#18 「相手にどう受け取られるか」まで考えて書く 理由と根拠で意見を育てる国語へ

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第18回です。意見文を書かせると、「理由は二つ書きましょう」という型どおりにはなっている。でも、読んでいて、どこか相手のことが置き去りになっている。そんな文章に出会うこと、ありますよね。

審議まとめは、国語を「言語能力育成の要」と位置付けたうえで、自分の考えや主張を、理由や根拠をもって筋道立てて示す活動を充実させる、としています。さらに、多様な他者の主張や感情を受け止め、自分の意見を豊かに形成し、「相手にどう受け取られるかを意識しながら表現する」ことを重視する国語科の改善が重要だ、と書いています。

国語の「見方・考え方」も、「多様な立場や考えを理解して、よりよく伝え合おうとすること」と端的に示す方向です。

理由と根拠をはっきりさせる「論理」と、相手の受け取り方を想像する「思いやり」。その両方を一体として育てようとしているところに、次の国語の特徴があると感じました。


なぜ「自分の意見」なのか

二つの方向性の「両輪」の中で

第1回で、審議まとめが「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」と「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」を両輪で進める、と書いていることを紹介しました。

そのうえで審議まとめは、「自分の意見や考えを根拠をもって表現する活動の充実」として、書く・話すなどの活動を通じて、知識の理解や思考を表現する「外化」によって、自分なりの意味理解を構築することを重視する、としています。そして、特に言語能力育成の要となる国語科では、自分の考えや主張を、理由や根拠をもって筋道立てて示す活動を充実させる、と書いています。

子どもたちの課題

「自分の意見を書きなさい」と言われて、鉛筆が止まってしまう子。どの学級にもいますよね。背景には、そうした子どもたちの課題もあります。第1部では、自分の意見や考えを持ち、根拠に基づいて他者に明確に説明することに依然として課題が見られる、と指摘されています。国語の項目でも、思いや考えが相手に伝わるように話や文章を構成して表現すること、対話による合意形成や相互理解を図ることなどに課題がある、とされています。

全国学力・学習状況調査で、自分の意見を書く問題の正答率に課題が見られることも、審議まとめの別の箇所で触れられています。


「論理」と「感性」を一体で

人間ならではの力

国語の改善の方向性について、審議まとめは次のように書いています。

生成AIが飛躍的に発展するとともに、社会の多様性と分断の危険性の双方が増すことが想定されるこれからの社会においては、自らの考えを言葉にし、論理的かつ説得的に表現し対話する力や、多様な他者の感性や情緒を理解するとともに、それらを通じて自らの思いや経験を効果的に表現する力、他者と協働して考えを深める力など、人間ならではの力の育成が必要である。

「論理的かつ説得的に表現し対話する力」と「多様な他者の感性や情緒を理解する力」。国語の授業では、つい「論理の時間」と「心情の時間」に分けて考えてしまいますよね。だからこそ、この二つが並べて書かれていることに意味があると思います。

思考力・判断力・表現力等の目標

国語の「思考力、判断力、表現力等」の目標についても、次の三つを、教科として一貫して育てる力として、小中高で統一して示す方向です。

  • 論理的に思考する力
  • 多様な他者の感性や情緒を理解し、豊かに想像したり表現したりする力
  • 他者との関わりの中で、互いの立場や考えを尊重しながら伝え合う力

高校でも「二項対立に陥らず」

高校の科目構成の見直しでも、論理的思考力と感性・情緒の両面について、「二項対立に陥らず、統合的かつ効果的に育成する方向」と書かれています。論理国語か文学国語か、という対立を超えようとしていることがうかがえます。小学校の私たちにとっても、論理と感性を分けずに育てることの大切さを、改めて考えさせられます。


見方・考え方の見直し

図1:国語科における教科の目標、見方・考え方(案)
図1:国語科における教科の目標、見方・考え方(案)。下の「見方・考え方」に「多様な立場や考えを理解して、よりよく伝え合おうとすること」が入っています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.518[資料2-2 国①-1])

「多様な立場や考えを理解して、よりよく伝え合おうとすること」

「言葉による見方・考え方」を、自分の言葉で説明できるかと聞かれると、正直、自信がありません。同じように感じている方も多いのではないでしょうか。国語の「見方・考え方」は、見直される方向です。今の「言葉による見方・考え方」は、「対象と言葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉えたり問い直したりして、言葉への自覚を高めること」とされています。

審議まとめは、この趣旨を踏まえつつ、より端的に伝わるよう、次の三つの要素で示し方を見直す、としています。

  1. 教科で扱う事象や対象:「様々な事象を表す自他の言葉を」
  2. 教科固有の物事を捉える視点:「その意味や働き、使い方」
  3. 教科固有の考え方や判断の仕方:「多様な立場や考えを理解して、よりよく伝え合おうとすること」

背景にある「分断」への危機感

3つ目について、審議まとめは、グローバル化や内なる国際化が進み、アルゴリズムによるネット上での社会の分断の危険性も指摘される中で、異なる価値観を持った人々と協働して課題を解決していくには、多様な立場や考えを理解し、言葉への自覚を高めて、相手や状況、目的に応じて言葉を丁寧に選びながら、よりよく伝え合うことが重要だ、と説明しています。

「言葉を丁寧に選びながら」。この一言に、国語の授業で本当に育てたいことが詰まっているように感じました。


「相手にどう受け取られるか」を意識して書く

図2:教育課程全体で育む「言語能力」が働くイメージ
図2:教育課程全体で育む「言語能力」が働くイメージ。図のいちばん下に「相手にどう受け取られるかを想像しつつ」という言葉があります(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.445[資料1-3-13])

正しいだけでは伝わらない

意見文の指導では、「主張を一つに絞る」「理由を二つ以上書く」「根拠となる事実を示す」といった、論理の型を教えることが多いですよね。私もそうしています。型には、たしかに大きな意味があります。

でも、どんなに論理が整っていても、相手の立場や気持ちを考えない言葉は、相手に届きません。むしろ反発を招くこともあります。審議まとめが「相手にどう受け取られるかを意識しながら表現する」ことを重視しているのは、この点だと思います。

授業でのアイデア

では、授業の中で何ができるのでしょうか。私が意見文の単元で加えてみたいと思っているのは、こんな活動です。

  • 書いた意見文を、自分とは反対の立場の友達に読んでもらい、「納得できたところ」「引っかかったところ」を聞く
  • 同じ主張を、「先生に向けて」「低学年の子に向けて」「地域の人に向けて」と、相手を変えて書き分けてみる
  • 「この言葉を読んだ人は、どんな気持ちになるかな」と、言葉の選び方を話し合う

理由や根拠をはっきりさせることと、相手の受け取り方を想像することを、同じ単元の中で行き来させる。それが、「論理」と「感性」を一体で育てることにつながると思います。


「話や文章の機能」との関係

第16回で紹介した「話や文章の機能」のうち、意見を育てる学習に特に関わるのが「考えや主張の理由付けと吟味」です。考えや主張を、理由や根拠と結び付けて筋道立てて示すことを通して、判断や納得を促し、必要に応じて考えや行動に働きかける機能、と説明されています。

「判断や納得を促し」「考えや行動に働きかける」。つまり、この機能は、相手がいることが前提になっています。自分の意見を書くことは、誰かに納得してもらい、行動を変えてもらうための言葉をつくることでもある。そう考えると、「相手にどう受け取られるか」を意識することは、この機能の中心にあるのだと分かります。

審議まとめは、「書くこと」の領域で「考えや主張の理由付けと吟味」に位置付ける事項として、「意見を述べる文章」という文章の種類と、主張を明確にする、根拠を検討する、論理の展開を考える、表現を工夫するなどの要素を一体的に整理し、一括りの事項として示す、という例も挙げています。


語彙と読書が、意見の土台

語感を磨き、語彙を豊かにする

「言いたいことはあるのに、うまく言葉にならない」。子どもの様子を見ていて、そう感じることもありますよね。自分の意見を適切な言葉で表すには、語彙が欠かせません。審議まとめは、生成AIが発展する中、人間ならではの実感を伴った理解や思考、表現を支える語感を磨き、語彙を豊かにするための学習として、次の二つが相互に深まるようにする、としています。

  • 文脈の中で語句を「使い」ながら、主に語感を磨く学習
  • 語句の意味や、語句同士の関係を理解しながら、主に語彙を豊かにする学習

読書で多様な考え方に触れる

読書についても、大きな課題となっている読書習慣の形成に向けて、読書を通して楽しみながら多様な考え方に触れ、自らの考えを広げたり深めたりする経験を重ねることが重要だとしています。読書へのきっかけや動機づけを高める機会の充実と、自立的な読書への移行を支える学習の充実の二つの観点から改善する方向です。司書教諭や学校司書と連携した学校図書館の機能の充実も、あわせて書かれています。

多様な考え方に触れた経験がなければ、「相手にどう受け取られるか」を想像することも難しくなります。読書は、意見を育てる国語の土台でもあるのだと思います。


「学びに向かう力」の目標も、国語らしく

国語の「学びに向かう力、人間性等」の目標についても、第5回で紹介した整理に沿って、学校種ごとに系統的に示す方向が示されています。

学びや生活に向かう態度としては、小学校では「表現や伝え合いの過程に注意を向けること」、中学校では「その過程を確かめながら捉え直すこと」、高校では「過程を吟味すること」に重点を置く、とされています。

小学校で「伝え合いの過程に注意を向ける」とは、たとえば、話し合いの途中で「今、相手は分かってくれたかな」「自分の言い方で伝わったかな」と立ち止まることだと思います。まさに「相手にどう受け取られるか」を意識する態度です。

情意・感性については、「国語を尊重する態度を養うこと」を基盤に、言語感覚の高まりや言語文化への関わり方を示す方向です。言葉を丁寧に選ぶことは、言葉そのものを大切にすることでもある。国語の目標全体が、そうした一つの方向にそろえられようとしているのだと感じました。


国語だけで育てるものではない

最後に、審議まとめは、国語の項目の中で「教科等横断的な言語能力の育成」にも触れています。言語環境の整備、国語科を要としつつ各教科の特質に応じた言語活動の充実、読書活動の充実の三つを一体的に進めることが重要だ、としています。

また、国語で育てる「読む力」と、各教科で必要な「教科書等を読み解く力」の役割分担が十分に整理されていないことも課題として挙げられ、各教科の学習の基盤となる語句(日常的な語句、教科によって意味が違う語句、教科特有の語句)に関する課題を整理していく方向が示されています。

理科で実験の結果から考察を書くこと、社会で資料を根拠に意見を述べること、学級会で理由を添えて提案すること。理由と根拠で意見を育てる学びは、国語の時間だけでなく、学校生活全体の中で積み重なっていくものだと思います。


おわりに 言葉を「丁寧に選ぶ」子どもに

SNSでは、強い言葉、短い言葉、相手を言い負かす言葉が広がりやすいと言われます。そんな時代に、理由と根拠を示しながら、相手の受け取り方を考えて、言葉を丁寧に選ぶ。それは、地味だけれど、とても大切な力です。

国語の授業で、子どもが一つの言葉を書き直す。「この言い方だと、相手が嫌な気持ちになるかもしれない」と考えて、別の言葉を探す。その小さな営みが、分断ではなく対話のある社会をつくる力につながっていく。審議まとめの国語の項目を読んで、そう信じたくなりました。

次回は、総合的な学習の時間が「総合的な探究の時間」へ、という話を書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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