教材で読む次期学習指導要領#26 6年外国語「わたしの町」紹介で、AI翻訳とどう付き合うか 身近な地域を、自分の言葉で発信する

授業づくり

6年生の外国語には、自分の町や日本のよさを紹介する単元があります。”We have a big park in our town.” “You can see beautiful cherry blossoms.” 。町のおすすめの場所や、できること、食べ物などを、ポスターやスライドにまとめて発表する。

この単元、子どもたちが端末を使うようになってから、ちょっとした変化が起きていませんか?そう、翻訳アプリです。

「先生、『この公園には、春になると桜がたくさん咲いて、家族でお花見をします』って、英語でなんて言うの?」と聞かれる前に、子どもが自分で翻訳アプリに入れてしまう。そして、6年生にはとても言えない長い英文が、スライドに貼られる。

今回は、この「AI翻訳とどう付き合うか」を、審議まとめの外国語の言葉から考えます。

審議まとめは、AIの活用を「明記」する方向

まず、審議まとめの立場を確認しておきます。

デジタル学習基盤の活用を学習指導要領に明記するとともに、その一つとして発達の段階に応じたAIの適切な活用についても明示的に位置付けるべきである。

つまり、AIを使うな、ではありません。発達の段階に応じて、適切に使う、です。

そして、話題・活動の見直しとして、

  • 子どもが外国語によるコミュニケーションに興味・関心を持ち、伝えたいことや、そのために身に付けたい力についてイメージを持てるよう、AIや学校内外での交流機会を活用しつつ、自分が伝えたいことを伝える活動を強化する
  • 「話すこと」や「書くこと」による「外化」や、多様な他者とのやり取りを中心とした発信力の強化の観点から、自分のこと、日本のことに加え、自分の意見を言えるよう、話題や活動の充実を図るとともに、自分の住んでいる地域に関する話題や活動を明確に位置付ける

とあります。

翻訳アプリの英文の問題

翻訳アプリが出してくる英文の何が問題か。英文そのものは、たいてい正しいんです。問題は、

  • 自分で言えない:発表のとき、読めない。読めても、意味が分からないまま読んでいる
  • やり取りにならない:ALTの先生に質問されても、答えられない
  • 何も残らない:単元が終わっても、自分で使える表現が増えていない

審議まとめのいう「外化」、つまり書く・話すなどの活動を通じて、頭の中で考えたことを表現すること。翻訳アプリの英文を貼るだけでは、外化になっていないんですね。

「使い方」を決めてから使う

なので、私なら、AI翻訳を禁止するのではなく、使い方のルールを決めて使わせます。

ルール1:まず、知っている英語で言ってみる

最初に、知っている表現だけで、紹介文を作ります。”We have a park. It’s big. I like it.” 。短くていい。

ルール2:言いたいけど言えない「一語」だけ調べる

次に、「本当はこれが言いたい」という一語だけ、調べていいことにします。「お花見」「神社」「商店街」。文全体ではなく、単語一つ。

調べた単語を、自分の文に入れる。”We have a big park. We enjoy hanami.” 。これなら、自分で言えます。

ルール3:AIは「確かめ役」

紹介文ができたら、AI翻訳や辞書を「確かめ役」として使います。自分の英文を日本語に訳させてみて、言いたいことになっているかを確かめる。

逆向きに使うんです。自分が書いたものを、AIにチェックしてもらう。こうすると、主役はあくまで自分の英文です。

地域を「伝えたい」にするには

地域の紹介でもう一つ大事なのは、本当に伝えたい場所を選ぶことです。

教科書の例にある「有名な観光地」でなくていい。「学校の近くの、夏祭りがある神社」「おいしいパン屋さん」「よく遊ぶ公園」。子どもにとってのお気に入りの方が、伝えたい気持ちが強い。

前回の4年生の Let’s Try! 2 “This is my favorite place.” (本連載#25)が校内のお気に入りだったとすれば、6年生は町のお気に入りです。2年生の町たんけん(本連載#24)、3年生の社会科(本連載#21)で関わった場所が、ここで英語の話題になる。そう考えると、地域の学習は、学年をこえてずっとつながっています。

「伝える相手」がいると変わる

審議まとめは、「学校内外での交流機会」の活用を挙げています。

ALTの先生に伝える。海外の学校とオンラインで交流する。地域に住む外国の方に来てもらう。本当に伝える相手がいると、子どもは「伝わるかどうか」を気にするようになります。翻訳アプリの長い英文より、自分で言える短い英文の方が伝わる、ということにも気づきます。

学校で使える交流の機会(姉妹校やオンライン交流など)があれば、ぜひ活用してみてください。

単元計画のイメージ

翻訳アプリの使い方のルールを入れて、町のおすすめを紹介する単元計画です。教科書によって時数や扱う表現がちがうので、ここでは8時間ほどの目安で書いています。

時 主な活動 ねらい
1 町や日本のよさを紹介する映像を見て、単元のゴールを知る 伝える相手と目的を知り、伝えたいことのイメージをもつ
2 町の施設や、できることの言い方を知る We have 〜. You can 〜. などの表現に慣れる
3 町のおすすめの場所を選び、日本語で紹介したいことを考える 本当に伝えたい場所と、その理由を考える
4 知っている英語だけで、紹介文を作る(ルール1) 自分の力で英文を組み立てる
5 言いたいけど言えない一語を調べ、紹介文に入れる(ルール2) 必要な語を選んで調べる
6 AIや辞書で確かめ、ペアで聞き合って直す(ルール3) 自分の英文が伝わるか確かめる
7 紹介を発表し、質問し合う やり取りしながら伝える
8 単元をふり返る 伝えるために、どんな工夫をしたか考える

第3時を、英語を使わない「日本語で考える」時間にしているのがポイントです。何を伝えたいかがはっきりしないまま英語にしようとすると、翻訳アプリに頼りたくなります。伝えたい中身がはっきりしていれば、知っている英語でどこまで言えるかを考えられます。

第1時に、伝える相手を決める

単元の最初に、伝える相手を決めておきます。相手が決まると、何を伝えるかが変わるからです。

  • ALTの先生:「先生が週末に行ってみたくなる場所を紹介しよう」
  • 海外の学校の友達:オンライン交流がある場合
  • 地域に住む外国の方:学校に来てもらえる場合
  • 来年の6年生や、ほかの学年:校内での発表

相手を決めたら、「その人は、何を知りたいと思う?」を考えます。ALTの先生なら、「おいしいお店」「休日に行ける場所」。海外の友達なら、「日本らしいもの」「学校の近くにあるもの」。相手が知りたいことを考えると、紹介する場所の選び方が変わってきます。

第3時の流れ 日本語で伝えたいことを考える

導入(5分):「町のおすすめの場所を、相手に紹介します。でも、今日は英語を使いません。まず、日本語で考えます」と伝えます。

場所を選ぶ(10分):自分のおすすめの場所を一つ選びます。2年生の町たんけん、3年生の社会科で行った場所を思い出させると、選びやすくなります。

理由を考える(15分):選んだ場所について、ワークシートに次のことを書きます。

  • どんな場所?
  • そこで、何ができる?
  • いつ行くといい?
  • どうしておすすめ?

ペアで話す(10分):日本語で、ペアの友達に紹介してみます。聞いた友達は、「もっと知りたいこと」を一つ質問します。

まとめ(5分):ペアの友達から聞かれた質問を、ワークシートにメモして終わります。この質問が、英語の紹介文に「一言足す」ときの手がかりになります。

紹介文の組み立て

第4時の「知っている英語だけで」作る紹介文は、こんな組み立てを示しておきます。

  1. 場所の紹介:”We have a big park in our town.”
  2. できること:”You can play soccer.” “You can see cherry blossoms.”
  3. 自分の気持ち:”I like it.” “It’s fun.”
  4. おすすめの一言:”Please come!”

四文くらいの短い紹介文で十分です。ここで大事なのは、全部の文を自分の力で書くことです。間違いがあってもかまいません。ルール3の「確かめ役」で、あとから直せます。

ルール2の「一語だけ調べる」の進め方

「言いたいけど言えない一語」を調べるときは、調べる道具を先生が決めておきます。

  • 辞書(紙・デジタル):一番おすすめ。調べた単語の発音や使い方も一緒に確かめられる
  • 教科書の巻末の単語リスト:教科書に載っている単語なら、まずここを探す
  • 先生やALTの先生に聞く:調べても分からないときの最後の手段
  • AI翻訳:学校のルールで使える場合のみ。単語一つだけを入れる

子どもが調べたくなる単語は、だいたいこんなものです。

  • 「神社」→ shrine
  • 「お祭り」→ festival
  • 「商店街」→ shopping street
  • 「お花見」→ hanami(日本の言葉として、そのまま使ってもいい)
  • 「温泉」→ hot spring

四つ目の「お花見」のように、英語に訳さずに、日本の言葉として紹介する方法もあります。”We enjoy hanami. Hanami is a cherry blossom party.” と、自分で説明を足すと、日本の文化を紹介することにもなります。

ルール3の「確かめ役」の進め方

自分で作った紹介文を、AI翻訳や辞書で確かめるときは、次の手順で進めます。

  1. 自分の英文を、翻訳アプリに入れて日本語にする
  2. 出てきた日本語が、自分の言いたいことと同じかを確かめる
  3. ちがっていたら、どこがちがうかを考える
  4. 直したい場合は、先生やALTの先生に相談して直す

3の「どこがちがうか考える」が大事なところです。たとえば、”I like it park.” と書いて、翻訳がおかしな日本語になったら、「it と park を両方書いたからかな?」と考える。自分で間違いに気づいて直すと、その表現は自分のものになります。

【配慮:AI翻訳や生成AIを子どもに使わせるかどうかは、学校や自治体のガイドラインに従う。使えない場合は、ルール3の「確かめ役」を、ペアの友達やALTの先生にする】

発表とやり取りの工夫

第7時の発表は、一人ずつ前に出て話すより、ポスターセッションの形にすると、やり取りが生まれやすくなります。

  1. 学級を半分に分け、前半の人がポスターの前に立つ
  2. 後半の人は、自由にポスターを回って、紹介を聞く
  3. 聞いた人は、一つ質問するか、反応の言葉を言う
  4. 時間がきたら、前半と後半を交代する

聞く側の質問の例を、カードにして配っておきます。

  • “What can you do there?”
  • “When is a good time?”
  • “Do you like it?”
  • “Is it near the school?”

質問されると、紹介する子は、ポスターに書いていないことを答える必要があります。ここで、自分の力で言える英語が多い子ほど、やり取りを楽しめます。翻訳アプリの長い英文だけでポスターを作った子は、質問に答えられなくて困ることがある。その経験が、「自分で言える英語」の大切さに気づくきっかけになります。

つまずきやすいところと手立て

  • 紹介したい場所が決められない子:2年生の町たんけんや、3年生の社会科のノートを見返させます。「町たんけんで、一番楽しかった場所は?」と聞くと、思い出せる子が多いです。
  • 英文を書くのが苦手な子:教科書の例文の一部を変えるだけでもいいことにします。”We have a big park.” の park を、自分の場所に変える。それだけで、自分の紹介文になります。
  • 翻訳アプリを使いたがる子:ルールを守って作った英文の方が、発表のときに困らないことを伝えます。「この英文、自分で読める?質問されたら答えられる?」と聞いてみると、子どもも考えます。
  • 発表で緊張する子:ポスターを指さしながら話していいことにします。原稿を見ながらでもかまいません。

評価の目安

この単元は、外国語科なので、観点別の評価をします。ここでは、「思考・判断・表現」の見取りの目安を書いておきます。

  • 十分にできている:相手が知りたいことを考えて、紹介する内容を選び、知っている表現を工夫して使って伝えている。質問にも、自分の言葉で答えようとしている
  • おおむねできている:自分の町のおすすめを、基本的な表現を使って伝えている
  • もう一歩:紹介文を作ることが、まだ難しい

翻訳アプリの英文をそのまま使った紹介は、どれだけ長くて正しくても、「自分で表現した」とは言えません。評価は、自分で考えて組み立てた英文と、その英文を使ったやり取りを中心に見るようにしています。

よくある質問

Q. 翻訳アプリの使用を、学校で禁止されています。

その場合は、ルール2の「一語だけ調べる」を辞書で行い、ルール3の「確かめ役」をペアの友達やALTの先生にします。翻訳アプリがなくても、この単元のねらいは十分に達成できます。

Q. 英語が得意な子と苦手な子の差が大きいです。

得意な子には、「ALTの先生の質問に、もう一文足して答えてみよう」と、やり取りの中で挑戦を広げます。苦手な子には、教科書の例文の一部を変える形でいいことにします。同じ単元の中で、それぞれのペースで伝える経験ができるようにしています。

Q. ポスターやスライドの見た目に、時間をかけすぎる子がいます。

ポスターの見た目は、評価に入れないことを最初に伝えておきます。写真や絵は一枚だけ、文字は自分で書いた英文だけ、と決めておくと、作る時間が短くなります。そのぶん、発表の練習や、質問に答える準備に時間を使えます。

まとめ

  • 審議まとめは、発達の段階に応じたAIの適切な活用を学習指導要領に明記する方向。一方で、自分の言葉で「外化」する発信力の強化と、地域に関する話題の位置付けを求めている
  • 6年の町紹介では、翻訳アプリの英文を貼るだけだと、言えない・やり取りにならない・何も残らない
  • 「まず知っている英語で」「言えない一語だけ調べる」「AIは確かめ役」の順番で使う。伝えたい場所と、伝える相手を用意する

AIを使うかどうか、ではなく、どう使うか。外国語の授業は、たぶん一番早くその問いに向き合う教科なんだと思います。

次回は、道徳。1年生の「かぼちゃのつる」と、審議まとめが見直しを示した「わがまま」という言葉の話です。

参考

  • 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)第2部第2章「外国語活動、外国語」p.277、p.280 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1292164_00001.htm
  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第2章第10節 外国語 第5学年及び第6学年
  • 関連記事:Let’s Try! 2「お気に入りの場所」を、本当に伝えたい場所に(本連載#25)

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