「次期学習指導要領を読む」シリーズを読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。今回はシリーズの番外編です。
中央教育審議会の「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」について、文部科学省が意見を募集しています。いわゆるパブリックコメント(パブコメ)です。締切は11月5日(木)23時59分。この記事を読んでいる時点で、残りはもう数日しかありません。
結論から書きます。現場の先生こそ、短くてもいいので意見を出してほしいと思っています。審議まとめは、まだ「答申」の前の段階です。現場の声を届けられるタイミングは、今しかありません。
この記事では、パブコメとは何か、何を書けばいいのか、どうやって出すのかを、私自身も初めて意見を考えた立場から整理してみます。
この記事の目次
- 第1章 パブコメって、そもそも何?
- 第2章 なぜ「現場の教員」が出すべきなのか
- 第3章 何を書けばいいのか 現場として言っておきたい3つの論点
- 第4章 私が出すなら、こう書きます(意見の例)
- 第5章 よくある疑問
- 第6章 提出の手順と締切
- おわりに
第1章 パブコメって、そもそも何?
国が「決める前に」意見を聞く仕組み
パブリックコメントは、国が新しいルールや方針を決める前に、案を公表して、広く国民から意見を募る仕組みです。今回は、審議まとめに対する意見募集として、10月6日から11月5日まで行われています。
意見は、e-Gov(電子政府の総合窓口)の「パブリック・コメント」のページにあるWebフォームから出します。氏名や年齢、職業などの入力は任意で、意見には理由を付けて書くよう求められています。
審議まとめは、まだ「途中」の資料
シリーズの第1回でも書きましたが、審議まとめは「答申」や「告示」の前に、方向性を示した資料です。この後、パブコメで集まった意見も踏まえて答申がまとめられ、それをもとに新しい学習指導要領がつくられていきます。小学校では2030年度以降に順次実施される予定とされています。
つまり、今はまだ「方向性」の段階です。ここで出された意見が、答申の書きぶりや、その後の解説・参考資料づくりに影響する可能性があります。
出しても意味があるの?
正直に言うと、私も最初は「一人の教員が意見を出しても、何も変わらないのでは」と思っていました。同じように感じている方、多いのではないでしょうか。
たしかに、出した意見に個別の返事が来るわけではありません。でも、パブコメで寄せられた意見は、どんな意見がどれくらいあったかが整理され、それに対する考え方とあわせて公表されることが多いです。今回の結果の扱いについては、意見公募要領もあわせて確認してみてください。
「現場からこういう声がこれだけ届いている」という事実そのものが、議論の材料になります。特に、審議まとめが「教師の負担」や「実現可能性」を正面から扱っている今回だからこそ、教室で毎日働いている人の声には意味があると思うのです。
第2章 なぜ「現場の教員」が出すべきなのか
審議まとめは「現場の声」を前提にしている
シリーズを読んできた方は気づいているかもしれません。審議まとめには、「現場から〜という声がある」「〜という指摘がある」という書き方がとても多いのです。
たとえば第7回で取り上げた「指導と評価の計画」の話では、小学校の多くの先生が複数教科を担当していて、全単元の計画をつくるのは現実的ではない、という声が紹介されていました。第8回の「余白」の話でも、余白を奪っている原因として、週29コマの習慣や「指導書のとおりにしなければ」という認識が挙げられていました。
こうした整理は、現場からの声があったからこそ書かれたものです。今回の審議まとめの中身も、また現場の声で磨かれていくはずです。
「賛成」の声も、立派な意見
パブコメというと、「反対意見を出すもの」というイメージがあるかもしれません。でも、そんなことはありません。
「この方向性は、現場として本当に助かる。ぜひ実現してほしい」。これも立派な意見です。むしろ、良い方向性が答申で弱められないように、賛成の声を届けることには大きな意味があると思います。
「心配」も、具体的に書けば力になる
一方で、「方向性には賛成だけれど、このままだと現場ではこうなりそう」という心配もあると思います。たとえば、調整授業時数制度について「制度ができても、結局は学校内の調整に時間がとられて、余白が生まれないのでは」という心配です。
こうした声は、教室にいる人にしか書けません。制度の細かい設計や、解説・参考資料をつくる段階で生かされる可能性があります。
第3章 何を書けばいいのか 現場として言っておきたい3つの論点
審議まとめは、資料編まで含めるとかなりの分量があります。全部を読んでから意見を出そうとすると、締切に間に合いません。
おすすめは、「自分が一番気になったテーマを1つだけ選ぶ」ことです。ここでは、シリーズでこれまで書いてきた中から、小学校の担任として特に意見を出しておきたい論点を3つ挙げてみます。
3-1 論点1:評価のスリム化(第6回・第7回)
「内容のまとまりごとの評価規準」を学校で作らなくてよくすること。全単元の「指導と評価の計画」の作成を求めないこと。評定への総括を学年末だけにできると明確にすること。
どれも、日々の評価の仕事が「書類づくり」になっていると感じてきた先生にとっては、大きな変化です。この方向性を支持する声は、ぜひ届けたいところです。
一方で、「国の方針が変わっても、自治体や学校の慣行がそのまま残るのでは」という心配もあります。通知表の様式や評価の手順は、自治体や学校ごとに決まっていることが多いからです。
3-2 論点2:時間の使い方と「余白」(第8回〜第10回)
週29コマの習慣を見直すこと。過度な予備時数を見直すこと。そして、学校の判断で時数を調整できる「調整授業時数制度」をつくること。
「余白」を仕組みでつくろうとしている点は、今回の審議まとめのいちばんの特徴だと私は感じています。ただ、生まれた時間が本当に子どもの学びや教師の研究・研修に使えるのか、それとも別の業務で埋まってしまうのか。ここは現場の実感を書ける部分です。
3-3 論点3:「何を手放せるか」をはっきり示すこと(第1回)
第1回で、審議まとめは「何が増えるか」より「何を手放せるか」で読むと、現場に寄り添った内容に見える、と書きました。
だからこそ、「手放していいもの」が答申や解説ではっきり示されることが大切だと思います。新しい言葉や取り組みだけが増えて、手放すものがあいまいなままだと、現場の負担はかえって増えてしまいます。
第4章 私が出すなら、こう書きます(意見の例)
ここからは、実際に意見を書くときの例です。「短い版」と「しっかり版」の2つを用意しました。あくまで一つの例なので、ご自身の言葉や経験に置き換えて使ってください。
4-1 短い版(200字くらい)
【該当箇所】
学習評価の改善(「内容のまとまりごとの評価規準」の作成を不要とすること等)【意見】
この方向性に賛成します。答申でもこの方向性を維持してほしいと。【理由】
小学校の担任は複数教科を担当しており、評価規準の転記や全単元の評価計画の作成に多くの時間がかかっています。その時間を、子どもの学習状況を見取り、指導を改善するための時間に回せるようになるからです。
短い版は、「どの部分について」「賛成か、修正してほしいか」「なぜか」の3つだけを書く形です。これなら、10分ほどで書けると思います。
4-2 しっかり版(600字くらい)
【該当箇所】
調整授業時数制度、および「余白」の創出について【意見】
調整授業時数制度の創設に賛成します。そのうえで、制度を使うための学校内の手続きや書類が新たな負担とならないよう、答申や今後の参考資料では、手続きを簡素にすることを明記してください。【理由】
小学校の担任として、単元によって「もう少し時間をかけたい」「ここは短くてよい」と感じる場面は多くあります。学校の判断で時数を調整できる仕組みは、子どもの実態に合わせた授業づくりに役立つと考えます。一方で、制度を使うために、計画書の作成や校内での細かな調整が必要になると、生まれるはずの「余白」がその作業で埋まってしまうおそれがあります。審議まとめが述べているとおり、余白は「仕組みを変えて生まれるもの」であるべきだと考えます。そのため、制度の活用に必要な手続きは最小限とし、学校が気軽に使える選択肢となるようにしてください。
しっかり版では、「賛成」に加えて「こうしてほしい」という具体的な提案を入れています。賛成と心配の両方を書くと、ただの感想ではなく、制度設計に生かせる意見になります。
4-3 書くときのコツ
意見を書くときに気をつけたいことを、いくつか挙げておきます。
- 該当箇所を書く:審議まとめのどの部分についての意見なのかを書きます。章や項目名、分かればページ番号も添えると、読み手に伝わりやすくなります。
- 1つの意見に1つの論点:いくつも論点がある場合は、まとめて書くより、分けて出したほうが整理されやすいと言われています。
- 理由は「現場の具体」で:「大変だから」だけでなく、「複数教科を担当していて」「週に何コマ」など、教室の具体的な状況を書くと説得力が増します。
- 個人が特定される情報は書かない:子どもや同僚、学校が特定されるようなエピソードは避けましょう。
第5章 よくある疑問
教員が個人として出してもいいの?
パブコメは、誰でも意見を出せる仕組みです。氏名や職業の入力は任意なので、学校名を書く必要もありません。学校や自治体を代表してではなく、一人の教員として、自分の考えを書けば大丈夫です。勤務時間外に、自分の端末から出すようにすると安心だと思います。服務上の扱いが気になる場合は、管理職に確認しておくとより安心です。
審議まとめを全部読んでいないけれど、出していいの?
大丈夫です。気になった一つの項目について、その部分の概要を読んで書くだけでも十分です。このシリーズの記事を入り口にしてもらうのも歓迎です。むしろ、「全部読んでからでないと出せない」と思ってしまうと、多くの先生が出せないままになってしまいます。
学年の先生や同僚と一緒に出してもいいの?
もちろんです。職員室で「この部分、どう思う?」と話題にするだけでも、自分の考えが整理されます。ただ、意見はそれぞれが自分の言葉で書くほうが、現場のいろいろな実感が伝わると思います。同じ文章をそのまま何人もが出すより、短くても一人ひとりの言葉で書くことをおすすめします。
第6章 提出の手順と締切
最後に、提出の手順をまとめておきます。
手順
- e-Govの「パブリック・コメント」のページで、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」に関する意見募集のページを開く
- 「意見公募要領」と「命令などの案」(審議まとめの本体や概要)を確認する
- 意見提出フォームに進み、意見の対象となる項目を選んで、意見と理由を入力する
- 内容を確認して送信する
氏名や職業などは任意項目です。なお、提出された意見は、氏名などの個人情報を除いたうえで公表される場合があります。
締切
2026年11月5日(木)23時59分までです。
締切の直前はアクセスが集中することもあるので、余裕をもって出すのがおすすめです。
意見募集のページ
- e-Gov パブリック・コメント「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』に関するパブリック・コメント(意見公募手続)の実施について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001511&Mode=0
おわりに
学習指導要領は、私たちが毎日立っている教室のルールそのものです。それなのに、決まるまでの過程に関わる機会は、ほとんどありません。パブコメは、その数少ない機会の一つです。
完璧な意見でなくて大丈夫です。「ここはぜひ実現してほしい」「ここは現場ではこう困りそう」。その一言が、10年後の教室を少しだけ変えるかもしれません。
シリーズの続きを読みながらでも、気になった回のテーマで一つだけ意見を書いてみる。そんな形で、一緒に声を届けられたらうれしいです。
参考にした資料
中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)
文部科学省「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』に関するパブリック・コメント(意見公募手続)の実施について」(令和8年10月6日、e-Gov)


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