場面指導で出される場面は、子どもとの場面が中心です。けんか、いじめの訴え、授業中の立ち歩き、「学校に行きたくない」という相談。どれも、現場の教員が毎日のように出会う場面です。
ということで今回は、場面指導でよく出そうな子どもの場面を9つ取り上げて、現場の教員ならどんな言葉をかけるかを、具体的な台詞の形で書いてみます。
答え方の土台は、別の記事で書いた「受け止める・確かめる・次につなぐ」の3つの順番です。どの場面でも、この順番は同じです。違うのは、それぞれの場面で「何を受け止めて」「何を確かめて」「どこにつなぐか」です。
先にお断りしておくと、ここに書いた台詞は一つの例です。正解ではありません。自分の言葉に置きかえて、自分ならどう言うかを考える材料にしてください。台詞は小学校を想定していますが、中学・高校を受ける方は、言葉づかいを少し大人向けにすれば、考え方はそのまま使えます。
場面1 「〇〇くんがたたいてきた!」
受け止める
いちばん出やすい場面の一つです。子どもが泣きながら、あるいは怒りながら訴えに来ます。
「そうか、たたかれたんだね。痛かったね。どこをたたかれたの? 見せてくれる?」
まず気持ちを受け止めて、すぐにけががないかを確かめます。けががあれば、指導より先に手当てです。保健室に連れて行く、養護教諭に見てもらう。ここは迷わず動きます。
確かめる
「何があったのか、先生に教えてくれる? たたかれる前は、何をしていたのかな。」
ここで大事なのは、たたかれる前のことも聞くことです。けんかには、たいてい前があります。訴えに来た子が先に何かを言っていた、ということも珍しくありません。
次につなぐ
「〇〇くんにも、何があったのか聞いてみるね。そのあと、先生と三人で話そう。たたかれたのはいやだったよね。そのことは、ちゃんと〇〇くんに伝えるからね。」
もう一方の子からも話を聞くこと、そのあと三人で話すことを約束します。けががあった場合や、くり返し起きている場合は、保護者への連絡と学年の先生への報告も忘れずに言葉にします。
場面2 「〇〇さんたちに、無視されている」
受け止める
いじめの訴えにつながる場面です。場面指導では、ここがいちばん慎重さを見られると思っておいてください。
「話してくれてありがとう。言うの、勇気がいったよね。先生は、〇〇さんの味方だからね。」
いじめの訴えでは、「話してくれてありがとう」と「あなたの味方だよ」を、最初にはっきり伝えます。子どもは、言ったらもっとひどくなるのではないかと不安に思っています。その不安をまず受け止めます。
確かめる
「いつごろから、どんなことがあったのか、話せるところだけでいいから教えてくれる?」
無理に全部を聞き出そうとしないことが大切です。「話せるところだけでいい」と伝えます。そして、「〇〇さんが言ったことは、先生が守るからね」と、話したことで不利にならないことも伝えます。
ここでやってはいけないのが、「気にしすぎじゃない?」「〇〇さんたちも悪気はないと思うよ」と、訴えを小さく受け取ってしまうことです。本人が苦しいと感じているなら、まずそれを事実として受け止めます。
次につなぐ
「このことは、先生一人じゃなくて、学校の先生たちみんなで〇〇さんを守るために相談するね。〇〇さんが嫌だと思うことは、しないようにするから。」
いじめは、担任一人で抱えずに、学校全体で組織として対応するのが基本です。いじめ防止対策推進法でも、学校に対策のための組織を置くことになっています。場面指導では、学年主任・管理職への報告と、学校として対応することを必ず口にしてください。保護者への連絡も、本人の気持ちを確かめながら進めることを伝えます。
場面3 授業中に、立ち歩いている
受け止める
授業中に席を離れて、教室を歩き回っている子どもへの対応です。
この場面でつい言ってしまうのが、「座りなさい!」という一言です。気持ちは分かります。でも、まずは近くに行って、静かに声をかけます。
「〇〇さん、どうしたの? 何か気になることがあった?」
大きな声で注意すると、その子はみんなの前で恥をかくことになりますし、周りの子の集中も切れてしまいます。そばに行って、小さな声で聞く。これだけで、場の空気はかなり違います。
確かめる
「今やっている問題、むずかしかったかな」「ちょっと疲れちゃった?」
立ち歩きには理由があります。課題がむずかしすぎる、逆に早く終わって暇になった、体を動かしたい、何か嫌なことがあった。理由によって、対応は変わります。
次につなぐ
「じゃあ、先生と一緒に一問だけやってみようか。終わったら、プリントを配るのを手伝ってくれる?」
席に戻れたら、「戻れたね」と短く認めます。授業のあとに、少し時間をとって話を聞くことも伝えておくといいと思います。くり返し起きるなら、学年の先生や特別支援教育コーディネーターに相談する、ということも言えると、なおいいです。
場面4 「先生なんて、きらい!」
受け止める
面接官が子ども役で、いきなり「先生なんてきらい!」と言ってくる場面です。動揺しますよね。
「そうか、先生のことがきらいって思ったんだね。」
ここで、「そんなこと言っちゃだめでしょう」と返さないことです。子どもが「きらい」と言うとき、たいていその裏には「分かってもらえなかった」という気持ちがあります。
確かめる
「先生、何か〇〇さんが嫌だなって思うことをしちゃったかな。教えてくれるとうれしいな。」
先生のほうから、自分に原因があったかもしれないと聞いてみます。叱られたこと、ほかの子ばかりほめられたこと、話を聞いてもらえなかったこと。子どもなりの理由があるはずです。
次につなぐ
「話してくれてありがとう。先生も、気をつけるね。これからも、嫌だなと思ったら、今みたいに言ってね。」
先生が素直に受け止めて、自分も気をつけると伝える。子どもは、大人が自分の言葉を受け止めてくれたという経験を、案外ずっと覚えているものです。
場面5 「学校に、行きたくない」
受け止める
放課後や朝に、子どもがぽつりと言う場面です。
「そうか、学校に行きたくないって思ってるんだね。話してくれてありがとう。」
「どうして?」とすぐに聞くより、まず言ってくれたことを受け止めます。学校に行きたくないと先生に言うのは、子どもにとってかなり勇気のいることです。
確かめる
「いつごろから、そう思うようになったのかな」「学校の中で、つらいなと思うのはどんなとき?」
理由がはっきりしないこともあります。友達関係、勉強、先生、家のこと、体調。子ども自身も、うまく言葉にできないことが多いです。無理に聞き出さず、「話したくなったら、いつでもいいよ」と伝えます。
次につなぐ
「先生は、〇〇さんが安心して学校に来られるように、一緒に考えたいな。おうちの人とも、相談してもいいかな。」
保護者との連携、学年の先生への相談、必要に応じてスクールカウンセラーにつなぐこと。場面指導では、このあたりの「つなぎ先」を具体的に言えると、現場をよく分かっている人だと伝わります。
場面6 SNSで、悪口を書かれた
受け止める
高学年や中学・高校で出やすい場面です。「グループのチャットで、悪口を書かれていた」と相談に来ます。
「それは、本当につらかったね。教えてくれてありがとう。」
確かめる
「どんなことが書かれていたのか、見せてもらえるかな。いつ、どのグループだった?」
SNSのトラブルでは、書かれた内容を記録として残しておくことが大事です。画面を保存しておくように伝える、あるいは一緒に確認する。消されてしまうと、何があったのか確かめられなくなります。
次につなぐ
「このことは、学年の先生や管理職の先生と相談して、学校として対応するね。おうちの人にも、伝えてもいいかな。」
SNSでの悪口は、いじめにあたる可能性があります。場面2と同じく、組織として対応することを伝えます。学校の外で起きたことだから、と対応しないのではなく、子どもが困っているなら学校として向き合う。その姿勢を示してください。
場面7 「筆箱がなくなった」
受け止める
「筆箱がなくなっちゃったんだね。困ったね。どこに置いていたか、覚えてる?」
物がなくなったときは、まず困っている気持ちを受け止めて、一緒に探します。
確かめる
「最後に使ったのは、いつだったかな」「ロッカーや、机の中は見てみた?」
ここで気をつけたいのは、最初から「誰かがとった」と決めつけないことです。単に置き忘れていることも多いです。一方で、くり返し物がなくなる、隠されているようだ、という場合は、いじめのサインかもしれません。
次につなぐ
「先生も一緒に探してみるね。見つからなかったら、おうちの人にも伝えておくね。」
くり返し起きているなら、学年の先生や管理職に報告することも口にします。物がなくなる、という小さな出来事の裏に、大きなことが隠れていないか。そこに目を向けられるかどうかも見られています。
場面8 掃除をさぼっている
受け止める
最後は、少し軽めの場面です。掃除の時間に、ほうきを持ったまま友達とおしゃべりしている子どもへの対応です。
「〇〇さん、楽しそうだね。何の話をしてたの?」
いきなり「さぼってないで、ちゃんとやりなさい」と言うより、まずは声をかけて、こちらを向いてもらう。少しユーモアを入れてもいいと思います。
確かめる
「今日の掃除、〇〇さんの場所はどこだったかな」「どこまで終わった?」
叱るのではなく、本人に自分の役割を思い出してもらいます。掃除の分担が分かっていなかった、ということもあります。
次につなぐ
「じゃあ、あと5分でここまでやってみよう。終わったら、先生に教えてね。」
終わったら、「きれいになったね」と認めます。掃除のような日常の場面では、叱って終わりにするより、最後に認めて終わるほうが、次の日の行動につながりやすいと思っています。
場面9 友達の作品を、こわしてしまった
受け止める
最後にもう一つ。図工の時間に、ある子が友達の作品をうっかり落として、こわしてしまった場面です。こわしてしまった子が、青い顔で立っています。
「びっくりしたね。わざとじゃなかったんだよね。正直に先生に言えたのは、えらかったよ。」
こわされた子のほうも、もちろん悲しんでいます。でも、この場面では、こわしてしまった子も、どうしていいか分からなくなっています。まずは、その子の気持ちも受け止めます。
確かめる
「どうして落ちちゃったのかな。」「〇〇さんには、もう話せた?」
何が起きたのかを確かめます。そして、こわされた子のところにも行って、「大事な作品だったよね。悲しかったね」と気持ちを受け止めます。二人の気持ちを、それぞれ受け止めるのがこの場面のポイントです。
次につなぐ
「〇〇さんに、どうしたいか一緒に伝えに行こうか。直せるところは、先生も手伝うね。」
謝ることを無理強いするのではなく、本人が自分から伝えられるように、そばについていく。そして、直せるなら一緒に直す。こういう場面で、子ども同士の関係をつなぎ直すところまで考えられると、現場の教員としては安心します。保護者に伝える必要があるかどうかも、学年の先生と相談して決めます。
場面指導で使いやすい言葉
ここまでの台詞の中から、どの場面でも使いやすい言葉を拾っておきます。丸暗記するためではなく、困ったときに戻ってこられる「手すり」として持っておくといいと思います。
受け止めるときは、「そうか」「〜だったんだね」「話してくれてありがとう」「つらかったね」。確かめるときは、「先生に教えてくれる?」「そのとき、どんな気持ちだった?」「ゆっくりでいいよ」。次につなぐときは、「〇〇さんにも話を聞いてみるね」「また一緒に話そう」「学年の先生とも相談するね」。
この3つの段階に一つずつ、自分が言いやすい言葉を持っておくだけで、頭が真っ白になったときにも、口が動いてくれます。
どの場面にも共通すること
9つの場面を書いてみて、改めて思うのは、どの場面にも共通していることがある、ということです。
一つは、最初に気持ちを受け止めること。もう一つは、決めつけずに確かめること。そして、一人で抱えずにつなぐこと。
もう一つ付け加えるなら、叱って終わりにしないことです。どの場面でも、最後は「また話そうね」「戻れたね」「きれいになったね」と、子どもとの関係をつなぎ直す一言で終わっています。場面指導は短い時間ですが、その最後の一言に、その人が子どもとどんな関係をつくろうとしているかが出ます。
特に、いじめ、けが、不登校につながる場面では、担任一人で判断しないことを、必ず言葉にしてください。現場の教員として、新しく来た先生に一番お願いしたいのも、そこです。困ったら、すぐに相談してほしい。それができる人だと分かると、一緒に働く側は本当に安心します。
おわりに
場面指導の台詞は、覚えるものではありません。目の前の子どもに、自分の言葉で話しかけるものです。
今回書いた台詞も、そのまま使うのではなく、「自分ならどう言うかな」と考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。声に出して、友達に子ども役をやってもらって、何度も練習してみてください。
そして、試験に受かって教室に立ったとき、今回の9つの場面のどれかに、きっと出会います。そのとき、練習で口にした言葉が、ふっと出てくるはずです。
保護者との場面は「場面指導・保護者編」で書いています。答え方の型は「場面指導は「3つの順番」で組み立てる」を、面接全体については「教員採用試験の面接・場面指導、現場の先生ならこう答えたい」もあわせてどうぞ。


コメント