「一つの花」の教材研究 「一つだけ」のくり返しに込められたもの

授業づくり

どうも。「せいたか先生」です。

4年生の春に読む「一つの花」。戦争の時代を描いた物語なので、どう扱えばいいか悩む先生も多いと思います。重たいテーマを、4年生の子どもたちにどう届けるか。

この物語には、何度もくり返される言葉があります。「一つだけ」。ゆみ子が最初に覚えた言葉です。この言葉が、物語の中で何度も出てきて、そのたびに少しずつ意味が変わっていく。

ということで今回は、この「一つだけ」のくり返しを中心に、「一つの花」の教材研究をしてみます。

教材の特徴

まず、物語の骨組みです。

  • 中心人物:ゆみ子
  • ゆみ子の家族:お父さん、お母さん
  • 時代:戦争が激しかったころ
  • 場面:大きく分けて、戦争中の場面と、十年後の場面

この物語は、戦争中の場面と、それから十年後の場面の、二つの時代で構成されています。この二つの場面を比べることが、授業の大きな柱になります。

「一つだけ」が最初の言葉

戦争中、食べるものがほとんどない時代。ゆみ子は、おなかをすかせて、「一つだけちょうだい。」と言うようになります。これが、ゆみ子のはっきり覚えた最初の言葉です。

お母さんは、自分の分からゆみ子に分けてあげるとき、「一つだけ…。一つだけ…。」と言って与えていました。それで、ゆみ子は「一つだけ」という言葉を覚えてしまったのです。

ここで、子どもたちに「ゆみ子が最初に覚えた言葉が『一つだけ』なのは、どんな気持ちになる?」と聞いてみてください。普通、子どもが最初に覚える言葉は「ママ」や「パパ」かもしれない。それが「一つだけ」。そこに、この時代の苦しさが表れています。

お父さんの思い

お父さんは、ゆみ子のことを心配しています。「この子は一生、みんなちょうだい、山ほどちょうだいと言って、両手を出すことを知らずにすごすかもしれないね。」と。

そして、お父さんは、ゆみ子を「めちゃくちゃに高い高い」するのです。

この場面のお父さんの気持ちを、子どもたちと読んでみると、「ゆみ子に、たくさんのものをあげたかった」「でも、何もあげられない」という気持ちが見えてきます。

出征の日

そして、お父さんが戦争に行く日。駅まで、お母さんとゆみ子が見送りに行きます。

駅に着く前に、ゆみ子は、お母さんが持っていたおにぎりを、全部食べてしまいます。そして、お父さんが行ってしまう直前に、また「一つだけちょうだい。」と言って泣き出してしまう。

お父さんは、プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に、わすれられたようにさいていたコスモスの花を一輪とってきて、ゆみ子にあげます。

一つだけのお花、大事にするんだよう——。

そして、ゆみ子のにぎっている一つの花を見つめながら、何も言わずに汽車に乗って行ってしまいます。

「一つだけ」の意味が変わる

ここが、授業の中心になる問いです。

最初の「一つだけ」は、足りないもの、少ししかないものを表す言葉でした。食べ物が足りないから、一つだけ。

でも、お父さんがゆみ子にあげたコスモスの「一つだけのお花」は、少し意味がちがいます。

子どもたちに「お父さんがあげた『一つだけのお花』は、どんな意味がある?」と聞くと、

  • 「お父さんが最後にあげたもの」
  • 「たった一つの、大切なもの」
  • 「お父さんの気持ちがこもったもの」

という考えが出てきます。同じ「一つだけ」でも、足りないものから、かけがえのないものへ。意味が変わっています。

十年後

そして、物語は十年後の場面に移ります。

ゆみ子は、お父さんの顔をおぼえていません。自分にお父さんがあったことも、あるいは知らないのかもしれない、と書かれています。

でも、ゆみ子の家のまわりは、コスモスの花でいっぱいに包まれています。ゆみ子は、お母さんに「お肉とお魚と、どっちがいいの。」と聞いています。

ここで、最初の場面と比べてみます。

戦争中 十年後
食べ物 「一つだけちょうだい」 「お肉とお魚と、どっちがいいの」
コスモス 一輪だけ 家のまわりがいっぱい
お父さん いる(出征する) いない

この表を見ると、子どもたちは、「一つだけ」だったものが、「いっぱい」に変わっていることに気づきます。食べ物も、コスモスも。でも、お父さんはもういない。

単元の流れ(案)

時 学習活動
1 通読。初発の感想
2 時代背景を知る。二つの場面に分ける
3 「一つだけ」が最初の言葉になった理由を読む
4 お父さんの思いを読む(高い高い)
5 出征の日:一つの花を渡す場面を読む
6 十年後の場面を読み、戦争中と比べる
7 「一つだけ」の意味の変化を話し合う
8 題名「一つの花」に込められたものを考え、感想をまとめる

戦争教材を扱うときに

戦争を描いた物語を扱うときは、子どもたちの中に、家族を亡くした経験がある子や、戦争や災害のニュースに敏感な子がいることも考えておきたいところです。

物語の悲しさを無理に強調するより、ゆみ子とお父さん、お母さんの間にあった思いに目を向けさせる。そのほうが、4年生の子どもたちには届きやすいと思っています。

おわりに

「一つの花」は、何もかもが足りない時代に、それでも子どもに何かを渡そうとした親の物語だと思っています。

「一つだけ」。たった4文字の言葉に、これだけの意味が込められている。子どもたちと一緒に、その重さを感じ取れるといいですね。

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