「情景」「様子」「風景」はどう違う? 景色の描写に気持ちが重なるとき

「情景」「様子」「風景」はどう違う? 景色の描写に気持ちが重なるとき 授業づくり

秋が深まって、木々の色が変わってきました。朝の空気がすんで、夕焼けがきれいな季節です。

物語の中にも、空や夕焼け、雪や雨、木々の様子がたくさん描かれています。そして、高学年の物語の授業では、「情景を読む」という言葉が出てきます。

でも、「情景」と「風景」と「様子」は、どう違うのでしょうか。景色が書かれていれば、全部が情景なのでしょうか。この記事では、物語の中の景色や場面を表す言葉、「様子」「風景」「情景」の定義を整理し、あわせて「叙述」「描写」という言葉も見ていきます。

それぞれの言葉の定義

「様子」とは

様子は、人やもの、場所などが、どんなありさまになっているかということです。

「教室の様子」「おばあさんの様子」「空の様子」。人にもものにも場所にも使える、とても広い言葉です。物語では、登場人物がどんな顔をしているか、どんなふうに動いているか、まわりがどうなっているかなど、目に見えるありさまのすべてが様子です。

低学年の学習指導要領では、「場面の様子」という言葉が使われています。その場面で、誰が、どこで、何をしていて、まわりがどうなっているのか。場面のありさま全体をつかむことが、物語を読む第一歩です。

「風景」とは

風景は、目に見える、自然や町などのながめのことです。「景色」とほぼ同じ意味です。

山や川、海、空、田んぼ、町並み。こうしたものが一つのながめとして見えるとき、それを風景と呼びます。

風景は、見る人の気持ちとは関係なく、そこにあるものです。同じ山の風景は、誰が見ても、同じ山の風景です。

「情景」とは

情景は、登場人物の心情が重ねられて描かれた、景色や場面のことです。

「情」は心、「景」は景色。つまり、情景は、心が映った景色です。

同じ夕焼けでも、うれしいことがあった日に見る夕焼けと、悲しいことがあった日に見る夕焼けは、違って見えます。物語の作者は、このことを使って、景色を描くことで、登場人物の心情を表します。人物が「うれしい」と言わなくても、景色の描き方から、読み手はその人物の心を感じとることができる。そういう景色の描写が、情景です。

ここで大事なのは、情景は、景色そのものではなく、景色と心情が重なったものだという点です。物語の中に景色が書かれていても、それが人物の心情と結びついていなければ、風景の描写であって、情景ではありません。

「叙述」と「描写」

情景を読む学習では、「叙述」と「描写」という言葉もよく使われます。

「叙述」とは

叙述は、文章に書かれていること、またはその書き方のことです。

学習指導要領では、「叙述を基に捉えること」という言い方がよく出てきます。これは、自分の想像だけで考えるのではなく、文章に書かれている言葉を手がかりにして読む、という意味です。

「描写」とは

描写は、物事の様子や人物の心情などを、ありありと目にうかぶように描き出すことです。

叙述が「書かれていること全般」を指すのに対して、描写は、特に、様子や心情を具体的にくわしく描いた部分を指します。「風景描写」「心理描写」「情景描写」のように使います。

高学年の学習指導要領では、「描写を基に捉えること」という言い方が使われています。書かれていることの中でも、特に、様子や心情が描き出されている部分に注目して読む、ということです。

並べてみると

言葉 ひと言でいうと 人物の心情との関係 例
様子 人やもの、場所のありさま あってもなくても 教室がしずまりかえっている
風景 自然や町などのながめ 関係しない 山が赤くそまっている
情景 心情が重ねられて描かれた景色や場面 重なっている (悲しみの中で)冷たい雨が、いつまでもふり続いていた
叙述 文章に書かれていること・書き方 ― ―
描写 様子や心情をありありと描き出すこと ― 風景描写、心理描写、情景描写

学習指導要領ではどう扱われているか

小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語「読むこと」では、情景について、中学年で次のように示されています。

「登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像すること」

つまり、情景を読むことは、中学年から始まります。そして、高学年では、「登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えること」「人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりすること」と、描写や表現の効果を考えることへと進んでいきます。

中学年では、景色と気持ちが結びついていることに気づく。高学年では、作者がなぜその景色を描いたのか、その描写にどんな効果があるのかを考える。こう整理すると、情景を読む学習の段階が見えてきます。

教材で考えてみる

「大造じいさんとがん」の情景

情景を読む学習でよく取り上げられるのが、5年生の「大造じいさんとがん」です。

この物語には、残雪をとらえるための作戦の朝ごとに、空や光の様子が描かれています。たとえば、「東の空が真っ赤に燃えて、朝が来ました」という一文。これは、ただ朝が来たという風景を描いているだけではありません。今日こそ残雪をしとめてやるという、大造じいさんの強い気持ちが、真っ赤に燃える空に重ねられています。

このように、景色の描写を、その場面の人物の心情と結びつけて読むことが、情景を読むということです。この物語の情景描写については、「『大造じいさんとがん』の教材研究② 情景描写から大造じいさんの心情を読む」でくわしく書きました。

物語の結末の情景

物語の最後の場面に、景色が描かれることもよくあります。

戦争の時代を描いた「一つの花」の最後の場面では、それまでの場面とはがらりと変わって、明るい景色が描かれます。この景色は、それまでの場面と比べることで、時代の変化や、お父さんの思いが受けつがれていることを感じさせます。

結末の情景は、物語全体をふり返る手がかりになります。「最後に、なぜこの景色が描かれているのだろう」と問うと、子どもは物語全体の流れを考えるようになります。「一つの花」については、「『一つの花』の教材研究」にも書いています。

情景を読む授業

1. 景色が書かれている文を探す

まず、物語の中から、景色や天気、光、音など、まわりの様子が書かれている文を探させます。線を引かせると、物語の中に、意外とたくさんの景色の描写があることに、子どもは気づきます。

2. その場面の人物の気持ちを確かめる

次に、その景色が描かれている場面で、登場人物がどんな気持ちだったかを確かめます。景色の描写の前後に、人物の行動や会話が書かれていることが多いので、そこから気持ちを読み取ります。

3. 景色と気持ちを結びつける

最後に、「この景色と、人物の気持ちは、どうつながっているだろう」と問います。

「真っ赤に燃える空」と「今日こそという強い気持ち」。「冷たい雨」と「悲しい気持ち」。景色の色や温度、明るさ、音などが、気持ちとどう重なっているかを考えさせます。

4. 景色を書きかえてみる

高学年では、景色の描写を書きかえてみる活動もおすすめです。

「もし、この場面の空が『どんよりとくもっていた』だったら、どんな感じがするだろう」。景色を変えると、場面の感じががらりと変わることに、子どもは気づきます。そして、作者がなぜその景色を選んだのかを考えるようになります。これは、高学年の「表現の効果を考える」読みにつながります。

情景を読むための言葉

情景を読むとき、子どもがつまずくのは、景色から感じたことを言葉にすることです。

そこで、景色と気持ちを結びつける言葉の例を示しておくと、子どもは考えを表しやすくなります。

  • 明るい、光がさす、晴れわたる → 希望、うれしさ、すがすがしさ
  • 暗い、くもる、しずむ → 不安、悲しさ、さびしさ
  • 赤い、燃える → 強い気持ち、決意、怒り
  • 冷たい、こおる → つらさ、孤独
  • あたたかい、やわらかい → 安心、やさしさ
  • しずか、音がしない → 緊張、さびしさ、落ち着き

ただし、これはあくまで目安です。同じ「赤い」でも、夕焼けの赤なら、さびしさを感じさせることもあります。大事なのは、言葉の一覧に当てはめることではなく、その物語の、その場面の中で、景色が何を感じさせるかを考えることです。

心情の表し方は、情景だけではない

物語の中で、人物の心情を表す方法は、情景だけではありません。ほかの方法と比べると、情景の特徴がよりはっきりします。

一つ目は、心情を直接書く方法です。「ごんは、うれしくなりました」「大造じいさんは、くやしくてたまりませんでした」。気持ちを表す言葉が、そのまま書かれています。いちばん分かりやすい表し方です。

二つ目は、行動や表情で表す方法です。「くちびるをかみしめた」「足早に歩き出した」「顔を赤くした」。気持ちを表す言葉は書かれていませんが、行動や表情から、読み手は心情を想像します。

三つ目は、会話で表す方法です。人物が何を言ったか、どんな言い方をしたかから、心情が伝わります。

そして四つ目が、情景で表す方法です。景色や天気、光、音などを描くことで、人物の心情を感じさせます。

直接書く方法がいちばん分かりやすく、情景で表す方法がいちばん間接的です。間接的な分、読み手が想像する余地が大きく、物語に深みが出ます。物語の授業では、「この場面の心情は、どの方法で表されているかな」と問うと、子どもは作者の工夫に目を向けるようになります。

季節の言葉と情景

日本の物語や詩には、季節の言葉がたくさん出てきます。そして、季節の言葉は、情景をつくる大事な材料になります。

春の桜、夏の入道雲、秋の夕焼けや落ち葉、冬の雪。それぞれの季節の景色は、多くの人に共通するイメージをもっています。春は始まりや希望、秋は実りやさびしさ、冬はきびしさや静けさ。作者は、こうしたイメージを使って、景色に心情を重ねます。

授業の合間に、季節の景色を言葉にする活動を入れてみるのもおすすめです。教室の窓から見える空、登校の途中で見た木々。「今日の空を、一文で書いてみよう。そのとき、どんな気持ちだったかも書いてみよう」。景色と気持ちを結びつけて言葉にする練習は、物語の情景を読む力の土台になります。

書くことにつなげる

情景の考え方は、作文や物語を書くときにも使えます。

「うれしかったです」と書く代わりに、そのときの景色を書いてみる。「家に帰る道、夕焼けがいつもよりきれいに見えた」。こう書くと、「うれしかった」と書かなくても、うれしい気持ちが伝わります。

気持ちを直接書かずに、景色で表す。これは、少し上級の書き方ですが、高学年の子どもは、おもしろがって取り組みます。読む学習で情景を学んだあとに、書く学習で使ってみると、情景の意味が、書き手の立場から実感できるようになります。

よくある質問

物語に書かれている景色は、すべて情景ですか?

すべてではありません。場面の時や場所を示すために、景色が書かれていることもあります。人物の心情と結びついていない景色は、風景の描写です。情景かどうかは、その景色と、その場面の人物の心情が重なっているかどうかで判断します。

情景の読み取りに、正解はありますか?

一つの正解があるわけではありません。読む人によって、景色から感じるものが違うこともあります。大事なのは、本文の言葉、とくにその場面の人物の行動や会話と結びつけて、理由を説明できるかどうかです。

中学年で「情景」という言葉を教えたほうがいいですか?

中学年では、言葉そのものより、景色と気持ちがつながっていることに気づくことが大事です。「この場面の空の様子と、主人公の気持ちは、似ているところがあるかな」と問うだけで、情景を読む力の芽が育ちます。言葉は、高学年で改めて教えてもかまいません。

情景を読む学習に向いている教材は、どう見つければいいですか?

天気や時間(朝・夕方・夜)、季節の移り変わりが、場面ごとにはっきり描かれている物語が向いています。とくに、人物の心情が大きく変わる場面の前後に、景色の描写がある物語は、情景を読む学習にぴったりです。教科書の物語を読むときに、景色の描写に線を引いておき、それが人物の心情の変化とどう重なっているかを、教材研究の段階で確かめておくと、授業で取り上げる場面を選びやすくなります。詩も、短い言葉で景色と心情が重ねられていることが多いので、情景を読む練習によい教材です。

まとめ

様子は、人やもの、場所などのありさま。
風景は、自然や町などのながめ。見る人の気持ちとは関係なくそこにあるもの。
情景は、登場人物の心情が重ねられて描かれた景色や場面。心が映った景色。
叙述は文章に書かれていること、描写は様子や心情をありありと描き出すこと。

情景は、景色そのものではなく、景色と心情が重なったものです。物語に景色が出てきたら、「このとき、人物はどんな気持ちだったか」と結びつけて読んでみてください。

秋の夕焼けを見て、ふと何かを感じたら、それが情景の入口です。子どもと一緒に、教室の窓から見える空を言葉にしてみるのも、情景を学ぶよいきっかけになると思います。気持ちと心情の違いについては、「『気持ち』『心情』『人物像』はどう違う?」にまとめています。

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