夏休みが明けました。夏休み明けからいきなり授業は厳しいですよね。子どもたちは友だちと話していないため、どこかよそよそしい雰囲気。クラスもなんだか調子が出ない。そこでおすすめなのが夏休みBINGOです。ビンゴのお題はもちろん「夏休みに○○した人」です。ただ何にもルールを決めずにやると何の意図もないただの遊びになります。なのでルールはしっかり決めましょう。ちなみにこの活動の意図は「クラスのいろいろな友だちと話す」「自分が欲しい答えを導く質問をする」ことです。
ではどんなルールか。
私が実際に行った時のルールは以下の3つです。
- 話を始めるときは挨拶をしてから始める。必ず会話を3ラリー以上する。
- ビンゴに乗っているお題を質問する側は聞いてはいけない。
- 名前をビンゴカードに書いてもらうのは一度まで。
一つずつルールを説明していきます。
ルール1:挨拶から始めて、3ラリー以上話す
- 話を始めるときは挨拶をしてから始める。必ず会話を3ラリー以上する。
挨拶から始めるのは、活動を「ただ名前を集めるゲーム」にしないためです。いきなり「〇〇した?」と聞くのではなく、「おはよう」「久しぶり」と声をかけ合うことで、夏休みのあいだに少し離れていた心の距離を、まずはゆっくり縮めていきます。
そして「3ラリー以上」というのがポイントです。たとえば「夏休みにプールに行った?」「行ったよ」「どこのプール?」「市民プールだよ」というように、一往復で終わらせず、もう一歩話を広げることを求めます。この「もう一歩」があるだけで、相手のことを知ろうとする会話に変わっていきます。
ルール2:お題をそのまま聞いてはいけない
2つ目のルールは、ビンゴカードに書いてあるお題を、そのままの言葉で聞いてはいけないというものです。たとえば、お題が「夏休みに海に行った人」だったとします。このとき、「海に行った?」と聞くのは禁止です。
では、どう聞くか。「夏休み、どこか遠くに出かけた?」「水遊びはした?」「日焼けした?」など、相手の答えから「海」を引き出せるような質問を考えなければなりません。これが、この活動の意図の一つである「自分が欲しい答えを導く質問をする」につながります。
このルールを入れると、子どもたちは一気に頭を使い始めます。最初は戸惑う子もいますが、友だちの聞き方をまねしたり、自分なりに工夫したりしながら、だんだんと質問の幅が広がっていきます。遠回りな質問をくり返すうちに、思いがけず相手の夏休みの話がたくさん聞けるというのも、このルールのよいところです。
ルール3:同じ人に書いてもらうのは一度まで
3つ目のルールは、ビンゴカードに同じ友だちの名前を書いてもらうのは一度まで、というものです。このルールがないと、仲のよい友だちとだけ話して、カードを埋めてしまうことができてしまいます。
一人につき一マスと決めておけば、自然といろいろな友だちと話さざるを得なくなります。ふだんあまり話さない友だちとも、「この人なら知っているかも」と声をかけるきっかけが生まれます。これが、この活動のもう一つの意図である「クラスのいろいろな友だちと話す」を支えるルールです。
なぜ夏休み明けにBINGOなのか
夏休み明けの教室には、独特の空気があります。久しぶりに会った友だちとの距離感がつかめなかったり、生活リズムが戻りきらずにぼんやりしていたり。子どもたちにとっても、じつは少し緊張する時期なのだと思います。
そんなときに、いきなり45分間座って授業を受けるのは、なかなか大変です。だからこそ、最初の時間に「友だちと話すこと」そのものを目的にした活動を入れることで、教室の空気をゆっくりとほぐしていきたいのです。私はこの活動を、子どもたちの「リハビリ」のようなものだと考えています。
また、夏休みの思い出は、どの子にとっても話しやすい話題です。勉強の内容と違って、正解も不正解もありません。「自分のことを話す」「友だちのことを聞く」という、学級の土台になるコミュニケーションを、無理なく練習できる場になります。
教員にとってもリハビリの時間
じつは、夏休み明けに調子が出ないのは、子どもたちだけではありません。私たち教員も、長い休みのあとは、子どもたちとの距離感をもう一度つかみ直す必要があります。
BINGOの時間は、教員にとっても子どもたちの様子をゆっくり見られる貴重な時間です。夏休みのあいだに背が伸びた子、雰囲気が少し変わった子、なんだか元気がない子。授業をしていると見えにくい一人ひとりの姿が、自由に話している場面だと自然に見えてきます。子どもたちと一緒に、教員もゆっくりとエンジンをかけ直す。そんな時間として使えるのも、この活動のよいところだと思います。
準備するもの
準備はとてもシンプルです。
特別な道具は必要ありません。前日にカードを印刷しておけば、当日すぐに始められます。
- 3×3、または4×4のマス目を印刷したビンゴカード(人数分)
- 鉛筆や名前ペン
- 活動時間を示すタイマー
マスの数は、学年やクラスの人数に合わせて調整します。低学年なら3×3の9マス、高学年なら4×4の16マスくらいがちょうどよいと思います。マスが多すぎると時間内に終わらず、少なすぎるとすぐに終わってしまうので、少し余裕を持って設定するのがおすすめです。
お題の作り方
お題は「夏休みに〇〇した人」という形にそろえます。たとえば、次のようなお題が考えられます。
- 夏休みに海や川に行った人
- 夏休みに花火をした人
- 夏休みにすいかを食べた人
- 夏休みに本を3冊以上読んだ人
- 夏休みに早起きをした人
- 夏休みに家のお手伝いをした人
- 夏休みに新しいことに挑戦した人
- 夏休みにおじいちゃん・おばあちゃんの家に行った人
お題を考えるときに気をつけたいのは、家庭の事情によって答えにくくならないかという点です。旅行や遠出ばかりのお題にすると、夏休みに出かけられなかった子がつらい思いをするかもしれません。「すいかを食べた」「早起きをした」「お手伝いをした」など、家の中でもできることを多めに入れておくと、どの子も安心して参加できます。
また、真ん中のマスは「フリー」にして、自分で好きなお題を書けるようにするのも楽しいアレンジです。子どもたちが自分で考えたお題には、その子らしさが出ます。
活動の進め方
実際の進め方は、次のような流れです。
1. ルールの確認
まずはビンゴカードを配り、3つのルールを確認します。とくにルール2の「お題をそのまま聞かない」は、例を出して説明するとイメージしやすくなります。教員が子ども役を一人お願いして、実際にやりとりを見せてみるのもよいと思います。
2. 活動タイム
タイマーをセットして、教室の中を自由に歩きながら友だちと話します。時間は10分〜15分程度が目安です。教員も一緒に教室を回りながら、なかなか声をかけられない子のそばに行って、そっと会話のきっかけをつくります。
3. ビンゴの確認
時間になったら席に戻り、ビンゴがそろったかを確認します。ビンゴの数を競うのもよいですが、それよりも大切にしたいのは、「どんな話が聞けたか」です。
4. 振り返り
最後に、短い振り返りの時間を取ります。「今日初めて知った友だちのこと」「聞き方を工夫してうまくいった質問」などを発表してもらいます。ここで、上手な質問の仕方を全体で共有すると、次に同じような活動をするときの力になります。
「質問する力」を育てるために
この活動のもう一つの柱が、「自分が欲しい答えを導く質問をする」ことです。ここは、少していねいに扱いたいところです。
「閉じた質問」と「開いた質問」
質問には、「はい」「いいえ」で答えられる閉じた質問と、相手が自由に答えられる開いた質問があります。たとえば「海に行った?」は閉じた質問、「夏休みはどんなところに出かけた?」は開いた質問です。
ルール2があることで、子どもたちは自然と開いた質問を使うようになります。振り返りの時間に、「どんな聞き方をしたら答えが引き出せた?」と問いかけ、うまくいった質問を黒板に書き出していくと、質問の種類や工夫が目に見える形で共有されます。
質問を「つなげる」
3ラリーのルールは、質問をつなげる練習にもなります。相手の答えを受けて、「それで、どうだったの?」「誰と行ったの?」「何がいちばん楽しかった?」と、次の質問を考える。これは、相手の話をよく聞いていないとできないことです。
つまり、質問する力を育てることは、聞く力を育てることでもあります。相手の話に関心を持ち、もっと知りたいと思う気持ちが、次の質問を生み出します。BINGOは、そんな「聞くこと」と「話すこと」をセットで練習できる活動なのです。
教員が見取りたいこと
活動中、教員はただ見守るだけでなく、子どもたちの様子をよく観察しておきたいところです。夏休み明けの子どもたちの姿には、学級づくりのヒントがたくさん詰まっています。
- 誰とでも話せている子、特定の友だちとだけ話している子
- 自分から声をかけられる子、声をかけられるのを待っている子
- 質問を工夫して楽しんでいる子、ルールに戸惑っている子
- 夏休み中の生活について、気になる様子が見られる子
とくに最後の点は大切です。夏休みの過ごし方の話の中で、元気がなかったり、話したがらなかったりする子がいたら、あとでそっと声をかけるきっかけにしたいと思います。楽しい活動の中にも、子どもたちの小さなサインが隠れていることがあります。
活動のあとにつなげる
BINGOをやって終わりにせず、その後の学習や学級活動につなげていくと、さらに効果が高まります。
日記や作文へのつながり
BINGOで友だちから聞いた話や、自分が話したことをもとに、夏休みの思い出を作文にするのもよい流れです。友だちに話したことで、自分の中で思い出が整理され、書くことが見つかりやすくなります。「何を書けばいいか分からない」という子にとって、話すことは書くことの準備にもなるのです。
学級の掲示物として
ビンゴカードを集めて、「クラスの夏休み」として掲示するのもおすすめです。どんな夏休みを過ごした友だちがいるのかが一目で分かり、休み時間の会話のきっかけにもなります。ただし、家庭のことが分かる内容もあるので、掲示する前に子どもたちに確認を取るなどの配慮はしておきたいところです。
次の活動への布石として
夏休み明けは、運動会や学習発表会など、学級で協力する行事が控えている時期でもあります。BINGOで生まれた小さな会話のつながりは、その後のグループ活動や話し合いの土台になります。最初の時間に「いろいろな友だちと話すって楽しい」と感じられたことが、2学期の学級づくりの大きな一歩になるはずです。
活動をうまく進めるためのポイント
話しかけられない子への配慮
クラスには、自分から友だちに話しかけるのが苦手な子もいます。そうした子がひとりぼっちにならないよう、教員が間に入って「〇〇さんにも聞いてみたら?」と声をかけたり、最初の数分はペアで回るようにしたりといった工夫が考えられます。
大切なのは、「話せなかった」という経験で終わらせないことです。一人とでも会話ができたら、それを認めて声をかけてあげたいと思います。
競争になりすぎないように
ビンゴは、どうしても「早くそろえたい」という気持ちが強くなりがちです。すると、会話を3ラリーせずに名前だけ書いてもらおうとする子が出てくることもあります。そのため、活動の前に「この時間の目的は、いろいろな友だちと話すこと」だと、もう一度伝えておくことが大切です。
ビンゴがそろわなくても、たくさんの友だちと話せた子をしっかりとほめる。そうすることで、活動の意図がクラス全体に伝わっていきます。
学年に合わせたアレンジ
低学年では、ルールをもう少しシンプルにしてもよいと思います。たとえば、ルール2は外して「挨拶をしてから聞く」「同じ人は一度まで」の2つにするなど、子どもの実態に合わせて調整します。
高学年では、お題を少し抽象的にするのもおもしろいです。「夏休みに『がんばった』と思えることがある人」「夏休みに心に残った言葉がある人」などにすると、会話がより深まり、相手の内面に触れるきっかけにもなります。
よくある困りごとと対応
実際にやってみると、いくつか「こんなときどうしよう」という場面が出てくると思います。考えられる困りごとと、その対応をまとめておきます。
誰にも当てはまらないお題が残ってしまう
お題によっては、クラスの誰も当てはまらないということもあります。そんなときは、活動の途中で「このお題は誰もいなかったら、似たようなことをした人でもOK」とルールをゆるめても構いません。目的はビンゴをそろえることではなく、友だちと話すことなので、柔軟に調整してよいと思います。
教室が騒がしくなりすぎる
みんなが一斉に話し始めると、教室がかなりにぎやかになります。それ自体は悪いことではありませんが、相手の声が聞き取れないほどになると、会話が成り立ちません。「相手にだけ聞こえる声で」「話すときは相手の顔を見て」といった約束を、最初に確認しておくとよいでしょう。
時間が足りなくなる
会話を大切にするほど、一人と話す時間は長くなります。そのため、思ったよりビンゴが進まないこともあります。そんなときは、無理に延長せず、「続きは休み時間にやってもいいよ」と伝えるのも一つの方法です。授業が終わったあとも子どもたちが自然と話し続けていたら、それは活動がうまくいった証拠かもしれません。
名前を書いてもらうだけになってしまう
ルールを伝えていても、ついカードを埋めることに夢中になってしまう子はいます。そんなときは、活動の途中でいったん手を止め、「今、3ラリーできているかな?」と全体に問いかけてみてください。うまく会話が続いているペアを紹介するのも効果的です。
まとめ
夏休みBINGOは、準備も簡単で、夏休み明けの最初の時間にぴったりの活動です。ただし、ルールを決めずにやると、ただの遊びで終わってしまいます。「クラスのいろいろな友だちと話す」「自分が欲しい答えを導く質問をする」という意図を持ち、それを支えるルールを用意することで、子どもたちのコミュニケーションの力を育てる時間に変わります。
夏休み明けの教室は、子どもたちにとっても教員にとっても、少しずつエンジンをかけ直す時期です。無理に急がず、まずは友だちとの会話を楽しむところから。そんなリハビリの時間として、ぜひ取り入れてみてください。
ルールやお題は、クラスの実態に合わせて自由にアレンジしてみてください。子どもたちと一緒にルールを考えてみるのも、学級づくりの一つの方法です。夏休み明けの教室に、たくさんの笑顔と会話が生まれることを願っています。

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