#27 社会科は「多面的・多角的」へ 情報を確かめ、地域から考える小学校社会

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第27回です。調べ学習の時間、子どもの画面をのぞくと、AIの要約がそのままノートに写されている。そんな場面、増えていますよね。

審議まとめは、社会科について、「よりよい社会の形成」に向けて社会に見られる課題を「多面的・多角的」に考えるとともに、確かな根拠に基づいて「公正に判断」することを、新しい「見方・考え方」として整理する方向を示しています。小学校の社会科に関わる主な方向性は、次のとおりです。

  • 社会科が扱う対象を「社会的事象」から「社会的事象や言説」へと広げる
  • 調べまとめる技能に、「情報の妥当性の確認」に関する技能を新しく位置付ける
  • 身近な地域から国際社会へと広げていく考え方は継続しつつ、グローバル化など地域社会の変化を含めた内容に見直す
  • 全体として学習内容を増やさず、重複事項などを精選する(例:4年生の「県内の特色ある地域」は三つから二つを選ぶ方向)
  • 教科書「を」教えるから、教科書「で」教える学習への転換を促す

情報があふれ、何が本当か分かりにくい時代に、小学校の社会科で何を大切にするのか。審議まとめを手がかりに考えてみます。


社会科の今

成果と、道半ばの授業改善

審議まとめは、今の社会科の成果として、学習目標の明確化、地域課題への意識と実践の充実、社会的な見方・考え方を中核にした学習活動の充実などが進み、子どもにとって社会科の学習が「役に立つ」「わかる」「好き」と答える割合が改善されてきた、と書いています。

一方で、依然として断片的な知識の習得中心の授業が行われている実態も見受けられ、学習上の課題(問い)による追究や「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善は道半ばだ、とも指摘しています。その背景として、教科書の分量が多すぎることを指摘する声もあるそうです。

社会科は、私にとって教科書を「なぞる」授業になりやすい教科です。同じように感じている方もいるのではないでしょうか。特に6年生の歴史は、教える内容が多く、気づけば教科書の太字を順番に確認するだけの授業になってしまったこともありました。

AIの要約をコピー&ペースト

社会科の項目でも、第17回・第23回で紹介した課題が書かれています。ブラウザにAIが実装され、検索結果の最上部にAIの要約が表示される中、その内容を単純にコピー&ペーストしている子どもに対して、適切な指導がなされていない実態もみられる、というものです。

また、社会科の教師が端末を使う場面が「共通の資料を大きく提示する場面」や「インターネットで自由に調べる場面」が中心になっていて、ICTの活用が「教具的発想」にとどまっている、という指摘もあります。


新しい「見方・考え方」

図1:社会科等の新たな「見方・考え方」の見直し(案)
図1:社会科等の新たな「見方・考え方」の見直し(案)。左が現行、右が見直し案です。小学校社会では「社会的事象やその言説を」「多面的・多角的に考え」が加わっています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.545[資料2-2 社②-1])

「社会的事象や言説」

では、新しい「見方・考え方」は今と何が違うのでしょうか。今回の見直しで特に注目したいのが、社会科が扱う「対象」の整理です。今の小学校社会科の見方・考え方は、「社会的事象を、位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係などに着目して捉え……」と書かれています。

審議まとめは、現実の社会では、社会的事象に加えて、その事象を表す「言説」も含めた多様な情報が混然一体となって存在していることから、扱う対象を「社会的事象や言説」として整理する、としています。

注記では、言説はあくまで思考のきっかけであり、実際には事象との関係の中で扱うべきもの、事象とその事象についての多様な表現である言説は同じ次元ではないことを前提とする、とも書かれています。

つまり、「ある出来事」と、その出来事について「誰かが言っていること」を区別して考える、ということだと思います。ニュースやSNS、AIの答え。子どもが日々触れている情報の多くは「言説」です。それを鵜呑みにせず、事象と照らし合わせて考える力が、社会科で育てたい力として位置付けられようとしています。

「多面的・多角的」に考え、「公正に判断」する

そして、教科固有の考え方や判断の仕方として、社会的事象や言説について、さまざまな視点から課題を考え、確かな根拠に基づいて公正に判断することが重要であるとし、次のように整理する方向です。

「よりよい社会の形成」に向けて社会に見られる課題を「多面的・多角的」に考えるとともに、確かな根拠に基づき、「公正に判断」すること

慣れ親しんだ「視点や方法」はどうなる?

今まで「見方・考え方」として扱ってきた「位置や空間的な広がり」「時期や時間の経過」「事象や人々の相互関係」といった視点や、「比較・分類したり総合したり」といった方法はどうなるのでしょうか。

ここまで大事にしてきたものなので、なくなると困りますよね。審議まとめは、これらは既に現場に広く浸透していることを踏まえ、「統合的な理解・総合的な発揮」の中で、内容に即して具体的に示すとしています。呼び方についても、継続性を確保する観点から、たとえば「社会的な視点や方法等」と呼ぶ、とされています。今まで大事にしてきた視点や方法がなくなるわけではない、ということです。


目標の見直し

図2:【小学校・社会科】目標及び新たな「見方・考え方」(案)
図2:【小学校・社会科】目標及び新たな「見方・考え方」(案)。下線が現行からの変更点です(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.541[資料2-2 社①-1])

「確かな」情報に基づき「適切かつ」効果的に

目標の「知識及び技能」では、真偽が定かでない多様な情報が行き交う社会で、調査や資料から集めた情報の信ぴょう性を確認することを重視する観点から、小中学校では、「確かな」情報に基づき、「適切かつ」効果的に調べまとめる技能を身に付けること、と見直す方向です。高校ではさらに、「その妥当性を吟味しながら」調べまとめる技能へと高めていきます。

「自らの考えを批判的に捉え直す力」

「思考力、判断力、表現力等」では、より深い学びを具現化する観点から、自らの考えを批判的に捉え直す力の観点を追記する方向が示されています。

自分の考えをまとめて終わりではなく、「本当にそうかな」「別の立場から見たらどうだろう」と、自分の考えを見直してみる。「多面的・多角的」に考えることは、他人の意見だけでなく、自分の考えにも向けられるものなのだと思います。

「グローバル化する国際社会」の見直し

社会科の目標の柱書にある「グローバル化する国際社会に主体的に生きる」という表現も見直す方向です。地域社会から国際社会まで(地域・国・世界)を含めて、よりよい社会の形成が一層求められていること、より多様な他者と「協働的に」生きることが求められていることを踏まえる、とされています。


「情報の妥当性の確認」という新しい技能

図3:社会的事象等について調べまとめる技能(小・中・高等学校)
図3:社会的事象等について調べまとめる技能(小・中・高等学校)。下段に「情報の妥当性の確認」が新しく加わっています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.574[資料2-2 社⑫])

調べまとめる技能の見直し

小学校の授業づくりに直結するのが、「社会的事象等について調べまとめる技能」の見直しです。インターネットなどで集めた情報や資料の真偽や意図、背景などを把握することがこれまで以上に求められていることを踏まえ、集めた情報、読み取った情報、まとめた情報の信ぴょう性などを確認する新しい技能(「情報の妥当性の確認」に関する技能)として位置付け、今の関連する内容を含めて整理・充実する方向です。

注記では、情報の収集にあたっては、インターネットだけでなく、図書や新聞なども重要だと書かれています。また、集めた情報の扱いや情報の発信については、第25回で書いた総合の「情報の領域」での学習と関連させることが重要だとされています。

小学校でできる「妥当性の確認」

「妥当性の確認」と聞くと、小学生には難しそうに感じますよね。でも、たとえばこんな問いかけなら、小学校の社会科でもできそうです。

  • 「この情報は、誰が、いつ出したもの?」
  • 「教科書や資料集、ほかのサイトでも同じことが書いてある?」
  • 「この資料をつくった人は、何を伝えたかったんだろう?」
  • 「数字やグラフは、いつの、どこのもの?」

どれも、特別なことではないですよね。調べ学習のたびに、こうした問いを繰り返すことで、情報を確かめる習慣が少しずつ身に付いていくのだと思います。

AIとの付き合い方も

社会科におけるAI活用については、最終的には子どもが自ら考え、判断し、成果物の内容を自分の言葉で説明し、自ら責任を持つという考え方の下、「情報の妥当性確認」の視点も活用しながら学習を展開することを、当面の基本的な考え方とする、とされています。評価についても、口頭試問の要素を取り入れるなど、AIに頼って自分の思考を経ていない成果物が通用しないような工夫が「喫緊の課題」だとされています。


小学校の内容はどう変わる?

身近な地域から国際社会へ、は継続

小学校段階については、子どもの思考や認識の拠点を、発達の段階に合わせて、身近な地域から始め、国際社会へと広げていく、という考え方は継続する方向です。そのうえで、グローバル化など地域社会の変化を含めた内容に見直す、とされています。

自分の住む町にも、外国から来た人が増えている。地元の工場が、海外と取引している。そうした地域の変化を、身近なところから捉える学習が、これまで以上に大切になりそうです。

4年生「県内の特色ある地域」は二つに

学習内容の精選の例として、4年生の「県内の特色ある地域の様子」が挙げられています。今は「伝統的な技術を生かした地場産業が盛んな地域」「国際交流に取り組んでいる地域」「地域の資源を保護・活用している地域」の三つを同様に扱うことになっていますが、二つの地域を選択する方向で精選を図る、とされています。

4年生の後半、この単元で時間が足りなくなった経験のある先生は多いのではないでしょうか。二つに絞ることで、一つ一つの地域をじっくり調べる時間が生まれるかもしれません。

5年生「産業と情報との関わり」は重点化

5年生の「我が国の産業と情報との関わり」も、精選の例に挙がっています。総合の「情報の領域」で、情報技術やメディアが発する情報の特性などを体系的に扱うことで、社会科では情報を活用する産業の役割の学習に重点化を図る、という方向です。

6年生の歴史は「通史」にしない

歴史の学習については、小学校は、世の中の動きを人物の業績や優れた文化遺産を通して大まかに理解するという構成であり、事象を網羅的に扱うものではないことから、教科書が通史的な構成にならないよう促す、とされています。

6年生の歴史、どうしても駆け足になりますよね。小学校の歴史は、もともと人物や文化遺産を中心に学ぶものだった。その原点に立ち返る、ということだと受け取りました。

現代的な課題の見直し

このほか、社会情勢の変化を踏まえて、自然災害や防災、生成AIをはじめとするデジタル技術が社会にもたらす意義や影響、食や農林漁業をめぐる状況の変化、こども基本法などを踏まえた人権に関する内容など、多くの視点から内容の見直しを行う方向が示されています。一方で、全体として学習内容は増やさず、一定の精選を図る、とも書かれています。


主権者教育と、地域の人との連携

小学校から「意見を表明する」経験を

主権者教育については、子どもたちが主体となって実感を持てる実践的な活動を一層重視する方向です。こども基本法で子どもの意見表明や社会参画の機会の確保などが示されていることを踏まえ、特別活動とも連携しながら、子どもたちが主体となって実感を持って活動する機会を充実させる、とされています。第12回で書いた、児童会が学校運営に意見を表明する取組とも、つながっていく話です。

地域人材の活用は「目的」を明確に

外部人材の活用については、より実践的かつ多面的・多角的に物事を捉えられるようになるなど、子どもの学びが深まることが重要であり、そのためには、まず教師自身が活用の目的や教育的効果を踏まえて指導計画全体を設計し、外部人材と綿密な事前打合せを行うことが大切だ、とされています。

一方で、外部人材の活用が形式的な連携にとどまっている場合がある、学校の学習に協力する地域人材の情報が不足している、人事異動で人材が引き継がれない、といった課題も挙げられています。学習で活用した地域の資源や人材を、学校内で共有・引き継いでいく工夫の例を、国が整理して周知する方向です。


私が今から試してみたいこと

1. 単元に一つ「本当かな?」の場面をつくる

調べ学習のときに、あえて二つの異なる情報源を比べる場面をつくる。「こっちのサイトとこっちの本、書いてあることが少し違うね。どうしてだろう?」。その問いから、情報の出どころや目的を考える経験を積んでいけたらと思っています。

2. 「立場を変えて考える」問いを入れる

たとえば、地域の開発について学ぶとき、「お店の人」「住んでいる人」「市役所の人」など、立場を変えて考えてみる。多面的・多角的に考えるとは、こうした立場の違いを想像することから始まるのだと思います。

3. 地域の人の情報を、学年や学校で残していく

授業で協力してもらった地域の人やお店の情報を、学年の引継ぎ資料に残す。人事異動があっても、地域とのつながりが途切れないようにする小さな工夫です。


気になるところもあります

とはいえ、「多面的・多角的」「公正に判断」は、言葉としては分かりやすくても、小学生に実際にどう育てるかは簡単ではありません。立場の違いを考えさせようとして、結局「どちらもいいところがある」で終わってしまうこともあります。

また、「言説」を扱うことには、慎重さも必要だと思います。社会的に意見が分かれる事柄を扱うときには、教師自身が特定の立場に偏らないこと、子どもに多様な考えに触れる機会を保障することが大切です。審議まとめも、主権者教育について、政治的中立性の確保が重要だとしています。


おわりに 「本当かな?」と立ち止まれる子どもに

SNSやAIから、毎日大量の情報が流れてくる。その中で、「本当かな?」と立ち止まり、別の情報と比べ、別の立場から考えてみる。そして、確かな根拠に基づいて、自分の考えを持つ。社会科で育てたいのは、そんな力なのだと思います。

教科書「を」教えるのではなく、教科書「で」教える。地域の事実と出会い、地域の人の声を聞き、情報を確かめながら、よりよい社会について考える。小学校の社会科が、そんな学びの場になっていくことを願っています。

次回は、理科と生活科は何が変わるか、について書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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