「気持ち」「心情」「人物像」はどう違う? 「どんな人?」と「どんな気持ち?」は別の問い

「気持ち」「心情」「人物像」はどう違う? 「どんな人?」と「どんな気持ち?」は別の問い 授業づくり

物語の授業でいちばん多い発問は、おそらく「このときの〇〇の気持ちは?」です。低学年から高学年まで、気持ちを問う発問は、物語の授業の中心にあります。

ところが、学年が上がると、指導書や学習指導要領に「心情」「人物像」「性格」という言葉が出てきます。「気持ち」と「心情」は同じ意味でしょうか。「人物像」と「性格」はどう違うのでしょうか。

言葉の違いは、問いの違いです。「どんな気持ち?」と「どんな人?」では、子どもが本文のどこを読み、何を考えるかがまったく変わります。この記事では、物語の人物の内面を表す言葉、「気持ち」「心情」「性格」「人物像」の定義を整理し、発問の言葉づかいについて考えます。

それぞれの言葉の定義

「気持ち」とは

気持ちは、ある場面での、その人物の心の動きのことです。

うれしい、悲しい、くやしい、こわい、ほっとした。その場面で、その人物の心がどう動いたのかを表すのが気持ちです。

気持ちの特徴は、その場その場で変わることです。さっきまでうれしかった人物が、次の場面では悲しくなる。気持ちは、出来事に反応して、刻々と変わっていきます。

「心情」とは

心情は、人物の心の中にある思いや考えのことです。

気持ちとよく似ていますが、心情のほうが、もう少し深く、複雑で、長く続くものを指します。ある場面での一瞬の心の動きだけでなく、その人物がずっと抱えている思い、いくつもの気持ちが入りまじった心の状態。それを心情と呼びます。

たとえば、「うれしい」は気持ちです。でも、「うれしいけれど、少しさびしい」「くやしいけれど、相手を認めざるをえない」のように、複数の思いが重なり合っている状態は、心情という言葉のほうがしっくりきます。

「性格」とは

性格は、その人物がもともと持っている、考え方や行動のくせのことです。

やさしい、おくびょう、負けずぎらい、のんびりしている。物語の中で、その人物がどんなときにどう行動するか、どう話すか。その積み重ねから見えてくる、人物の特徴が性格です。

性格は、気持ちとちがって、場面ごとにくるくる変わるものではありません。物語全体を通して、ある程度一貫しているものです。

「人物像」とは

人物像は、その人物がどんな人なのかを、性格や考え方、生き方、まわりとの関係などを合わせて、全体としてとらえたもののことです。

性格よりも広い言葉です。性格が「やさしい」「おくびょう」のような一つの特徴だとしたら、人物像は、「おくびょうだけれど、大切な人のためには勇気を出せる人」のように、いくつもの面を合わせて、人物の全体を描いたものです。

人物像には、物語の中でその人物が変わっていく姿も含まれます。始めはこうだった人物が、出来事を通してこう変わった。その変化も含めて、「この人は、こういう人だ」ととらえるのが人物像です。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 時間の長さ 問いの例
気持ち ある場面での心の動き 短い(場面ごと) 「このとき、どんな気持ち?」
心情 心の中の思いや考え(複雑・重なり合う) 中くらい〜長い 「このとき、心の中ではどんな思いがあった?」
性格 もともとの考え方や行動のくせ 長い(物語全体) 「どんな性格の人?」
人物像 人物の全体像(性格・考え・生き方・変化) 物語全体 「どんな人だと思う? なぜ?」

時間の長さで考えると分かりやすくなります。気持ちは場面ごとの短いもの、心情はもう少し深く長いもの、性格と人物像は物語全体を通して見えてくるものです。

学習指導要領での扱い

小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語「読むこと」では、物語の人物について、学年ごとに次のように示されています。

  • 第1学年及び第2学年:「場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること」「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること」
  • 第3学年及び第4学年:「登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉えること」「登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像すること」
  • 第5学年及び第6学年:「登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えること」「人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりすること」

並べると、学年が上がるにつれて言葉が変わっていくのが分かります。低学年は「行動」、中学年は「気持ち」「性格」、高学年は「心情」「人物像」。行動から気持ちへ、気持ちから心情へ、性格から人物像へと、読む深さが少しずつ増していくように組み立てられています。

つまり、低学年で「気持ち」を問わないわけではありませんが、低学年ではまず人物の行動を手がかりにし、中学年で気持ちとその変化を、高学年で複雑な心情と人物の全体像を読む、という順序になっているわけです。

「気持ち」を問う発問の落とし穴

「このときの〇〇の気持ちは?」という発問は、とても使いやすい発問です。でも、使い方によっては、読みが浅くなることもあります。

「うれしい」「悲しい」で終わってしまう

気持ちを問うと、子どもは「うれしい」「悲しい」「くやしい」と、一言で答えることが多いです。それ自体は悪くありませんが、そこで終わってしまうと、本文を深く読むことにはつながりません。

気持ちを問うときは、「どの言葉から、そう思ったの?」とセットで問うことが大事です。気持ちを答えるだけでなく、その根拠になる本文の言葉を示す。これで、子どもの読みが本文にもとづいたものになります。

書かれていない気持ちを、自由に想像しすぎる

気持ちを問うと、本文から離れて、子どもが自由に想像を広げてしまうこともあります。想像すること自体は大事ですが、本文に書かれていることとかけ離れてしまうと、物語を読んだことになりません。

学習指導要領の言葉にも、「叙述を基に」「描写を基に」とあります。気持ちや心情を想像するときも、本文の言葉を手がかりにする。それを忘れないようにしたいところです。

「心情」と「人物像」を問う発問

高学年では、気持ちだけでなく、心情や人物像を問う発問を入れると、読みが深まります。

心情を問う

「このときの大造じいさんの気持ちは?」と問うと、「くやしい」「感心した」のような一言の答えが返ってきます。

これを、「このとき、大造じいさんの心の中には、どんな思いがあったのでしょう。一つではないかもしれません」と問うと、子どもは「くやしい気持ちもあるけれど、残雪のことをすごいとも思っている」のように、複数の思いを考えるようになります。

心情を問う発問のポイントは、「一つではないかもしれない」という含みをもたせることです。人の心は、一つの言葉では言い表せないことが多い。それを考えさせるのが、心情を読む学習です。

人物像を問う

人物像を問うときは、「〇〇は、どんな人だと思いますか」と問います。

このとき、場面ごとの気持ちを並べるだけでは、人物像にはなりません。物語全体を見渡して、その人物の行動や言葉、考え方の共通点や変化を見つけ、「こういう人だ」とまとめる必要があります。

人物像を問う発問の後には、「物語のどこから、そう思いましたか」と、複数の場面から根拠を挙げさせるとよいと思います。一つの場面だけでなく、いくつもの場面の行動や言葉を結びつけて考えることで、人物の全体が見えてきます。

一つの場面で、三つの問いを比べる

4年生の「一つの花」で考えてみます。戦争に行くお父さんが、駅でゆみ子に一輪のコスモスをわたす場面です。

気持ちを問う:「コスモスをわたしたとき、お父さんはどんな気持ちだったでしょう」

子どもからは、「ゆみ子が泣きやんでほしい気持ち」「さびしい気持ち」といった答えが出てきます。その場面での心の動きです。

心情を問う:「お父さんは、ゆみ子にコスモスをわたしながら、心の中でどんな思いを抱えていたでしょう。一つではないかもしれません」

すると、「ゆみ子を笑わせたい」「もう会えないかもしれない」「ゆみ子に、一つだけでも大事なものをもっていてほしい」と、いくつもの思いが重なって出てきます。戦争に行く父親の、言葉にできない複雑な思いです。

人物像を問う:「お父さんは、どんな人だと思いますか。物語のほかの場面からも考えてみましょう」

ここでは、ゆみ子を高い高いしながら将来を心配していた場面や、駅での行動などを結びつけて、「自分のことより、ゆみ子のことをいつも思っている人」「言葉より行動で愛情を伝える人」といった人物像が出てきます。

同じ場面でも、問いの言葉が変わると、子どもが読む範囲も、考える深さも変わります。気持ちはその場面、心情はその場面の奥、人物像は物語全体。この三つを、単元の中で順に問うていくと、物語の読みが少しずつ深まっていきます。「一つの花」の読み方については、「『一つの花』の教材研究」にも書いています。

授業での段階

低学年:行動から気持ちへ

低学年では、まず人物の行動を確かめます。「〇〇は何をしましたか」。そのうえで、「そのとき、どんな気持ちだったと思う?」と気持ちを問います。

行動を確かめてから気持ちを考えると、子どもは「〇〇したから、〇〇な気持ちだったんだと思う」と、行動を手がかりに気持ちを想像できるようになります。

中学年:気持ちの変化と性格

中学年では、場面ごとの気持ちを表にまとめて、気持ちの変化を見えるようにします。始めの場面と終わりの場面で気持ちがどう変わったか、何がきっかけで変わったのかを考えます。

また、「〇〇は、どんな性格だと思う?」と性格を問う発問も入れます。性格を考えるときは、「いつも〇〇する」「〇〇なときに、〇〇する」のように、行動のくせを見つけることがポイントです。

高学年:心情と人物像

高学年では、複雑な心情を読むこと、人物像をとらえることに進みます。

一つの場面の中で、人物の心にどんな思いが重なっているか。物語全体を通して、人物はどんな人として描かれているか。こうした問いを通して、物語の人物を、一人の人間として深く理解していきます。

子どもの言葉を育てる

気持ちや心情を読むとき、子どもがつまずくのは、気持ちを表す言葉を知らないことです。「うれしい」「悲しい」しか言葉を持っていないと、複雑な心情を表すことはできません。

そこで、気持ちを表す言葉を増やす活動をおすすめします。「うれしい」に近い言葉、たとえば「ほっとする」「わくわくする」「胸がいっぱいになる」「ほこらしい」。「悲しい」に近い言葉、たとえば「さびしい」「せつない」「むなしい」「胸がしめつけられる」。

こうした言葉を、教室に掲示したり、ノートに一覧にしたりしておくと、子どもは気持ちや心情を表すときに、その言葉を使えるようになります。言葉が増えると、読み取れる心の動きも増えていきます。

混ざりやすいところ

気持ちと性格の区別

「〇〇は、やさしい気持ちだった」と「〇〇は、やさしい性格だ」。似ていますが、意味は違います。

やさしい気持ちは、その場面での心の動き。やさしい性格は、いつもそうである、という人物の特徴です。ある場面でやさしい気持ちになった人物が、いつもやさしい性格だとは限りません。子どもが混乱しているときは、「それは、このときだけ? いつも?」と問うと、区別がつきやすくなります。

性格と人物像の区別

性格は一つの特徴、人物像は全体像です。「おくびょう」は性格ですが、「おくびょうだけれど、じさまのためには夜道をかけていける子」は人物像です。

人物像を問われたのに性格を一言で答えている子には、「ほかの場面では、どんなところがあった?」と問い、複数の面を合わせて考えるようにうながします。

よくある質問

低学年で「心情」という言葉を使ってもいいですか?

低学年の子どもには、「心情」より「気持ち」のほうが分かりやすいので、子どもへの言葉は「気持ち」で十分です。ただ、先生が教材研究をするときには、気持ちだけでなく、心情や人物像まで考えておくと、子どもの発言を受け止める幅が広がります。

人物像に正解はありますか?

一つの正解があるわけではありません。読む人によって、人物のどこに注目するかが違うので、人物像も少しずつ違ってきます。大事なのは、本文の言葉を根拠にしているかどうかです。根拠をもとに話し合うと、自分では気づかなかった人物の面が見えてきます。

気持ちを「書かせる」のと「話させる」のは、どちらがいいですか?

どちらにもよさがあります。書かせると、一人一人がじっくり考えられます。話させると、友達の考えを聞いて、自分の考えを広げられます。おすすめは、まず短く書かせて、それをもとに話し合う流れです。書いたものがあると、話すのが苦手な子も参加しやすくなります。

まとめ

気持ちは、ある場面での、その人物の心の動き。
心情は、心の中にある思いや考え。いくつもの気持ちが重なり合うこともある。
性格は、その人物がもともと持っている考え方や行動のくせ。
人物像は、性格や考え方、生き方、変化を合わせて、人物を全体としてとらえたもの。

「どんな気持ち?」は場面を読む問い、「どんな人?」は物語全体を読む問いです。学年が上がるにつれて、気持ちから心情へ、性格から人物像へと問いを深めていくと、子どもは物語の人物を、一人の人間として理解できるようになります。

発問の言葉を一つ変えるだけで、子どもが読む範囲も、考える深さも変わります。次の物語の授業では、「どんな気持ち?」のあとに、「どんな人だと思う?」を一度問うてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました