【授業を見る・振り返る #3】授業を見る前に、学習指導案のどこを読むか 参観前の5分で読む順番

【授業を見る・振り返る #3】授業を見る前に、学習指導案のどこを読むか 参観前の5分で読む順番 授業づくり

研究授業の日。参観する教室の前の机に、指導案が積まれています。1部とって、教室の後ろへ。チャイムが鳴るまで、あと5分。

さて、この指導案、どこから読みますか。

1ページ目の「単元名」から順番に読んでいく人が多いと思います。単元の目標、評価規準、そして「単元について」。児童観、教材観、指導観……と読み進めているうちに、チャイムが鳴る。本時の展開にたどりつく前に、授業が始まってしまう。結局、指導案をめくりながら授業を見ることになって、指導案も授業も、どちらも中途半端になる。

参観前の短い時間に読むなら、指導案は、前から順番に読むものではないと思っています。

今回は、授業を見る前に、学習指導案のどこを読むかです。参観前の5分で、どこを、どの順番で読めばいいかを書いてみます。

指導案は「その授業の前」を知る資料

先に、指導案を読む意味を整理しておきます。

この連載の1回目で、授業は、子どもと先生がそれまでに積み重ねてきた関係でできていると書きました。参観者が見られるのは、その日の45分だけです。でも、その45分の後ろには、単元の何時間分かの学習があり、4月からの毎日があります。

指導案は、その「見えない部分」を少しだけ見せてくれる資料です。この子たちは、ここまでに何を学んできたのか。先生は、この子たちをどう見ているのか。この1時間は、単元の中でどんな役割なのか。

それが分かると、45分の見え方が変わります。同じ「手が挙がらない」場面でも、「この単元で初めての話し合いだから」なのか、「前の時間までに考えが出つくしているから」なのかで、意味がまったく違うからです。

読む順番は「後ろから」

では、どこから読むか。私のおすすめは、後ろからです。

指導案の項目や順番は、学校や自治体によって違います。でも、だいたいの指導案には、次のような項目があります。

  1. 単元名
  2. 単元の目標
  3. 単元の評価規準
  4. 単元について(児童観・教材観・指導観)
  5. 単元の指導計画
  6. 本時の学習(本時の目標・本時の展開・本時の評価)
  7. 板書計画

それぞれの項目に何を書くかは、はじめての授業づくり #5 はじめての学習指導案にまとめています。

参観前の5分で読むなら、順番はこうです。

  1. 本時の目標と評価(1分)
  2. 本時の展開の中心発問と、予想される子どもの反応(2分)
  3. 単元の指導計画で、本時が何時間目か(30秒)
  4. 児童観(1分)
  5. 板書計画(30秒)

時間はあくまで目安です。ひとつずつ見ていきます。

1. 本時の目標と評価を読む

まず、本時の目標を読みます。

この1時間で、子どもに何ができるようになってほしいのか。授業を見るときの「ものさし」は、これです。どんなに盛り上がった授業でも、目標に向かっていなければ、ねらいどおりとは言えません。逆に、静かな授業でも、子どもが目標の姿に近づいていれば、それはいい授業です。

次に、本時の評価を読みます。たいていは、本時の展開の表の中か、そのすぐ下に書いてあります。「〜している(ノート)」「〜している(発言)」のような書き方です。

評価を読むと、先生が、授業のどの場面で、子どものどこを見ようとしているかが分かります。ノートで見るのか、発言で見るのか。それは、展開のどの場面か。参観者も、同じ場面で、同じところを見ればいい。そうすると、授業のあとで「この場面で、〇人くらいの子が目標の姿に届いていたように見えました」と話せるようになります。

2. 中心発問と、予想される子どもの反応を読む

次に、本時の展開を読みます。でも、全部は読みません。

探すのは、中心発問です。指導案によっては「◎」や太字で示してあったり、「主発問」と書いてあったりします。授業の中で、子どもに一番考えてほしい問い。ここに丸をつけておきます。

そして、その発問の横か下に書いてある、予想される子どもの反応を読みます。

ここが、指導案の中で一番おもしろいところだと私は思っています。先生が、子どもたちがどう答えると予想しているか。正しい答えだけでなく、ずれた答え、まちがった答えも書いてあることが多いです。そして、それぞれに先生がどう返すつもりか(指導上の留意点や手立て)も書いてある。

予想される反応を読んでおくと、授業を見ながら、予想と実際のずれに気づけます。予想どおりの反応が出たか。予想していない反応が出たか。予想していない反応が出たとき、先生はどうしたか。

このずれこそが、授業を見る一番の見どころです。そして、このずれには、たいてい、その教室の子どもたちらしさが出ます。「この子たちだから、こう反応した」という部分です。

3. 本時が単元の何時間目かを見る

次に、単元の指導計画をさっと見ます。見るのは、本時が何時間目かと、その前の時間に何をしたかだけです。

本時が単元の1時間目なら、子どもたちはまだ教材に出会ったばかりです。手が挙がらないのも、考えがばらばらなのも、ある意味当然です。逆に、単元の終わりのほうなら、それまでに学んだことを使って考える時間のはずです。

前の時間に何をしたかも大事です。前の時間に子どもたちから出た疑問を、本時の導入で使う先生も多いです。それを知っていると、導入で先生が「前の時間に〇〇さんが言っていたこと、覚えてる?」と言ったとき、その意味がすっと分かります。

1回目で、全部を見ようとしなくていい、と書きました。単元の指導計画を見ておくと、「今日は単元の山場だから、話し合いの場面をじっくり見よう」というふうに、今日見るところを決めやすくなります。

4. 児童観を読む

ここまでで、時間は3分半くらい。残りの時間で、児童観を読みます。

児童観(児童の実態)は、「単元について」の中にあることが多い項目です。この学級の子どもたちが、この単元に関わることについて、今どんな状態にあるか。先生がどう見ているか。

児童観は、指導案の中で、その教室の「関係」が一番よく見えるところだと思っています。

たとえば、「自分の考えをもつことはできるが、友だちの考えと比べて話し合うことには課題がある」と書いてあったとします。そうすると、この授業の話し合いの場面は、先生にとって「まだ育てている途中」のところだと分かります。話し合いがスムーズにいかなくても、それは失敗ではなく、まさに今、育てているところなんだと見ることができます。

また、児童観に、先生が子どもたちとどう過ごしてきたかが書いてあることもあります。「4月から、まちがいを大切にする学級づくりをしてきた」とか。そういう一文があったら、授業の中で、まちがいがどう扱われるかに注目して見てみてください。

ただ、児童観を読んだあとで、教室の中で「あの子かな」と特定の子を探すような見方はしないようにしています。児童観は、学級全体の傾向をつかむためのものです。一人ひとりの子どもについては、授業の中の姿を、先入観なしに見るほうがいい。児童観で知った「今育てているところ」を頭の片すみに置きつつ、目の前の子どもを、そのまま見る。そのバランスが大事だと思っています。

5. 板書計画を見る

最後に、時間があれば板書計画を見ます。

板書計画は、授業の最後に黒板がどうなっている予定かを示したものです。授業の「ゴールの絵」と言ってもいいと思います。

ここで見るのは、細かい字ではなく、黒板の構成です。左から右へ時間の流れで書くのか。中央に子どもの考えを並べて比べるのか。まとめはどこに書くのか。これを頭に入れておくと、授業中、先生がどこに何を書こうとしているのかが分かります。

そして、授業の最後に、実際の板書と板書計画を比べてみます。計画どおりの板書になったか。計画と違う部分があれば、それは子どもの反応によって変わったところかもしれません。そこも、見どころの一つです。

指導案から「参観の問い」を1つつくる

ここまで読んだら、最後に、参観の問いを1つつくります。

1回目で、見に行く前に自分の問いを1つ持っていこう、と書きました。指導案がある授業なら、指導案から問いをつくることができます。

つくり方は簡単です。指導案を読んで、「ここは、どうなるんだろう」と思ったところを、1つ選ぶだけです。

  • 予想される反応に「〇〇」と書いてあるけど、本当に出るだろうか。出なかったら、先生はどうするんだろう。
  • 児童観に「話し合いに課題がある」と書いてあるけど、この発問で、話し合いはつながるだろうか。
  • 評価が「ノートの記述」になっているけど、一人で考える時間は何分とってあるだろう。全員が書けるだろうか。

問いを1つ決めたら、指導案の余白に書いておきます。そして、授業中はその問いを中心に見る。前回書いた3列メモの「見たこと」の列も、この問いに関係する場面を中心に書いていきます。

書いた先生が「見てほしい」ところを探す

もう一つ、研究授業の指導案には、書いた先生が見てほしいと思っているところが、どこかに書いてあることが多いです。

校内研究の授業なら、指導案のはじめのほうに「研究主題」や「研究の視点」「本時で検証する手立て」などが書いてあります。たとえば、「ペアでの対話を取り入れることで、自分の考えを深めることができるか」のように。

これは、授業者の先生と、校内研究のチームが、この授業で一番確かめたいことです。参観者も、ここを見ることが期待されています。自分の問いとは別に、この「研究の視点」もチェックしておくと、協議会で話がかみあいやすくなります。

協議会でどう話すかは、第7回でくわしく書きます。

5分もないときは、2つだけ

とはいえ、現実には、5分もとれないことがよくあります。自分のクラスの授業を終えて、急いで参観の教室にかけつけたら、もうチャイムが鳴っていた、とか。

そういうときは、本時の目標と中心発問の2つだけを見ます。30秒あれば読めます。

目標が分かれば、授業の「ものさし」が持てる。中心発問が分かれば、授業の「山場」がどこか分かる。この2つさえあれば、45分の見方は大きくぶれません。予想される反応や児童観は、授業の途中、子どもが一人で考えている時間などに、そっと読めば十分です。

指導案がない授業を見るとき

ふだんの授業を見せてもらうときは、指導案がないことのほうが多いと思います。そういうときは、授業の前に、授業者の先生に2つだけ聞いてみてください。

  • 「今日は、単元の何時間目ですか?」
  • 「今日の授業で、一番考えてほしいことは何ですか?」

1つ目は、単元の指導計画の代わり。2つ目は、本時の目標と中心発問の代わりです。この2つを聞くだけで、指導案を後ろから読んだのとほぼ同じ準備ができます。

忙しい先生に聞くのは気が引けるかもしれません。でも、「ここを見てほしい」と思って授業をしている先生にとって、この質問はむしろうれしいものだと思います。そして、もし時間があれば、「最近、このクラスで大事にしていることはありますか?」と聞いてみてください。これは、児童観の代わりです。返ってくる答えには、その教室の積み重ねがぎゅっと詰まっています。

指導案を読むときの注意

最後に、指導案を読むときに気をつけたいことをいくつか。

指導案どおりに進むことが「いい授業」ではない。指導案は計画です。子どもの反応によって、計画が変わるのは当たり前です。むしろ、計画を変えた場面でこそ、先生が何を大事にしているかが見えます。「指導案と違う」ことを、すぐにマイナスに見ないようにしたいところです。

指導案の文章の上手さを評価しない。書き方が整っていないところがあっても、それは授業そのものとは別の話です。指導案の書き方について言いたいことがあれば、協議会ではなく、あとで個別に伝えるほうがいいと思います。

指導案は、授業後に配られたものも読み返す。授業のあとで、もう一度指導案を読み返してみてください。授業を見る前には分からなかった部分が、「ああ、このためにこの活動を入れていたのか」と分かることがあります。

個人情報に気をつける。指導案には、座席表や子どもの名前が書かれていることがあります。参観が終わったら、学校の決まりに沿って返却・処分します。家に持ち帰ったり、写真に撮ってそのままにしたりしないように気をつけます。

自分が指導案を書くときにも役に立つ

指導案を「読む側」になってみると、自分が書く側になったときにも役に立ちます。

参観者は、5分で指導案を読む。しかも、後ろから。だとしたら、本時の目標と中心発問、予想される反応が、ぱっと見て分かるように書いておくと、参観者はずいぶん見やすくなります。児童観に、この学級で今育てているところを正直に書いておけば、参観者は、そこを見てくれます。

指導案は読む人のために書く、という話は、はじめての学習指導案の最後にも書きました。読む側の気持ちが分かると、書く側の工夫も見えてきます。

おわりに

授業を見る前に、学習指導案のどこを読むか。まとめると、こうなります。

前から順番ではなく、後ろから読む。本時の目標と評価で「ものさし」を持ち、中心発問と予想される反応で「見どころ」をつかむ。本時が単元の何時間目かを確かめ、児童観で、その教室の今の姿を知る。最後に板書計画で、ゴールの絵を頭に入れる。そして、指導案から「参観の問い」を1つつくる。

指導案は、45分の向こう側にある、その教室の積み重ねを少しだけ見せてくれる資料です。それを知ったうえで授業を見ると、目の前の子どもの姿が、ただの「できた・できない」ではなく、「この子たちが、今ここにいる」という見え方に変わってきます。

次回は、見る側から少し離れて、自分の授業を記録する話です。毎日続けられる記録と、研究授業の記録係になったときの記録の取り方を書きます。

連載「授業を見る・振り返る」

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