1年生の5月。あさがおの種をまいて、毎朝水をやって、芽が出たら「出た!」と大騒ぎ。夏休みには鉢を持って帰って、秋には種をとる。日本中の1年生が、毎年同じことをしているんじゃないでしょうか。
そして3年生になると、理科でホウセンカやヒマワリを育てて、「たね→子葉→葉→花→実」と育ち方を調べる。
この二つ、つながっていると意識したことはありますか?正直、私はあまりありませんでした。今回は、審議まとめの生活科と理科の言葉から、このつながりを考えてみます。
生活科の「身体性」
審議まとめは、生活科の本質的意義を、AIで代替できない「実感を伴う知」を育む教科として、4つで整理し直しています。
- 身体性:身体を通して対象と関わり、見る、聞く、触れる、嗅ぐなどの諸感覚で対象を捉える
- 対象と自分との関わり:自分が動くと、身近な物事が変わるという経験
- 他者と自分との関わり
- 自己認識
一番目の「身体性」には、こんな説明があります。AIを含む仮想空間における情報の受容ではない、「身体で身近な生活を捉える」体験や活動を、自分の外に広がる世界との確かな接点をもつ出発点とする。
あわせて、デジタル技術が進む中で、学校内外での直接体験の機会が減少している、という課題も書いています。
あさがおの栽培は、まさに「身体で捉える」活動です。土の手ざわり、水やりのじょうろの重さ、葉っぱのうぶ毛、花のにおい。動画で見るのとは、まったく違う。
理科の「生命を尊重する心情」
一方、理科。審議まとめは、理科の目標の「学びに向かう力」について、「生命を尊重する心情や人と自然環境の調和に寄与しようとする心情」と規定する方向を示しています。そして注として、これまで小学校理科だけに規定されていた「自然に親しむ」「自然を愛する心情」を、中・高にも妥当する形で展開するものだ、と書いています。さらに、小学校理科では、引き続き、生活科との接続や発達段階を踏まえ、自然と関わる体験を通じて学習を進めることが考えられる、と。
つまり、生活科の「身体で関わる」と、理科の「生命を尊重する」は、一続きのものとして考えられている、ということです。
1年生と3年生を、つなげてみる
1年生:「気づき」を言葉や絵で残す
生活科のあさがおの観察カード。何を書かせていますか?
審議まとめは、生活科で、直接体験に加えて、言葉や絵、動作など多様な方法で表現し、気付きの質を高める活動の重要性が高まっている、と書いています。
1年生の観察カードは、「上手な絵」でなくていい。「さわったら、ちくちくした」「はっぱが、ぼくの手より大きくなった」「においは、しなかった」。諸感覚で捉えたことを、そのまま書く。その子が体で何に気づいたかが残っていればいい。
先生の声かけも、「よく見て描こうね」だけでなく、「さわってみた?」「においは?」「去年の1年生の写真と比べるとどう?」と、いろいろな感覚を使うよう促します。
3年生:「体で知っていること」を思い出させる
3年生の理科で、ホウセンカの育ち方を調べるとき、最初に「1年生のとき、あさがおを育てたよね。覚えてる?」と聞いてみてください。
「芽が二つ出た」「つるが巻きついた」「種が黒かった」。子どもは案外覚えています。体で関わった記憶は残るんです。
そして、「ホウセンカも、あさがおと同じかな?」と問う。子葉が出る、葉が出る、花が咲く、実ができる。同じところと違うところを比べる。これが3年生の理科の「比較」という考え方です。1年生の体験が、3年生の理科の「予想」の根拠になります。
種をとる、また育てる
あさがおも、ホウセンカも、最後に種がとれます。「この種をまいたら、どうなる?」。
1年生は、とった種を次の1年生にプレゼントする学校も多いと思います。命が次につながる。3年生の理科でも、育ち方の最後に「実の中に種ができて、また育つ」ことを学ぶ。審議まとめの「生命を尊重する心情」は、こういう命のつながりを体で感じる経験から育つんじゃないでしょうか。
気をつけたいこと
栽培の学習で、どうしても起きるのが「枯れてしまった」です。水やりを忘れた、日当たりが悪かった、虫に食べられた。
枯れたことを、責める場にはしたくない。「どうして枯れたと思う?」「次はどうする?」と、子どもと一緒に考える。予備の苗を用意しておくのも、先生の大事な仕事です。
審議まとめは、生活科の飼育活動などについて、適切な環境の確保や継続性など、様々な観点からの配慮が必要になっている、とも書いています。栽培も同じです。夏休みの鉢の持ち帰りなど、家庭の負担も考えておきたいところです。
1年生のあさがおの1年間
1年生のあさがおの栽培を、「身体性」と「気づきを残す」を意識した1年間の流れにしてみます。学校や地域の気候によって時期は前後するので、目安として読んでください。
| 時期 | 主な活動 | 使いたい感覚・声かけ |
|---|---|---|
| 5月 | 種を観察して、まく | 「種をさわってみて。どんな感じ?」「何色?」 |
| 5〜6月 | 芽が出る、本葉が出る | 「最初の葉っぱと、次の葉っぱは同じ形?」 |
| 6〜7月 | つるが伸びる、支柱を立てる | 「つるは、どっちに巻いている?」「さわると、どんな感じ?」 |
| 7月 | 花が咲く、色水遊び | 「花のにおいは?」「しぼんだ花は、どうなる?」 |
| 夏休み | 家に持ち帰る(学校によっては学校で世話) | 家での様子を、絵や写真で残す |
| 9〜10月 | 種をとる、つるでリースを作る | 「種は、どこにできている?」「春の種と同じ?」 |
| 11月〜3月 | 種を保存し、次の1年生に手紙と一緒に贈る | 「新しい1年生に、何を教えてあげたい?」 |
一年間を通して、観察カードは同じ形式で書くようにします。同じ形式だと、5月のカードと9月のカードを並べたときに、変化が見えやすいからです。学期の終わりに、カードを全部並べて見る時間をとると、子どもは「こんなに大きくなったんだ」と、自分が育ててきた時間を実感します。
観察カードの形式の例
1年生の観察カードは、書く欄を少なくして、絵と言葉の両方で残せるようにします。
- 日づけと天気
- 絵をかく欄(大きめに)
- 「みつけたよ」の欄(一つだけでいい)
- つかった「かんかく」に〇をつける欄:「みた」「きいた」「さわった」「におった」
最後の「つかった感覚に〇をつける」が、ちょっとした工夫です。毎回、見るだけでなく、ほかの感覚も使ったかを、子ども自身がふり返れます。「今日は、さわったに〇がついた」。何回か続けると、「今日は、においもかいでみよう」と、自分から感覚を使い分ける子が出てきます。
端末で写真を撮って残す学校も多いと思います。写真は、変化を正確に残すのにとても便利です。ただ、写真だけにすると、「さわった」「におった」は残りません。写真と、言葉や絵の観察カードを、両方使うのがおすすめです。
「みつけたよ」の言葉を育てる声かけ
1年生の「みつけたよ」は、最初はたいてい「おおきくなった」「きれいだった」です。それはそれで大切な気づきですが、少しずつ言葉を広げていきたいところです。声かけの例を挙げておきます。
- 比べる:「きのうと比べて、どこが変わった?」「となりの友達のあさがおと比べると?」
- 数える:「葉っぱは、何枚ある?」「花は、いくつ咲いた?」
- たとえる:「この葉っぱ、何かに似てない?」「つるの先は、何みたい?」
- 体と比べる:「葉っぱは、きみの手と比べてどのくらい?」「つるは、きみの背と比べると?」
四つ目の「体と比べる」は、1年生にとても分かりやすい方法です。自分の手、自分の背。体を物差しにすると、大きさの変化が実感として分かります。審議まとめのいう「身体性」は、こういう小さな比べ方の中にもあると思っています。
3年生の理科の単元計画
3年生の「植物の育ち方」は、季節をまたいで続く単元です。ここでは、1年生の体験を思い出すところから始めた場合の流れを、目安として書いておきます。
| 時期 | 主な学習 | 中心の問い |
|---|---|---|
| 4月 | 1年生のあさがおを思い出し、種を比べる | ホウセンカの種は、あさがおの種とどうちがう? |
| 4〜5月 | 種をまき、子葉の様子を調べる | 最初に出てくる葉は、どんな形? |
| 5〜6月 | 葉の数や高さを調べ、体のつくりを知る | 植物の体は、どんな部分でできている? |
| 7月 | 花が咲く様子を調べる | 花は、植物の体のどこに咲く? |
| 9〜10月 | 実や種の様子を調べる | 花が咲いたあと、どうなった? |
| 10月 | 育ち方をまとめ、あさがおと比べる | 植物は、どんな順に育つと言える? |
最初の4月に、1年生のときの観察カードが残っていれば、ぜひ持ってこさせてください。家庭で保管されていることも多いです。2年前の自分の絵と言葉を見ると、子どもはとても喜びます。「こんな字だった!」。そして、「あさがおも、最初は葉っぱが二枚だった」と、3年生の理科の予想の根拠を、自分の記録から見つけられます。
【配慮:1年生のときの観察カードが手元にない子もいる。学級で写真を見せるなど、全員が思い出せる手立てを用意しておく】
3年生の「比べる」を支える表
あさがおとホウセンカを比べるとき、こんな表を使うと、同じところとちがうところが整理しやすくなります。
| 比べること | あさがお(1年生のとき) | ホウセンカ(3年生) | 同じ?ちがう? |
|---|---|---|---|
| 種の形・色 | |||
| 最初に出る葉 | |||
| 体のつくり(根・茎・葉) | |||
| 花の色・形 | |||
| 種のでき方 |
この表を埋めていくと、「種の形や花の色はちがうけど、根・茎・葉があるのは同じ」「種から始まって、また種ができるのは同じ」と、植物に共通することが見えてきます。これが、3年生の理科の結論、「植物の育ち方には一定の順序がある」につながります。
枯れてしまったときの声かけ
栽培で枯れてしまったとき、子どもはとても落ちこみます。とくに1年生は、自分のせいだと強く感じることがあります。そんなときの声かけを、いくつか書いておきます。
- 「悲しいね。先生も悲しい」:まず、気持ちを受け止める
- 「どうして枯れたと思う?」:責めるのではなく、一緒に原因を考える
- 「植物は、水や日光がないと生きられないんだね」:原因から、植物が生きるために必要なことを学ぶ
- 「予備の苗を、もう一度育ててみる?」:次の一歩を、子どもが選べるようにする
枯れたことを通して、「植物も生きている」ことを実感する子もいます。審議まとめの「生命を尊重する心情」は、うまく育った経験だけでなく、うまく育たなかった経験の中でも育つものだと思っています。
評価の目安
生活科のあさがおの評価は、「気づき」の質を見るようにしています。
- 気づきが深まっている:いろいろな感覚を使って気づいたことを、比べたり、たとえたりしながら、自分の言葉で表している
- 気づいている:見て気づいたことを、絵や言葉で表している
- まだ気づきが少ない:あさがおに関わることはできているが、気づいたことを表すのが難しい
3年生の理科では、あさがおとホウセンカを比べて、植物の育ち方に共通することを見つけられているかを中心に見ます。1年生の体験を根拠にして予想を立てられている子がいたら、ぜひ学級で紹介してください。体で関わった経験が学びの根拠になることを、子どもたち自身が知るきっかけになります。
よくある質問
Q. 夏休みのあさがおの持ち帰りが、家庭の負担になっていると聞きます。
学校によっては、夏休みの間も学校で世話をする方法をとっているところもあります。持ち帰る場合でも、「水やりだけでいい」「観察カードは書けたら書く」など、家庭の負担を減らす工夫ができます。家庭の事情で世話が難しい子のために、学校で預かれる仕組みを学年で用意しておくと安心です。
Q. 1年生と3年生の担任が別なので、つなげるのが難しいです。
一番簡単なのは、1年生の観察カードを、子どもが家に持ち帰る前にコピーや写真で残しておき、学年の共有フォルダに保存しておくことです。3年生の担任が、それを見て授業の導入に使えます。毎年続けると、学校全体で、生活科と理科をつなぐ資料が積み重なっていきます。
Q. 観察カードに、上手な絵を描かせた方がいいですか?
上手な絵である必要はありません。大事なのは、その子が何に気づいたかが分かることです。絵が苦手な子には、端末で撮った写真を貼って、気づいたことを言葉で書く形でもかまいません。「さわったら、ざらざらしていた」という一言が、どんな上手な絵よりも、その子の気づきをよく表していることがあります。
Q. 3年生の理科で、ホウセンカ以外の植物を育てる場合は?
ヒマワリやマリーゴールドなど、教科書や学校によって育てる植物はちがいます。どの植物でも、あさがおと比べる表は同じように使えます。むしろ、あさがおとちがう点が多い植物の方が、「ちがうけど同じところ」を探す面白さがあります。
生活科と理科をつなぐ、ということ
最後に一つだけ。生活科と理科は、教科としての目標がちがいます。生活科は、自分との関わりで対象に気づくこと。理科は、自然の事物・現象を科学的に探究すること。だから、1年生のあさがおを、理科のように「調べる」必要はありません。
でも、1年生のときに体で関わった経験は、3年生の理科の「予想」や「比較」の根拠になります。生活科で育てた「気づき」が、理科の「問い」に変わっていく。その変化を、子ども自身が感じられるようにすることが、二つの教科をつなぐということだと思っています。1年生の担任も、3年生の担任も、その一続きの中にいる。そう考えると、毎年のあさがおの栽培も、少しちがって見えてくるんじゃないでしょうか。
種から始まって、また種ができる。その一年を、子どもと一緒に過ごしてみてください。
まとめ
- 審議まとめは、生活科の本質的意義の一つに「身体性」を置き、諸感覚で対象と関わる直接体験を重視している
- 理科の目標には「生命を尊重する心情」が入る方向で、小学校理科では生活科との接続を踏まえて自然と関わる体験を重視するとしている
- 1年生の観察カードは「体で何に気づいたか」を残す。3年生の理科では、その記憶を予想の根拠にする
あさがおの鉢を持って帰る日、重たそうに抱えている1年生。あの重さも、きっと「体で知る」学習の一部なんですよね。
次回からは社会科。3年生の「市の様子のうつりかわり」と、昔の道具の学習です。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「生活」p.199〜201、「理科」p.184 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」生活 第1学年及び第2学年 内容(7)、理科 第3学年 B生命・地球(1)身の回りの生物
- 関連記事:理科と生活科は何が変わるか 「身体性」と「科学的な探究」で、自然と向き合う(連載「次期学習指導要領を読む」)


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