教材で読む次期学習指導要領#25 Let’s Try! 2「お気に入りの場所」を、本当に伝えたい場所に 4年外国語活動で「伝えたいことを伝える」

授業づくり

4年生の外国語活動、Let’s Try! 2 の終わりの方にあるユニット、”This is my favorite place.”。校内の場所の言い方(library, music room, gym など)を覚えて、道案内の表現(Go straight. Turn right.)を使いながら、自分のお気に入りの場所に友達を案内する。

子どもたちは、ここで初めて「自分の好きなもの」を、場所という形で英語で伝えます。今回は、このユニットを、審議まとめの外国語の言葉から見直してみます。

審議まとめの外国語

審議まとめは、外国語について、まず「AI時代に外国語を学ぶ本質的意義」を整理し直しています。AI翻訳がこれだけ発達した時代に、なぜ外国語を学ぶのか。

示されているのは、二つの観点です。

  • 言葉、文化、コミュニケーションへの深い理解を育むこと(異なる言語・文化への理解や、母語・自国の文化を見直すこと)
  • 自分の考えが磨かれて思考が深まるとともに、人間関係が豊かになること(多様な価値観に触れて自分の考えを形成・整理し、多様な他者と直接意思疎通できる)

そして「発信力の強化」として、子どもが外国語を使って伝えたいこと、やってみたいことについてイメージを持ち、自分のことや自分の意見、住んでいる地域や国のことについて伝え合うことが重要だ、としています。話題や活動の例示も、この方向で見直す、と。

「お気に入りの場所」は、伝えたいことがある単元

外国語活動の多くのユニットは、表現に慣れ親しむことが中心です。”I like 〜.” “Do you have 〜?” 。もちろん、それで大事な土台ができます。

その中で、”This is my favorite place.” は、ちょっと特別です。子ども一人一人に、本当に「伝えたいこと」があるからです。

図書室が好きな子は、どの棚が好きかまで語りたい。体育館が好きな子は、そこで何をするのが好きかを言いたい。「なんで好きなの?」と聞かれたら、答えたい。伝えたい中身があるユニットなんです。

「伝えたい」を英語にするには

ただ、4年生の英語の力では、伝えたいことの全部は言えません。”This is the library. I like the library.” で終わってしまう。

ここで大事にしたいのは、言えないもどかしさです。審議まとめの「伝えたいことややってみたいことについてイメージを持ち」は、こういうもどかしさから始まると思っています。「本当はもっと言いたい。英語でなんて言うの?」。この気持ちが、5年生からの外国語科への動機になります。

一言だけ、足す

なので、私なら、”This is my favorite place.” の紹介に、一言だけ自分の言葉を足す時間をとります。

  • “I like books.”
  • “I play basketball.”
  • “It’s quiet.”

全部は言えなくても、知っている言葉で一つ足す。足りない言葉は、ALTの先生や先生に聞く。ジェスチャーで補う。

聞く側が「聞き返す」

紹介を聞く側にも、一つだけ反応の言葉を持たせます。”Why?” “Me, too!” “Nice!”。

特に “Why?” は効きます。聞かれた子は、何とか答えようとします。”Because… I like books!”。やり取りが一往復するだけで、それは「コミュニケーション」になります。

地域へ広げる芽

審議まとめは、話題や活動の充実として、自分のこと、日本のことに加え、自分の住んでいる地域に関する話題や活動を明確に位置付ける、としています。

“This is my favorite place.” は校内の場所ですが、これは地域への入り口です。次のユニットや5年生以降で、学区の公園や、町のお店、地域の名所を紹介する活動へ広げられます。

「学校の中のお気に入り」→「町のお気に入り」→「自分の市のおすすめ」。この流れは、6年生の「自分の町を紹介しよう」のような単元(本連載#26)につながっていきます。

外国語活動から外国語科へ

審議まとめは、小学校の外国語活動(音声での慣れ親しみ)から、外国語科(読むこと・書くことを含む)に円滑に接続できるよう指導すること、を挙げています。

4年生の終わりのこのユニットは、その「つなぎ目」です。

  • 場所の名前を、絵カードの文字と一緒に見せる(読むことへの準備)
  • “library” の最初の音 /l/ に気づかせる(音と文字の関係への準備)

書かせる必要はありません。でも、文字が目に入る環境をつくっておく。5年生で文字を学ぶときに、「あ、見たことある」となるように。

AIの時代だからこそ

AI翻訳を使えば、「図書室のこの棚が好きです。なぜなら、恐竜の図鑑があるからです」は、一瞬で英語になります。

でも、4年生の子が、知っている言葉を必死に組み合わせて “I like… dinosaurs! Book!” と言って、ALTの先生が “Oh, you like dinosaur books!” と返してくれる。その瞬間の顔は、翻訳アプリでは生まれません。審議まとめの「人間関係が豊かになること」は、こういうことなんだと思っています。

ユニットの計画のイメージ

外国語活動は、1ユニットが4時間ほどの構成になっていることが多いと思います。ここでは、「一言足す」と「聞き返す」を中心にした4時間の流れを、目安として書いておきます。

時 主な活動 ねらい
1 校内の場所の言い方を、チャンツやゲームで知る 場所の言い方に慣れ親しむ
2 道案内の表現を使って、友達を目的の場所まで案内する Go straight. Turn right. などに慣れ親しむ
3 自分のお気に入りの場所を決め、紹介の準備をする 伝えたいことを考え、一言足す言葉を探す
4 お気に入りの場所に友達を案内し、紹介し合う 一言足して伝え、聞き返して反応する

第3時に「伝えたいことを考える」時間をとっているのがポイントです。英語の表現を練習する前に、まず日本語で「どうしてその場所が好きなのか」を考える。伝えたい中身があると、知っている英語を探す必要が生まれます。

第1時のゲームの例

場所の言い方に慣れ親しむゲームは、教室でできるものがいくつかあります。

  • ポインティングゲーム:先生が場所の名前を言い、子どもは校内地図の上で、その場所を指さす
  • ミッシングゲーム:黒板に場所の絵カードを並べ、目をつぶっている間に一枚取る。どの場所がなくなったかを英語で言う
  • キーワードゲーム:ペアの間に消しゴムを置き、先生がキーワード(例:library)を言ったら、先に取った方が勝ち

ゲームのあとに、「みんなの好きな場所は、どこ?」と聞いてみてください。”Library!” “Gym!” “Music room!”。この時点で、子どもはもう「自分のお気に入り」を英語で言い始めます。第3時の準備の、小さな入り口になります。

第2時の道案内活動

道案内の活動は、校内地図を使ったペア活動が基本です。一人が案内する人、一人が案内される人。案内される人は、地図の上で指を動かしていきます。

  • 案内する人:”Go straight. Turn right. Go straight. Turn left. Stop!”
  • 案内される人:指を動かして、目的の場所に着いたら “This is the music room!”

慣れてきたら、教室の中を実際に歩く活動にすると、ぐっと盛り上がります。机を通路に見立てて、目隠しをした友達を、言葉だけで案内する。【配慮:目隠しをする場合は、ぶつからないように机の配置を工夫し、ゆっくり歩くルールを決める】

体を動かして道案内をすると、”Turn right.” の right が、自分の体の右だということが、体で分かります。審議まとめが生活科で言っている「身体性」は、外国語活動でも大事にできると思っています。

第3時の「一言足す」を支える

第3時は、自分のお気に入りの場所を決めて、紹介の準備をする時間です。こんな流れで進めます。

1. お気に入りの場所を決める(5分)

校内地図を見ながら、自分のお気に入りの場所を一つ選びます。

2. 日本語で理由を考える(10分)

「どうしてその場所が好き?」を、日本語でワークシートに書きます。「本がたくさんあるから」「ボールで遊べるから」「静かだから」「先生がやさしいから」。

3. 知っている英語で言えるか考える(15分)

日本語で書いた理由を、知っている英語で言えるか考えます。ここで、これまでのユニットで習った表現を思い出させます。

  • “I like 〜.”(好きなもの)
  • “I play 〜.”(すること)
  • “It’s 〜.”(様子)
  • “I can 〜.”(できること)

言えない言葉は、先生やALTの先生に聞いてかまいません。教室の前に「聞いてもいいコーナー」をつくっておき、絵カードや単語のカードを置いておくと、子どもが自分で探せます。

4. 練習する(10分)

ペアで、紹介を練習します。”This is my favorite place. This is the library. I like books.” の三文くらいを目安にします。

予想される子どもの「言いたいこと」と、知っている英語での言い方の例を挙げておきます。

  • 「本がたくさんある」→ “Many books.”
  • 「ボールで遊べる」→ “I play dodgeball.”
  • 「静か」→ “It’s quiet.”
  • 「ピアノがひける」→ “I can play the piano.”
  • 「給食のにおいがする」→ “Good smell!”

最後の “Good smell!” のように、文法的には完全でなくても、伝えたいことが伝わる言い方を、子どもは自分で見つけます。外国語活動の段階では、それで十分です。正しい英語に直すより、「伝わったね」と認めることを大事にしたいところです。

第4時の紹介し合う活動

第4時は、お気に入りの場所に友達を案内し、紹介し合います。可能であれば、実際に校内のその場所まで歩いて行けるといいのですが、時間や安全の都合で難しければ、教室で校内地図を使って行います。

紹介を聞く側には、反応の言葉を三つだけ持たせます。

  • “Why?”(どうして?)
  • “Me, too!”(わたしも!)
  • “Nice!”(いいね!)

この三つを、カードにして机の上に置いておきます。紹介を聞いたら、どれか一つを必ず言う。”Why?” と聞かれたら、紹介した子は、もう一言足そうとします。

活動のあとに、「友達の紹介で、”Why?” って聞いたとき、何て答えてくれた?」と聞いてみてください。子どもは、友達が一生懸命答えてくれたことを、うれしそうに話します。

ALTの先生との役割分担

ALTの先生がいる授業では、役割分担を事前に相談しておくと、授業がスムーズに進みます。

  • 担任:子どもの「伝えたいこと」を引き出す。日本語で理由を考える場面をリードする。子どもの様子を見て、困っている子に声をかける
  • ALTの先生:英語の言い方のモデルを示す。子どもの片言の英語に、自然な英語で返す(”Oh, you like dinosaur books!”)。紹介を聞いて、”Why?” と聞き返すモデルを見せる

ALTの先生が、子どもの言葉を自然な英語で言い直してくれる「リキャスト」は、子どもにとって一番の学びになります。間違いを指摘するのではなく、正しい言い方を自然に聞かせる。担任も、少しずつまねしていくと、ALTの先生がいない時間でも、同じ関わり方ができるようになります。

つまずきやすいところと手立て

  • 英語を話すのが恥ずかしい子:ペアの相手を、安心して話せる友達にします。最初は小さな声でいい。ジェスチャーや指さしで伝えてもいいことにします。
  • お気に入りの場所が決められない子:「学校の中で、一番長くいる場所は?」「休み時間に、どこに行くことが多い?」と聞きます。「好き」がはっきりしなくても、よく行く場所から選べば大丈夫です。
  • 一言足す言葉が見つからない子:”I like it.” だけでもいいことにします。それも立派な一言です。
  • 道案内の右と左がわからなくなる子:手首にシールを貼ったり、右手を挙げてから言ったりします。体で確かめると、迷いにくくなります。

見取りの観点

外国語活動は、数値による評価ではなく、文章で子どもの様子を記録する形になっています。このユニットでは、次のような姿を見取りたいところです。

  • 自分のお気に入りの場所について、知っている英語を使って、一言足して伝えようとしている
  • 友達の紹介を聞いて、反応の言葉を使って関わろうとしている
  • 言えない言葉があっても、ジェスチャーや聞くことで、伝えようと工夫している

三つ目の「工夫しようとしている」姿は、ぜひ記録に残しておきたいところです。言葉が足りない中で、何とか伝えようとする姿は、5年生からの外国語科の学びを支える一番の土台になります。

よくある質問

Q. ALTの先生がいない日の授業は、どうすればいいですか?

デジタル教材の音声や動画を使えば、英語のモデルを聞かせることができます。担任が英語を話すことに自信がなくても、子どもと一緒に聞いて、まねをする姿を見せることに意味があります。「先生も、一緒に練習するね」。先生が楽しんで英語を使う姿は、子どもにとって一番のお手本です。

Q. 校内を実際に歩いて案内してもいいですか?

時間と安全が確保できれば、ぜひやってみてください。ほかの学級が授業をしている時間なので、廊下では静かに歩くこと、教室の中には入らないことを、事前に確かめておきます。

まとめ

  • 審議まとめは、AI時代に外国語を学ぶ意義を「言葉・文化・コミュニケーションへの深い理解」と「自分の考えが磨かれ、人間関係が豊かになること」で整理し、伝えたいことを伝える発信力の強化を示している
  • Let’s Try! 2 “This is my favorite place.” は、子どもに本当に伝えたいことがあるユニット。一言足す、”Why?” と聞き返す
  • 校内の場所から地域へ。文字が目に入る環境で、5年生の外国語科へつなぐ

「言いたいのに言えない」は、外国語を学ぶ一番のエンジンです。そのもどかしさを、4年生のうちに一度味わわせてあげたいですね。

次回は、6年生の外国語で、地域の発信とAI翻訳の付き合い方を考えます。

参考

  • 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「外国語活動、外国語」p.274〜275、p.277、p.280 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
  • 文部科学省『Let’s Try! 2』(小学校外国語活動教材)Unit 8
  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第4章 外国語活動
  • 関連記事:外国語は「自分の意見」と「身近な地域」を発信する活動へ AI翻訳の時代に、小学校の英語で育てたいもの(連載「次期学習指導要領を読む」)

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