「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」はどう違う? 5年生の敬語の授業、子どもが混乱するところ

「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」はどう違う? 5年生の敬語の授業、子どもが混乱するところ 授業づくり

12月。年賀状を書いたり、お世話になった人にお礼の手紙を書いたりする季節です。手紙を書くと、ふだん使わない言葉づかいに迷うことがあります。「先生が言った」は、「先生がおっしゃった」?「先生が申された」?

敬語は、5年生の国語で本格的に学びます。でも、子どもにとって敬語は、なかなかやっかいな学習です。尊敬語と謙譲語の区別がつかない、どちらを使えばいいか分からない、そもそもなぜ言葉を変えなければいけないのかが分からない。

正直なところ、大人でも迷うことがあります。この記事では、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の定義を整理し、子どもが混乱しやすいところと、授業での教え方を考えます。

敬語とは何か

まず、敬語そのものの定義から。

敬語は、話し手(書き手)が、相手や話題になっている人に対して、敬意を表したり、改まった気持ちを表したりするための言葉づかいです。

敬語は、ただ「ていねいに話す」ための言葉ではありません。誰に対して、どんな気持ちで話しているのかを、言葉の形で表すしくみです。そのため、同じ「言う」という動作でも、誰が言うのか、誰に向けて話しているのかによって、使う言葉が変わります。

それぞれの言葉の定義

学校では、敬語を三つに分けて学ぶのが一般的です。

「尊敬語」とは

尊敬語は、相手や、話題になっている人の動作や様子を高めて、その人への敬意を表す言葉です。

主語は、相手や、目上の人です。「先生がおっしゃる」「お客様がいらっしゃる」「校長先生がご覧になる」。動作をする人(先生、お客様、校長先生)を高めることで、その人への敬意を表します。

尊敬語のつくり方には、いくつかの形があります。

  • 特別な言葉を使う:言う→おっしゃる、行く・来る・いる→いらっしゃる、見る→ご覧になる、食べる→召し上がる
  • 「お(ご)〜になる」の形:書く→お書きになる、帰る→お帰りになる
  • 「〜れる・られる」の形:書く→書かれる、来る→来られる

「謙譲語」とは

謙譲語は、自分や、自分の側の人の動作をへりくだって(低めて)表すことで、相手への敬意を表す言葉です。

主語は、自分や、自分の側の人(家族など)です。「わたしが申す」「わたしが伺う」「わたしが拝見する」。自分の動作を低めることで、相対的に相手を高め、相手への敬意を表します。

謙譲語のつくり方にも、いくつかの形があります。

  • 特別な言葉を使う:言う→申す・申し上げる、行く・来る→参る・伺う、見る→拝見する、食べる・もらう→いただく、いる→おる
  • 「お(ご)〜する」の形:書く→お書きする、届ける→お届けする

「丁寧語」とは

丁寧語は、話している相手に対して、ていねいに述べることで、敬意を表す言葉です。

「です」「ます」「ございます」がその代表です。「これは本だ」を「これは本です」と言う。「学校へ行く」を「学校へ行きます」と言う。

丁寧語は、尊敬語や謙譲語とちがって、誰の動作かに関係なく、話している相手への敬意を表すものです。

「美化語」とは

学校で三つに分けるときは丁寧語に含めることが多いですが、「美化語」という言葉もあります。

美化語は、物事を美しく、上品に表す言葉です。「お茶」「お花」「ご飯」「お弁当」。誰かを高めるためというより、言葉そのものを上品にするための言い方です。

敬語は五つに分けることもある

文化審議会が平成19年(2007年)にまとめた「敬語の指針」では、敬語を五つに分けています。

  1. 尊敬語(「いらっしゃる・おっしゃる」型)
  2. 謙譲語Ⅰ(「伺う・申し上げる」型)
  3. 謙譲語Ⅱ(丁重語)(「参る・申す」型)
  4. 丁寧語(「です・ます」型)
  5. 美化語(「お酒・お料理」型)

謙譲語を二つに分けているのが特徴です。謙譲語Ⅰは、自分の動作が向かう先の人(相手)を高めるもの、謙譲語Ⅱは、話している相手に対して、自分の動作をていねいに述べるもの、という違いがあります。

小学校では、ここまでくわしく分けることはしませんが、先生が知っておくと、子どもの質問に答えるときに役に立ちます。

並べてみると

種類 ひと言でいうと 主語 例(言う) 例(行く) 例(見る)
尊敬語 相手の動作を高める 相手・目上の人 おっしゃる いらっしゃる ご覧になる
謙譲語 自分の動作を低める 自分・自分の側 申す・申し上げる 参る・伺う 拝見する
丁寧語 相手にていねいに述べる 誰でも 言います 行きます 見ます

この表のいちばん大事なところは、主語の列です。尊敬語と謙譲語を見分けるときの手がかりは、「その動作をしているのは誰か」です。

学習指導要領ではどう扱われているか

小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語の「知識及び技能」では、言葉づかいについて、学年ごとに次のように示されています。

  • 第1学年及び第2学年:「丁寧な言葉と普通の言葉との違いに気を付けて使うとともに、敬体で書かれた文章に慣れること」
  • 第3学年及び第4学年:「丁寧な言葉を使うとともに、敬体と常体との違いに注意しながら書くこと」
  • 第5学年及び第6学年:「日常よく使われる敬語を理解し使い慣れること」

低学年では、ていねいな言葉とふつうの言葉の違いに気づき、です・ます(敬体)の文章に慣れる。中学年では、ていねいな言葉を使い、です・ます(敬体)と、だ・である(常体)の違いに注意して書く。そして高学年で、尊敬語や謙譲語を含む敬語を理解し、使い慣れる。

丁寧語から始めて、だんだん尊敬語・謙譲語へと進んでいく流れになっています。

子どもが混乱するところ

尊敬語と謙譲語が逆になる

いちばん多いまちがいは、尊敬語と謙譲語を逆に使ってしまうことです。

「先生が申された」。これは、先生の動作に、謙譲語の「申す」を使ってしまっています。正しくは、「先生がおっしゃった」です。

「わたしが先生にご覧になっていただいた」。これも混乱しています。自分が見てもらう場合は、「先生にご覧いただいた」、または「先生に見ていただいた」が自然です。

こうしたまちがいを防ぐには、まず主語を確かめることを習慣にさせます。「この動作をしているのは誰?」「その人は、自分? 相手?」。主語が相手なら尊敬語、自分なら謙譲語。この順番で考えると、まちがいが減ります。

身内に尊敬語を使ってしまう

もう一つ、よくあるのが、自分の家族に尊敬語を使ってしまうことです。

「お母さんがおっしゃっていました」。家族のことを外の人に話すときは、家族は「自分の側の人」になります。そのため、尊敬語ではなく、謙譲語やふつうの言葉を使います。「母が申しておりました」「母が言っていました」。

これは、子どもにとってなかなか分かりにくいところです。家ではお母さんは大事な人なのに、なぜ外では低めて言うのか。ここでは、「敬語は、話している相手を中心に考える」ことを伝えます。先生と話すときは、先生が相手で、お母さんは自分の側の人。だから、お母さんの動作は低めて言う。こう説明すると、子どもは少しずつ納得していきます。

敬語を重ねすぎる

ていねいにしようとするあまり、敬語を重ねすぎてしまうこともあります。

「先生がおっしゃられた」。「おっしゃる」はすでに尊敬語なのに、さらに「られる」をつけています。これを「二重敬語」と言い、ふつうは誤りとされます。「おっしゃった」で十分です。

大人の世界でも、「させていただく」の使いすぎなど、敬語の重ねすぎが話題になることがあります。敬語は、たくさん使えばよいというものではなく、場面と相手に合わせて、適切に使うことが大事です。

授業での工夫

敬語の「なぜ」から始める

敬語の学習は、言い方を覚えることから始めると、子どもにとって「覚えることが多くて大変な単元」になってしまいます。

そこで、まず、「なぜ敬語を使うのか」から始めることをおすすめします。

「校長先生に話しかけるとき、友達に話すときと同じ言葉づかいだと、どう感じるかな」「お客さんが来たとき、お店の人がふつうの言葉で話していたら、どう感じるかな」。こうした問いから、敬語が、相手との関係や場面に合わせて言葉を選ぶためのものだということに気づかせます。

場面を設定して、使ってみる

敬語は、知っているだけでは使えるようになりません。実際の場面で使ってみることが大事です。

職員室に入るときのあいさつ、校長先生へのインタビュー、地域の人へのお礼の手紙、ゲストティーチャーへの電話。こうした実際の場面を設定して、敬語を使う練習をします。

ロールプレイ(役割演技)もおすすめです。二人組で、先生役と子ども役、お店の人とお客さん役などに分かれて、会話をしてみます。演じたあとに、「どこで敬語を使ったか」「どの言葉を使えばよかったか」を振り返ると、敬語が身についていきます。

主語を確かめるワークシート

尊敬語と謙譲語の区別がつかない子には、主語を確かめるワークシートが役に立ちます。

文を一つずつ示して、「この動作をしているのは誰?」「その人は、相手? 自分?」「だから、使う敬語は?」と、順に書きこんでいく形です。手順に沿って考えることで、子どもは、自分で敬語を選べるようになっていきます。

よく使う言葉の一覧

授業で子どもに示すとよい、よく使う動詞の敬語を一覧にしておきます。

ふつうの言葉 尊敬語(相手の動作) 謙譲語(自分の動作) 丁寧語
言う おっしゃる 申す・申し上げる 言います
行く いらっしゃる 参る・伺う 行きます
来る いらっしゃる・お見えになる 参る 来ます
いる いらっしゃる おる います
見る ご覧になる 拝見する 見ます
食べる 召し上がる いただく 食べます
する なさる いたす します
知っている ご存じだ 存じている 知っています
聞く お聞きになる 伺う・拝聴する 聞きます
会う お会いになる お目にかかる 会います

この一覧を全部覚えさせる必要はありません。教室に掲示しておいて、手紙を書くときやインタビューの準備をするときに、確かめられるようにしておくと便利です。

使うときの手順は、いつも同じです。まず「この動作をしているのは誰か」を確かめる。相手なら尊敬語の列、自分なら謙譲語の列を見る。この手順を、くり返し練習させます。

電話や来客の場面で

敬語がもっともよく使われる場面の一つが、電話や来客の応対です。高学年になると、学校の行事で、地域の人に電話をかけたり、お客さんを案内したりする機会もあります。

たとえば、ゲストティーチャーに電話でお願いをする場面なら、「〇〇小学校5年の〇〇と申します」「〇〇さんはいらっしゃいますか」「お忙しいところ、ありがとうございます」「来週、学校に来ていただけないでしょうか」「よろしくお願いいたします」。こうした表現を、台本にして練習しておくと、子どもは安心して電話をかけられます。

実際に電話をかける前に、教室で練習をする時間をとると、子どもは、相手の顔が見えない電話では、言葉づかいがとくに大事だということに気づきます。大人が保護者に電話をするときの話し方については、「保護者への電話、どう話す?」にも書いています。

手紙の中の敬語

12月は、手紙を書く機会が多い季節です。手紙は、敬語を使う練習にぴったりの場面です。

年賀状やお礼の手紙では、「お元気でいらっしゃいますか」「お世話になりました」「どうぞお体に気をつけてお過ごしください」など、敬語を使った決まった表現がよく出てきます。こうした表現を、手紙の型として覚えておくと、子どもは安心して手紙を書くことができます。年賀状を書く学習については、「年賀状は「書くこと」の教材になる」にも書いています。

よくある質問

敬語を使うと、相手との距離が遠くなりませんか?

敬語は、相手を大事にしていることを表す言葉ですが、使いすぎると、よそよそしく感じられることもあります。親しい人には、ていねい語だけで十分なことも多いです。大事なのは、相手と場面に合わせて、言葉を選ぶことです。敬語の学習では、「いつも敬語を使いなさい」ではなく、「場面に合わせて使い分けよう」と伝えるとよいと思います。

「です・ます」だけでも、敬語になりますか?

なります。「です・ます」は丁寧語で、敬語の一つです。日常の多くの場面では、丁寧語を使えれば十分です。尊敬語や謙譲語は、目上の人と話すときや、改まった場面で使います。

先生も、子どもに敬語を使ったほうがいいですか?

授業の中で、先生が「です・ます」で話すのは、子どもに丁寧語の手本を見せることになります。ただ、子どもとの距離を縮めたい場面では、ふつうの言葉で話すこともあると思います。先生自身が、場面に合わせて言葉を使い分ける姿を見せることが、子どもにとって一番の敬語の学習になるのかもしれません。

まとめ

尊敬語は、相手や話題の人の動作を高めて、敬意を表す言葉。主語は相手。
謙譲語は、自分や自分の側の人の動作を低めて、相手への敬意を表す言葉。主語は自分。
丁寧語は、話している相手に、ていねいに述べる言葉。「です」「ます」など。

尊敬語と謙譲語を見分ける手がかりは、主語です。「この動作をしているのは誰か」を確かめるだけで、まちがいはぐっと減ります。

そして、敬語は覚えることがゴールではなく、相手と場面に合わせて言葉を選ぶためのしくみです。手紙を書く季節に、「誰に、どんな気持ちを伝えたいか」から、敬語の学習を始めてみてはいかがでしょうか。

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