【はじめての授業づくり #5】はじめての学習指導案 項目ごとに「何を書くか」と書き方の例

【はじめての授業づくり #5】はじめての学習指導案 項目ごとに「何を書くか」と書き方の例 授業づくり

「来月、研究授業をお願いします」。そう言われて、学校の指導案の形式のファイルをもらう。開いてみると、「単元について」「児童の実態」「指導観」「本時の展開」……。項目がたくさん並んでいて、どれに何を書けばいいのか分からない。

学習指導案は、教育実習や初任者研修で必ず書くものですが、書き方をきちんと教わる機会は、案外少ないように思います。先輩の指導案を見ながら、見よう見まねで書く。それで何とかなることもありますが、「この項目、何のためにあるんだろう」と思いながら書くのは、なかなかしんどいものです。

連載「はじめての授業づくり」の最終回は、学習指導案です。指導案のそれぞれの項目に、何を書けばいいのか。書き方の例と一緒にまとめてみます。

研究授業の準備の進め方や、当日、協議会のことは、以前の記事に書いています。

指導案は「この連載の4回分」をまとめたもの

最初に、安心してほしいことがあります。学習指導案に書くことのほとんどは、この連載の1〜4回目でやってきたことです。

  • 教材研究(#1)→「単元について」「教材について」
  • 単元計画(#2)→「単元の目標」「単元の指導計画」
  • 1時間の授業の流し方(#3)→「本時の展開」
  • 評価(#4)→「評価規準」「本時の評価」

つまり、指導案は、ゼロから書くものではありません。教材研究をして、単元計画を立てて、1時間の授業を考えて、評価の場面を決めていれば、あとはそれを決まった形に書き写すだけです。

逆に言うと、指導案が書けないときは、たいてい、その前の段階がまだできていないということです。指導案の項目で手が止まったら、その項目に対応する回に戻ってみてください。

指導案の基本的な項目

指導案の形式は、学校や自治体によって少しずつちがいます。でも、多くの指導案には、だいたい次の項目があります。

  1. 単元名
  2. 単元の目標
  3. 単元の評価規準
  4. 単元について(児童観・教材観・指導観)
  5. 単元の指導計画(全〇時間)
  6. 本時の学習(本時の目標・本時の展開・本時の評価)
  7. 板書計画

まず、学校の形式を確認することから始めます。学校で決まった形式があれば、それに合わせる。研究主題がある学校なら、研究主題との関わりを書く項目が加わることもあります。前の年の研究授業の指導案を見せてもらうと、形式も、書く分量の目安も分かります。

では、項目ごとに見ていきます。

1. 単元名

教科書の単元名をそのまま書くことが多いです。教材名がある場合は、「単元名 教材名」のように並べて書きます。

学校によっては、単元名を、子どもの学習の目的が分かる形に書きかえることもあります。たとえば、国語で「物語の登場人物の気持ちの変化を読もう」のように。学校の決まりに合わせてください。

2. 単元の目標

単元の目標は、3つの観点に合わせて3つ書くのが一般的です。

  • (1)知識及び技能に関する目標
  • (2)思考力、判断力、表現力等に関する目標
  • (3)学びに向かう力、人間性等に関する目標

指導書に書いてある単元の目標を、もとにして書きます。書き方は、「〜することができる」という形が多いです。学習指導要領のどの内容に当たるかを、目標の後ろにかっこで書くこともあります(例:「〜することができる。〔C読むこと(1)エ〕」)。

教材研究(#1)で確かめた学習指導要領の内容が、ここで生きてきます。

3. 単元の評価規準

評価規準は、3つの観点ごとに、表の形で書くことが多いです。

知識・技能 思考・判断・表現 主体的に学習に取り組む態度
〜を理解している。 〜について、〜している。 〜しようとしている。

書き方の決まりは、評価の回(#4)で書いた通りです。知識・技能は「〜している」「〜することができる」、思考・判断・表現は「〜について、〜している」、主体的に学習に取り組む態度は「〜しようとしている」。

単元の目標と評価規準は、ほぼ同じ内容を、ちがう言い方で書くものだと考えると分かりやすいです。目標は「〜することができる」(できるようになってほしいこと)、評価規準は「〜している」(その姿が見られたら、おおむね満足)。

4. 単元について(児童観・教材観・指導観)

指導案の中で、いちばん書くのに時間がかかるのが、この項目だと思います。多くの指導案では、次の3つに分けて書きます。順番は学校によってちがいます。

児童観(児童の実態)

クラスの子どもたちが、今どんな状態にあるかを書きます。この単元に関係することについて、子どもたちは何ができていて、何が課題なのか。

書くときのコツは、この単元に関係することだけを書くことです。「明るく元気なクラスである」「友だちと仲がよい」といった、クラス全体の様子を長々と書く必要はありません。単元のねらいに関係する、学習の状況を書きます。

書き方の例(算数・小数のかけ算):

本学級の児童は、整数のかけ算の計算は、ほとんどの児童が正しくできる。また、前の単元の「小数×整数」でも、多くの児童が筆算で計算できるようになった。一方で、計算の仕方を言葉で説明することには課題があり、「なぜ小数点をその位置に打つのか」を問うと、「そう習ったから」と答える児童が多い。

※例として作ったものです。

数字があると、さらに分かりやすくなります。「前の単元のテストで、計算の問題は平均〇点だったが、説明の問題は〇点だった」など。事前にアンケートや小テストをしておくのも一つの方法です。

教材観

この単元・教材には、どんな価値があるかを書きます。教材研究(#1)でやったことの多くは、ここに書けます。

  • 学習指導要領のどの内容に当たるか、前後の学年とのつながりはどうか
  • 教材の特徴(物語なら構成や表現の特徴、算数なら問題の系統など)
  • この教材で、子どもにどんな力がつくか

書き方の例(算数・小数のかけ算):

本単元は、学習指導要領 第5学年「A数と計算」の、小数の乗法に関する内容を受けて設定した。第4学年までに学習した整数の乗法や、小数×整数の計算をもとに、乗数が小数の場合に計算の意味を広げていく単元である。特に、乗数が1より小さい場合に積が被乗数より小さくなることは、「かけ算をすると答えは大きくなる」という児童のこれまでの見方を見直すきっかけとなる。

※例として作ったものです。内容の記号などは、実際の学習指導要領で確かめてください。

指導観

児童観と教材観をふまえて、どう指導するかを書きます。この単元で、どんな手だてを使って、子どもにどんな力をつけるのか。

指導観は、「児童観で書いた課題を、教材観で書いた教材の価値を生かして、こういう手だてで解決する」という流れで書くと、まとまりやすくなります。

書き方の例:

そこで本単元では、児童が既習の整数のかけ算と結びつけて計算の仕方を考えられるよう、数直線や面積図を用いて考える場を設ける。また、乗数が1より小さい場合を扱う時間では、積の大きさを予想させてから計算させることで、児童の見方とのずれを生み、「なぜ小さくなるのか」を自ら考えられるようにする。

※例として作ったものです。

児童観・教材観・指導観の3つが、一本の線でつながっていると、読む人に伝わる指導案になります。児童観で書いた課題が、指導観で解決されている。教材観で書いた価値が、指導観の手だてに生きている。書き終わったら、この3つを並べて、つながっているか確かめてみてください。

5. 単元の指導計画

単元計画(#2)でつくった表を、ここに書き写します。多くの指導案では、次のような表にします。

次 時 主な学習活動 評価(観点・方法)
1 1 〜 〜
2 2〜7 〜 〜
3 8〜10 〜 〜

本時(研究授業をする時間)がどこに当たるかを、「本時」と書いたり、色をつけたりして示します。

評価の欄には、その時間に記録に残す評価を書きます。評価の回(#4)で書いた「記録に残す評価」と「指導に生かす評価」の区別が、ここで生きてきます。全部の時間に評価を書く必要はありません。記録に残す時間だけ書くか、記録に残す時間に「◎」などの印をつけて区別します。

6. 本時の学習

いよいよ、研究授業をする1時間の計画です。

本時の目標

その1時間で、子どもに何ができるようになってほしいかを、1〜2文で書きます。単元の目標より、ずっと具体的に書きます。

例:乗数が1より小さいときの積の大きさについて、数直線を用いて考え、説明することができる。

本時の展開

指導案の中心です。多くの指導案では、次のような表で書きます。

時間 学習活動・主な発問(・予想される児童の反応) 指導上の留意点(◇評価)
導入 5分 1 問題を知る。 ・〜
展開 30分 2 〜 ・〜 ◇〜
まとめ 10分 3 〜 ・〜

左の列には、子どもの学習活動と、先生の主な発問、そして予想される子どもの反応を書きます。右の列には、指導上の留意点(先生が気をつけること、手だて)と、評価を書きます。

書くときのコツを、3つ挙げておきます。

1つ目は、学習活動は子どもを主語にして書くこと。「〜を説明する」ではなく、「〜について考え、ノートに書く」のように、子どもが何をするかを書きます。

2つ目は、予想される反応を、具体的に、複数書くこと。中心発問に対して、子どもがどう答えるか。正しい考えだけでなく、まちがえそうな考えも書いておきます。予想される反応が書いてあると、参観する先生も、授業の見どころが分かります。それに、予想を書くことで、自分の授業の準備にもなります。

3つ目は、指導上の留意点は、手だてを具体的に書くこと。「分からない児童に支援する」ではなく、「手が止まっている児童には、数直線のヒントカードを渡す」のように。何を使って、どうするのかを書きます。

時間配分は、1時間の授業の流し方(#3)で書いた、導入5分・展開30分・まとめ10分を基本にします。研究授業では、緊張で時間がずれやすいので、展開の中で「時間が押したら省く活動」を決めておくと安心です。

本時の評価

本時で記録に残す評価があれば、その観点と、評価の方法(ノート、発言、振り返りなど)、そして「Bの姿」と「Cの子への手だて」を書きます。

例:乗数が1より小さいときの積の大きさについて、数直線を用いて考え、説明している。【思考・判断・表現】(ノート)
 Cの児童への手だて:数直線のどこを見ればよいかを示し、乗数が1のときと比べるよう声をかける。

7. 板書計画

最後に、板書計画です。黒板の形の枠の中に、授業の終わりの板書がどうなっているかを書きます。

板書計画は、1時間の授業の流し方(#3)で書いたように、授業の設計図です。めあて、子どもの考え、まとめが、黒板のどこに、どう書かれるか。板書計画を見れば、授業の流れが分かるようにします。

手書きでも、パソコンでつくっても、どちらでもかまいません。私なら、実際に黒板に書いてみて、写真を撮って貼りつけます。黒板に書いてみると、字の大きさや、書ける量の感覚がつかめるからです。

指導案を書く順番

ここまで、指導案の項目を、上から順番に見てきました。でも、書く順番は、上からではありません。

私なら、次の順番で書きます。

  1. 本時の目標と、本時の展開(いちばん考えたいところから)
  2. 板書計画(展開と合わせて)
  3. 単元の指導計画と、本時の位置
  4. 単元の目標と評価規準
  5. 単元について(児童観・教材観・指導観)
  6. 単元名(最後に確かめる)

「単元について」を最初に書こうとすると、何を書けばいいか分からず、手が止まります。でも、本時の展開や単元計画を先に考えておくと、「この単元で、子どものこういう課題を、こういう手だてで解決したいんだ」ということが、自分の中ではっきりします。それを文章にしたのが、「単元について」です。

ちなみに、post 768 の記事でも「指導案は本時から書かない」と書いています。あちらは、単元の目標から順に考えるという意味で、こちらは「文章にする順番」の話です。考える順番は単元から、文章にする順番は本時から。少しややこしいですが、両方とも、指導案を書くときに迷わないためのコツです。

指導案でやりがちなこと

ここで、はじめての指導案でやりがちなことを3つ挙げておきます。

児童観が、クラスのよいところの紹介になる。「明るく素直な子どもたちで、何事にも一生懸命取り組む」。読んでいて気持ちはいいのですが、単元のねらいとはつながりません。児童観は、この単元に関係する「できていること」と「課題」を書く場所です。

予想される反応が、正解だけになる。中心発問に対して、先生が期待する答えだけを書いてしまう。でも、実際の授業では、まちがえた考えや、思いがけない考えが出てきます。それをどう受けとめ、どう生かすかが、授業の見どころです。予想される反応には、まちがえそうな考えも書いておきます。

本時の展開が、台本になる。先生のせりふを一字一句書きこんでしまう。指導案は台本ではありません。発問は書きますが、それ以外は「〜を確認する」「〜を板書する」くらいの書き方で十分です。台本のように書くと、当日、子どもの反応に合わせて動けなくなります。

指導案は、読む人のために書く

最後に一つ。指導案は、読む人のために書くものです。

研究授業の指導案を読むのは、参観する先生たちです。参観する先生は、指導案を見ながら授業を見ます。だから、指導案には、「この授業で何を見てほしいか」が分かるように書きます。中心発問はどれか。どこで子どもの考えが分かれるか。どこで評価するか。それが分かれば、参観する先生は、授業の見どころを押さえて見ることができます。

それから、指導案は長ければいいわけではありません。学校によって分量の目安はありますが、読む人が授業の前に5分で読めるくらいが理想だと思っています。書きたいことが多いときは、「この授業で一番見てほしいこと」に関係することを残して、それ以外は削る。削ることも、指導案を書く力のうちです。

おわりに

はじめての学習指導案を、項目ごとにまとめてみました。

単元名、単元の目標、評価規準、単元について(児童観・教材観・指導観)、単元の指導計画、本時の学習、板書計画。どの項目も、この連載の1〜4回目でやってきたことを、決まった形に書いたものです。

そして、書く順番は本時から。読む人のために、短く、見どころが分かるように。

指導案は、研究授業のためだけのものではありません。指導案を一度書いてみると、自分がふだんの授業で何を考えているか、何を考えていないかが、はっきり見えてきます。年に1回の研究授業は、ふだんの授業を見直すいい機会です。

連載「はじめての授業づくり」は、これで終わりです。教材研究、単元計画、1時間の授業、評価、学習指導案。授業づくりの「はじめて」は、どれも最初は大変です。でも、一度通してやってみると、2回目からは、ずっと楽になります。この連載が、そのはじめの一歩の手助けになればうれしいです。

連載「はじめての授業づくり」

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