「主題」「テーマ」「作品の心」はどう違う? 物語の「伝えたいこと」をどう言わせるか

「主題」「テーマ」「作品の心」はどう違う? 物語の「伝えたいこと」をどう言わせるか 授業づくり

物語の単元の終わりに、「この物語で、作者が伝えたかったことは何でしょう」と問う授業があります。子どもは考えて、「友情の大切さ」「命の大切さ」「あきらめないこと」と答えます。そして、先生が「そうですね」と言って、単元が終わる。

この流れに、どこか物足りなさを感じたことはないでしょうか。子どもの答えは、まちがってはいません。でも、その物語でなくても言えそうな答えになっている。物語をじっくり読んだはずなのに、最後に出てくるのは、どこかで聞いたような言葉です。

この記事では、物語の「伝えたいこと」に関わる言葉、「主題」「テーマ」「作品の心」の定義を整理し、物語の中心を子どもにどう言わせるかを考えます。あわせて、「題材」「題名」との違いも見ていきます。

それぞれの言葉の定義

「主題」とは

主題は、作品全体を通して表されている、中心となる考えや思いのことです。

主題には、二つの見方があります。

一つは、作者が作品を通して表そうとしたものという見方です。作者は、ある考えや思いを伝えるために、人物や出来事、場面を組み立てて、物語を書いた。その中心にある考えが主題だ、という見方です。

もう一つは、読み手が作品全体から受け取る、中心となる意味という見方です。作者が何を考えていたかは、作者に聞かないと本当のところは分かりません。読み手にできるのは、作品に書かれていることから、作品の中心にある意味を読み取ることです。読み手それぞれが、作品から受け取ったものが主題だ、という見方です。

今の国語の授業では、後者の見方、つまり、読み手が作品から受け取るものとして主題を考えることが多くなっています。

「テーマ」とは

テーマは、もともとドイツ語の Thema から来た言葉で、主題とほぼ同じ意味で使われます。

ただし、日常の言葉としてのテーマは、もう少し広い意味で使われます。「戦争をテーマにした物語」「友情がテーマのドラマ」。この場合のテーマは、「何について書いた作品か」という意味で、主題というより、次に説明する「題材」に近い意味です。

このように、テーマという言葉は、「作品の中心にある考え(主題)」の意味と、「作品が扱っている事柄(題材)」の意味の、両方で使われることがあります。授業で使うときは、どちらの意味で使っているのかを、意識しておくとよいと思います。

「題材」とは

題材は、作品の中で取り上げられている事柄や出来事のことです。

「一つの花」の題材は、戦争の時代の家族の暮らし。「大造じいさんとがん」の題材は、かりゅうどとがんの頭領との知恵比べ。題材は、作品が「何について」書かれているか、を表します。

主題との違いは、ここがいちばん大事なところです。題材は「何について」、主題は「それを通して何を表しているか」です。同じ戦争を題材にした物語でも、ある物語は家族の愛情を、別の物語は命の重さを、また別の物語は平和への願いを主題にしているかもしれません。

「作品の心」とは

作品の心は、学校の授業でよく使われる、主題を子どもに分かりやすく言いかえた言葉です。

「主題」という言葉は、小学生には少し難しいので、「この物語の心」「作品がいちばん伝えたいこと」のように言いかえることがあります。中身は、主題とほぼ同じです。

「題名」とは

題名は、作品につけられた名前のことです。タイトルとも言います。

題名は、主題そのものではありませんが、主題を考える大きな手がかりになります。作者は、作品の中心にあるものを表す言葉を、題名に選ぶことが多いからです。「一つの花」の「一つ」、「大造じいさんとがん」の二人(一人と一羽)の名前。題名にこめられたものを考えることは、主題を考えることにつながります。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 問い 例(「一つの花」)
題材 作品が取り上げている事柄 何について書いているか 戦争の時代の家族
主題 作品全体を通して表されている中心の考えや思い それを通して何を表しているか (読み手によって言葉は違う)
テーマ 主題とほぼ同じ/題材の意味でも使う ― ―
作品の心 主題を子どもに分かりやすく言いかえた言葉 この物語の心は何か ―
題名 作品の名前 なぜこの題名なのか 一つの花

なお、説明文の場合は、筆者の考えの中心を「要旨」と呼びます。物語の主題にあたるものが、説明文では要旨だと考えると分かりやすいと思います。

「作者が伝えたかったこと」を問う授業の落とし穴

冒頭の話に戻ります。「作者が伝えたかったことは何でしょう」と問うと、なぜ、どこかで聞いたような答えになってしまうのでしょうか。

正解を当てる問いになってしまう

「作者が伝えたかったこと」と問うと、子どもは、作者の頭の中にある「正解」を当てようとします。そして、先生が期待していそうな、立派な言葉を探します。「友情の大切さ」「命の大切さ」。こうした言葉は、まちがいではないので、先生も「そうですね」と受け止めます。

でも、こうした言葉は、物語を読まなくても言えてしまいます。その物語の、どの場面の、どの言葉から、そう考えたのか。それが抜けてしまうと、主題は物語から切り離された、ただの標語になってしまいます。

一つの答えにまとめようとしてしまう

もう一つの落とし穴は、主題を一つの答えにまとめようとすることです。

主題を「読み手が受け取るもの」と考えるなら、読み手によって、受け取るものは少しずつ違ってよいはずです。ところが、授業の最後に「この物語の主題は、〇〇です」と先生がまとめてしまうと、子どもは、自分が受け取ったものは違っていた、と感じてしまいます。

主題を、自分の言葉で書かせる

では、主題をどう扱えばいいでしょうか。おすすめしたいのは、問いの言葉を変えることです。

「あなたは、何を受け取りましたか」

「作者が伝えたかったことは?」ではなく、「この物語を読んで、あなたは何を受け取りましたか」「この物語は、あなたに何を語りかけてきましたか」と問います。

主語を「作者」から「あなた」に変えるだけで、子どもは正解を当てようとするのをやめて、自分が感じたことを考えるようになります。

「物語のどこから、そう思いましたか」

そして、必ず、「物語のどこから、そう思いましたか」と問います。

主題は、作品全体を通して表されているものです。一つの場面だけではなく、いくつかの場面や、物語の始めと終わりの変化、くり返し出てくる言葉などを根拠にして考えることで、主題は物語にしっかり根ざしたものになります。

一文で書く

最後に、受け取ったものを、自分の言葉で一文に書かせます。

「この物語は、〇〇が〇〇することを通して、〇〇ということを語りかけていると思う」。このような文の型を示すと、子どもは、題材(何について)と主題(それを通して何を)を、つなげて書くことができます。

たとえば、「この物語は、お父さんがゆみ子に一つの花をわたしたことを通して、食べ物よりも大切なものを、親から子へ手わたしていくことを語りかけていると思う」。このように書くと、物語の具体的な場面と、受け取ったものが、一つの文の中でつながります。

主題を考える手がかり

主題を考えるときに、子どもに示したい手がかりを挙げておきます。

題名:なぜこの題名なのか。題名の言葉は、物語のどこに出てくるか。

くり返し:物語の中で、何度もくり返される言葉や行動はないか。「一つの花」の「一つだけ」のように、くり返される言葉には、作品の中心にあるものが表れていることが多い。

中心人物の変化:中心人物は、物語の始めと終わりで、どう変わったか。その変化は、何を意味しているか。

結末:物語はどう終わっているか。最後の場面には、何が描かれているか。

対比:物語の中に、対になっているもの(明と暗、戦争と平和、過去と現在など)はないか。

これらの手がかりを使って考えると、主題は「どこかで聞いた言葉」ではなく、「この物語ならではの言葉」になっていきます。主題の扱い方については、「『大造じいさんとがん』の教材研究④ 主題の扱い方と単元計画・発問・板書」にも書いています。

板書で、題材と主題を分けて見せる

主題を考える時間の板書では、題材と主題を分けて見せると、子どもが混乱しにくくなります。

黒板の左側に「何について書かれているか(題材)」を書きます。「戦争の時代」「お父さんとゆみ子」「一輪のコスモス」。ここは、全員でほぼ同じことが言えるところです。

黒板の右側に「この物語から、受け取ったもの(主題)」を書きます。ここには、子どもから出てきたいろいろな言葉を並べます。「親が子を思う気持ち」「大切なものは、数ではない」「戦争の中でも、残せるものがある」。言葉は違っていても、それぞれが物語のどこから考えたのかを、矢印で本文の言葉と結んでおきます。

そして、真ん中に、根拠になった本文の言葉を書きます。「一つだけ」のくり返し、コスモスをわたす場面、最後の場面の景色。

こうすると、題材は一つでも、主題はいくつもありうること、そして、どの主題も本文の言葉に根ざしていることが、黒板の上で目に見えるようになります。

書くことで、主題を確かめる

主題を考えたあとに、書く活動を入れると、子どもは自分の考えをもう一度確かめることができます。

たとえば、「この物語を、まだ読んでいない人に紹介する文章を書こう。最後に、この物語から何を受け取ったかを一文で書こう」という活動です。紹介するためには、あらすじ(題材)を短くまとめる必要があります。そして、最後の一文で、主題を自分の言葉で表します。

また、高学年なら、「同じ題材で、違う主題の物語を考えてみよう」という活動もできます。たとえば、「戦争の時代の家族」という同じ題材で、「家族の愛情」ではなく「友達との別れ」を主題にしたら、どんな場面を描くか。考えてみると、作者がどの場面を選び、どの言葉を使うかによって、主題が形づくられていることが実感できます。

交流で、主題を広げる

一人一人が書いた主題は、交流することで、さらに広がります。

同じ物語を読んでも、子どもによって受け取るものは違います。ある子は家族の愛情を、ある子は戦争の悲しさを、ある子は命のつながりを受け取っているかもしれません。交流の中で、「同じ場面から、違うことを受け取っている」「違う場面から、同じことを受け取っている」ことに気づくと、子どもは、物語にはいろいろな読み方があることを実感します。

交流のあとに、「友達の考えを聞いて、自分の考えが変わったり、増えたりしたことはあるかな」と振り返らせると、自分の読みを広げることにつながります。

よくある質問

主題は、低学年でも扱えますか?

低学年では、「主題」という言葉を使う必要はありません。ただ、「このお話を読んで、どんなことを思ったかな」「このお話のいちばん好きなところはどこかな」と問うことで、作品の中心にあるものを感じとる力の芽を育てることはできます。

主題に、まちがいはありますか?

読み手が受け取るものなので、一つの正解があるわけではありません。ただ、物語に書かれていることと結びつかない主題は、物語を読んだうえでの主題とは言いにくいです。「物語のどこから、そう思ったの?」と問い、根拠が言えるかどうかを確かめることが大事です。

作者の生い立ちや時代背景を知らせてから、主題を考えさせてもいいですか?

かまいません。作者のことや、作品が書かれた時代のことを知ると、作品の見え方が変わることがあります。ただ、先に作者の情報を与えすぎると、子どもはその情報に引っぱられて、作品そのものを読まなくなることもあります。まずは作品から自分で考え、そのあとで作者の情報にふれて、もう一度考える、という順番がおすすめです。

主題を書かせると、みんな同じような言葉になってしまいます。どうすればいいですか?

「友情」「命」「家族」のような一語で終わらせず、「〇〇が〇〇することを通して」という、物語の具体的な出来事を必ず入れて書かせると、言葉が一人一人違ってきます。また、交流のときに、「同じ『家族』でも、どの場面から考えたか」を聞き合うと、同じ言葉の中にも、違う読みがあることが見えてきます。言葉が似ていても、根拠にした場面が違えば、それは違う主題だと考えてかまいません。

まとめ

題材は、作品が取り上げている事柄。「何について」書いているか。
主題は、作品全体を通して表されている、中心となる考えや思い。今の授業では、読み手が作品から受け取るものとして考えることが多い。
テーマは、主題とほぼ同じ意味だが、題材の意味で使われることもある。
作品の心は、主題を子どもに分かりやすく言いかえた言葉。

「作者が伝えたかったことは?」と問う代わりに、「あなたは、何を受け取りましたか。物語のどこから、そう思いましたか」と問うてみてください。主語を「あなた」に変えるだけで、子どもの言葉は、どこかで聞いた標語から、その物語ならではの言葉に変わっていきます。作者と語り手の違いについては、「『作者』『筆者』『語り手』はどう違う?」にまとめています。

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