教材で読む次期学習指導要領#15 6年「データの調べ方」で、グラフを疑う力を育てる 「データと確からしさ」と「社会を読み解く数学」

授業づくり

6年生の「データの調べ方」。ドットプロット、平均値・中央値・最頻値、度数分布表、柱状グラフ。教科書では、二つのグループの記録を比べて、「どちらのグループの方が記録がよいと言えるか」を考える、という流れが多いと思います。

正直、この単元、ちょっと地味じゃないですか?計算はそれほど難しくない。でも、最後の「どちらがよいと言えるか」になると、子どもの答えがバラバラで、先生もまとめに困る。

実はこの単元、審議まとめを読むと、次の学習指導要領で一番重みが増す単元の一つかもしれません。

審議まとめの「6つの分野」

審議まとめは、算数・数学の学習内容を、小学校から高校の数学Ⅰまで共通する6つの「分野」で整理するとしています。

  • 数と式
  • 図形
  • 変化と関係
  • データと確からしさ
  • 論証
  • 社会を読み解く数学

今の小学校算数は、「数と計算」「図形」「測定」「変化と関係」「データの活用」の5領域です。「データの活用」が「データと確からしさ」へ。そして、「論証」「社会を読み解く数学」という名前の分野が出てきます。ただ、小学校の領域名が最終的にどうなるかは、告示を待つ必要があります。

新しい見方・考え方「批判的に考察」

もう一つ大きいのは、算数・数学の見方・考え方です。審議まとめは、メディアリテラシーの観点も意識して、新たな見方・考え方として、

事象や言説を数理の視点から捉え、論理的、統合的・発展的、批判的に考察すること

を検討するとしています。

「言説」と「批判的」。ここが新しい。数学の問題だけでなく、世の中で言われていること(言説)を、数学の目で見て、批判的に考える。審議まとめは、その背景として、生成AIに振り回されない批判的思考力を全ての国民が身に付けるためにも、数学的な思考力は必要不可欠だ、と書いています。

つまり、「このグラフ、本当にそう言える?」と考える力です。6年生の「データの調べ方」は、まさにその入り口です。

「どちらがよいと言えるか」を真ん中に

教科書の最後の問い、「どちらのグループの方がよいと言えるか」。これを、単元の真ん中に置き直してみます。

①平均値だけで決めていい?

二つのグループの記録を比べるとき、子どもはまず平均値を出します。そして、「平均が高い方がよい」と決める。

ここで、ドットプロットを見せます。平均値は高いけれど、一人だけすごく記録がよい子がいて、ほかの子は低い。もう一方は、平均値は少し低いけれど、みんな同じくらい。

「どっちがよいって言える?」。子どもは、案外、ここで分かれます。「平均が高い方」「みんなそろっている方」「一番多い記録が高い方」。この分かれ方が大事なんです。何を基準にするかで、答えが変わる。平均値・中央値・最頻値を学ぶ意味は、ここにあります。

②自分の主張を、データで説明する

次に、「自分は、どちらがよいと考えるか」を、データを根拠に説明させます。「中央値で比べると〜だから」「度数分布表で見ると、〜の階級の人数が多いから」。

審議まとめは、小学校算数でも、中・高の論証指導につながる「論理的に説明する活動等を充実する」としています。データの単元での「〜だから、〜と言える」は、まさにその練習です。

③「言えないこと」を考える

最後に、ちょっと難しい問い。「このデータから、言えないことは?」

たとえば、「Aグループの方が記録がよい」から、「Aグループの方が練習を頑張った」とは言えない。「このクラスの記録」から、「6年生全体がそうだ」とも言えない。

国語の「固有種が教えてくれること」(本連載#9)でも同じ問いを出しましたが、データが言っていることと、言っていないことを分ける。これは教科をこえて使える力です。

「社会を読み解く数学」へ

審議まとめが新設を示している「社会を読み解く数学」は、主に高校の数学Ⅰの話です。ただ、その芽は小学校にあると思っています。

たとえば、ニュースや広告に出てくるグラフ。

  • 縦軸の目盛りが0から始まっていなくて、差が大きく見えるグラフ
  • 「満足度90%!」と書いてあるけれど、何人に聞いたかが書いていない広告
  • 一部の期間だけを切り取った折れ線グラフ

実際の広告やニュースを授業で使うときは、出典と掲載日を記録しておくと安心です。

こういうものを、6年生の単元の最後に一つ見せて、「このグラフ、どこがあやしい?」と聞く。子どもは、こういうのが大好きです。「目盛りがずるい!」。数学の目で世の中を見る、最初の経験になります。

端末を使う

データの単元は、端末がとても役に立ちます。表計算ソフトにデータを入れれば、平均値はすぐ出る。グラフもすぐかける。

だからこそ、計算やグラフ作りに時間をかけすぎないことが大事だと思っています。計算は道具に任せて、「どの代表値で比べるか」「このグラフで何が言えるか」を考える時間を増やす。審議まとめの算数のページにも、表計算ツールを活用したデータ処理が例として出てきます。

もちろん、平均値の意味や、度数分布表の作り方は、一度は手で確かめておく必要があります。全部を道具任せにすると、出てきた数字の意味が分からなくなるので。

まとめ

  • 審議まとめは、算数・数学を6つの分野で整理し、「データと確からしさ」「論証」「社会を読み解く数学」を示している
  • 新たな見方・考え方に「事象や言説を数理の視点から捉え、…批判的に考察すること」が入る方向
  • 6年「データの調べ方」は、「どちらがよいと言えるか」「データから言えないことは?」「このグラフ、どこがあやしい?」を真ん中に置くと、批判的に考える力の入り口になる

地味な単元だと思っていたら、実は一番「今」の単元だった。まぁ、そういうこともあります。

次回は、4年生の「面積」で、「統合的・発展的に考える」を考えます。

参考

  • 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「算数、数学」p.165〜166、p.170、p.173 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」算数 第6学年 Dデータの活用(1)
  • 関連記事:「固有種が教えてくれること」のグラフと表を、文章と一緒に読む(本連載#9)

コメント

タイトルとURLをコピーしました