どうも。「せいたか先生」です。
「大造じいさんとがん」教材研究も、いよいよ最終回の第4回です。これまで、第1回で物語の地図をつくり、第2回で情景描写の読み方を考え、第3回で大造じいさんの心情の変化を場面3を中心に読んできました。今回は、場面4の結末と物語の主題について考えたうえで、これまでの内容を、単元計画・発問・板書・評価という授業づくりの形にまとめます。
先に結論をお伝えすると、この教材の単元づくりで大切なのは、「物語の魅力を誰かに伝える」というゴールを最初に子どもたちと共有し、そのゴールに向かって、情景描写と心情の変化を読む学習を積み重ねていくことです。ゴールがはっきりしていると、一つひとつの読みの学習が、子どもたちにとって意味のあるものになります。
場面4を読む
一冬をこえて、春の空へ
場面4では、深く傷ついた残雪を大造じいさんが一冬のあいだ保護し、春のある晴れた朝、元気になった残雪を空へ放つ様子が描かれます。山際博さんの資料では、このとき大造じいさんが残雪に「ガンの英雄よ」と呼びかけ、ひきょうなやり方はしない、また堂々と戦おうと伝えて、北へ飛び去る残雪をいつまでも見守っていたことが、概要としてまとめられています。
第3回で、残雪の呼び方の変化を追いました。場面1・2での呼び方と、この「ガンの英雄」という呼びかけを並べてみると、大造じいさんの残雪への見方がどれほど大きく変わったのかが、子どもたちにもはっきりと分かるはずです。
情景4との重なり
場面4には、第2回で扱った情景4、すももの花が残雪の羽にふれて雪のように清らかに散っていく描写があります。中野圭さん(2023)の実践では、この情景描写を読んだ子どもが、「雪のように」という比喩と、また次の冬に戦うことを誓う大造じいさんの言葉とのつながりに気づいたことが報告されています。
情景描写と人物の言葉が、互いに響き合っている。そのことに気づいたとき、子どもたちは、この結末が単なる「お別れ」ではなく、二者の関係が新しい形に変わったことを示す場面なのだと感じ取ることができます。
「ひきょうなやり方」とは何だったのか
場面4の大造じいさんの言葉に出てくる「ひきょうなやり方はしない」という思いについても、立ち止まって考えたいところです。子どもたちに「大造じいさんが『ひきょうなやり方』だと思ったのは、どんなことだろう」と問いかけると、これまでの三つの作戦をふり返るきっかけになります。
とくに場面3のおとり作戦や、傷ついた残雪をしとめることについて、大造じいさんがどう感じたのかを考えることは、物語全体を見わたす読みにつながっていきます。ここでも、答えを一つに決める必要はありません。本文の言葉を手がかりに、子どもたちが自分なりの考えをもつことを大切にしたいと思います。
物語の主題をどう扱うか
主題は一つに決めなくていい
物語の主題は、教員が一つに決めて教えるものではなく、子どもたちが読みを通して自分なりにつかんでいくものだと私は考えています。この物語から何を受け取るかは、読み手によって違っていてよいのです。
たとえば、「相手を認めることの大切さ」を受け取る子もいれば、「仲間を守る勇気」に心を動かされる子もいるでしょう。「正々堂々と向き合うこと」に注目する子もいるかもしれません。大切なのは、その考えが本文のどの言葉に支えられているのかを説明できることです。
言語活動とのつながり
学習指導要領の第5学年及び第6学年「C 読むこと」には、(2)の言語活動例として、イ「詩や物語、伝記などを読み、内容を説明したり、自分の生き方などについて考えたことを伝え合ったりする活動。」が示されています。また、(1)オ「文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめること。」、(1)カ「文章を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げること。」も、主題について考える学習に直接かかわります。
物語から受け取ったことを、自分の生き方と結びつけて考え、それを友だちと伝え合う。この学習を単元の終わりに位置づけることで、読みの学習が、子どもたち一人ひとりにとっての意味をもつものになっていきます。
単元計画の例
ここからは、これまでの4回の内容をもとにした単元計画の例を紹介します。光村図書の教材別資料一覧では、この教材の学習のめあてとして「登場人物の心情の変化に着目して読み、物語のみりょくを伝え合おう」が示されています。この方向性を踏まえ、全9時間の計画として考えてみました(お使いの教科書や学級の実態に合わせて調整してください)。
第一次:物語と出会い、見通しをもつ(2時間)
- 第1時:物語を読み、初めの感想を書く。単元のゴール(物語の魅力を伝える活動)を共有する
- 第2時:登場人物・中心人物、時と場の設定、四つの場面の構成を確かめる。物語を一文でまとめる(第1回の内容)
第二次:情景描写と心情の変化を読む(5時間)
- 第3時:「情景」とは何かを知り、四つの情景描写を見つける(第2回の内容)
- 第4時:情景描写について「誰の目が見た景色か」を考え、交流する(第2回の内容)
- 第5時:三つの作戦と、大造じいさんの反応・残雪の呼び方を整理する(第3回の内容)
- 第6時:場面3の流れを確かめ、「銃を下ろしたとき」と「強く心を打たれたとき」を比べる(第3回の内容)
- 第7時:戦いの描写と場面4を読み、心情曲線で物語全体をふり返る(第3回・第4回の内容)
第三次:物語の魅力を伝え合う(2時間)
- 第8時:物語の魅力が伝わる一文を選び、理由をまとめる。本の帯や推薦カードをつくる
- 第9時:つくったものを読み合い、感想を伝え合う。単元の最初の一文まとめと比べて、読みの変化をふり返る
先行実践の単元構成から
中野(2023)の実践は、「椋鳩十の作品の良さや魅力が伝わる帯をつくろう」という全10時間の単元として組まれていました。帯には作品の魅力が伝わる一文を載せることにして、作品の内容と表現の両方に目を向けながら学習が進むように工夫されています。上の計画の第三次は、この実践を参考にしています。
一方、山際さんの資料には、この教材を8時間で扱うと、場面3の描写を細かく読む時間の確保が難しいという、小学校の先生の声が紹介されています。時間が限られる中で何を重点にするのか。単元を計画するときに、ぜひ意識しておきたい点です。
中心となる発問
「本の帯に入れる一文」を選ぶ
単元のまとめの中心となる発問として、中野(2023)の「本の帯に必要な一文を選び、その理由を説明しよう」という問いは、とても参考になります。中野さんは、この問いが作品全体を通した読みを促す問いであると位置づけています。
この実践では、作品の魅力が伝わる一文を選ぶ場面で、物語の山場である残雪とハヤブサの戦いの場面から一文を選んだ子が、20人中13人だったと報告されています。また、情景描写を選んだ子の中には、物語のこれからの展開を予感させる作者の工夫としてとらえている子もいたそうです。一文を選ぶという小さな活動が、物語の中心をとらえる読みにつながっていることが分かります。
発問を重ねていく
単元を通した発問を、あらためて整理しておきます。
- 第一次:「大造じいさんは、どんな人物だろう」「この物語を一文でまとめると?」
- 第二次:「この景色は、誰の目が見た景色だろう」「大造じいさんの見方は、どこで、何によって変わったのだろう」
- 第三次:「この物語の魅力が一番伝わる一文はどれだろう。それはなぜ?」
第一次の問いは物語の全体をつかむ問い、第二次の問いは描写を根拠に読む問い、第三次の問いは読んだことをもとに自分の考えをまとめる問いです。この三段階を意識しておくと、一時間一時間の学習が、単元のゴールに向かって積み上がっていきます。
板書の工夫
単元を通して、黒板の一部に「物語の地図」を残しておくことをおすすめします。第1回でつくった四つの場面の表に、情景描写、大造じいさんの気持ち、残雪の呼び方を、学習が進むごとに書き足していくのです。
教室の掲示物として模造紙に写しておけば、単元の終わりには、物語全体の読みが一枚にまとまった「学びの地図」ができあがります。子どもたちが本の帯をつくるときにも、この地図が根拠探しの大きな助けになるはずです。
書く活動のバリエーション
第三次の「魅力を伝える」活動は、本の帯のほかにも、いろいろな形が考えられます。学級の実態や、子どもたちの興味に合わせて選んでみてください。
推薦カード
物語を読んだことのない人に向けて、この物語をすすめるカードを書きます。あらすじを短くまとめたうえで、「ここを読んでほしい」という場面と理由を書き添えます。結末を書きすぎないように、どこまで紹介するかを考えさせると、読み手を意識した文章になります。
大造じいさんへの手紙
物語を読み終えた自分から、大造じいさんに手紙を書きます。場面3や場面4での大造じいさんの行動について、自分がどう感じたのかを、本文の言葉を引きながら伝えます。人物に語りかける形にすると、心情の変化について考えたことが、自然と文章に表れてきます。
一文まとめのやり直し
第1回で紹介した「(中心人物)が、(きっかけ)によって、(どのように)変わる話」という一文まとめを、単元の最後にもう一度書きます。単元の最初に書いたものと並べて、「どこが変わったか」「なぜ変わったか」を短く書き添えると、学びのふり返りとしても使えます。
どの活動を選ぶにしても、大切なのは「本文の言葉を根拠にすること」です。根拠となる一文や言葉を必ず書き添えるように伝えておくと、読みの学習と書く学習がしっかりと結びつきます。
評価の考え方
評価規準の例
学習指導要領の内容に沿って、評価規準を次のように考えてみました。
- 知識・技能:比喩や反復などの表現の工夫に気付いている(〔知識及び技能〕(1)ク)
- 思考・判断・表現:「読むこと」において、登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えている(C(1)イ)。人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりしている(C(1)エ)
- 主体的に学習に取り組む態度:情景描写や心情の変化に着目して粘り強く読み、学習の見通しをもって、物語の魅力を伝え合おうとしている
何を見取るか
評価では、完成した本の帯や推薦カードだけでなく、そこに至るまでの過程を大切にしたいと思います。第2回の「誰の目が見た景色か」の交流でのノートの記述、第3回の心情曲線、単元の最初と最後の一文まとめの比較など、子どもたちの考えの変化が見える材料を、単元を通して残しておくとよいでしょう。
評価の視点は、単元の最初に子どもたちとも共有しておくと効果的です。「本文の言葉を根拠にして説明できているか」を自分でも確かめられるように、ノートの書き方の例を示しておくのもよいと思います。
とくに、単元の最初と最後の一文まとめを並べて見せると、子どもたち自身が「こんなに読みが変わった」と実感できます。自分の学びの変化に気づくことは、次の物語を読むときの意欲にもつながっていきます。
さらに学びを深めたい先生へ
この教材については、ほかにもさまざまな研究があります。たとえば、教科書に載っている文章と、もとになった作品(出典)とを比べることで授業をつくろうとする研究もあります(木原、2016)。長く読み継がれ、何度か書き直されてきた作品だからこそ、こうした視点からの教材研究も成り立つのだと思います。
また、定番の教材研究書として、大西忠治編『「大造じいさんとがん」の読み方指導』(1993)もあります。今回紹介した考え方とあわせて、さまざまな読みにふれてみると、ご自身の授業づくりの幅が広がるはずです。
授業で気をつけたいこと
最後に、この教材を扱ううえで気をつけたいことを一つ。この物語には、狩猟や、生き物の命にかかわる場面が描かれています。子どもたちの中には、動物が傷つく場面に強い悲しみを感じる子もいるかもしれません。
中野(2023)が上月(2022)を引いて紹介しているように、今の子どもたちにとって「生活としての狩猟」は身近なものではありません。だからこそ、単元の最初に、大造じいさんが狩人として暮らしていることや、物語が書かれた時代の背景を、さりげなく共有しておくとよいと思います。そのうえで、子どもたちが感じた戸惑いや悲しみも、大切な読みの一つとして受け止めていきたいところです。
シリーズを終えて
全4回にわたって、「大造じいさんとがん」の教材研究を進めてきました。第1回の地図づくり、第2回の情景描写、第3回の心情の変化、そして今回の授業づくり。どの回でも大切にしてきたのは、子どもたちが「本文の言葉を根拠に読む」ことでした。
この物語は、大人が読み返しても心を動かされる作品です。教員自身がこの物語のどこに心を動かされるのかを大切にしながら、子どもたちと一緒に読みを深める時間をつくっていただけたら嬉しいです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
参考文献
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』国語 第5学年及び第6学年(国立教育政策研究所 学習指導要領データベース)https://erid.nier.go.jp/files/COFS/h29e/chap2-1.htm
- 光村図書「教材別資料一覧・関連リンク 5年」(国語 五 銀河)https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/s-kokugo/material5nen
- 中野圭(2023)「『大造じいさんとがん』における情景描写から読みを深める学習デザイン-『なぜじゅうを下ろしたか』に代わる〈問い〉の効果-」『教育実践研究』第33集、pp.1-6、上越教育大学 http://www.educ.juen.ac.jp/topics/files/elfinder/2023_01.pdf
- 山際博「中学校で再読:『大造じいさんとガン』―『戦い描写』の読みから主題に迫る―」池田市立秦野小学校(しぶたに学園)公開資料 https://ikeda.schoolweb.ne.jp/2710028/download/document/1740751
- 木原宏子(2016)「教科書教材と出典作品との比較による授業実践化への試み―『大造じいさんとガン(がん)』の場合―」『国語科教育研究:大会研究発表要旨集』131、pp.401-404、全国大学国語教育学会 https://doi.org/10.20555/jtsjs.131.0_401
- 大西忠治編(1993)『教材研究の定説化 9「大造じいさんとがん」の読み方指導』明治図書


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