【授業を見る・振り返る #1】授業を見るとき、どこを見るか まねしたい「技」より、その授業を支えている「関係」を見る

【授業を見る・振り返る #1】授業を見るとき、どこを見るか まねしたい「技」より、その授業を支えている「関係」を見る 授業づくり

「今日の5時間目、〇〇先生の授業、空いている人は見に行ってくださいね」

教員になったばかりのころ、こういう声がかかると、私は正直、少し困っていました。見に行くのはいい。でも、何を見ればいいのか分からない。とりあえずノートを持って教室の後ろに立ち、目に入ったことを書きとめる。45分たって、職員室に戻る。手元には、びっしり書いたメモが残っている。

で、このメモ、どうするんだろう。

書き写したことは、なんとなく「すごかったなぁ」で終わってしまう。次の日、自分の教室で同じことをやってみようとしても、うまくいかない。そのうち、「授業を見に行く意味って、あるのかな」と思うようになっていました。

今回から始まる連載「授業を見る・振り返る」は、そんな当時の自分に向けて書いています。授業を見るときに何を見るか。何をメモするか。指導案のどこを読むか。自分の授業をどう記録し、どう振り返るか。そして、見た授業をどう自分の授業に生かすか。全8回です。

1回目は、授業を見るとき、どこを見るかです。

授業は、その教室の「積み重ね」でできている

先に、この連載の一番の軸になる考えを書いておきます。

授業は、子どもと先生がそれまでに積み重ねてきた関係でできている。

見に行った授業が、とてもよかったとします。発問一つで子どもたちがぱっと手を挙げ、友だちの考えにつなげて話し、最後には「なるほど」という顔で終わる。

でも、その45分は、その日だけでできたものではありません。4月から、その先生とその子どもたちが、毎日毎日積み重ねてきたものの上に乗っています。友だちの話を最後まで聞く習慣。まちがえても笑われない空気。先生が「どう思う?」と聞けば、何か言っていいんだという安心感。

だから、同じ発問をしても、同じ授業にはなりません。

新任のころの私が、見に行く意味を感じられなかったのも、ある意味当然だったのだと思います。目に入る「技」の部分ばかり追いかけて、その技を支えている「関係」のほうを見ていなかったからです。技だけを持ち帰っても、自分の教室では同じようにはいきません。

ということで、授業を見るときは、まねしたい技を探すより先に、その授業が、どんな関係の上に成り立っているかを見てみてください。それが、見たものを自分の授業に生かす一番の近道だと思っています。

まず、子どもを見る

では、具体的にどこを見るか。

一番先に見てほしいのは、子どもです。先生ではなく。

授業がうまくいっているかどうかは、先生の話し方の上手さではなく、子どもの姿に出ます。だれが手を挙げているか。だれが手を挙げていないか。手を挙げていない子は、考えていないのか、考えているけど言えないのか。ノートに何を書いているか。友だちが話しているとき、どこを見ているか。

先生を見ていると、どうしても「あの言い方、いいな」「あの板書、きれいだな」という見方になります。それはそれで学びになります。でも、子どもを見ていると、「あの言い方で、子どもがどう動いたか」が見えてきます。こっちのほうが、ずっと自分の授業に持ち帰りやすいです。

1人の子を追う

慣れないうちにおすすめなのが、1人の子を決めて、45分間その子を追う見方です。研究授業では「抽出児」と呼ばれることもあります。

最初の5分で、少し気になる子を1人決めます。発言が多そうな子でも、静かな子でも、どちらでもかまいません。そして、その子が45分間で何をしたかを追いかけます。

導入でどんな顔をしていたか。めあてを書くのにどれくらいかかったか。一人で考える時間、ノートに何を書いたか。話し合いのとき、だれの話を聞いていたか。最後の振り返りに何を書いたか。

1人を追うと、授業の流れが「その子にとってどうだったか」で見えてきます。先生の計画では10分の一人学習が、その子にとっては3分で終わって7分ひまだった、とか。逆に、最後まで何も書けずにいた、とか。こういうことは、教室全体を眺めているだけでは、案外気づけません。

全体を眺める

1人を追うのと並行して、ときどき教室全体を眺める時間もつくります。

全体を見るときのポイントは、「動き」が変わる瞬間です。先生が中心の発問をしたとき、教室の空気がどう変わったか。ペアで話し合う時間になったとき、すぐに話し始めたペアと、黙ったままのペアがどれくらいいたか。だれかの発言のあとで、「あー」「え?」という声が出たか。

こういう瞬間は、授業の「山場」であることが多いです。そこで何が起きたかをつかんでおくと、あとで振り返るときの材料になります。

「関係」が見えるところ

最初に「関係を見てほしい」と書きました。でも、関係は目に見えません。見えるのは、関係が表に出たところです。

私が授業を見るときに気にしているのは、たとえばこんなところです。

子どもの「聞き方」

友だちが発言しているとき、ほかの子はどうしているか。発言している子のほうを向いているか。うなずいたり、「同じです」「つけたしです」と反応したりしているか。

聞き方は、その学級で4月から何を大事にしてきたかが、一番よく表れるところだと思っています。聞き方が育っている学級では、先生があまりしゃべらなくても、子ども同士で話がつながっていきます。逆に、聞き方が育っていない学級で、話し合い中心の授業をしようとすると、どうしても先生がつなぎ役をやり続けることになります。

まちがいへの反応

だれかがまちがえたとき、教室はどうなるか。笑いが起きるか。「あー」とため息が出るか。それとも、「なんでそう考えたの?」と聞く空気があるか。

そして、先生がまちがいをどう扱うか。すぐに正しい答えを言うのか、まちがいを黒板に残してみんなで考える材料にするのか。

まちがいへの反応を見ると、その教室が子どもにとって「安心して発言できる場所」かどうかが、だいたい分かります。

つぶやきへの返し方

授業中、指名されていない子が、ぽろっと何かをつぶやくことがあります。「え、それ変じゃない?」「あ、分かった」。

先生がそのつぶやきを拾うか、拾わないか。拾うとしたら、どう拾うか。「今、〇〇さんが『変じゃない?』って言ったけど、どこが変だと思った?」と全体に返すのか、あとで個別に聞くのか。

つぶやきを拾ってもらえる教室では、子どもはどんどんつぶやくようになります。ここにも、それまでの積み重ねが出ます。

先生が「待つ」時間

先生が発問をしてから、指名するまでに、どれくらい待っているか。

すぐに手が挙がった子を当てる先生もいれば、教室を見回して、しばらく黙って待つ先生もいます。どちらがいいという話ではありません。でも、待つ時間が長い教室では、子どもも「すぐに答えなくていい、考えていいんだ」と分かっています。それも、毎日の積み重ねでできた関係です。

約束ごとと掲示物

授業の前後に、教室の掲示物を見てみるのもおすすめです。話し方・聞き方の約束が貼ってあるか。前の単元の学習の足あとが残っているか。子どもの作品がどう貼られているか。

掲示物は、その先生がふだん何を大事にしているかが見える「窓」のようなものです。授業中に見えた子どもの姿が、どこから来ているのかのヒントがあります。

先生の何を見るか

子どもと関係を見たうえで、もちろん先生も見ます。ただ、ここでも「上手かどうか」ではなく、子どもとのやりとりを見るのがポイントです。

発問と、その後

先生の発問を、できればそのまま書きとめておきます。特に、授業の中心になる発問(中心発問)は、一言一句メモしておくと、あとで役に立ちます。

そして、発問の後に子どもがどう動いたかをセットで見ます。すぐに手が挙がったか。止まったか。止まったとき、先生は言い方を変えたか、ヒントを出したか、それとも待ったか。

発問の型については、「展開」で使える発問14の型にまとめています。見た発問が、どの型に近いかを考えながら見ると、自分の授業に持ち帰るときに整理しやすくなります。

指名の順番

だれから当てたか、も見てみてください。

いきなり正解を言いそうな子から当てる先生は、あまりいません。多くの先生は、机間指導で子どものノートを見ながら、「最初はこの子、次はこの子と比べたい」と順番を考えています。指名の順番が分かると、先生が話し合いをどう組み立てようとしていたかが見えてきます。

板書

板書は、写すより、授業の最後に全体を写真に撮る(許可をもらって)か、さっとスケッチするくらいで十分です。

見るポイントは、どこに何を書いたか、よりも、子どもの言葉がどれくらい板書に残っているかです。先生の用意した言葉だけで埋まっている板書と、子どもの発言が名前つきで残っている板書とでは、授業の中身がかなり違います。

授業の時間ごとに見るポイント

45分の中でも、時間ごとに見どころが変わります。ざっくり分けると、こんな感じです。

導入(最初の5分くらい):子どもが「なんで?」「やってみたい」という顔になったか。めあてが子どもの言葉から出てきたか、先生が示したか。導入の型は「導入」7つの型にまとめています。

展開(真ん中の30分くらい):一人で考える時間に、全員が何かしらの考えを持てたか。話し合いで、考えが変わった子がいたか。先生がどこで口を出し、どこで黙っていたか。

まとめ・振り返り(最後の10分くらい):まとめがめあてと対応しているか。子どもの振り返りに何が書かれていたか(見せてもらえるなら)。まとめと振り返りの違いは「まとめ」と「振り返り」は別ものにまとめています。

全部を見ようとしなくていいです。むしろ、全部を見ようとすると、何も残りません。今日は導入だけをじっくり見る、今日は話し合いの場面だけを見る、というくらいの割り切りで十分です。

どこに立って見るか

意外と大事なのが、見る位置です。

授業参観というと、教室の後ろに並んで立つイメージがあると思います。でも、後ろからだと、子どもの背中しか見えません。表情も、ノートも、ほとんど見えない。

授業者の先生の迷惑にならない範囲で、教室の横や、前の窓側に立ってみてください。子どもの顔が見えるだけで、得られる情報が全然違います。1人の子を追うときは、その子のノートが見える斜め後ろあたりがおすすめです。

ただし、子どもの視界をさえぎったり、話し合いの輪の中に入りこんだりしないように。授業の主役は子どもと授業者の先生です。

見に行く前に、「自分の問い」を1つ持っていく

もう一つ、私が新任のころにやっておけばよかったと思うことがあります。それは、見に行く前に、自分の問いを1つ持っていくことです。

問いといっても、むずかしいものではありません。「最近、自分のクラスで話し合いが続かない。あの先生のクラスでは、どうやって話がつながっているんだろう」。「うちの子たちは、一人で考える時間に手が止まる子が多い。ほかのクラスではどうなんだろう」。そのくらいで十分です。

問いを持たずに見に行くと、目に入ったものを全部書きとめようとして、結局何も残りません。当時の私がそうでした。でも、問いが1つあると、45分の中で「ここだ」という場面が自然と目にとまります。そして、その場面について、自分のクラスと何が違うのかを考えながら見ることができます。

それに、問いは、自分のクラスの困りごとから生まれます。つまり、問いを持って見に行くということは、最初から「自分のクラスに持ち帰る」つもりで見るということです。見に行く意味は、ここから生まれるのだと思います。

指導案がある授業なら、指導案を読んで問いを立てることもできます。これは第3回でくわしく書きます。

授業を見るときのマナー

ついでに、授業を見るときのマナーもいくつか。どれも当たり前のことですが、緊張していると忘れがちです。

  • 授業が始まる前に、授業者の先生にひと声かける(「勉強させてください」くらいで十分です)。
  • 子どもに話しかけない。ノートをのぞきこむのも、さりげなく。
  • 子どもの写真は撮らない。板書やノートを撮るときは、授業者の先生に許可をもらう。
  • 参観者同士でしゃべらない。
  • 途中で出入りするときは、静かに。
  • 授業のあとで、授業者の先生にお礼を言う。できれば、「〇〇の場面で、△△さんがこう言っていて、なるほどと思いました」と、見たことを1つ具体的に添えて。

最後のひと言は、授業者の先生にとって一番うれしい感想だと思います。そして、具体的に言えるということは、ちゃんと見ていたということでもあります。

やりがちなこと

最後に、授業を見るときの「やりがちなこと」を書いておきます。

板書を写して終わる。板書は授業の結果です。写すだけでは、そこに至るまでに子どもと先生の間で何があったかが残りません。

先生の技術ばかり見る。話し方、間の取り方、声の大きさ。もちろん勉強になります。でも、それは長い時間をかけて身についたものです。見てすぐにまねできるものではないし、まねしても自分の教室では同じ効果が出ないことが多いです。

「すごかった」で終わる。これが一番もったいない。すごかったのなら、なぜすごかったのか。子どものどんな姿を見て、すごいと思ったのか。そこまで言葉にできると、見たものが自分のものになり始めます。

自分のクラスと比べて落ちこむ。「うちのクラスはこんなに手が挙がらない」。分かります。でも、比べる相手は、その先生がこの子たちと過ごしてきた時間です。今日の45分だけを見て比べても、あまり意味はありません。

おわりに

授業を見るとき、どこを見るか。まとめると、こうなります。

まず、子どもを見る。1人を追い、ときどき全体を眺める。子どもの聞き方、まちがいへの反応、つぶやき、先生が待つ時間から、その教室の「関係」を見る。そのうえで、発問とその後、指名の順番、板書を見る。全部を見ようとせず、自分の問いを1つ持って、今日見るところを決める。

授業は、その教室の子どもと先生の積み重ねでできています。だから、見た授業をそのまま自分のクラスで再現することはできません。でも、「この授業は、どんな関係の上に成り立っているのか」が見えてくると、「じゃあ、うちのクラスなら、どこから始めればいいか」が考えられるようになります。

見に行く意味は、たぶんそこにあるのだと思います。

次回は、授業を見ながら何をメモするかです。せっかく見たものを、自分の教室に持ち帰れる形で残すメモの取り方を書きます。

連載「授業を見る・振り返る」

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