6年生の理科、「電気の利用」。手回し発電機で電気をつくる。コンデンサーに電気をためる。豆電球と発光ダイオードで、どちらが長く光るか比べる。プログラミングで、明るさセンサーと組み合わせて、暗くなったら明かりがつく仕組みを考える。
盛りだくさんで楽しい単元です。そして、審議まとめを読むと、この単元は新しく設定される学習内容「理科と日常生活」の、一番近くにいる単元かもしれません。
「理科と日常生活」とは
審議まとめは、理科の内容について、こう書いています。
エネルギー問題や環境問題など、特定分野・領域に限定できない、科学的知見を必要とする社会課題が増加していることを踏まえ、分野横断的な課題について学ぶ学習内容を、小学校にも新たに設定することが適当である(理科と日常生活)。
さらに、小学校の部分では、
個別の分野・領域の既習事項をもとに、分野横断的な課題について学習することは、「統合的な理解・総合的な発揮」を身に付ける上でも重要であることから、理科と日常生活の関わりについて意識しつつ、分野横断的な課題について学ぶ学習内容「理科と日常生活」を新たに設定。
とあり、注として「関連する内容は各単元においても往還的に指導する」とあります。
ポイントは、これまで習ったことを組み合わせて、日常生活の課題を考える、という点です。物理(エネルギー)、化学、生物、地学のどれか一つではなく、分野をまたぐ。
どの学年に、どのくらいの時間で置かれるのかは、告示や解説が出るまで分かりません。ただ、今の6年生の単元の中にも、その芽はたくさんあります。
「電気の利用」の中にある芽
「電気の利用」の内容を、「日常生活」の目で見直してみます。
- 電気をつくる:手回し発電機、光電池(4年生で学習)→ 発電所、太陽光発電
- 電気をためる:コンデンサー → 充電池、家庭用蓄電池、スマホのバッテリー
- 電気を変える:光・音・熱・運動 → 身の回りの家電
- 電気を効率よく使う:豆電球と発光ダイオードの比較 → LED照明への切り替え
- 電気を制御する:プログラミング、センサー → 自動で点く街灯、人感センサー
ここに、ほかの単元の内容を組み合わせると、分野横断になります。
- 6年「燃焼の仕組み」:火力発電は、ものを燃やしている。二酸化炭素が出る
- 6年「生物と環境」:二酸化炭素と地球の環境、生き物とのつながり
- 4年「電流の働き」「光電池」:電気の通り道、光電池の向き
単元の最後に、一つの問いを
私なら、「電気の利用」の単元の最後に、こんな問いを一つ置いてみます。
「学校の電気を、少しでも減らすには?」
子どもは、まず「電気を消す」と言います。そこで、「どの電気を消すのが、一番効果がある?」と聞きます。
ここで、豆電球と発光ダイオードの実験が生きてきます。「LEDの方が、同じ電気で長く光った」。じゃあ、教室の照明は?「蛍光灯だったら、LEDに変えたらいい」。学校の照明がすでにLEDなら、「人がいないときに消える仕組みは?」とプログラミングの話につながります。
さらに、「電気をつくるときにも、何か出ている?」と聞くと、「燃焼の仕組み」で学んだ二酸化炭素の話が出てきます。「生物と環境」で学んだことともつながる。
一つの問いに、いくつもの単元の知識を持ち寄る。審議まとめの「理科と日常生活」は、こういう学習のイメージなんじゃないかと思っています。
気をつけたいこと
「正解」を押しつけない
エネルギーや環境の話は、どうしても「節電しましょう」「CO2を減らしましょう」という道徳っぽいまとめになりがちです。
理科でやるのは、根拠をもって比べることです。「LEDの方が電気を使わない」は、実験で確かめた。「火力発電は二酸化炭素が出る」は、燃焼の学習で分かった。そこから先、どうするかは、いろいろな考えがあっていい。
審議まとめの新しい見方・考え方は、「観察、実験の結果や科学的知見などに基づいて、客観的、論理的、批判的に考察すること」です。「根拠に基づいて考える」までが理科。「どうすべきか」は、社会科や総合、家庭科ともつながる話です。
家庭の事情に気をつける
「家の電気代を調べてみよう」は、盛り上がりそうですが、家庭の事情に関わります。電気代の金額を持ってこさせるのは避けた方がいいと思っています。家電に貼ってある「消費電力」のシールを見てくる、くらいなら、どの家庭でもできます。
まとめ
- 審議まとめは、エネルギー問題や環境問題などの分野横断的な課題を学ぶ「理科と日常生活」を、小学校にも新たに設定するとしている
- 6年「電気の利用」には、つくる・ためる・変える・効率よく使う・制御する、と日常生活につながる芽がたくさんある
- 単元の最後に「学校の電気を減らすには?」と問い、燃焼や生物と環境の知識も持ち寄らせると、分野横断の学習になる。まとめは「根拠に基づいて考える」まで
正直、「理科と日常生活」が具体的にどんな単元になるのかは、まだ分かりません。でも、今の教科書の中にも、その練習はできる場所がある。そう思って読むと、6年生の理科が少し違って見えてきます。
次回は、1年生のあさがおと3年生の植物の育ち方で、「身体性」と「生命を尊重する心情」を考えます。
参考
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「理科」p.182〜184、p.186 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第6学年 A物質・エネルギー(1)燃焼の仕組み・(4)電気の利用、B生命・地球(3)生物と環境

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