5年生の社会科の後半、「情報化した社会と産業」。テレビのニュース番組や新聞がどうやって作られているかを調べ、情報を生かして発展している産業についても学ぶ単元です。
この単元、教科書が作られたときと今とで、子どもの情報環境が一番変わった単元かもしれません。子どもがニュースに触れるのは、テレビや新聞よりも、動画サイトやSNS、そしてAIの要約だったりします。
審議まとめの社会科の部分には、この変化がはっきり書かれています。
審議まとめの社会科と情報
審議まとめは、社会科の改善の方向として、こう書いています。
現代社会では、生成AIやSNSの普及により、膨大な情報が容易に得られる一方で、その真偽や信頼性を適切に判断する力が求められている。このため、資料や情報を収集するだけでなく、その真偽や意図、背景等をこれまで以上に把握し、その信ぴょう性等を検証し、根拠に基づいて自らの考えを形成する力を育成することが必要である。
そして、社会科の目標の「知識及び技能」について、小中学校では、「確かな」情報に基づき、「適切かつ」効果的に調べまとめる技能を身に付ける方向で見直す、としています。
国語(本連載#3)でも出てきた、AIの要約をそのままコピペする子どもの姿は、社会科のページにも書かれています。最終的な評価の段階でAIに頼って自らの思考を経ていない成果物は通用しないような評価の工夫が「喫緊の課題」だ、と。
「真偽」と「意図」
ここで注目したいのは、「真偽」と並んで「意図」という言葉が入っていることです。
情報が本当かうそか、だけではない。その情報は、誰が、何のために出しているのか。ここまで考える。
5年生の「情報化した社会と産業」は、まさにこの「意図」を学ぶ単元です。ニュース番組は、たくさんの情報の中から、何を伝えるかを選んでいる。新聞は、見出しや写真の大きさで、何が大事かを示している。情報には、必ず作り手の判断が入っています。
授業で足したい活動
①同じ出来事の、違う伝え方を比べる
同じ日の、同じ出来事についての、二つの新聞の一面や記事を比べます。見出しの言葉、写真、記事の大きさ。
「同じ出来事なのに、どうして違うの?」。子どもは考えます。「伝えたいことが違う」「読む人が違う」。これが「意図」です。
実際の新聞を使う場合は、学校図書館の新聞や、教育用の新聞記事データベースを使い、出典と日付を記録しておくと安心です。
審議まとめは、国語の部分で、読書習慣の形成やメディアリテラシーの向上に向けて、新聞配備も含めた学校図書館の機能の充実を進めることが重要、とも書いています。学校図書館に新聞があれば、すぐに使えます。
②ニュースを作る側になってみる
学級や学校で起きた出来事を題材に、班で「30秒のニュース」を作ります。伝えたいことは何か、どの順番で伝えるか、どの写真を使うか。
作ってみると、子どもは「選ぶ」ことの難しさに気づきます。全部は伝えられない。何を入れて、何を落とすか。ここで初めて、「ニュースは、誰かが選んで作っている」が実感になります。
③AIの要約と比べてみる
学校のルールの範囲で、先生が、ある出来事について生成AIや検索の要約がどう説明するかを示します。そして、新聞記事と比べさせます。
- 要約には、誰が言ったか(出典)が書いてある?
- 新聞には、誰が取材して書いた?
- どちらにも、間違いの可能性はある?
AIの要約が悪い、新聞が正しい、という話ではありません。どちらも「誰かが作った情報」だと気づくことが大事です。
「調べまとめる技能」の見直し
審議まとめは、社会科で、自らの考えを批判的に見直しながら他者と対話し、より適切な判断につなげる学習過程を充実するために、「社会的事象等について調べまとめる技能」の見直しを行う、としています。
5年生の段階で育てたい技能は、たとえばこんなことだと思っています。
- 調べた情報の出どころ(誰が出した情報か)を書く
- 一つの情報だけで決めず、二つ以上の情報で確かめる
- 事実と、誰かの意見を分けて書く
この3つを、まとめの新聞やスライドのチェック項目にしておく。それだけでも、まとめの質は変わります。
評価の工夫
審議まとめが「喫緊の課題」と書いている、AIに頼った成果物が通用しない評価の工夫。正直、私もまだ答えをもっていません。
ただ、一つ言えるのは、できあがった成果物だけで評価しないことだと思っています。調べる途中のメモ、友達との話し合い、「なぜこの情報を選んだのか」の説明。過程を見ていれば、自分で考えた子かどうかは、案外分かります。
単元計画のイメージ
「意図」を読む活動と、ニュースを作る活動を入れた単元計画です。教科書によって、放送・新聞のどちらを中心に扱うか、どの産業を例にするかがちがうので、ここでは12時間ほどの目安で書いています。
| 段階 | 時 | 主な学習 | 中心の問い |
|---|---|---|---|
| 出会う | 1 | 自分がニュースや情報を何から得ているかを出し合う | わたしたちは、何から情報を得ている? |
| 問いをもつ | 2 | 同じ出来事の、二つの伝え方を比べる | どうして、同じ出来事なのに伝え方がちがう? |
| 調べる | 3〜4 | ニュース番組や新聞が作られる過程を調べる | ニュースは、どうやって作られている? |
| 調べる | 5 | 情報を伝える人たちの工夫と苦労を考える | 作る人は、何に気をつけている? |
| 作る | 6〜7 | 班で「30秒のニュース」を作る | 何を伝えて、何を落とす? |
| 比べる | 8 | AIの要約と新聞記事を比べる | どちらも、誰かが作った情報? |
| 広げる | 9〜10 | 情報を生かして発展している産業を調べる | 情報は、産業でどう生かされている? |
| 考える | 11 | 情報を受け取る側として、大切なことを考える | これから、情報とどう付き合う? |
| ふり返り | 12 | 単元をふり返る | この単元で、情報の見方はどう変わった? |
第6〜7時の「30秒のニュース」を作る活動を、第3〜5時の「作る人の工夫を調べる」のあとに置いているのがポイントです。調べたことを、自分たちで実際にやってみる。そうすると、「選ぶことの難しさ」が、調べた知識から実感に変わります。
第1時の「何から情報を得ている?」
単元の最初に、子どもが情報を何から得ているかを出し合います。黒板に、子どもの答えを書いていくと、こんな一覧になると思います。
- テレビのニュース
- 動画サイト
- 家族との会話
- 友達から聞いた話
- 学校のお便り
- ゲームの中のお知らせ
- 検索したときに出てくるまとめ
この一覧を、「誰が作った情報か、分かる?」の観点で分けてみます。テレビのニュースは、放送局が作っている。家族との会話は、家族が話している。動画サイトの動画は、作った人が分かるものもあれば、分からないものもある。
この分け方が、単元の最後の「情報とどう付き合う?」を考えるときの、出発点になります。
【配慮:家庭の情報環境はさまざま。テレビやスマホがない家庭の子もいる。「わたしの家は〇〇がない」と言いづらい雰囲気にならないよう、「学校で」「友達から」など、家庭以外の情報源も一緒に挙げる】
第2時の流れ 同じ出来事の、二つの伝え方を比べる
準備:同じ出来事について、二つの新聞の記事を用意します。学校図書館の新聞や、教育用の新聞記事データベースを使うと、出典と日付がはっきりした記事が手に入ります。政治的に意見が大きく分かれる出来事は避け、スポーツの試合や地域の行事など、子どもが比べやすい出来事を選ぶのがおすすめです。
導入(5分):「同じ日の、同じ出来事についての記事です。どこがちがうか、探してみよう」。
個人で比べる(10分):二つの記事を比べて、ちがうところに線を引きます。観点は、「見出しの言葉」「写真」「記事の大きさ」「最初の一文」の四つです。
グループで話す(15分):見つけたちがいを出し合い、「どうしてちがうのか」を考えます。予想される子どもの声はこんな感じです。
- 「こっちの見出しは、勝ったことを書いてる。こっちは、選手の名前を大きく書いてる」
- 「写真がちがう。こっちは、喜んでいる写真。こっちは、試合中の写真」
- 「この新聞は、地元のチームのことをくわしく書いてる」
- 「読む人が、ちがうのかな」
最後の「読む人がちがう」は、とても大事な気づきです。誰に向けて書いているかで、何を伝えるかが変わる。これは、国語の「アップとルーズで伝える」(連載#1)で学んだ「目的に合わせて選ぶ」と同じ考え方です。
全体で話す(10分):「どっちの記事が正しい?」と聞きます。子どもは、「どっちも正しい」「どっちもうそは書いてない」と答えます。「じゃあ、どうしてちがうの?」「伝えたいことがちがうから」。ここで、「意図」という言葉を伝えます。
まとめ(5分):「情報には、作った人の意図がある」とまとめて、ノートに一言書かせて終わります。
「30秒のニュース」の作り方
第6〜7時の活動は、こんな手順で進めます。
- 題材を決める:学級や学校で最近あった出来事から、班で一つ選ぶ(運動会の練習、図書室の新しい本、校庭の花壇の様子など)
- 伝えたいことを一文で書く:「この出来事で、一番伝えたいことは何?」
- 材料を集める:写真を撮る、関係する人に短くインタビューする、数を調べる
- 何を入れて、何を落とすかを決める:集めた材料を全部入れると、30秒に収まらない。どれを使うかを班で話し合う
- 原稿を書き、練習する
- 発表する:端末で動画にしてもいいし、教室の前で読み上げてもいい
4の「何を落とすか」を話し合う時間が、この活動の中心です。子どもからは、「せっかくインタビューしたのに、使えない」「この写真の方がいいけど、伝えたいこととはちがう」といった声が出てきます。この悩みこそが、ニュースを作る人たちが毎日している判断です。
発表のあとに、「〇〇班は、何を伝えたかったと思う?」と、ほかの班に聞きます。作った班の「伝えたいこと」と、見た人が受け取ったことが同じかどうかを確かめる。ずれていたら、「どこを変えれば伝わった?」を一緒に考えます。
【配慮:インタビューや写真の対象に、ほかの学級の子どもや先生を含める場合は、事前に了承を得る。発表した動画を学級の外に出さない】
情報を生かす産業の調べ方
第9〜10時の「情報を生かして発展している産業」は、教科書の事例を中心に調べます。教科書によって、物流、観光、医療、農業などの事例がとりあげられていると思います。
調べるときは、次の三つの観点を使います。
- どんな情報を集めている?
- 集めた情報を、どう使っている?
- 情報を使うことで、誰の何がよくなった?
さらに一つ、「情報を使うときに、気をつけていることは?」という観点を足すと、個人情報の扱いや、情報の正確さの大切さに目が向きます。情報を「使う」側の責任について考えることは、子どもが情報を「受け取る」側として気をつけることにもつながります。
板書のイメージ
第2時の板書は、黒板の左右に二つの記事を貼り、ちがいを同じ高さに並べて書きます。見出し、写真、記事の大きさ、最初の一文。そして、真ん中に「どうしてちがう?」と書き、子どもの考えを書いていきます。
単元を通して、黒板の右端に「情報を見るときのチェック」のコーナーをつくり、学んだことを少しずつ書き足していきます。「誰が作った?」「何を伝えたい?」「ほかの情報と比べた?」。単元の最後には、学級の「情報チェックリスト」ができあがります。
つまずきやすいところと手立て
- 二つの記事のちがいが見つけられない子:観点を一つずつにしぼります。「まず、見出しだけ比べてみよう」。一つの観点でちがいが見つかると、ほかの観点にも目が向きます。
- 「どっちかがうそ」と考えてしまう子:「どっちにも、本当のことが書いてあるよ。でも、選び方がちがう」と伝えます。事実とその選び方を分けて考えることが、意図を読む第一歩です。
- ニュース作りで、全部の材料を入れようとする子:「30秒で読める原稿は、だいたい何文字くらい?」と、時間の制限を数で確かめます。制限があると、選ぶ必要が実感できます。
- 情報との付き合い方を考えるとき、「全部信じない」になる子:「確かめてから使う」と「信じない」は、ちがうことを伝えます。国語の「メディアと人間社会」(連載#3)と同じ考え方です。
評価の目安
この単元の「思考・判断・表現」は、第2時の比較と、第6〜7時のニュース作りの話し合い、第11時の考えで見ると、ねらいに合っています。
- 十分にできている:情報の伝え方のちがいを、作り手の意図と結び付けて説明できる。自分がニュースを作るときに、伝えたいことに合わせて材料を選んだ理由を説明できる
- おおむねできている:伝え方のちがいには気づいているが、作り手の意図と結び付けることはまだ難しい
- もう一歩:伝え方のちがいに気づくことが、まだ難しい
本文で書いた通り、できあがったニュースの出来ばえだけで評価しないようにしています。何を落とすかを話し合ったときのメモや、ふり返りのノートに、その子が考えた跡が残っています。
よくある質問
Q. 新聞を読む習慣がない子が多く、比べる活動が難しいです。
新聞の全部を読ませる必要はありません。見出しと写真と最初の一文だけを比べれば、伝え方のちがいは十分に見つけられます。子ども向けの新聞を使うのもいい方法です。
Q. 「30秒のニュース」は、動画にしないといけませんか?
動画にしなくてもかまいません。教室の前で、原稿を読み上げる形でも十分です。大事なのは、何を伝えて、何を落とすかを話し合う過程です。
Q. 情報の学習は、総合的な学習の時間でも扱います。どう分けますか?
社会科では、情報を作る人や、情報を生かす産業の働きを学ぶことが中心です。総合的な学習の時間では、自分たちが情報を集めて発信する活動が中心になります。社会科で学んだ「作り手の意図」を、総合で自分が発信するときに意識する。そういうつながりを意識しておくと、二つの学習が互いに深まります。
まとめ
- 審議まとめは、社会科で、情報の「真偽」だけでなく「意図、背景」まで把握し、信ぴょう性を検証して考えを形成する力を求めている
- 5年「情報化した社会と産業」は、ニュースの作り手の判断(意図)を学ぶ単元。同じ出来事の違う伝え方を比べる、自分でニュースを作る、AIの要約と比べる
- 出どころを書く、二つ以上で確かめる、事実と意見を分ける。評価は成果物だけでなく過程で
「ニュースは、誰かが選んで作っている」。この当たり前のことに、5年生で気づけるかどうか。その後の情報との付き合い方が変わると思っています。
次回は、6年生の「わたしたちの生活と政治」で、主権者教育を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「社会、地理歴史、公民」p.145〜147、「国語」p.128 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」社会 第5学年 内容(4)
- 関連記事:「メディアと人間社会」を、AI要約の時代に読む(本連載#3)


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