたならどうしますか」と口頭で説明する形式なら、この3つの順番をそのまま話の骨組みにしてください。
「まず、〇〇さんの気持ちを受け止めます。具体的には〜と声をかけます。次に、何があったのかを確かめます。〜。最後に、学年主任と管理職に報告し、〜します。」
こうやって順番を言葉にして話すと、聞いている面接官も、どこで何を考えているのかが分かりやすくなります。
一つの場面を、3つの順番で通してみる
ここで、一つの場面を最初から最後まで通してみます。場面は、「休み時間のあと、ある子が『〇〇さんに悪口を言われた』と泣きながら来た」というものです。
受け止める
「どうしたの。……そうか、〇〇さんに悪口を言われたんだね。悲しかったね。泣くくらい嫌だったんだね。先生に言いに来てくれて、ありがとう。」
少しかがんで、目線を合わせて話します。ここは長くなくていい。でも、相手の言葉をそのまま返して、気持ちを受け止めたことを伝えます。
確かめる
「少し落ち着いたら、何があったのか教えてくれる? ……休み時間、どこで遊んでいたの? ……そこで、〇〇さんにどんなことを言われたのかな。……そう言われる前に、何かあった? ……そのとき、〇〇さんはどんな顔をしていた?」
一度に全部聞かず、一つずつ聞いていきます。いつ、どこで、何があったか。その前に何があったか。そして、「言われたとき、どんな気持ちだった?」と気持ちも聞きます。子ども役の面接官が黙ってしまったら、「ゆっくりでいいよ」と待ちます。
次につなぐ
「話してくれてありがとう。〇〇さんにも、何があったのか聞いてみるね。そのあと、どうしたらいいか一緒に考えよう。今日の帰りまでに、もう一回先生とお話ししようね。また何かあったら、すぐに言いに来てね。」
最後に、もう一方の子からも話を聞くこと、また話す時間をとることを約束します。そして、場面指導が終わったあとに面接官から「このあとどうしますか」と聞かれたら、「〇〇さんからも話を聞き、学年の先生に報告します。同じようなことが続いているようなら、管理職にも相談し、保護者にも連絡します」と答えます。
通してみると、それほど長い台詞ではないことが分かると思います。大事なのは、言葉の量より、順番を崩さないことです。
よくある失敗と、立て直し方
いきなり指導を始めてしまう
いちばん多いのが、受け止める前に指導を始めてしまうことです。「たたいたらだめでしょう」と、いきなり言ってしまう。
もし始めてしまったと気づいたら、途中からでいいので、「でも、たたいてしまうくらい、何か嫌なことがあったんだよね」と気持ちのほうに戻ってください。途中で戻れることも、立派な対応です。
面接官の「反応」に動揺する
面接官は、わざと泣いたり、怒ったり、黙ったりします。子ども役が「別に」と言って黙ってしまう。保護者役が「先生は何も分かっていない」と強く言う。
そんなときは、慌てて言葉を重ねるより、一呼吸おいて、「そうか、今は話したくないんだね」「そう思わせてしまって、申し訳ありません」と、もう一度受け止めに戻ります。困ったら、受け止めに戻る。これを覚えておくだけで、かなり落ち着けます。
「解決した」で終わらせてしまう
子どもが「ごめんね」と言って、握手して終わり。これで解決した、と終わらせてしまうのも、よくある失敗です。
現場では、その場で仲直りしたように見えても、気持ちが残っていることがあります。「また何かあったら言ってね」「明日もう一回様子を見るね」と、その後も見守ることを伝えておく。それが「次につなぐ」です。
練習のしかた
友達と役を交代しながら
場面指導の練習は、一人ではできません。友達や家族に子ども役・保護者役をやってもらって、何度も声に出して練習してください。
おすすめは、役を交代しながら練習することです。自分が子ども役や保護者役をやってみると、「最初に受け止めてもらえると、こんなに安心するんだ」ということが体で分かります。
録音・録画して見返す
練習を録音や録画して見返すのも、かなり効果があります。正直、自分の声や表情を見返すのは恥ずかしいです。でも、思っていたより早口だったり、表情がかたかったりすることに気づけます。
本番の前に、3つの言葉だけ書いておく
本番の直前は、いろいろな想定を頭に詰めこみたくなります。でも、私なら、メモに3つの言葉だけ書いておきます。「受け止める」「確かめる」「つなぐ」。
控室でそれを眺めて、深呼吸する。場面が始まったら、とにかく最初の一言で受け止める。それだけを決めて入ると、案外落ち着いて話せるものです。
おわりに
場面指導は、たしかに緊張する試験です。でも、受け止める、確かめる、次につなぐ。この3つの順番さえ体に入っていれば、どんな場面が出ても、話の骨組みは崩れません。
そして、この3つの順番は、採用試験のためだけのものではありません。教員になってから、毎日の教室でずっと使うものです。子どものけんかも、保護者からの相談も、同僚とのやりとりも、まずは受け止めるところから始まります。
場面指導の練習は、教員になる準備そのものです。そう思って、取り組んでみてはいかがでしょうか。
子どもとの場面は「場面指導・子ども編」、保護者との場面は「場面指導・保護者編」で具体例をまとめています。面接・場面指導の全体については「教員採用試験の面接・場面指導、現場の先生ならこう答えたい」もあわせてどうぞ。


コメント