国語の授業では、「言葉」という一言で、いろいろなものを指しています。「この言葉の意味は?」と聞くときは一つの単語のこと、「この言葉に線を引きましょう」と言うときは一つの文のこと、「筆者の言葉から考えよう」と言うときは文章全体のことかもしれません。
先生が「言葉」を広く使うのは、自然なことです。でも、文法の学習や、文章の組み立ての学習をするときには、言葉の単位をはっきり分けておかないと、子どもが混乱します。「主語と述語」は何の話なのか、「段落の役割」は何の話なのか。
この記事では、国語の「言葉の単位」、つまり「語」「文節」「文」「段落」「文章」「談話」の定義を整理します。先生が単位の違いを先に押さえておくと、文法の授業も、文章の授業も、ずっと分かりやすく組み立てられます。
言葉の単位を、小さいほうから並べる
言葉の単位は、小さいほうから順に、次のように並びます。
語(単語) → 文節 → 文 → 段落 → 文章(談話)
小さな単位が集まって、大きな単位になる。この入れ子の関係を頭に入れておくと、それぞれの定義が分かりやすくなります。
それぞれの言葉の定義
「語(単語)」とは
語は、意味をもつ言葉の、いちばん小さな単位です。「単語」とも言います。
「わたしは、学校へ行きます」という文なら、「わたし」「は」「学校」「へ」「行き」「ます」が、それぞれ語です。
「わたし」「学校」「行く」のように、それだけで意味が分かる語もあれば、「は」「へ」「ます」のように、ほかの語について、意味をそえたり、つながりを示したりする語もあります。
小学校では、語の種類として、ものの名前を表す言葉(名詞)、動きを表す言葉(動詞)、様子を表す言葉(形容詞など)を学びます。「名詞」「動詞」という文法の用語を本格的に学ぶのは中学校からですが、小学校でも、言葉の種類に気づく学習をします。
「語彙」とは
語に関わる言葉として、「語彙」も押さえておきます。
語彙は、ある人が知っていて使える語の、ひとまとまりのことです。「語彙が豊かだ」と言うとき、それは、たくさんの語を知っていて、場面に合わせて使い分けられる、という意味です。語彙は、一つ一つの語ではなく、語の集まりを指す言葉です。
「文節」とは
文節は、文を、意味がこわれない範囲で、できるだけ短く区切ったまとまりのことです。
「わたしは/学校へ/行きます」。このように区切ったときの、一つ一つのまとまりが文節です。文節の区切り目は、「ね」や「さ」を入れて自然に読めるところ、と覚えると見つけやすくなります。「わたしはね、学校へね、行きますね」。
「文節」という用語を本格的に学ぶのは中学校です。小学校では、音読のときの「言葉のまとまり」として、文節の感覚を育てていきます。低学年で「語のまとまりに気を付けて音読する」ことが求められるのは、この文節の感覚につながっています。
「文」とは
文は、一つのまとまった内容を表し、句点(。)で終わる、言葉のまとまりです。
「わたしは、学校へ行きます。」が一つの文です。文には、ふつう、「何が(だれが)」にあたる主語と、「どうする・どんなだ・何だ」にあたる述語があります。
主語と述語、修飾語といった文法の学習は、文という単位の中での話です。「この文の主語は何か」「この言葉は、どの言葉をくわしくしているか」。文の中での語と語の関係を考えるのが、文法の学習の中心です。
「段落」とは
段落は、文章の中で、内容がひとまとまりになっている部分です。いくつかの文が集まって、一つの段落になります。
段落については、「『場面』と『段落』はどう違う?」でくわしく書きました。行の初めを一字下げて書き始めるまとまり(形式段落)と、内容のつながりでまとめた大きなまとまり(意味段落)があります。
「文章」とは
文章は、いくつかの文が集まって、全体として一つのまとまった内容を表すものです。
物語、説明文、手紙、作文、日記。これらはすべて文章です。文章は、ふつう、いくつかの段落からできています。
文章の学習では、文と文のつながり、段落と段落のつながり、そして文章全体の組み立て(構成)を考えます。「はじめ・中・おわり」「序論・本論・結論」といった言葉は、文章という単位での話です。
「談話」とは
談話は、話し言葉で、全体として一つのまとまった内容を表すものです。
文章が書き言葉のまとまりだとしたら、談話は話し言葉のまとまりです。スピーチ、会話、話し合い、インタビュー。これらは談話です。
学習指導要領では、「話や文章」という言い方がよく出てきます。この「話」が、談話にあたります。話すこと・聞くことの学習は、談話という単位で、組み立てや話し方を考える学習だと言えます。
並べてみると
| 単位 | ひと言でいうと | 区切りの目印 | その単位で考えること |
|---|---|---|---|
| 語(単語) | 意味をもつ言葉の最小の単位 | ― | 言葉の意味、言葉の種類 |
| 文節 | 意味がこわれない範囲で区切ったまとまり | 「ね」を入れて読めるところ | 言葉のまとまり(音読) |
| 文 | まとまった内容を表し、句点で終わる | 句点(。) | 主語と述語、修飾語 |
| 段落 | 内容がひとまとまりの部分 | 一字下げ | 段落の役割、段落どうしの関係 |
| 文章 | 文が集まって、全体で一つの内容を表すもの(書き言葉) | ― | 構成、文章の種類 |
| 談話 | 全体で一つの内容を表す話(話し言葉) | ― | 話の組み立て、話し方 |
学習指導要領ではどう扱われているか
小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語の「知識及び技能」では、言葉の単位に関わる事項が、学年ごとに次のように示されています。
- 第1学年及び第2学年:「文の中における主語と述語との関係に気付くこと」
- 第3学年及び第4学年:「主語と述語との関係、修飾と被修飾との関係、指示する語句と接続する語句の役割、段落の役割について理解すること」
- 第5学年及び第6学年:「文の中での語句の係り方や語順、文と文との接続の関係、話や文章の構成や展開、話や文章の種類とその特徴について理解すること」
並べてみると、学年が上がるにつれて、考える単位が大きくなっていくのが分かります。低学年は文の中の主語と述語。中学年は文の中の修飾の関係に加えて、指示語や接続語、段落の役割。高学年は、文と文のつながり、そして話や文章全体の構成や種類。
語から文へ、文から段落へ、段落から文章へ。言葉の単位の入れ子の関係が、そのまま学年の順序になっているわけです。
単位がずれると、何が起きるか
「主語は何?」と「何について書いた文章?」が混ざる
文法の学習で、「この文の主語は何ですか」と問うのは、文という単位の話です。一方、説明文の学習で、「この文章は何について書かれていますか」と問うのは、文章という単位の話です。
この二つが混ざると、子どもは混乱します。「主語」という言葉を、文章全体の話題という意味で使ってしまったり、文章の話題を、一つの文の主語から探そうとしたりします。
先生が、今は文の話をしているのか、文章の話をしているのかを意識して、「この文の」「この文章の」と言い分けるだけで、子どもの混乱はずいぶん減ります。
「言葉」が何を指すかがあいまい
「この言葉に線を引きましょう」と指示したとき、子どもによって、一つの語に引く子、文節に引く子、一文全体に引く子が出てきます。指示があいまいだからです。
「この文の中で、気持ちが分かる言葉を一つ見つけて、線を引きましょう」と言えば語、「気持ちが分かる文に線を引きましょう」と言えば文。指示の中に単位を入れると、子どもは迷わず作業できます。
文法の学習が、文章の学習とつながらない
文法の学習は、文という単位の中で、語と語の関係を考える学習です。でも、それが、文章を読んだり書いたりする学習と切り離されていると、子どもにとっては「テストのための知識」になってしまいます。
たとえば、指示する語句(こそあど言葉)や、接続する語句(つなぎ言葉)は、文と文、段落と段落をつなぐ働きをしています。説明文を読むときに、「この『これ』は、前のどの文を指しているかな」「『しかし』の前と後で、何が変わったかな」と問うと、文法の知識が、文章を読む力とつながります。
一つの文章を、単位ごとに見てみる
単位の違いを、短い文章の例で確かめてみます。
わたしの町には、大きな川があります。夏になると、たくさんの人が川遊びに来ます。
しかし、川には危ないところもあります。急に深くなるところや、流れが速いところです。だから、川で遊ぶときは、大人といっしょに行くことが大切です。
この文章を、単位ごとに見ていきます。
語:「わたし」「町」「大きな」「川」「夏」「たくさん」「人」……。一つ一つの語の意味を確かめる学習なら、「急に」は、どんな様子を表す言葉かな、と問うことができます。
文:文章は、句点で区切ると五つの文でできています。「夏になると、たくさんの人が川遊びに来ます。」という文の主語は「人が」、述語は「来ます」。文の学習なら、この関係を確かめます。
段落:一字下げで始まる二つの段落があります。一つ目の段落は「川のよさ」、二つ目の段落は「川の危なさと、気をつけること」。段落の学習なら、それぞれの段落に小見出しをつけて、役割を考えます。
文章:文章全体を見ると、川のよさを示したあとに、「しかし」で話を転じて、危なさと注意を述べる、という組み立てになっています。文章の学習なら、「筆者がいちばん伝えたいことは、どの段落に書かれているか」を考えます。
同じ文章でも、どの単位で見るかによって、問いも、考えることも変わります。そして、「しかし」「だから」のような接続する語句は、文と文、段落と段落をつなぐ働きをしていることも見えてきます。
授業での工夫
単位を、目に見える形にする
言葉の単位は、目に見えるようにすると、子どもがつかみやすくなります。
文を短冊に書いて、語のところで切り分ける。いくつかの文の短冊を並べて、一つの段落にする。段落の短冊を並べかえて、文章の組み立てを考える。手を動かしながら単位を体験すると、語・文・段落・文章の入れ子の関係が実感できます。
単位を意識した問いを立てる
授業の中で、単位を意識した問いを立てることも大事です。
- 語:「この言葉の意味は?」「この言葉を、別の言葉に言いかえると?」
- 文:「この文の主語は?」「この文で、いちばん大事な言葉は?」
- 段落:「この段落には、何が書かれている?」「この段落の役割は?」
- 文章:「この文章は、何について書かれている?」「どんな組み立てになっている?」
一つの授業の中で、問いの単位を少しずつ大きくしていくと、子どもは、語から文章全体へと、読む範囲を広げていくことができます。
書くときにも、単位を意識させる
書く学習でも、単位を意識させると、文章がよくなります。
「一つの文は、一つのことだけを書こう」「一つの段落は、一つのまとまりにしよう」「文章全体は、はじめ・中・おわりで組み立てよう」。単位ごとに、気をつけることを示すと、子どもは何に気をつけて書けばいいかが分かります。
とくに、「一つの文に、一つのこと」は、作文が苦手な子にとって大きな助けになります。一文が長くなりすぎると、主語と述語がねじれたり、何を言いたいのかが分からなくなったりします。文を短く区切るだけで、文章はぐっと読みやすくなります。
よくある質問
「単語」と「語」は、同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われます。「語」のほうが少し広く、いくつかの単語が結びついてできた言葉(複合語)や、語句をまとめて指すこともあります。小学校の授業では、どちらを使ってもかまいません。
「語句」とは何ですか?
語句は、語と、いくつかの語が集まったまとまり(句)を合わせた言い方です。学習指導要領では、「語句の量を増す」「語句の意味」のように、「語句」という言葉がよく使われます。一つの単語だけでなく、「ほっと胸をなでおろす」のような、いくつかの語がまとまった表現も含めて考えるときに使います。
談話は、小学校で教える用語ですか?
「談話」という用語を子どもに教えることは、小学校ではあまりありません。先生が、話すこと・聞くことの学習を、話し言葉のまとまり(談話)として意識しておくことが大事です。子どもには、「話」「スピーチ」「話し合い」という言葉で十分です。
主語と述語のねじれは、どうやって直させればいいですか?
一文が長くなると、主語と述語がうまく対応しない「ねじれ」が起きやすくなります。「ぼくの夢は、サッカー選手になりたいです」のような文です。直すときは、まず主語と述語だけを取り出して読ませます。「夢は……なりたいです」。こうすると、おかしいことに子どもが自分で気づきます。そのうえで、「夢は、サッカー選手になることです」と述語を直すか、「ぼくは、サッカー選手になりたいです」と主語を直すか、二つの直し方を考えさせると、文の組み立てが分かるようになります。
まとめ
語(単語)は、意味をもつ言葉の、いちばん小さな単位。
文節は、文を、意味がこわれない範囲でできるだけ短く区切ったまとまり。
文は、一つのまとまった内容を表し、句点で終わる言葉のまとまり。
段落は、文章の中で、内容がひとまとまりになっている部分。
文章は、いくつかの文が集まって、全体として一つの内容を表すもの。談話は、その話し言葉版。
言葉の単位は、小さいものが集まって大きいものになる、入れ子の関係です。主語と述語は文の話、段落の役割は文章の話。先生が単位を意識して言い分けるだけで、文法の学習と、文章を読む・書く学習が、一本の線でつながっていきます。


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