#25 小学校の総合に「情報の領域」がやってくる ミニ探究ユニットと情報ブロックで、何を学ぶのか

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第25回です。「プログラミング教育、うちの学校はどの学年で何をやっているんだっけ」。そう聞かれて、すぐに答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。

審議まとめは、小学校の「総合的な探究の時間」(今の総合的な学習の時間)に「情報の領域」を加え、総合を「探究の領域」と「情報の領域」の二つの領域で構成する方向を示しています。その主なポイントは、次のとおりです。

  • 情報活用能力を、「活用」「適切な取扱い」「特性の理解」の三つの要素で整理し、小学校では体験的な活動を重視して「活用」を中核にする
  • 学び方として、探究のプロセスの中で情報技術を使う小単元「ミニ探究ユニット」と、基礎的な内容を学ぶ小さなまとまり「情報ブロック」を組み合わせる
  • ローマ字入力のタイピングは、国語ではなく「情報の領域」を中心に学ぶ
  • 「情報技術の学習自体が総合の目的」という誤解を受けないよう、「情報の領域」は「探究の領域」や各教科の学びを支える基盤と位置付ける

第19回で総合について書いたときに少し触れましたが、今回は「情報の領域」そのものを、小学校の担任の目線でもう少し詳しく見ていきます。


なぜ小学校に「情報の領域」なのか

小学校には「情報」の居場所がなかった

今の学習指導要領では、小学校の情報活用能力については、総則で「文字入力などの基本的な操作を習得する学習活動」と「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付ける学習活動」を、各教科等の特質に応じて計画的に行うよう示しています。総合でも、コンピュータの適切な活用や文字入力などの基本的な操作の習得に配慮することを求めています。

でも、審議まとめは、小学校では教科等に明確な位置付けがなく、授業時数や指導内容の具体が示されていないため、地域や学校による差が大きい、と指摘しています。その結果、小学校で学ぶ内容と、中学校の技術・家庭科(情報の技術)との接続が適切に図られていない、というのです。

さらに、小学校ではプログラミングを教えることに苦手意識が強い教師が多い、という実態も挙げられています。

同じように感じている方も多いですよね。私もその一人です。プログラミングの授業は、算数の「正多角形」の単元で教科書どおりに一度やっただけ、という年もありました。どの学年で何を、どこまで教えればいいのか。学校の中でも共有されていなかったように思います。

メディアリテラシーにも学校差

また、学校種を通じて、AIなどの先端技術に関わる内容が明確に位置付けられておらず、メディアリテラシーや情報モラルの育成についても、学校間の取組に大きな差がある、とも指摘されています。

「小学校で、情報の学びにきちんとした居場所をつくる」。それが、今回「情報の領域」を加える一番の理由なのだと受け取りました。


情報活用能力の三つの要素

「活用」「適切な取扱い」「特性の理解」

「情報活用能力」と一口に言っても、中身が広すぎて、何から手をつければいいのか迷いますよね。審議まとめは、情報活用能力を次の三つの要素で整理し、どの学校種でもバランスよく育てるべきだとしています。

要素審議まとめの説明
活用情報技術を活用して探究的に課題を解決し、新たな価値を創造することができる力
適切な取扱い情報技術のリスクを適切に判断し、ルールやマナーを守るとともに、他者や社会への責任を考えて行動できる力
特性の理解情報技術の科学的な特性を理解し、課題の解決策を構想・表現できる力

このうち「活用」が中核で、「適切な取扱い」と「特性の理解」は、「活用」する力を発揮するための要素だと整理されています。

小学校は「活用」を中核に、体験的に

小学校は、初めて探究的な学びや情報技術の活用に取り組む段階なので、体験的な活動を重視し、「活用」を中核としながら、「適切な取扱い」と「特性の理解」とあわせて育てることが適切だ、とされています。中学校以降は、小学校で育てた力を基盤に、「適切な取扱い」や「特性の理解」を専門的・体系的に高めていく、という役割分担です。


「情報の領域」で学ぶ内容

三つの内容項目と、内容のまとまり

「情報の領域」では、上の三つの要素をそのまま内容項目として整理する方向です。それぞれの内容のまとまりは、次のように示されています。

図1:内容のまとまり間の関係(総合 情報の領域)
図1:内容のまとまり間の関係(総合 情報の領域)。「情報技術の活用」「情報技術の適切な取扱い」「情報技術の特性の理解」の三つの内容項目と、その関係を示した図です(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.780[資料2-2 情技㉙])
  • 活用:「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という探究のプロセスに対応したまとまりと、各種の学習活動の基盤となる「基本的な操作」
  • 適切な取扱い:情報モラル、情報セキュリティ、個人情報・著作権、メディアリテラシー、AIの適切な利用などを、「法や制度」「倫理」「安全・メディア理解」の三つのまとまりで
  • 特性の理解:「情報及びコンピュータ」「AI」「アルゴリズム・プログラミング」「デザイン」「データの扱い」「コミュニケーションやメディア」「社会的役割」の七つのまとまり

3年生から6年生までを通じて、系統的に指導できる内容の体系として整理することが重要だ、とされています。

学年を追って発展する例

審議まとめには、「適切な取扱い」の「安全・メディア理解」のうち、「受け取る情報の特徴」について、学年ごとの発展の例が載っています。

  • 3年生:情報の特徴や、偽・誤情報について理解する
  • 4年生:情報を発信・再構成する体験を通して、AIの出力を含め、情報を鵜呑みにしない姿勢を育む
  • 5・6年生:メディアやSNSの特性、エコーチェンバーやフィルターバブルも踏まえ、多角的に情報を判断・活用する力へと発展させる

4年生で、自分で情報を発信・再構成する体験をしてみることで、「情報はつくられたものだ」と実感する。だからこそ、AIの出力も含めて鵜呑みにしない姿勢が育つ。体験から理解へ、という小学校らしい流れだと感じました。


「ミニ探究ユニット」と「情報ブロック」

図2:小学校総合 情報の領域 配置イメージ例(通年で情報の領域に取り組む場合)
図2:小学校総合 情報の領域 配置イメージ例(通年で情報の領域に取り組む場合)。水色が「情報ブロック」、ピンクが「ミニ探究ユニット」です。3年生から6年生までの配置の例が示されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.786[資料2-2 情技㉜])

二つの学び方を組み合わせる

では、実際の授業はどんな形になるのでしょうか。「情報の領域」の学び方として示されているのが、次の二つです。

  • ミニ探究ユニット:一定のまとまりをもち、探究的な学びのプロセスの中で情報活用能力の要素を学びつつ、実際の課題解決などに活用する小単元
  • 情報ブロック:探究のプロセスに位置付けることが難しい、情報に関する基礎的な内容を学ぶ小さなまとまり

ミニ探究ユニットを通して、子どもは、探究のプロセスで情報技術を使う意義や効果を実感し、自分で情報技術を活用して探究を進める経験を積む。その経験を土台に、中学校・高校で探究をさらに深めていく、というねらいです。

ミニ探究ユニットの例

ミニ探究ユニットの具体的な活動の例として、審議まとめは次の三つを挙げています。

図3:「ミニ探究ユニット」のイメージ(ミニ探究ユニット例❹)
図3:「ミニ探究ユニット」のイメージ(ミニ探究ユニット例❹)。4年生「デジタル技術の正と負の側面を踏まえたマイルールをつくろう」の学習活動のイメージです(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.951[資料2-2 総㉒])
  • デジタル技術の正と負の側面を踏まえた「マイルール」をつくる
  • プログラムを通じてオリジナルロボットを動かす
  • 生成AIの特性やリスクを踏まえた作品制作を行う

どれも、子どもが自分ごととして取り組めそうな活動です。特に「マイルール」づくりは、学級の実態から始められそうだと思いました。「タブレットを使っていて、困ったことや心配なことは?」という問いから、使い方のルールを自分たちで考え、実際に試し、見直していく。それ自体が、小さな探究になります。

情報ブロックも「文脈」を意識して

情報ブロックについては、「適切な取扱い」「特性の理解」を中心に、探究のプロセスに位置付けることが難しいものを、中学校以降との接続や着実な育成に留意しながら設計する、とされています。ただし、その場合も、探究的な学習の過程のどこで役立つのかを明示するなど、文脈を意識して学べるようにする、とも書かれています。

「何のためにこれを学ぶのか」が分かるように。単発のスキル練習にしない、ということだと思います。


タイピングは「情報の領域」へ

小学校の担任として、地味に気になるのがローマ字入力のタイピングですよね。

審議まとめは、ローマ字の学習は今までどおり国語で3年生に行いつつ、ローマ字入力によるタイピングは「情報の領域」を中心に学ぶ、としています。こうした学習を通じて、子どものローマ字の習熟がさらに進むことも見込まれる、とも書かれています。

審議まとめの別の箇所でも、国語の内容の精選の例として「小3タイピングは情報へ移行」と書かれています。3年生のローマ字の学習と関わって扱ってきたタイピングが、情報の領域に移る、というイメージです。今は学校によって、朝の時間や休み時間にタイピング練習をしているところもあると思います。それが、きちんと授業として位置付けられることになりそうです。


低学年では「慣れ親しむ」

「情報の領域」は3年生からですが、低学年についても方向性が示されています。

低学年では、デジタルに体験的に慣れ親しむことを重視し、各教科等の学習を通じて情報活用能力の基礎を育てる。具体的には、コンピュータでの文字入力や、写真・動画の撮影、録音などの体験を通じて、基礎的な技能を身に付ける、とされています。

あわせて、ID・パスワードを適切に管理すること、正しい姿勢で端末を使うこと、許可なく他の人の写真や動画を撮影しないことなどを、各教科等の体験的な活動の中で学ぶことで、3年生からの「情報の領域」に円滑につなげていく、という考え方です。

生活科で、育てている野菜の写真を撮る。そのときに「お友達を撮るときは、先に聞こうね」と声をかける。低学年のそうした日常の指導が、情報の領域の土台になっていくのだと思います。


年間計画は「1学期に集中」も

指導計画の工夫の例として、たとえば1学期に「情報の領域」を集中的に配置する、という考え方が示されています。そのよさとして、次のような点が挙げられています。

  • 情報の領域で育てた力を土台に、探究の領域を支えることがより明確になる
  • ミニ探究ユニットで探究のプロセスを自覚的に学んだ経験を土台に、探究の領域をより充実させられる
  • 年度初めの集中的な学習を土台に、各教科等で端末を効果的に使えるようになる

一方で、季節を生かした地域学習をしている学年もあるなど、学校の実態に応じて柔軟に工夫できることを前提に、国が多様な工夫の参考例を示すことが適当だ、とされています。


教師の負担はどうなるのか

国が授業動画や教材をつくる

そして、やはり気になるのは指導の負担ですよね。特に「プログラミングに苦手意識がある」という方にとっては、切実な問題だと思います。

審議まとめは、各学校で過度な負担なく授業ができるよう、国が先頭に立って、教師が授業でそのまま使える授業動画を含めた教材を開発している、と書いています。技術の進展で内容が古くならないよう、少なくとも年に1回程度、ミニ探究ユニットや情報ブロックの単位でアップデートする前提です。教員研修についても、改訂を待たずに計画的に準備を進める必要がある、とされています。

授業時数はこれから

なお、「情報の領域」の創設に伴って授業時数がどのくらい増えるかについては、各学習内容と育てる資質・能力との関係を整理したうえで、必要な授業時数の目安を示していく、とされています。現時点では、具体的な時数は決まっていません。


私が今から試してみたいこと

1. 学校の中の「情報の学び」を棚卸しする

今、どの学年で、プログラミングや情報モラル、タイピングを、どのくらい扱っているか。学校全体で一度整理してみると、学年による差や抜けが見えてきます。情報の領域が始まる前の準備として、意味のある作業だと思います。

2. 「マイルール」づくりを試してみる

学級でのタブレットの使い方について、子どもたちと一緒にルールを考え、実際に試し、見直してみる。ミニ探究ユニットの先取りとして、今の総合や学級活動の中でもできる取組です。

3. 調べ学習で「どこから来た情報?」を習慣に

調べ学習のたびに、「この情報は誰が、いつ発信したもの?」「AIの答えなら、もとの情報は何?」と問いかける。審議まとめが総合のAIの扱いで書いている「一次情報(発信者、発信時期、妥当性)を検証する」という姿勢を、日常の中で少しずつ育てていけたらと思っています。


気になるところもあります

一方で、不安もあります。

一つは、時数です。総合の中に情報の領域が加わると、今まで地域の材と向き合ってきた探究の時間が減ってしまうのではないか。審議まとめも、標準授業時数が増える場合の検討が必要だとしていますが、具体的な時数はまだ示されていません。探究の時間が削られる形にならないことを願っています。

もう一つは、指導する教師の準備です。国の授業動画や教材があっても、それを使いこなし、子どもの探究につなげるには、やはり教師自身の理解が必要です。研修の機会や、校内で相談できる体制づくりが、情報の領域の成否を分けるのではないかと思います。

そして、「情報技術の学習自体が総合の目的だ」とならないようにすること。審議まとめが何度も繰り返しているこの点を、私たちも忘れないようにしたいと思います。


おわりに 情報は、探究のための「道具箱」

「情報の領域」と聞くと、パソコン教室でのスキル練習を思い浮かべるかもしれません。でも、審議まとめが描いているのは、子どもが自分の探究のために、情報技術という道具箱を使いこなせるようになる姿です。

調べたいことがあるから、検索の仕方を学ぶ。伝えたいことがあるから、スライドのつくり方を工夫する。困っていることがあるから、プログラムで解決してみる。そして、便利な道具には危うさもあることを、体験を通して知る。そんな「情報の領域」になっていけば、子どもたちの探究はもっと豊かになるはずです。

次回は、キャリア・パスポートは「例示資料」から自由になる、という話を書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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