#6 通知表の「主体的に学習に取り組む態度」はどうなる? 個人内評価と「◯」の付記を読み解く

教育の動き・学習指導要領

「次期学習指導要領を読む」第6回です。学期末、通知表の「主体的に学習に取り組む態度」の欄を前に、手が止まってしまう。ABCのどれをつけるか、根拠を探してノートや提出物をめくり直す。そんな時間を過ごした方も多いですよね。

審議まとめが示す方向では、「主体的に学習に取り組む態度」を各教科でABCをつけて評価する今のやり方は、大きく変わります。

  • 「学びに向かう力」は、各教科ごとの目標に準拠した評価ではなく、総合所見欄での「個人内評価」を基本にする
  • そのうえで、思考・判断・表現の過程で「学びに向かう力」が特に表れた場合に、「思考・判断・表現」の観点別評価に「◯」を付記する

通知表の時期になるたびに、「態度の評価、どうしよう」と悩んできた先生は多いと思います。私もその一人です。今回の方向性は、その悩みに正面から向き合ったものだと感じました。ただし、読み進めると、「評価しなくてよくなる」わけではないことも分かってきます。


今の評価で、何が問題になっていたのか

形式的な「勤勉さ」の評価にとどまっている

前回も少し紹介しましたが、審議まとめは今の「主体的に学習に取り組む態度」の評価について、かなり率直に課題を書いています。

  • 「粘り強さ」が、ノート提出の頻度や課題の締め切りを守ることなど、形式的な「勤勉さ」の評価にとどまっている例がある
  • 「自己調整」を振り返りで評価しようとすると教師の負担が大きく、子どもが教師の期待する表現を過度に意識する傾向がある

さらに、「目標に準拠した評価」として評定を左右するために、評価理由を客観的に説明しやすい数えられる材料に頼らざるを得ないことや、評価の状況によっては子どもの良さや成長を肯定的に伝えにくく、かえって学ぶ意欲を下げてしまう場合があることも指摘されています。

不登校の子の評価がつけられない

もう一つ、見落としがちな課題も挙げられています。教室での学習活動に参加することが難しい不登校の子について、「主体的に学習に取り組む態度」の評価が難しく、評定もつけられないという実態です。

教室にいないと評価できない観点がある。言われてみればその通りなのですが、私はこの点をあまり意識できていませんでした。そのことが、子どもの学びを評価の仕組みから取りこぼしてしまっていた、ということです。


新しい評価の考え方

図1:「学びに向かう力、人間性等」の特質に応じた新たな観点別評価
図1:「学びに向かう力、人間性等」の特質に応じた新たな観点別評価。「学びに向かう力、人間性等」は個人内評価とし、「思考・判断・表現」の観点に「◯」を付記する仕組みが示されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.465[資料1-6-2])

では、新しい評価はどんな形になるのでしょうか。ポイントは二つあります。

1. 総合所見欄での「個人内評価」を基本に

審議まとめは、「学びに向かう力」の評価について、各教科ごとに「目標に準拠した評価」として行うのではなく、多様な子ども一人一人の良さや成長を自然な形で見取り、肯定的に評価できるよう、総合所見欄で教育課程全体を通じた「個人内評価」を行う、という方向を示しています。

「個人内評価」とは、ほかの子や一定の基準と比べるのではなく、その子自身の良さや、以前と比べた成長を見る評価です。今でも、感性や思いやりなどは個人内評価で扱うことになっていますが、その考え方を「学びに向かう力」全体に広げる、ということです。

評価観点の名前についても、「感性・思いやり」と「主体的に学習に取り組む態度」に分ける必要がなくなるため、単に「学びに向かう力・人間性」などと呼ぶことが考えられる、とされています。

2. 「思考・判断・表現」に「◯」を付記する

とはいえ、「学びに向かう力」の一部は、各教科の学習の中で見取ることができる場合もあります。特に、思考・判断・表現は、問題を見つけて解決したり、考えをまとめて表現したりする過程で、試行錯誤しながら発揮される力です。だから、前回紹介した「学びに向かう力」の4つの要素と、特に相性がよいとされています。

そこで、4つの要素のうち、学習の過程で表に出やすい3つ、

  • 初発の思考や行動
  • 学びの主体的な調整
  • 他者との対話や協働

が、思考・判断・表現の過程で特に表れた場合に、「思考・判断・表現」の観点別評価に「◯」を付記する、という方向が示されています。たとえば、「思考・判断・表現」が「B」の子に、3つの要素の継続的な発揮が見られた場合は「B◯」となる、というイメージです。

表に出にくい「学びを方向付ける人間性」は、総合所見欄などでの個人内評価で扱います。


「◯」をつけるときのルール

「◯」と聞くと、「また新しい評価材料を集めなければいけないの?」と身構えてしまいますよね。私も最初はそう思いました。でも、審議まとめは、「◯」の付記が、また新たな「評価材料集め」にならないよう、かなり丁寧に注意書きを重ねています。

図2:「学びに向かう力、人間性等」の「◯」の付記の運用について
図2:「学びに向かう力、人間性等」の「◯」の付記の運用について。授業改善、見取り、評価の総括という三つの段階で、「◯」をどう扱うかが整理されています(出典:中央教育審議会 教育課程部会『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』(令和8年10月5日)第3部 資料編 p.466[資料1-6-3])

「規準」に照らすのではなく、「見取る姿」を参考にする

もし、ほかの観点と同じように評価規準をつくって、達成したら「◯」とするやり方にすると、評価の付け方が「ABC」から「◯あり・◯なし」になるだけで、形式的で過度な評価材料集めはなくならない。審議まとめは、そう指摘しています。

一方で、着眼点をまったく示さなければ、妥当性も信頼性も確保できません。そこで、国が各教科ごとに、教師が見取るための着眼点として「具体的な児童生徒の姿」(=「見取る姿」)を示すことになっています。

例として、中学校数学の「見取る姿」のイメージが載っています。

  • 事象に知的好奇心や目的意識をもって問題を見いだし、数学を活用しようとしている
  • 他者と数学的論拠に基づいて協働し、問題解決を進めようとしている
  • 問題発見・解決の過程を振り返って評価・改善しようとしている

小学校の各教科でも、同じような形で示されることになりそうです。

単元ごとにつけるものではない

審議まとめは、過度な評価材料の収集につながらないよう、単元のまとまりごとの「見取る姿」は示さず、単元ごとに「◯」を付記する運用も求めない、としています。

長い期間を通して、「継続的な発揮」を見る

「◯」をつける判断の仕方も、今の観点別評価とは違います。

  • 特定の学習場面や課題だけで見取ろうとすると、ずれが生じやすいので、できるだけ長い期間をかけて全体として見取る
  • 一定の水準に達したかどうかを判断するのではなく、「見取る姿」に沿った行動が徐々に増え、いろいろな学習場面で安定して表れるようになった「継続的な発揮」を見る

つまり、「この日のこの課題でできたから◯」ではなく、「この学期を通して、こういう姿が繰り返し見られるようになったから◯」という判断になります。

毎日子どもを見ている担任だからこそできる判断、と言えそうですよね。

全員に「◯」をつけることが目的ではない

もう一つ、大事な注意があります。子どもが全部またはほとんどの教科で「◯」を獲得することが目的になったり、「見取る姿」が見られないのに、やる気を出させるためだけに「◯」をつけたりすることは、運用上想定していない、と明記されています。

「◯」は、その教科で「学びに向かう力」の3要素が繰り返し表れたことを意味し、その後の学習でも伸びが期待できるという、前向きな意味づけができるもの。審議まとめは、「総括的な評価」としての性質はこれまでより弱く、さらなる成長を促す「形成的な評価」の性質もあわせ持つもの、と説明しています。


「◯」は評定に影響するのか

「思考・判断・表現」を通して、間接的に影響する

そして、やはりいちばん気になるのは、「◯」が評定にどう影響するかですよね。審議の中では、「評定に影響させるべきではない」という意見と、「影響させるべきだ」という意見の両方があったようです。

審議まとめの整理はこうです。「◯」は独立した評価観点として評定に影響するのではなく、「思考・判断・表現」と切り離せないものとして、「思考・判断・表現」の観点別評価を通じて評定に影響する。

自動的に一段階上がるわけではない

審議まとめには、中学校の5段階評定を例にした説明があります。「知識・技能」と「思考・判断・表現」が「A・B」の場合、評定は4か5が想定されるが、「思考・判断・表現」が「B◯」の場合には、総合的な判断として5になることがありうる。ただし、「◯」があれば自動的に一段階上げる、という性質のものではなく、「B◯」でも4になることはありうる、という説明です。

小学校(3〜6年)の評定は3段階なので、この例をそのまま当てはめることはできません。小学校でどう運用するかは、今後国が示す整理を待つ必要があります。評定の具体的な決め方は、これまでどおり教育委員会の方針と教師の専門的・総合的な判断で定めるもの、とされています。


いつから、どう準備すればいいのか

「見取る姿」は令和10年度末までに周知

審議まとめは、「見取る姿」や運用方法の整理について、改訂後すみやかに文部科学省で検討を始め、小中学校については令和10年度末までに確実に学校や教育委員会に周知し、令和12年度からの小学校の全面実施までに十分な準備期間を設けるべきだ、としています。

また、国が示した「見取る姿」をもとに、各学校が独自の着眼点を設定するよう一律に求めることは適当でなく、各学校が希望すればそのまま使えるものとして作成する、とも書かれています。学校ごとに一から評価の着眼点をつくる作業は、求められない方向です。

今からできること

制度が変わるのはまだ先ですが、考え方は今からでも取り入れられそうです。私が意識してみたいと思っていることを挙げてみます。

  • 「態度」の評価材料を、提出物の数や締め切りだけに頼っていないか、見直してみる
  • 思考・判断・表現の場面で、子どもが自分から問いを立てたり、やり方を変えたり、友達と考えを深めたりする姿を、学期を通して少しずつメモしておく
  • 所見では、ほかの子との比較ではなく、その子自身の良さと成長を書くことを、より意識する

よくありそうな疑問を整理してみる

ここまで読んで、いくつか疑問が浮かんだ方も多いと思います。私自身が読みながら引っかかったことを、疑問の形で整理してみます。あくまで審議まとめの段階での方向性です。

Q1. 「主体的に学習に取り組む態度」のABCはなくなるの?

審議まとめの方向性では、「学びに向かう力」について各教科ごとに目標に準拠したABCの評価は行わず、総合所見欄での個人内評価が基本になります。そのうえで、思考・判断・表現の観点に「◯」を付記する形です。評価観点としては「学びに向かう力・人間性」などとして残す方向です。

Q2. 「◯」は全員につけるもの?

いいえ。審議まとめは、全部またはほとんどの教科で「◯」を獲得することが目的になったり、「見取る姿」が見られないのに動機づけのためだけに「◯」をつけたりすることは想定していない、と明記しています。

Q3. 毎単元、「◯」をつけるかどうか判断するの?

いいえ。単元ごとの「見取る姿」は示さず、単元ごとに「◯」を付記する運用も求めない方向です。評価期間を通じた「継続的な発揮」を見取ります。

Q4. 学校で「見取る姿」を一からつくる必要はある?

国が各教科ごとに示し、学校が希望すればそのまま使えるものとして作成する方向です。各学校に独自の着眼点の設定を一律に求めることは適当でない、とされています。一方で、学校教育目標などに照らして文言を工夫することは可能です。

Q5. 不登校の子の評価はどうなる?

今の「主体的に学習に取り組む態度」は、教室での活動に参加しにくい不登校の子については評価が難しく、評定もつけられないという実態がありました。新しい評価の方向性は、その改善にも寄与することが期待される、と書かれています。


保護者にどう伝えるか

「◯がついていないのは、うちの子にやる気がないということですか?」。制度が変わったら、きっとこんな質問が出てきますよね。私なりに、伝えるときのことを考えてみました。

一つ目は、「やる気の評価をやめた」のではなく、「やる気を、より自然な形で見るようにした」と伝えることです。提出物の数や発言の回数ではなく、学期を通して、自分から問いを立てたり、工夫したり、友達と考えを深めたりする姿を見ている。そう伝えると、評価の考え方が変わったことが伝わりやすいと思います。

二つ目は、「◯」の意味を正しく伝えることです。「◯」は、その教科で学びに向かう姿が繰り返し見られたことを示すもので、ついていないから「やる気がない」という意味ではありません。そして、所見では、その子自身の良さや成長を書いていることを、あわせて伝えたいところです。


気になるところもあります

一方で、読みながら気になった点もあります。「長い期間を通して継続的な発揮を見る」というのは理想的ですが、実際には、学期末にまとめて思い出して判断する、ということになりかねません。日々の見取りを、負担なく積み重ねる工夫が必要だと思います。

また、「◯」がつかなかった子や保護者に、どう説明するかも課題になりそうです。「◯がない=やる気がない」と受け取られてしまうと、制度の趣旨と逆になってしまいます。審議まとめも、「評価をしなくてもよくなる」「軽視してよい」といった誤った理解にならないよう、趣旨を周知徹底すべきだと書いています。保護者への説明の仕方も含めて、学校全体で考えていく必要がありそうです。


おわりに 「数えられるもの」から「見えてくるもの」へ

今の「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、どうしても「数えられるもの」に頼りがちでした。提出の回数、発言の回数、振り返りの文字数。審議まとめの方向性は、それを「学期を通して見えてくるもの」に切り替えようとするものだと思います。

それは、評価の負担を減らすためだけではありません。子どもの良さや成長を、自然な形で見取り、肯定的に伝えるため。そのために、教師の「見取る力」がこれまで以上に問われることになります。

次回は、評価のもう一つの大きな変化として、「指導と評価の計画」の見直しや形成的評価、学年末の評定について書きます。


参考にした資料

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日)

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