教材で読む次期学習指導要領#27 道徳「かぼちゃのつる」は、わがままをしからない教材だった 審議まとめが見直しを示した「わがまま」という言葉

授業づくり

1年生の道徳の定番教材、「かぼちゃのつる」。かぼちゃが、どんどんつるを伸ばしていく。みつばちやちょうちょ、すいか、こいぬに「そっちに伸ばしちゃだめだよ」と言われても、聞かずに道の方まで伸ばしていく。そして、トラックにつるをひかれて、切られて、泣く。

この教材、内容項目は「節度,節制」。低学年の内容は、今の学習指導要領ではこう書かれています。

健康や安全に気を付け、物や金銭を大切にし、身の回りを整え、わがままをしないで、規則正しい生活をすること。

そう、「わがままをしないで」。実は審議まとめに、この言葉についての記述があります。

審議まとめが書いていること

審議まとめは、道徳の内容項目について、四つの視点や内容項目の枠組み全体は維持しつつ、個別に必要な見直しを行う、としています。その一つが[節度,節制]です。

[節度,節制]について、「わがままをしないで、規則正しい生活をすること(小学校低学年)」とされているが、「わがまま」について、子供の主体性を過度に否定あるいは抑制するニュアンスで捉えられている場合があるとの指摘がある。

そして、解説において、低学年の「わがままをしない」は、あくまで「A 主として自分自身に関わること」の内容項目として「規則正しい生活をする」ことに関わる文言であり、中学年の「節度ある生活」につながっていくものであること、そして子供の主体性を抑制する趣旨のものではないことを明確化することが適当だ、としています。

ほかにも、[家族愛,家庭生活の充実]の「父母、祖父母」を「父母、祖父母等の家族」とするなど、家族の様々な実態に配慮した見直しも示されています。

「かぼちゃのつる」を、どう読んできたか

正直に言うと、私はこの教材を、こんなふうに授業したことがあります。

「かぼちゃは、みんなの言うことを聞かなかったから、つるを切られちゃったね。みんなは、人の言うことを聞けているかな?」

…これ、審議まとめが心配しているまさにその授業ですよね。「わがまま=人の言うことを聞かないこと」、そして「言うことを聞きなさい」というメッセージ。1年生の子どもは素直なので、「言うことを聞きます」と書きます。でも、それは道徳の授業として、どうなんだろう。

「自分自身に関わること」として読み直す

審議まとめは、この内容項目が「A 主として自分自身に関わること」だと確認しています。「B 主として人との関わりに関すること」ではない。

つまり、テーマは「人の言うことを聞くこと」ではなく、自分で自分の生活を整えること、です。

そう考えると、「かぼちゃのつる」の読み方が変わります。

かぼちゃは、つるを伸ばしたかった。それ自体は、悪いことではありません。かぼちゃにとって、伸びることは生きることです。問題は、伸ばし方でした。自分の畑からはみ出して、道に出て、危ないところまで伸ばしてしまった。

だから、問いも変わります。

問い1:「かぼちゃは、どうしてつるを伸ばしたかったんだろう?」

「もっと大きくなりたかった」「お日さまの方に行きたかった」。子どもは、かぼちゃの気持ちに寄り添って答えます。伸ばしたい気持ちは、誰にでもある。それを最初に認めます。

問い2:「かぼちゃは、どこで止めればよかったんだろう?」

「すいかの畑に入る前」「道に出る前」。ここで、自分で止めるということが出てきます。誰かに止められるのではなく、自分で「ここまで」と決める。

問い3:「みんなが『もうちょっと』って思うのは、どんなとき?」

最後に自分に引きつけます。「ゲームをもうちょっとやりたい」「もうちょっと寝ていたい」「もうちょっと遊びたい」。

1年生は、ここで生き生きと話します。そして、「でも、そうすると、どうなる?」と聞くと、「夜ふかしして、朝起きられない」「宿題ができない」。規則正しい生活の話に、自然につながっていきます。

「主体性を抑制しない」ということ

審議まとめの「子供の主体性を抑制する趣旨のものではない」という一文は、道徳の授業全体に関わる大事な指摘だと思っています。

「わがままをしない」が「やりたいことを我慢しなさい」になると、子どもは「やりたいと思うこと自体がよくない」と受け取ってしまうかもしれません。それは違う。やりたい気持ちは大事にしていい。その上で、自分の生活を自分で整える。

以前の連載で、学びに向かう力の「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」の話を書きました。審議まとめ全体が、子どもの「やってみたい」を大事にする方向で書かれています。道徳の内容項目の言葉の見直しも、その流れの中にあるのだと思います。

1時間の授業の流れ

「自分自身に関わること」として読み直した「かぼちゃのつる」の1時間(45分)の流れを、目安として書いておきます。

時間 学習活動 主な発問
5分 導入:かぼちゃの絵を見て、知っていることを話す 「かぼちゃって、どうやって大きくなるか知ってる?」
10分 教材を読む(先生の範読、ペープサートなど) —
8分 かぼちゃの気持ちを考える 問い1「かぼちゃは、どうしてつるを伸ばしたかったんだろう?」
10分 止めどころを考える 問い2「かぼちゃは、どこで止めればよかったんだろう?」
8分 自分に引きつける 問い3「みんなが『もうちょっと』って思うのは、どんなとき?」
4分 ふり返り 「今日のお話で、思ったこと」を書く・話す

1年生の道徳は、集中できる時間が短いので、一つの問いに長くかけすぎないことが大事です。ペープサートや絵を使って、かぼちゃが伸びていく様子を目で見せると、1年生でもお話の流れをつかみやすくなります。

導入の工夫

導入では、かぼちゃが実際につるを伸ばして育つことを、写真や実物で見せるのがおすすめです。生活科で植物を育てている時期なら、「あさがおも、つるが伸びるよね」と、自分たちが育てている植物とつなげることもできます(連載#20)。

「かぼちゃは、つるを伸ばして、大きな実をつけるんだよ」。つるが伸びることは、かぼちゃが元気に育っている証拠です。この導入があると、問い1の「どうしてつるを伸ばしたかった?」で、子どもは「伸びるのは悪いことじゃない」と自然に受け止められます。

問いごとの予想される子どもの声

問い1「かぼちゃは、どうしてつるを伸ばしたかったんだろう?」

  • 「もっと大きくなりたかった」
  • 「お日さまの方に行きたかった」
  • 「広いところに行きたかった」
  • 「みんなに見てほしかった」

どの答えも、かぼちゃの気持ちとして受け止めます。「そうだよね、伸びたい気持ち、分かるよね」と、先生が共感を示します。

問い2「かぼちゃは、どこで止めればよかったんだろう?」

  • 「みつばちに言われたとき」
  • 「すいかの畑に入る前」
  • 「道に出る前」
  • 「でも、伸ばしたかったんだから、止められないよ」

最後の「止められない」という声は、とても正直な声です。「止めたいけど、止められないこと、みんなにもある?」と聞くと、問い3につながります。止められない気持ちを否定せず、「じゃあ、どうしたら止められるかな」と一緒に考えます。

問い3「みんなが『もうちょっと』って思うのは、どんなとき?」

  • 「ゲームをもうちょっとやりたい」
  • 「テレビをもうちょっと見たい」
  • 「朝、もうちょっと寝ていたい」
  • 「公園で、もうちょっと遊びたい」

ここでは、子どもが話したいだけ話してもらいます。そして、いくつか出てきたところで、「もうちょっとを続けたら、どうなる?」と聞きます。「夜ふかしになる」「朝ごはんが食べられない」「宿題ができない」。そのあとに、「じゃあ、どうしたら、ちょうどよく止められる?」と聞きます。「時計を見る」「お母さんと約束する」「タイマーをかける」。

最後の「どうしたら止められる?」の答えは、子ども自身が考えた「自分で生活を整える方法」です。審議まとめのいう「規則正しい生活をする」は、誰かに言われて守ることではなく、こういう自分なりの工夫の積み重ねだと思っています。

板書のイメージ

板書は、黒板の左から右へ、かぼちゃのつるを一本、長くかいていきます。つるの途中に、みつばち、ちょうちょ、すいか、こいぬの絵を貼り、それぞれの場面での言葉を書きます。

問い2では、子どもが「ここで止めればよかった」と思うところに、つるの上で「ストップ」のマークを貼ってもらいます。マークの位置は、子どもによってちがいます。「ちがっていいんだよ。自分で、ここまでって決めることが大事なんだね」。

問い3では、黒板の下の方に、子どもの「もうちょっと」を書き、その横に「どうしたら止められる?」の答えを書いていきます。黒板全体を見ると、かぼちゃのお話と、自分たちの生活が、上下に並んでつながって見えます。

ペープサートの使い方

1年生の道徳では、ペープサート(紙人形)を使うと、お話の場面がぐっと分かりやすくなります。かぼちゃ、みつばち、ちょうちょ、すいか、こいぬ、トラックの絵を、割りばしに貼っておきます。

範読のときに、先生がペープサートを動かしながら読むだけでも十分です。さらに、問い2のあとに、子どもにかぼちゃのペープサートを持たせて、「どこで止める?」を実際に動かしてもらう方法もあります。自分の手でかぼちゃを止めることで、「自分で止める」ことが、体の感覚として分かります。

【配慮:ペープサートで役を演じさせるとき、注意する側の役(みつばちなど)が、責める言い方にならないように声をかける】

「わがまま」という言葉の扱い

審議まとめの指摘を受けて、授業の中で「わがまま」という言葉を使うかどうか、迷う先生もいると思います。私は、授業の中では、できるだけ「わがまま」という言葉を使わないようにしています。

1年生にとって「わがまま」は、「悪いこと」「怒られること」と強く結びついている言葉です。この言葉を使うと、子どもは「自分は悪い子だった」という方向に考えてしまいがちです。

そのかわりに使うのが、「ちょうどいい」という言葉です。「つるを伸ばすのは、いいこと。でも、ちょうどいいところで止める」「ゲームをするのは、楽しいこと。でも、ちょうどいい時間で止める」。「ちょうどいい」は、中学年の「節度ある生活」にもつながっていく言葉です。

家庭との連携

道徳の授業で考えたことを、家庭でも話題にしてもらうと、子どもの中で学びが深まります。学級通信で、こんなふうに伝えてみてください。

「道徳の時間に、『かぼちゃのつる』というお話を読みました。子どもたちは、『もうちょっと』と思うのはどんなときかを話し合い、『タイマーをかける』『時計を見る』など、自分で止める工夫を考えました。おうちでも、お子さんがどんな工夫を考えたか、聞いてみてください。」

【配慮:家庭の生活リズムは様々。学級通信で「早く寝させてください」など、家庭の生活を一つの形に決めつける書き方は避ける】

見取りの観点

道徳は数値による評価ではなく、子どもの成長の様子を文章で記録します。この授業では、次のような姿を見取りたいところです。

  • かぼちゃの「伸びたい」気持ちに共感しながら、どこで止めればよかったかを考えている
  • 自分の生活の中の「もうちょっと」を思い出し、どうすれば止められるかを考えている
  • 友達の考えを聞いて、自分とはちがう止め方があることに気づいている

一時間の授業だけで見取るのではなく、学期や一年を通して、子どもの考えの変化を見ていくのが道徳の評価です。この授業で「タイマーをかける」と書いた子が、学期の終わりに「自分で時計を見て、遊びをやめられるようになった」と書いたら、それは大切な成長の記録です。

よくある質問

Q. 「かぼちゃは悪い子」という意見が出たら、どうしますか?

1年生からは、こういう意見もよく出ます。否定せずに、「どうしてそう思った?」と聞きます。「言うことを聞かなかったから」。そこで、「かぼちゃは、どんな気持ちでつるを伸ばしていたんだろう?」と、かぼちゃの気持ちに戻ります。悪い子かどうかではなく、どうすればよかったかを考える方向に、少しずつ導いていきます。

Q. 教科書の発問と、この記事の問いがちがいます。

教科書の発問を使ってかまいません。教科書の発問に、問い2の「どこで止めればよかった?」を一つ足すだけでも、自分自身に関わることとして考えやすくなります。教科書の指導書の展開を基本にしながら、学級の実態に合わせて、問いを一つ変えてみる。それくらいの調整で十分だと思います。

Q. 1年生の道徳で、ノートに書かせるのは難しいです。

1年生の前半なら、書くのは一言だけ、または絵で表してもいいことにします。表情のマーク(にこにこ、しょんぼり、など)を選ばせる方法もあります。話すことが得意な子には、先生が聞き取って記録するのでもかまいません。

Q. 授業のあと、子どもの生活は変わりますか?

一回の授業で、すぐに生活が変わることはあまりありません。でも、「タイマーをかける」と書いた子が、休み時間の終わりに時計を見るようになった、ということはあります。そういう小さな変化に気づいたら、「かぼちゃのお話のこと、覚えてたんだね」と声をかけてあげてください。

やりたい気持ちを大事にしながら、自分で「ちょうどいい」を見つけていく。1年生の道徳は、その最初の一歩です。

小さな一歩を、ぜひ見つけてあげてください。

まとめ

  • 審議まとめは、低学年の[節度,節制]の「わがまま」が、子どもの主体性を過度に否定するニュアンスで捉えられる場合があるとして、解説で趣旨を明確化する方向を示している
  • 「かぼちゃのつる」は、「人の言うことを聞く」話ではなく、「自分で自分の生活を整える」話として読み直せる
  • 「どうして伸ばしたかった?」「どこで止めればよかった?」「みんなの『もうちょっと』は?」の3つの問いで、伸びたい気持ちを認めながら規則正しい生活につなげる

かぼちゃが泣いている挿絵を見て、「かわいそう」と言う1年生。その「かわいそう」を、「だから言うことを聞きなさい」で終わらせない。それだけで、授業はずいぶん変わると思っています。

次回は、6年生の道徳「ブランコ乗りとピエロ」で、一つの教材を複数の時間で扱う授業を考えます。

参考

  • 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「道徳教育」p.306 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第3章 特別の教科 道徳 第1学年及び第2学年 A[節度,節制]
  • 関連記事:「粘り強さ」と「自己調整」だけじゃなかった 学びに向かう力は4つの要素に整理される(連載「次期学習指導要領を読む」)

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