「次期学習指導要領を読む」第16回です。国語の年間計画を眺めていると、単元がずらりと並んでいるのに、どこがどうつながっているのか見えにくい。そう感じている方も多いのではないでしょうか。
次の学習指導要領の国語では、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の学びを、「話や文章の機能」という軸でつなぐ方向が示されています。
たとえば、「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチをする」。領域も活動も違いますが、どれも「考えや主張の理由付けと吟味」という同じ機能に関わる学習です。だから、これらを関連付けて配置すれば、主張と根拠の関係など、前に学んだことを思い出しやすくなり、異なる領域で繰り返し使いながら理解を深められる。審議まとめは、そんな国語の姿を描いています。
説明文の単元で「筆者の主張と理由」をあれほど丁寧に読んだのに、次の作文では理由が一つも書けない。国語の授業で、そんなもどかしさを感じることはよくありますよね。私もしょっちゅうです。この「つながらなさ」に、審議まとめは正面から向き合っています。
国語の何が課題だったのか
領域ごとに学びが切れてしまう
審議まとめは、今の国語の課題として、「思考力、判断力、表現力等」の学習過程が「話すこと」「聞くこと」「話し合うこと」「書くこと」「読むこと」でそれぞれ異なっていて、各領域の学習が個別のものと意識され、関連付けて学びを深めることが難しい実態がある、と書いています。
たとえば今の「読むこと」の学習過程は、「構造と内容の把握」「精査・解釈」「考えの形成」「共有」と細かく分かれています。「書くこと」には、また別の学習過程があります。それぞれの領域で丁寧に指導しようとするほど、領域の間のつながりが見えにくくなってしまう、というのです。
文章の「種類」ごとに細切れになる
また、言語活動例が3領域別に整理されていて、各活動で扱っている話や文章の種類を関連付けにくいことや、目的を意識せず文章の種類ごとに活動を細分化して指導する実態も指摘されています。
「今日は報告文」「次は意見文」「その次は物語」。教科書どおりに進めていると、こうなりますよね。教科書の単元を順番にこなしていくと、子どもにとっては、それぞれが別々の「書き方」に見えてしまいます。
「考えて・判断して・表現する」流れになりにくい
さらに、子どもがどのような思考・判断・表現をする姿を目指すのかが分かりにくく、一連の流れとして「考えて・判断して・表現する」学びになりにくい、とも書かれています。
子どもたちの課題
全国学力・学習状況調査などからは、次のような子どもの課題も挙げられています。
- 自分の思いや考えに合う言葉を使って表現すること、話や文章の内容と既に知っていることを結び付けて整理し考えること
- 目的や場面に応じて考えを整理しながら話したり聞いたりすること、対話による合意形成や相互理解を図ること
- 目的に応じて文章を読み、自分の考えを持つこと、多様な情報や意見の妥当性・信頼性を確かめること
- 語彙の習得や読書習慣の定着
「話や文章の機能」とは

社会の中で、その話や文章が果たしている役割
では、ばらばらになった単元を、何でつなげばいいのでしょうか。そこで登場するのが「話や文章の機能」です。審議まとめは、様々な種類の話や文章が「社会の中でどのような機能を果たしているか」に着目して、その主な機能を整理する、としています。示されているのは、次のようなもの(一部抜粋、いずれも仮称)です。
| 機能(仮称) | 説明 |
|---|---|
| 事実や知識の整理と理解 | 物事の構造・しくみ・意味・特徴・因果関係などを整理し、筋道立てて分かりやすく示すことを通して、理解を促す |
| 考えや主張の理由付けと吟味 | 考えや主張を、理由や根拠と結び付けて筋道立てて示すことを通して、判断や納得を促し、必要に応じて考えや行動に働きかける |
| 思いや経験の表出と想像 | 経験や想像した出来事・情景、思いや心情などを多様な表現の工夫で描き出すことを通して、想像し、感じたり考えたりすることを促す |
| 協働による考えの深化や合意 | 他者と協働して考えや情報を出し合い、吟味・調整することを通して、理解や考えを深め、必要に応じて合意形成や意思決定に向かう |
注記によれば、国際的な言語教育・リテラシー教育でも、話や文章を、情報を伝え説明するもの、論証したり説得したりするもの、経験や出来事を語ったり描いたりするもの、といった類型で整理する見方があるそうです。
「種類」ではなく「働き」で見る
この整理のよさは、文章の「種類」ではなく「働き」で見ることにあると思います。
説明文、報告文、記録文は、種類は違っても「事実や知識の整理と理解」という働きでつながります。論説文、意見文、提案のスピーチ、話し合いでの主張は、「考えや主張の理由付けと吟味」でつながります。物語を読むこと、詩を書くこと、経験を語ることは、「思いや経験の表出と想像」でつながります。
こうして並べると、これまで別々に教えていた単元が、急に仲間同士に見えてきますよね。子どもも教師も、「この単元は、前のあの単元と同じ働きの文章を扱っている」と意識しやすくなります。
学習過程もシンプルに
学習過程についても、領域ごとに細かく分かれていたものを、次のように再整理する方向です。

- 話すこと、書くこと:考えの形成/表現・推敲
- 聞くこと、読むこと:構造と内容の理解・解釈/考えの形成
- 話し合うこと:考えの形成(話すことと聞くことがほぼ同時に行き来するので、詳細な学習過程は示さない)
どの領域にも「考えの形成」が共通して入っていることに気づきます。読むことも、書くことも、話すことも、最終的には「自分の考えをつくる」ことに向かっている。その共通点が、学習過程の示し方からも見えるようになっています。
「知識及び技能」は二つの側面で
運用しながら深める側面
「知識及び技能」についても、指導をイメージしやすくするために、次の二つの側面で整理する方向です。
一つ目は、運用しながら深める側面です。各領域の思考・判断・表現の中で、どの知識・技能を何のために使うのかが分かるように整理する。話や文章の構造、表現の仕方などに関する知識・技能を、実際に話したり書いたり読んだりする中で結び付けて使い、理解を深めたり、考えを整理したり、表現をよりよくしたりする学習の充実を促す、とされています。
教養として深める側面
二つ目は、教養として深める側面です。言葉や文字の仕組みを知ること、古典や読書に親しむこと、文字を整えて書くことなどを、その意義や価値と結び付けて理解できるように整理する、とされています。
漢字の例
具体的な例として、漢字が挙げられていました。今は「漢字の読みと書き」と「漢字の偏やつくり、由来や特質」が別の内容として示されていますが、これらを統合し、漢字の構成や意味と関連付けながら読み方と書き方を理解し、身に付けられるよう、一括りの事項として整理する、という方向です。
「さんずいは水に関係があるんだよ」と教えると、子どもの目が少し輝く。そんな経験がある方も多いですよね。偏やつくりの意味が分かると、新しい漢字も覚えやすくなる。多くの先生が実感していることが、内容の整理として表れているのだと思います。
教科書も「機能」で再構成される
「基幹教材」と「関連教材」
教科書についても、「話や文章の機能」を軸に、相互に関連する教材を統合的に扱い、精選・再構成することが考えられる、とされています。
注目したいのは、「基幹教材」と「関連教材」という考え方です。
- 基幹教材:身に付けるべき資質・能力の育成を主として担う教材
- 関連教材:各校の教育課程や子どもの状況に応じて弾力的に活用できる教材
たとえば、「文章の構成や論理の展開を的確に捉える力」をねらいとする場合、主張と根拠の関係や段落のつながりが比較的明確な論説文を「基幹教材」とし、同じテーマで構成が異なる論説文や、より複雑な構成の論説文を「関連教材」とする。基幹教材で育てた力を、関連教材で繰り返し使って定着させたり、発展的に高めたりする、というイメージです。
これは、第4回で書いた「教科書を全部ではなく、選んで使う」を、国語の教科書の側で後押ししてくれる仕組みだと感じました。
学年を超えた系統も整理
また、小学校でしているスピーチや手紙を書く活動と似た活動が、中学校や高校の教科書にも載っていて、発達段階に応じた違いが十分でない場合もあると指摘されています。小中高を通じた系統を明らかにし、各段階で何をどう発展させるのかを示すことが望ましい、とされています。
授業づくりで、今からできること
1. 年間の単元を「機能」で色分けしてみる
私はまず、国語の年間指導計画を見ながら、各単元を「話や文章の機能」で色分けしてみようと思っています。すると、「この説明文の単元と、2か月後の報告文の単元は、同じ『事実や知識の整理と理解』だ」といったつながりが見えてきます。
2. 「前に学んだあの単元」を思い出させる
単元の始めに、「この文章は、前に読んだ○○と同じ働きをしているね。あのとき、どんなことに気をつけて読んだっけ?」と問いかける。意見文を書く単元なら、「論説文を読んだとき、筆者はどうやって主張を納得させていた?」と、読むことで学んだことを書くことにつなげる。
3. 「読む→書く→話す」を一つの単元で
可能なら、一つの単元の中で、「論説を読む」「意見文を書く」「提案のスピーチをする」を組み合わせてみる。同じ「理由付けと吟味」の力を、三つの領域で繰り返し使うことで、子どもの中でつながりが生まれやすくなると思います。
うまくいかないこともあります
ただ、「話や文章の機能」という整理は、まだ仮称の段階で、具体的にどの文章をどの機能に位置付けるのかは、これから示されることになります。実際の文章は、一つの機能だけを果たしているとは限らず、複数の機能を複合的に果たしている場合もある、と審議まとめ自身も書いています。
だからこそ、「この文章は、どの機能?」と子どもと一緒に考えること自体が、よい学びになるかもしれません。説明文の中にある筆者の主張に気づいたり、物語の中にある事実の描写に目を向けたり。機能を考えることは、文章を読む力そのものを育てることにもつながると思います。
おわりに 「この文章は、何のためにあるのか」
「話や文章の機能」という考え方を突き詰めると、「この文章は、何のためにあるのか」「この話は、誰に何を伝えようとしているのか」という問いに行き着きます。
それは、子どもたちが学校を出たあとも、社会の中で出会うあらゆる言葉に対して持ち続けてほしい問いです。ニュースも、広告も、SNSの投稿も、それぞれ何かの機能を果たしています。その働きを見抜く力を育てること。国語の再構造化は、そこに向かっているのだと思います。
次回は、国語のもう一つの大きなテーマ、「AIの要約をコピペする子に、国語ができること」について書きます。
参考にした資料
中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)


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