#24 外国語は「自分の意見」と「身近な地域」を発信する活動へ AI翻訳の時代に、小学校の英語で育てたいもの

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第24回です。審議まとめは、AIで手軽に高精度の翻訳ができる時代を前提に、「外国語を学ぶ本質的な意義」を問い直すところから、外国語の改善を始めています。そのうえで、小学校の外国語に関わる主な方向性は、次のとおりです。

  • 自分のこと、日本のことに加えて、「自分の意見」を言えるよう話題や活動を充実させ、「自分の住んでいる地域」に関する話題や活動を明確に位置付ける
  • 「言語活動」を、「コミュニケーション活動」と「コミュニケーション活動を支える活動」に整理し直す
  • 外国語活動(3・4年)から外国語科(5・6年)、そして中学校へ、話題や活動を段階的に高めて、学年段階の目安とともに示す
  • 発達の段階に応じたAIの適切な活用を、学習指導要領に明示的に位置付ける

「翻訳アプリがあるのに、どうして英語を勉強するの?」。子どもにそう聞かれたら、少し答えに詰まってしまいますよね。そんな声が聞こえてきそうな時代に、小学校の英語で何を大切にすればよいのか。審議まとめを手がかりに考えてみます。


小学校の英語の「成果」と「課題」

音声に慣れ親しんできた成果

まず、審議まとめは、今の小学校の外国語の成果をきちんと書いています。

今の学習指導要領では、3・4年で「外国語活動」を導入し、音声を中心に外国語に慣れ親しみ、学習への動機付けを高めたうえで、5・6年で段階的に「読むこと」「書くこと」を加える「外国語科」を導入しました。令和4年度の学習指導要領実施状況調査では、4技能すべてで相当数の子どもが通過した問題が多く、外国語活動から音声に慣れ親しんできた積み重ねの成果が表れている、とされています。

小学生への質問調査では、全学年で8割以上の子どもが英語を学ぶ意欲が高く、中学生への調査では「小学校での英語の授業が役に立った」と答える割合が、前回改訂前より上がっているそうです。

これは、外国語の授業に試行錯誤しながら取り組んできた小学校の先生たちの、一つの成果だと思います。

「読むこと」「書くこと」の難しさ

一方で、課題も挙げられています。一文を書き写す問題の正答率に学校間で差があるなど、「書くこと」に課題が見られること。そして、「読むこと」「書くこと」について、子どもが「興味・関心をもちにくい」「理解しにくい」と答えた教師が多く、教師が指導に難しさを感じていることです。

図1:小学校外国語活動と外国語の接続
図1:小学校外国語活動と外国語の接続。「書くこと」の正答率や、英語を学ぶ意欲が学年とともに下がる傾向など、現状の課題と改善のイメージです(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.854[資料2-2 外⑰])

5・6年の外国語を担当したことがある方なら、思い当たるのではないでしょうか。歌やゲーム、やり取りの活動は子どもも楽しそうに取り組むのに、4線に単語や文を書き写す時間になると、教室の空気が少し重くなる。音声で慣れ親しんだ表現を「読む」「書く」につなげることの難しさは、5・6年を担任するたびに感じてきました。

「英語が好き」が減っている

もう一つ、審議まとめは、英語が「好き」な子どもや、将来英語を使いたいと考える生徒の割合が減るなど、英語を学ぶ動機が弱まっているという指摘も紹介しています。AI翻訳が身近になったことも、その背景の一つかもしれません。


AI時代に、外国語を学ぶ意味

図2:AI時代に外国語を必修とする「本質的意義」の再整理
図2:AI時代に外国語を必修とする「本質的意義」の再整理。「言葉・文化・コミュニケーションへの深い理解」と「自分の考えの形成と人間関係の豊かさ」の二つの観点で整理されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.851[資料2-2 外⑭])

二つの観点から再定義

では、AI翻訳がある時代に、外国語を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。審議まとめは、AIに代替されるべきではない、人間が大切にすべき資質・能力の育成という観点から、外国語を学ぶ本質的な意義を、次の二つの観点で整理しています。

  • 言葉、文化、コミュニケーションへの深い理解を育むこと:異なる言語・文化への理解や、母語や自国の文化を見つめ直す(メタ認知する)ことなど
  • 自分の考えが磨かれて思考が深まるとともに、人間関係が豊かになること:外国語を介して多様な価値観を理解することで、自分の考えや意見の形成・整理が進み、多様な他者と直接意思疎通できるようになることなど

「翻訳ができればいい」のではなく、外国語を学ぶ過程そのものが、自分の言葉や文化を見つめ直し、自分の考えを磨き、人とつながる経験になる。この整理に、私は大きくうなずきました。

見方・考え方も新しく

外国語の「見方・考え方」も、この本質的な意義を踏まえて、次のように示す方向です。

外国語及び外国語によるコミュニケーションを、文化の違いや社会及び相手との関わりに着目して捉え、多様な他者の考えを受け止めるとともに、表現等を工夫して自分の考えを伝え、相互理解を図ること

「表現等を工夫して」には、人間ならではのノンバーバル・コミュニケーション(身振りや表情など)も含まれる、と説明されています。完璧な英語でなくても、表情やジェスチャーを交えて、なんとか伝えようとする。小学校の外国語の授業でよく見るあの姿が、見方・考え方の中にきちんと位置付けられたように感じました。


「自分の意見」と「身近な地域」

伝えたいことがあるから、言葉を使う

今回の改善の中心にあるのが、発信力の強化です。審議まとめは、外国語を学ぶ動機付けや発信力を高める観点から、子どもが外国語を使って伝えたいことや、やってみたいことのイメージを持ち、自分のことや自分の意見、住んでいる地域や国のことについて伝え合ったり、外国語を介して多様な主張や価値観に触れたりすることが重要だ、としています。

そして、話題や活動について、次のように見直す方向が示されています。

  • AIや学校内外での交流機会を活用しつつ、自分が伝えたいことを伝える活動を強化する
  • 自分のこと、日本のことに加え、自分の意見を言えるよう話題や活動の充実を図るとともに、自分の住んでいる地域に関する話題や活動を明確に位置付ける

小学校でできる「意見」と「地域」

小学校の外国語で「自分の意見」と言われると、ハードルが高そうに感じますよね。でも、たとえば次のような活動なら、今の子どもたちにもできそうです。

  • 「I like 〜. It’s 〜.」の表現を使って、自分の好きな地域の場所と、その理由を伝える
  • 「〜 is good for our town.」のように、地域にあったらいいと思うものを、簡単な英語で提案する
  • 地域の行事や食べ物を、外国から来た人に紹介するつもりで、写真を使って伝える

理由を一言添える。それだけで、「好き」は「意見」に変わります。第18回で国語について書いた「理由と根拠で意見を育てる」という方向性は、外国語でも共通しているのだと思います。

地域の材は、外国語でも生きる

「住んでいる地域に関する話題」が明確に位置付けられることは、総合や社会で地域の学習に取り組んでいる先生にとって、うれしい方向ではないでしょうか。総合で調べた地域のことを、外国語で紹介してみる。教科等を横断して、地域の材を生かす機会が広がりそうです。


「言語活動」から「コミュニケーション活動」へ

二つの活動に整理する

審議まとめは、外国語の「言語活動」について、解釈にばらつきがあることや、知識・技能を育てる活動の位置付けが分かりにくいことを課題として挙げています。

そこで、資質・能力の育成に必要な学習過程を、次の二つに整理し直す方向です。

  • コミュニケーション活動:主に「思考力・判断力・表現力等」を育てる活動
  • コミュニケーション活動を支える活動:主に「知識・技能」を育てる活動

そして、この二つの活動を行き来しながら、知識・技能と思考力・判断力・表現力等を一体的に育てる指導のあり方を示すとしています。

「練習」という言葉は使わない

「練習」という言葉を使わない、と聞くと、少し驚きますよね。審議まとめは、「練習」という言葉は使わずに必要な活動を書く、としています。「練習」という言葉から思い浮かべるイメージが人によってさまざまであること、学習指導要領の本文でこの言葉を使っている教科がごく一部であることが理由として挙げられています。

ただ、これは「練習しなくていい」という意味ではないと思います。知識・技能を育てる活動を「コミュニケーション活動を支える活動」として明確に位置付けるということは、むしろ、表現に慣れたり、語順を確かめたりする時間の大切さを、改めて認めたということではないでしょうか。

目標の書き方も変わる

資料編の目標のイメージでは、今の「言語活動を通して」という書き方が、「コミュニケーション活動及びコミュニケーション活動を支える活動などを通して」と書き換えられています。小学校の外国語活動は「コミュニケーションを図る素地となる資質・能力」、外国語科は「基礎となる資質・能力」という、今の区別は維持されています。なお、これらは「告示や解説を示すにあたり引き続き検討」とされています。


小学校と中学校をつなぐ

段階的に、繰り返し

審議まとめは、小学校の外国語活動から外国語科、小学校から中学校へと、指導内容や難易度が円滑につながるよう、話題や活動、指導事項を段階的に高めて、学年段階の目安とともに示す方向を打ち出しています。

また、新しく学んだ内容を使えるようになるには時間がかかることを踏まえ、前の学校段階で学んだものを含めて、既習事項や話題を繰り返し扱うことの重要性を示すとしています。小学校に関わる例としては、次の二つが挙げられています。

  • 外国語活動(音声での慣れ親しみ)から、外国語科(「読むこと」「書くこと」を含む)に円滑につながるよう指導すること
  • 中学校の文法指導とのつながりも踏まえ、小学校の外国語科では、日本語と英語の語順の違いなど(文構造)への気付きを促すこと

語彙や話題の見直し

中学校については、語彙や文法事項が増え、教科書が難しくなりすぎているという指摘があり、国で「基盤語彙リスト」をつくることや、指導すべき語彙数の見直しが示されています。小学校については、ヨーロッパ共通言語参照枠(CEFR)で「〜A1程度」を想定していることが示され、内容や活動例を示すときにCEFRに照らして適切な文言になるよう留意する、とされています。

小学校で学んだ表現が、中学校で繰り返し使われ、深まっていく。小学校の担任としては、中学校で何を学ぶのかを知っておくことも、これまで以上に大切になりそうです。


AIは「人間同士のコミュニケーション」のための手段

AIの活用を明示する

外国語では、AIの活用についても具体的に書かれています。AI活用が学習指導要領に位置付けられていないことが、学校現場での活用格差を生み、外国語学習の「量」や「質」の差につながることが懸念される、という問題意識からです。そこで、発達の段階に応じたAIの適切な活用を、学習指導要領に明示的に位置付けるべきだ、としています。

原則は「人間同士のコミュニケーションの充実」

ただし、その原則も明確です。

  • 自分の興味・関心に応じた例文の生成などは有効と考えられるが、AIの生成物を鵜呑みにせず、出力を吟味しながら学習につなげられるような教師の支援が重要
  • 外国語による人間同士のコミュニケーションを図る資質・能力が最終的な目標であり、AIを使った会話練習などはそのための手段である
  • 家庭学習の課題も、単純な英作文など、AI翻訳を提出すれば済むような出し方をしないよう留意する

「AIを使った会話練習は、人間同士のコミュニケーションのための手段」。この原則は、外国語に限らず、AIと学びの関係を考えるうえでも大切な視点だと思います。

国が具体例を示す

教師や子どもによる、授業内外でのAIの効果的な活用のあり方について、国が適切でない使い方を含む留意点や、動画・資料などを具体的に示し、技術の発展に合わせて更新していく方向も示されています。


外国につながる子どもの力を生かす

文化理解に関わって、多様な文化を理解すること、母語や自国の文化を見つめ直すために言語の違いなどについて理解することを充実させる方向が示されています。

あわせて、帰国した子どもや外国人の子ども、外国につながる子どもの「外国語の能力などの特性を、本人の各教科等の学習に生かすことができるよう配慮することが大切である」という考え方を、外国語の解説にも示すべきだとされています。学級に外国につながる子どもがいるとき、その子の言語や文化の経験は、学級全体にとっての学びの資源になりえます(第33回で詳しく書きます)。


私が今から試してみたいこと

1. 単元のゴールに「理由を一言」を加える

私がまず意識したいのは、「I like 〜.」で終わらず、「Because 〜.」や「It’s 〜.」で理由を一言添えることです。今の教科書の単元でも、ゴールの活動に少し加えるだけで、「自分の意見」を伝える経験になります。

2. 地域の話題を一つ取り入れる

総合や社会で学んだ地域の場所や行事を、外国語の単元で紹介する活動を一つ取り入れてみる。伝えたい中身がある子どもは、表現を探そうとします。

3. 「伝わった!」を大切にする

完璧な英語でなくても、身振りや表情も交えて伝わった経験を、みんなで価値付ける。見方・考え方に示された「表現等を工夫して自分の考えを伝え、相互理解を図ること」は、まさにその経験の積み重ねだと思います。


気になるところもあります

一方で、気になることもあります。

「自分の意見」を外国語で言うには、それを支える語彙や表現が必要です。話題を広げすぎると、かえって子どもの負担が増えるかもしれません。審議まとめも、使用頻度の高い重要な語彙や文法を、さまざまな場面で繰り返し扱うことの大切さを書いています。話題の充実と、繰り返しによる定着。そのバランスをどうとるかが、授業づくりの鍵になりそうです。

また、AIの活用については、学校や家庭の環境によって差が出ることも心配です。AIがあれば一人でたくさん会話の練習ができる子と、そうでない子。その差を学校でどう埋めていくかも、これから考えていきたいところです。


おわりに 伝えたいことがある子どもに

AIが一瞬で翻訳してくれる時代に、それでも子どもたちが外国語を学ぶ意味は何か。審議まとめを読んで、私なりにたどり着いた答えは、「伝えたいことがある自分」に出会うこと、でした。

自分の好きな地域の場所を、外国の人に紹介したい。自分の考えを、自分の言葉で伝えてみたい。そう思ったとき、子どもは辞書を引き、表現を探し、身振りも交えて伝えようとします。その経験の中で、自分の言葉や文化を見つめ直し、人とつながる喜びを知る。小学校の外国語の授業が、そんな時間になっていくといいなと思います。

次回は、小学校の総合に「情報の領域」がやってくる、という話を書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

同 資料編「外国語」(目標における柱書・「知識及び技能」のイメージ)

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