12月。学習発表会や、学年の発表の場で、詩や物語を声に出して読む活動をする学級も多いと思います。そして、毎日の宿題には、音読カード。声に出して読むことは、小学校の国語の中で、とても大きな位置を占めています。
でも、「音読」「朗読」「群読」の違いを、子どもに説明できるでしょうか。どれも声に出して読む活動ですが、目的が違います。目的が違えば、練習の仕方も、うまく読めたかどうかの見方も違ってきます。
この記事では、声に出して読む活動に関わる言葉、「音読」「朗読」「群読」の定義を整理し、あわせて「黙読」「読み聞かせ」「音読劇」も見ていきます。
それぞれの言葉の定義
「黙読」とは
まず、声に出さない読み方から始めます。
黙読は、声に出さずに、目で文字を追って読むことです。大人が本を読むときは、ほとんどが黙読です。黙読は、自分のペースで、速く、たくさん読むことができます。また、分からないところを読み返したり、考えながら読んだりするのにも向いています。
「音読」とは
音読は、文章を声に出して読むことです。
音読の中心にある目的は、正しく、はっきり読むこと、そして、声に出すことで、文章の内容を理解したり、言葉のリズムを体で感じたりすることです。
音読は、聞き手がいなくても成り立ちます。家で一人で音読する、教室で全員がそれぞれのペースで音読する。音読は、読み手自身のための読み方だと言えます。
音読には、たくさんのよさがあります。声に出すことで、読みまちがいや、読めない字に気づくことができます。言葉のまとまりを意識して読むことで、文の意味が分かりやすくなります。くり返し声に出すことで、文章が体に入り、内容をよく覚えられるようになります。
「朗読」とは
朗読は、聞き手に向けて、作品の内容や味わいを伝えるために、工夫して声に出して読むことです。
音読との違いは、聞き手がいること、そして、作品の内容や味わいを伝えるための工夫があることです。
朗読では、作品の場面の様子や、登場人物の気持ち、作品全体の雰囲気を考えて、声の大きさ、速さ、高さ、間の取り方、強弱などを工夫します。悲しい場面はゆっくり静かに、緊迫した場面は速く強く。こうした工夫によって、聞き手は、作品の世界をありありと感じることができます。
朗読は、作品をどう読んだか、つまり、自分の読みを、声で表現するものです。同じ作品でも、読み手によって朗読は違ってきます。
「群読」とは
群読は、複数の人で、声の重なりや分担を工夫して、一つの作品を読むことです。
一人で読む部分(ソロ)、数人で読む部分、全員で読む部分を組み合わせたり、だんだん人数を増やしたり減らしたりして、声の重なりで作品の世界をつくり出します。演劇などの世界で使われてきた方法で、学校にも広まりました。
群読の特徴は、声の重なりそのものが、表現になることです。一人の声と、三十人の声では、聞き手に伝わる迫力がまったく違います。たとえば、詩の中で、だんだん大きくなっていくものを表すときに、読む人数をだんだん増やしていくと、言葉の意味が、声の大きさで聞き手に伝わります。
「読み聞かせ」と「音読劇」
ほかにも、声に出して読む活動には、次のようなものがあります。
読み聞かせは、主に大人が、子どもに向けて、本を読んで聞かせることです。朗読に近いですが、絵本の絵を見せながら読むなど、聞き手と一緒に本を楽しむことが中心になります。
音読劇は、登場人物の役を分担して、会話や動作を加えながら、物語を声に出して読む活動です。劇のように動くこともありますが、台本は物語の文章そのものを使います。低学年の物語の学習でよく行われます。
並べてみると
| 言葉 | ひと言でいうと | 聞き手 | 目的 | 人数 |
|---|---|---|---|---|
| 黙読 | 声に出さずに読む | いない | 速く、たくさん、考えながら読む | 一人 |
| 音読 | 声に出して読む | いなくてもよい | 正しく読む、内容を理解する、リズムを感じる | 一人・全員 |
| 朗読 | 工夫して声に出し、聞き手に伝える | いる | 作品の内容や味わいを伝える | 主に一人 |
| 群読 | 複数で声を重ねて読む | いる | 声の重なりで作品の世界をつくる | 複数 |
| 音読劇 | 役を分担して、会話や動作を加えて読む | いる | 登場人物になりきって物語を表す | 複数 |
いちばん大事な違いは、聞き手がいるかどうかです。音読は読み手自身のため、朗読と群読は聞き手のための読み方です。
学習指導要領ではどう扱われているか
小学校の学習指導要領(平成29年告示)の国語では、「知識及び技能」に、学年ごとに次のように示されています。
- 第1学年及び第2学年:「語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること」
- 第3学年及び第4学年:「文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読すること」
- 第5学年及び第6学年:「文章を音読したり朗読したりすること」
低学年では、語のまとまりや言葉の響きに気をつけて音読する。中学年では、文章全体の構成や内容を意識して音読する。そして、高学年で、はじめて「朗読」という言葉が出てきます。
つまり、低学年・中学年では、まず音読の力をしっかり育て、高学年で、聞き手に伝える朗読へと進んでいく、という流れになっています。音読で正しく、内容を意識して読めるようになってこそ、朗読で作品の味わいを伝えることができる、ということです。
それぞれの指導のポイント
音読の指導
音読の指導で大事なのは、正しく、はっきり、言葉のまとまりで読むことです。
低学年では、一字一字を拾い読みするのではなく、言葉のまとまりで読めるようにします。「おおきな/かぶ」ではなく「おおきなかぶ」。言葉のまとまりで読めると、文の意味がつかみやすくなります。
また、句読点で間をとることも大事です。「、」で一呼吸、「。」で二呼吸。この決まりを伝えるだけで、音読はぐっと聞きやすくなります。
音読の練習方法には、いろいろあります。全員で声をそろえて読む「斉読」、一文ずつ交代で読む「まる読み(句点読み)」、先生のあとについて読む「追い読み」、二人で交代しながら読む「交代読み」。方法を変えると、子どもはあきずに音読を続けられます。
朗読の指導
朗読の指導で大事なのは、作品をどう読んだかを、声の工夫につなげることです。
朗読の工夫は、作品の読みから生まれます。この場面の人物は、どんな気持ちだったのか。この場面は、どんな雰囲気なのか。それを考えたうえで、「だから、ここはゆっくり読もう」「ここは、少し間をあけよう」と工夫を決めます。
おすすめしたいのは、朗読の工夫を、本文に書きこませることです。ゆっくり読むところには波線、強く読むところには丸、間をあけるところには「/」。こうした記号を本文に書きこむと、子どもは、どこをどう読むかを、自分の読みと結びつけて考えるようになります。
そして、「なぜ、ここをゆっくり読もうと思ったの?」と理由を聞くと、朗読の工夫が、作品の読みに根ざしたものになります。
群読の指導
群読の指導で大事なのは、作品のどこを、何人で読むかを、作品の内容から考えることです。
群読の台本をつくるとき、「ここは一人で」「ここは全員で」と、なんとなく分けてしまうと、声の重なりが作品の内容と結びつきません。
「この行は、主人公の心の声だから、一人で静かに読もう」「この行は、たくさんの人の声だから、全員で読もう」「ここは、だんだん近づいてくる様子だから、人数をだんだん増やそう」。このように、作品の内容から、読む人数や読み方を決めていくと、群読は、作品の読みを表現する活動になります。
学習発表会などで群読をするときは、台本を子どもと一緒につくると、子どもは作品を何度も読み返しながら、内容を深く考えるようになります。
群読の台本をつくってみる
群読の台本のつくり方を、短い詩の例で示します。ここでは、説明のためにつくった「雨」という短い詩を使います。
ぽつん(A)
ぽつん ぽつん(A・B)
ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ(A・B・C)
ざあああ(全員)
雨がふってきた(全員)
かさをひらいて(A)
歩きだそう(全員)
雨が、一つぶ、二つぶと落ちてきて、やがて強くふり出す様子を、読む人数をだんだん増やすことで表しています。最初の「ぽつん」は一人で小さく、「ざあああ」は全員で大きく。声の重なりそのものが、雨の強さを表しているわけです。そして、「かさをひらいて」で一度一人にもどし、「歩きだそう」で全員の声にもどる。ここには、雨の中でも前に進もうという気持ちがこめられています。
台本をつくるときは、まず、作品のどこで何が起きているのか、どんな気持ちが表れているのかを話し合います。そのうえで、「ここは何人で読むか」「どんな声で読むか」を決めていきます。台本づくりの話し合いは、そのまま作品を読み深める時間になります。
朗読を聞き合う
朗読の学習では、読んだあとに聞き合う時間をとることが大事です。
聞き手は、「どこが心に残ったか」「どんな工夫が伝わったか」を伝えます。「お父さんのせりふのところで、声が低くなって、悲しい感じがした」「最後の一文の前に間があって、どきっとした」。具体的に伝えてもらうと、読み手は、自分の工夫が伝わったかどうかを知ることができます。
また、同じ場面を、何人かの子が朗読するのを聞き比べるのもおすすめです。同じ文章なのに、読み手によって、伝わる感じが違う。それは、一人一人の作品の読みが違うからです。聞き比べることで、子どもは「わたしはこう読んだけれど、あの子はこう読んだんだ」と、読みの違いに気づくことができます。
音読カードを「読み手のため」にする
毎日の宿題の音読カードについても、少し考えておきます。
音読カードは、多くの場合、「読んだ回数」や「おうちの人のサイン」を書く形になっています。これは、音読を習慣にするためには役に立ちます。でも、続けているうちに、子どもにとっては「サインをもらうための宿題」になってしまうことがあります。
音読が読み手自身のためのものだとしたら、音読カードにも、子どもが自分の読みを振り返る欄があるとよいと思います。「今日は、どこを気をつけて読んだか」「どこがうまく読めたか」。一言でも書けば、子どもは毎日の音読を、自分の読みをよくするための時間として意識するようになります。
物語の学習と音読劇
低学年の物語の学習では、音読劇がよく行われます。音読劇は、登場人物になりきって読むことで、人物の気持ちを体で感じることができる活動です。
たとえば、2年生の「お手紙」で、がまくんとかえるくんの会話を音読劇にすると、二人の気持ちの違いが、声の違いになって表れます。悲しそうながまくんの声、がまくんを思うかえるくんの声。どんな声で読むかを考えることが、そのまま、人物の気持ちを読むことになります。「お手紙」の読み方については、「『お手紙』の教材研究」にも書きました。
よくある質問
低学年で、朗読をさせてもいいですか?
低学年でも、聞き手を意識して読む活動はできます。ただ、まずは正しく、はっきり、言葉のまとまりで読む音読の力をしっかり育てることが先です。音読が安定してきたら、「お家の人に聞いてもらうつもりで読もう」と、聞き手を意識させることから始めるとよいと思います。
群読は、詩でしかできませんか?
詩がいちばん取り組みやすいですが、物語や古典でも群読はできます。物語なら、地の文を語り手役が読み、会話文を登場人物の役が読む、という分け方もできます。古典の文章を群読すると、言葉のリズムや響きを、全員で味わうことができます。
音読が苦手な子には、どうすればいいですか?
まず、なぜ苦手なのかを確かめることが大事です。字が読めないのか、言葉のまとまりがつかめないのか、人前で声を出すのがこわいのか。字が読めない場合は、先生や友達のあとについて読む追い読みから始める。言葉のまとまりがつかめない場合は、まとまりごとに斜線を入れた本文を用意する。人前がこわい場合は、二人組で読むことから始める。苦手の理由に合わせて、手立てを変えます。
音読の宿題は、毎日同じ文章でいいですか?
単元の途中は、同じ文章をくり返し読むことで、すらすら読めるようになり、内容も体に入っていきます。ただ、ずっと同じだと、子どもはあきてしまいます。単元の始めは全文、途中は今学習している場面、終わりは好きな場面、というように、読む範囲を変えると、毎日の音読に変化が出ます。また、ときどき、詩や、前に学習した物語を読む日をつくると、読む力が広がっていきます。
まとめ
黙読は、声に出さずに読むこと。
音読は、文章を声に出して読むこと。読み手自身のための読み方で、正しく読み、内容を理解し、言葉のリズムを感じるためのもの。
朗読は、聞き手に向けて、作品の内容や味わいを伝えるために、工夫して声に出して読むこと。
群読は、複数の人で、声の重なりや分担を工夫して、一つの作品を読むこと。
いちばん大事な違いは、聞き手がいるかどうかです。音読は自分のため、朗読と群読は聞き手のため。目的が分かると、練習の仕方も、うまく読めたかどうかの見方も、はっきりしてきます。
声に出して読む活動は、毎日の小さな積み重ねです。今日の音読を、ほんの少しだけ「誰かに届ける読み方」にしてみる。その一歩が、朗読や群読への入口になります。


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