どうも。「せいたか先生」です。
6年生の国語で、先生が一番「どう教えればいいんだろう…」と悩む教材。それが「やまなし」ではないでしょうか。
「クラムボンはわらったよ。」から始まって、カニの兄弟が話して、魚が来て、かわせみが来て、そして十二月にはやまなしが落ちてくる。読み終わったあと、子どもたちの顔には「?」が浮かんでいます。そして、先生の頭にも「?」が浮かんでいたりします。
ということで今回は、「やまなし」の分からなさを、授業でどう扱うかを考えてみます。
「やまなし」が難しい理由
まず、なぜ「やまなし」は難しいのか。
- 何の話か、はっきりしない(筋らしい筋がない)
- 分からない言葉が出てくる(「クラムボン」「イサド」など)
- 中心人物が、何かをして変わる、という物語の形になっていない
これまでの物語文では、中心人物が出来事を通して変わる、という読み方をしてきました。でも、「やまなし」は、その読み方が通用しにくい。カニの兄弟は、見て、話して、こわがって、うっとりする。それだけです。
なので、「やまなし」は、これまでの物語文と同じ読み方で読もうとすると、行き詰まります。
「二枚の幻灯」という形
「やまなし」の冒頭は、こう始まります。
小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。
そして、最後は「私の幻灯は、これでおしまいであります。」で終わります。
つまり、この物語は二枚の幻灯(スライド)を見せるという形をとっているんです。「五月」と「十二月」の二枚。物語というより、二枚の絵を見せられている、と考えたほうが読みやすいかもしれません。
五月と十二月の対比
二枚の幻灯なので、授業の中心は、五月と十二月を比べることになります。
| 五月 | 十二月 | |
|---|---|---|
| 時間 | 昼 | 夜 |
| 光 | 日光、明るい | 月光、青白い |
| 落ちてくるもの | かわせみ(魚をとる) | やまなし(いいにおい) |
| カニの兄弟の気持ち | こわい | うっとり、楽しい |
| お父さんの言葉 | 「こわいところへ行った」 | 「ひとりでにおいしいお酒ができる」 |
こうやって表にすると、子どもたちは、二つの幻灯がまるで反対になっていることに気づきます。「五月は、命をとられるこわい世界」「十二月は、命がめぐむ、やさしい世界」。
ここから、「なぜ、宮沢賢治は、この二つを並べたのだろう?」という問いにつなげていきます。
「クラムボン」の正体探しに終わらせない
授業で必ず盛り上がるのが、「クラムボンって何?」という話題です。
泡、光、小さな生き物、プランクトン…。子どもたちからは、いろいろな説が出てきます。実は、研究者の間でも、はっきりした答えは出ていないと言われています。
この話題は盛り上がるので、つい時間をかけたくなります。でも、正体探しだけで終わってしまうと、「やまなし」の授業としてはもったいない。
なので、私なら、正体探しは1時間の中の10分くらいにとどめて、「正体は分からないけど、クラムボンが『わらった』『死んだ』『殺された』と書かれていることから、どんな感じがする?」という方向に持っていきます。正体よりも、言葉の響きや、その言葉から感じるものに目を向ける。
資料「イーハトーヴの夢」との組み合わせ
光村図書の教科書では、「やまなし」のあとに、宮沢賢治の生き方を紹介した資料「イーハトーヴの夢」が載っています。
この資料を読むと、賢治が、農業や自然、人々の幸せについて深く考えていたこと、自然の中で、すべての命がつながっているという考えを持っていたことが分かります。
「やまなし」と「イーハトーヴの夢」を合わせて読むことで、子どもたちは、「五月と十二月を並べたのは、命が奪われることも、命が恵みになることも、どちらも自然の中のことだと伝えたかったのかな」という考えにたどり着くことがあります。
ただし、作者の生き方から作品を読むのは、一つの読み方です。資料に頼りすぎて、「作者がこう言っているから、こう読むのが正解」となってしまうと、子どもたちが自分で読む楽しさが減ってしまいます。資料は、自分の読みを深めるための手がかりの一つとして使いたいところです。
単元の流れ(案)
| 時 | 学習活動 |
|---|---|
| 1 | 通読。「分からないこと」「心に残った言葉」を出し合う |
| 2 | 「二枚の幻灯」という形に気づく。五月と十二月を分ける |
| 3 | 五月の幻灯を読む(かわせみ、カニの兄弟のこわさ) |
| 4 | 十二月の幻灯を読む(やまなし、カニの兄弟のうっとり) |
| 5 | 五月と十二月を比べる(表にまとめる) |
| 6 | 資料「イーハトーヴの夢」を読む |
| 7 | 「なぜ、賢治は二つの幻灯を並べたのか」を話し合う |
| 8 | 題名が「やまなし」である理由を考え、自分の考えをまとめる |
発問例
- 「やまなし」を読んで、分からないことは何?
- 五月と十二月で、反対になっているものを見つけよう
- カニの兄弟の気持ちは、五月と十二月でどう違う?
- なぜ、宮沢賢治は、五月と十二月を並べたのだろう?
- 題名は、なぜ「かわせみ」ではなく「やまなし」なのだろう?
おわりに
「やまなし」は、分からないことが多い物語です。でも、それは悪いことではないと思っています。分からないからこそ、何度も読み返す。言葉の響きを味わう。友達の考えを聞いて、「そういう読み方もあるのか」と思う。
小学校の最後のほうに、こういう「分からなさを楽しむ」物語があるのは、なかなかいいことなんじゃないでしょうか。


コメント