調べ学習で、子どもがタブレットで検索をする。すると検索結果の一番上に、AIがまとめた文章が出てくる。子どもはそれをそのままノートに写す。…最近、こんな場面、ありませんか?
実は審議まとめにも、ほぼこの場面が書いてあります。
ブラウザの検索結果の最上部にAIによる要約が表示される中、その内容を単純にコピー&ペーストして、十分な思考を働かせていない実態等も散見される。
国語の課題として、です。社会科のページにも同じような記述があります。文部科学省の会議の資料に、ここまで具体的な教室の姿が書かれるのは、なかなか珍しいことだと思います。
今回は、6年生の教材「メディアと人間社会」を中心に、この課題にどう向き合うかを考えてみます。
審議まとめの「情報の扱い方」
まず、国語で情報について何が変わりそうかを確認します。
審議まとめは、現行の〔知識及び技能〕にある「情報の扱い方」について、性質の違う二つの力を、発達段階に応じて系統的に示すとしています。
- 情報と情報との関係を吟味し整理する力
- 情報の信頼性や妥当性を見極める力
今の学習指導要領の「情報の扱い方」は、「原因と結果」「考えとそれを支える理由や事例」「情報と情報との関係付けの仕方」など、どちらかというと前者が中心です。後者の「信頼性や妥当性」を、はっきり一つの力として位置付ける。ここが大きな変化です。
さらに、生成AIについては、「生成された出力も比較・吟味の対象である」こと、そして「自ら考え、判断し、表現した内容を自らの言葉で説明し責任を持つこと」を基本に据える、とあります。
「メディアと人間社会」が伝えていること
「メディアと人間社会」は、ジャーナリストの池上彰さんの文章です。人間が情報を伝え合う手段が、文字、新聞、ラジオ、テレビ、インターネットと広がってきた歴史をたどり、それぞれのメディアが人間の欲求にこたえて発達してきたこと、そしてインターネットの時代には、不確かな情報も広がりやすいことを述べます。最後は、メディアとどう付き合うかを、私たち一人一人が考えることを求めて終わります。【要確認:結論部分の表現】
同じ単元では、鴻上尚史さんの「大切な人と深くつながるために」など、テーマの違う文章を読み比べ、「考える」ことについて自分の考えをまとめる流れになっていることが多いと思います。
この文章、10年前に読むのと今読むのでは、意味が違って見えます。インターネットの先に、今はAIがいる。子どもたちにとっては、「メディアの歴史」ではなく、まさに今の話です。
授業で足したい問い
この教材を「筆者の主張を読み取る」だけで終わらせず、審議まとめの「信頼性・妥当性」につなげるなら、こんな問いを足してみてはいかがでしょう。
問い1:「この文章は、信頼できる?」
ちょっと意地悪な問いです。教科書に載っている文章を疑う。でも、ここが出発点です。
「筆者は誰?」「何を根拠に書いている?」「いつ書かれた?」。子どもは最初、「教科書だから正しい」と言います。そこで、「じゃあ、インターネットの記事は?」「AIの答えは?」と聞いていく。
誰が、何を根拠に、いつ書いたか。この3つを確かめる習慣は、教科書の文章でも、AIの答えでも同じように使えます。
問い2:「同じテーマを、AIに聞いてみると?」
学校のルールの範囲で、ですが、「メディアとの付き合い方」について、生成AIや検索の要約がどう答えるかを先生が提示します。そして、池上さんの文章と比べさせます。
子どもからは、こんな声が出ると思います。「AIの方が短くて分かりやすい」「でも、なんでそう言えるのかが書いてない」「池上さんは昔の例から説明してる」。
根拠や筋道が見えるかどうか。ここに気づけば、比べた意味があります。審議まとめのいう「出力も比較・吟味の対象」とは、こういうことでしょう。
問い3:「あなたは、何を根拠にそう考える?」
最後に、自分の考えを書かせます。このとき、「池上さんがこう言っているから」だけでなく、自分の経験や、調べた情報を根拠にする。そして、その情報が信頼できる理由も一言添える。
ここまでくると、「AIの要約をそのまま写す」とは逆の方向の学習になります。
気をつけたいこと
AIを使う場面を、先生が決める
審議まとめは、AIの使い方について、かなり慎重です。要約する活動や、最初の考えを文章にする活動など、その単元で育てたい力に直結する場面で、AIを不用意に使うことには慎重に、と書いています。子どもが自分でやるべき思考をAIに肩代わりさせないように、ということです。
なので、この単元で子どもに自由にAIを使わせるのは、おすすめしません。比較の材料として先生が提示する、くらいがちょうどいいと思っています。ちなみに、学校や自治体のガイドラインも必ず確認してください。
「疑う」が「全部信じない」にならないように
信頼性を確かめる学習をすると、「ネットはうそばっかり」「全部信じない」という極端な方向に行く子がいます。それはそれで困る。
「確かめて、使える情報を選ぶ」が目的であって、「疑って捨てる」が目的ではない。ここは丁寧に伝えたいところです。
評価について
審議まとめは、国語の評価について、「収集した情報の信頼性や妥当性を確かめた上で、それらを活用して自ら思考・判断・表現できているか」という観点をより重視するのが当面の基本的な考え方、としています。
ということは、最後に書く文章で見るべきは、「上手に書けているか」だけでなく、根拠にした情報を、なぜ信頼したのかが書けているか、です。一文でいいので、そこを書く欄をつくっておくと、評価がしやすくなります。
まとめ
- 審議まとめは、AI要約のコピペを国語の課題として明記し、「情報の信頼性や妥当性を見極める力」を一つの力として位置付ける方向を示している
- 「メディアと人間社会」は、メディアの変化と付き合い方を扱う文章で、AI時代の今こそ「自分ごと」として読める
- 「この文章は信頼できる?」「AIの答えと比べると?」「あなたの根拠は?」の3つの問いで、読むことを信頼性の学習につなげる
正直、AIのことは、私たち大人もまだ手探りです。だからこそ、子どもと一緒に「これ、本当?」と立ち止まる時間を、国語の中にもっておきたいと思っています。
次回は、同じ6年生の物語「帰り道」で、「多様な他者の感性や情緒を理解する力」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「国語」p.127〜128、p.135、p.139 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」国語 第5学年及び第6学年 C読むこと(1)、〔知識及び技能〕(2)情報の扱い方に関する事項
- 池上彰「メディアと人間社会」、鴻上尚史「大切な人と深くつながるために」(光村図書『国語 六』)
- 関連記事:AIの要約をコピペする子に、国語ができること 情報の信頼性・妥当性を確かめる力(連載「次期学習指導要領を読む」)


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