来週から新しい単元。教科書を開いて、指導書を開いて、さて、何から手をつければいいのか。
「教材研究をしっかりしましょう」とはよく言われます。でも、「しっかり」が何を指すのかは、案外だれも教えてくれません。指導書を最初から最後まで読む? 教科書の問題を全部解く? ネットで実践例を探す? 気づけば夜の10時、ということもあります。
そこで、新しく「はじめての授業づくり」という連載を始めます。教材研究、単元計画、1時間の授業の流し方、評価、学習指導案。授業づくりの「はじめて」を、全教科向けに、手順の形でまとめていく5回です。
1回目は、教材研究です。考え方や心構えについては、以前「先生1年目のこと」の連載で書きました。
今回は、もっと具体的に。教科書の1単元を前にしたとき、何を、どの順番でやるかの話です。
教材研究は「4つの順番」で考える
先に全体像を書いておきます。私なら、1つの単元の教材研究を、次の順番で進めます。
- 子どもとして教科書を読む・解く(30分)
- 学習指導要領と指導書で「ねらい」を確かめる(30分)
- 単元の中の「山場」を1つ決める(20分)
- 子どもがつまずきそうなところを予想する(20分)
合わせて2時間弱。もちろん、教科や単元の大きさによって変わりますが、最初の1単元はこのくらいを目安にするといいと思っています。
大事なのは、この順番です。いきなり指導書から読むと、指導書の考えに引っぱられて、子どもの目線が見えなくなります。いきなりネットで実践例を探すと、おもしろそうな活動に目を奪われて、単元のねらいがぼやけます。まず自分の目で教材を見て、次にねらいを確かめる。この順番を守るだけで、教材研究はかなりすっきりします。
では、1つずつ見ていきます。
手順1 子どもとして教科書を読む・解く
最初にやることは、とてもシンプルです。教科書を、子どもになったつもりで読む・解く。
先生になると、教科書を「教える側」の目で見てしまいます。でも、子どもにとっては初めて見るページです。どこで「えっ」と思うか、どこで手が止まるか。それは、子どもになったつもりで読まないと分かりません。
教科ごとに、やることは少しずつちがいます。
- 国語:本文を声に出して読む。読めない漢字、意味の分からない言葉、引っかかった表現に印をつける。読み終わったら、自分が感じたことを1〜2行メモする。
- 算数:教科書の問題を、全部ノートに解いてみる。答えが分かっていても、子どもと同じように式と図をかく。「この問題、3年生のやり方でも解けるな」「ここで単位をまちがえそう」と気づいたことをメモする。
- 社会:本文を読み、写真・グラフ・地図などの資料を1枚ずつ見る。「この資料から何が読み取れるか」を、子どもと同じように書き出してみる。
- 理科:実験の手順を読み、結果を予想してみる。できれば予備実験をしておく。教科書通りにやっても、うまく結果が出ないことは案外あります。
この段階では、指導書は開きません。自分の目で見たことだけを、教科書の余白や付箋にメモしていきます。ここでメモしたことが、後の「つまずきの予想」の材料になります。
ちなみに、算数の問題を全部解くのは、思っているより時間がかかります。時間がないときは、単元の最初の問題と、山場になりそうな問題、最後の練習問題の3つだけでもいい。それだけでも、単元の流れがかなり見えてきます。
手順2 学習指導要領と指導書で「ねらい」を確かめる
自分の目で教材を見たら、次はこの単元で何を身につけさせるのかを確かめます。
学習指導要領で「どの学年の、どの内容か」を見る
まず、学習指導要領のどの内容に当たる単元なのかを確かめます。指導書には、たいてい「学習指導要領との関連」として、内容の記号(たとえば国語なら「C読むこと(1)エ」、算数なら「A数と計算(3)」など)が書いてあります。それを見て、学習指導要領の該当する部分を読みます。
学習指導要領を読むときのコツは、前後の学年も一緒に見ることです。同じ内容が、前の学年ではどう書かれていて、次の学年ではどう書かれているか。そうすると、「この学年で何ができるようになればいいのか」がはっきりします。たとえば、前の学年で「〜を捉えること」だったのが、この学年では「〜を具体的に想像すること」になっていれば、この単元のポイントは「具体的に想像する」の部分だと分かります。
学習指導要領の解説まで読めればいちばんいいですが、最初は本文の該当部分だけでも十分です。
指導書で「単元の目標」と「評価規準」を見る
次に、指導書を開きます。ここで見るのは、主に3つです。
- 単元の目標:この単元で、子どもに何を身につけさせたいか。
- 評価規準:どんな姿が見られたら「おおむね満足できる」と言えるか。
- 時数:この単元に何時間かけるか。
指導書には、ほかにも1時間ごとの展開例、板書例、発問例など、たくさんの情報が載っています。でも、この段階ではそこまで読まなくて大丈夫です。まずは、目標と評価規準と時数の3つ。この3つが分かれば、単元の骨組みは決まります。
指導書が手元にないときは、教科書会社のウェブサイトも役に立ちます。多くの教科書会社が、年間指導計画や単元ごとの評価規準の例を公開しています。学校に指導書が1冊しかなくて取り合いになる、ということもあるので、ウェブで見られる資料を知っておくと便利です。
単元の目標と評価規準をどう単元計画に落としこむかは、次回の「単元計画づくり」でくわしく書きます。
手順3 単元の中の「山場」を1つ決める
ねらいが分かったら、次は単元の山場を1つ決めます。
山場とは、その単元の中で、子どもがいちばん考える1時間のことです。単元のねらいに一番近い問いを、子どもと一緒に考える時間。ここが決まると、ほかの時間は「山場に向かうための時間」と「山場の後にまとめる時間」として考えられるようになります。
教科ごとに、山場の例を挙げてみます。
- 国語(物語):主人公の気持ちが大きく変わる場面を読む時間。たとえば「ごんぎつね」なら、最後の6場面。
- 算数:新しい考え方が出てくる時間。たとえば「小数のかけ算」なら、「かける数が1より小さいと、答えが小さくなるのはなぜか」を考える時間。
- 社会:単元の問いに対して、自分の考えをまとめる時間。たとえば「わたしたちの町の工場」なら、「工場の人は、なぜこんな工夫をしているのか」を話し合う時間。
- 理科:予想と結果がずれる実験の時間。
山場を決めるときは、手順1で自分が「えっ」と思ったところや、手順2で学習指導要領を読んで「ここがポイントだ」と思ったところが手がかりになります。指導書にも、たいてい単元の中心となる時間が示されているので、それと照らし合わせるのもいいと思います。
山場の1時間だけは、少し時間をかけて準備します。中心発問を考え、子どもの反応を予想し、板書を考える。ほかの時間は、指導書の展開例をもとに、少し手を加えるくらいで十分です。全部の時間を同じ力で準備しない。これが、教材研究を続けるコツだと思っています。
手順4 子どもがつまずきそうなところを予想する
最後に、子どもがどこでつまずくかを予想します。
手順1で、子どもになったつもりで教科書を読んだときのメモを見返してください。読めなかった漢字、意味が分からなかった言葉、手が止まった問題、うまくいかなかった実験。そこが、子どもがつまずきそうなところです。
さらに、つまずきを予想するときは、クラスの子どもの顔を思い浮かべることをおすすめします。「〇〇さんは、この計算でくり上がりを忘れそうだな」「〇〇さんは、この長い文章を読むのに時間がかかりそうだな」。教科書だけを見ていると「子ども一般」のつまずきしか見えませんが、クラスの子の顔を思い浮かべると、具体的な手だてが見えてきます。
つまずきを予想したら、それぞれに1つずつ手だてを考えておきます。
- 読めない漢字が多い → 単元に入る前に、新出漢字と難しい言葉を確認する時間をとる。
- 文章題で式が立てられない → 図や表をかくヒントカードを用意しておく。
- 実験の手順が多い → 手順を写真つきで黒板に貼っておく。
- 資料の読み取りが苦手 → 「いつ・どこ・何が・どうなった」の4つで読む型を示す。
手だては、完璧である必要はありません。1つずつ用意しておくだけで、授業中にあわてることがずいぶん減ります。
指導書・ネットとのつきあい方
教材研究で迷うのが、指導書やネットの実践例を、どこまで使っていいのかということです。
私は、使っていいと思っています。指導書は、教科書を作った人たちが、その単元のねらいや展開を考えて書いたものです。特に最初のうちは、指導書の展開例をそのまま使うことも、立派な授業づくりです。
ただし、使う順番は、自分で教材を見た後にする。最初に指導書を読むと、指導書の目線でしか教材が見えなくなります。自分で読んで、自分で考えて、そのあとで指導書を読む。そうすると、「あ、自分が気づかなかったのはここか」「ここは、自分の考えのほうがクラスに合いそうだ」と、比べながら読めます。
ネットの実践例も同じです。おもしろそうな活動や、映える板書がたくさん見つかります。でも、その実践が、自分のクラスの子どもに合うかどうかは分かりません。ネットで見つけた活動を使うときは、「これは、この単元のねらいに合っているか」を一度確かめてから使うようにしたいところです。
教材研究のメモは「1単元1枚」にまとめる
教材研究で調べたこと、考えたことは、1単元につき1枚にまとめておくと、後で使いやすくなります。
私なら、A4の紙1枚(またはノートの見開き1ページ)に、次のことを書きます。
- 単元名と時数
- 学習指導要領の内容(記号と、ポイントになる言葉)
- 単元の目標(指導書から、自分の言葉で短く)
- 山場の時間と、その中心発問
- 予想されるつまずきと手だて
- 教科書を読んで気づいたこと(手順1のメモ)
これを単元の間ずっと手元に置いておくと、授業の準備のたびに、単元全体の中での位置を確かめられます。それに、1年後に同じ学年を担任したとき、この1枚がそのまま使えます。教材研究は、1回目より2回目のほうがずっと楽になります。そのためにも、1枚にまとめて残しておくことをおすすめします。
教材研究は、一人でやらなくていい
もう一つ、はじめての教材研究で伝えておきたいことがあります。それは、教材研究は一人でやらなくていいということです。
同じ学年に担任が何人かいる学校なら、同じ単元を同じ時期に教えている先生がいます。その先生と、教材研究を分け合うことができます。たとえば、国語は自分が、算数は隣のクラスの先生が教材研究をして、1単元1枚のメモを交換する。それだけで、教材研究の時間は半分になります。
一人で担任をしている学年でも、前の年に同じ学年を担任した先生がいるはずです。「去年、この単元どうでした?」と聞くだけで、「ここは子どもがつまずくよ」「この実験、教科書通りだとうまくいかないから、こうするといい」と、教科書にも指導書にも載っていない情報がもらえることがあります。
聞くのは、少し勇気がいるかもしれません。でも、聞かれた側は、案外うれしいものです。自分の経験が役に立つのは、だれにとってもうれしいことですから。
それから、教材研究のメモを学年で共有するときは、手順1のメモ(子どもとして読んで気づいたこと)を一番大事にするといいと思っています。指導書に書いてあることは、だれでも読めます。でも、「自分が読んで、ここで引っかかった」というメモは、その人にしか書けません。同じ教材でも、人によって引っかかるところがちがう。そのちがいを持ち寄ると、子どものつまずきの予想が、ぐっと広がります。
単元に入る前日に、もう一度だけ見直す
教材研究は、単元が始まる1週間くらい前にやっておくのが理想です。そして、単元に入る前日に、もう一度だけ見直す。
見直すのは、1単元1枚のメモだけで十分です。山場の時間はいつか。つまずきの手だては用意できているか。予備実験は済んでいるか。必要な教具はそろっているか。5分あれば見直せます。
この5分があると、単元の1時間目を、落ち着いて迎えられます。1時間目は、子どもが単元と出会う大事な時間です。ここで先生があわてていると、子どもにも伝わります。前日の5分は、そのための時間です。
時間がないときの「最低限」
ここまで、教材研究の4つの手順を書いてきました。でも、正直に言うと、毎単元これを全部やる時間がない週もあります。行事が重なる週、学期末の週。そういうときのために、最低限これだけというものを決めておくといいと思っています。
私なら、時間がないときは次の2つだけにします。
1つ目は、手順1の「子どもとして読む・解く」。これだけは省かない。自分で一度読んで、解いておくだけで、授業中に「あれ、この問題どうなるんだっけ」とあわてることがなくなります。
2つ目は、山場の1時間だけ、中心発問を決めておくこと。ほかの時間は指導書の展開例をそのまま使い、山場の1時間だけ、自分で考えた問いを持って授業に臨む。
この2つだけで、30〜40分です。「全部やらなきゃ」と思うと、教材研究はしんどくなります。まずは最低限から始めて、余裕のある単元で少しずつ増やしていく。それで十分だと思います。
おわりに
はじめての教材研究を、4つの手順でまとめてみました。
子どもとして教科書を読む・解く。学習指導要領と指導書で「ねらい」を確かめる。単元の山場を1つ決める。つまずきを予想して手だてを考える。そして、調べたことは1単元1枚にまとめる。
教材研究に「完成」はありません。何年やっても、新しい発見があります。だからこそ、最初から完璧を目指さず、まずは4つの手順を一度通してやってみてはいかがでしょうか。
一度通してやってみると、「自分は手順1に時間をかけすぎるな」「手順4がいつも薄いな」と、自分のくせも見えてきます。くせが分かれば、次の単元では時間の配分を変えればいい。教材研究のやり方も、授業と同じで、少しずつ自分に合う形に育てていくものだと思っています。
国語の物語教材で、教材研究の具体例を見てみたい方は、こちらもどうぞ。
次回は、教材研究をもとに、単元計画をつくる話です。
連載「はじめての授業づくり」
-
1 はじめての教材研究(この記事)
- #2 はじめての単元計画づくり
- #3 1時間の授業の流し方
- #4 はじめての評価
- #5 はじめての学習指導案


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